実車ではZ0編成と量産車の床下カバーやダクト形状が異なるが、模型もそれに合わせて表現されている。表現的には、スジ彫りやボルト穴はカトーのほうが、ダクト穴やハッチ部分はトミックスのほうが表現が強いと思う。実車(量産車)の写真も載せたので参考にどうぞ。
先頭部の床下表現はあまり差を感じないが、カトーは長さ方向に少し圧縮されたような感じになっている。下の実車写真は量産車だから(金網越しで申し訳ない)、Z0編成との違いがあるわけでもない。おそらく、カトーは車体長が若干短いのと、先頭部台車側面のカバー形状を少しデフォルメしていることが要因だろう(いずれも後述)。床下カバーの陰影を見ても、トミックスの方が実車に近いと思う。
連結部床下(海側)の表現では、カトーは東京寄り車端にハッチを表現している車両とない車両があり、トミックスはハッチ表現は一切ない。
ただし、ハッチ表現があるのは専用の床下パーツを使う1・3・16号車のみで、その他の車両は表現なし。実車はハッチのある個所は他にもあるし、異なった形状のハッチもあるし、そもそも16号車にはハッチはない。トミックスはそのへんをプレーンな表現でまとめているが(一応、プレーンな連結部分も編成の半数程度はある)、必ずしもカトーの表現が優れているとは言えないのである。
車体間ヨーダンパはどちらも表現しているが、途切れてしまっているのも同じである。こればっかりはNゲージなので仕方がないが・・・
実車の山側の写真なので左右逆転してしまうが、車体の曲線になってる分割線を目印にするとわかるが、車端のカバーの長さは実は3種類ある。
基本的には、博多寄り車端@(短)と東京寄り車端A(長)の組み合わせと、B(中)同士の組み合わせが交互に連結されている。15個所ある連結部分のうち前者が8個所、後者が7個所となる。
カトーは両パターンを再現しているが、@・Aの組み合わせは1・2号車間と3・4号車間、B同士の組み合わせは2・3号車間で見られるのみで、他はすべてB・Aの組み合わせとなっている。また、16号車はAになっているので(本来は@)、15・16号車間はA・Aの組み合わせになっている。つまり正確な組み合わせは3個所のみで、他は実車とは異なっている(B・Aは@・Aに見えなくもないけど・・・)。
トミックスはすべてB同士の組み合わせとなるが、結果的に7個所が正しいものになっている。守り勝ちですな(苦笑)。
台車側面カバーは両者でパネル継ぎ目表現は異なる…が、実車でも見られる量産車とZ0編成の違いなので問題はない。カトーのほうがエッジが効いていて、スジ彫りなどが濃い表現であるが、両者とも実車のカバーを忠実に再現しているといえる。
実車編で述べたが、量産車には2種類のカバーが存在するが、さすがに作り分けはされておらず、全車両とも下の2本分割線のタイプで表現されている。
ちなみに、実車のZ0編成は何度か異なる形状のカバーを交換しながら試験していたが、最終的にはトミックスの模型のようなタイプに落ち着いた(現在装備しているカバーもこれ)。基本的な形状は量産車にそのまま継承されている。
台車カバーの上にあるタンク状の物体(空気バネ点検カバー)は、カトーは白とグレーの塗り分けを再現。ただし、ボディと床下でタンクが若干ずれていることがある。トミックスはカバーが床下側に表現され、ずれることはないがグレー1色となっている。
実車編で述べたとおり、実車は2012年ごろから白とグレーの塗り分けからグレー1色に移行しているようだ(トミックスに実車が追いついた?)。模型が2007年頃の仕様と考えると、厳密には塗り分け表現のカトーの方が正しいといえるが。
実車はどうなのかわからないし、走行中もディスプレイ中も見えないのでどうでもいい個所かもしれないが、床下底面の表現もカトーはパネル状、トミックスは完全に平滑と異なっている。
すべて海側のみで、山側については割愛。表中の(M)は動力車、(代)は代用を示す。
使用号車 | 画像 | |
A |
K:1 T:1 |
|
B |
K:2,15 |
|
C |
K:3 |
|
D |
K:6,11,14 T:3(代),6,11,14 |
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E ※ |
K:4,5,12,13 T:2(代),4,5(M),7(代),8,9,10(代),12(M),13,15(代) |
|
F |
K:7,8(代),9(代),10(M) |
|
G |
K:16 T:16 |
カトーは7種類、トミックスは4種類の床下パターンを用意。なんか差が付いているように思うが、Z0編成と量産車では床下パターンの配分が異なることもあり、一概に数が多い方の勝ちとは言えない部分もある。
パターンB、C、Fはカトーのみに用意されているが、特にパターンCはDに対しハッチが1つ多い(しかも目立たない)程度の違いしかなく、適用されるのは3号車だけ。Dで代用しても誰も怒らないと思うが、それでも製作したという凝りよう(前述の車体間表現で3号車前後が正確なのはこれが効いている)。
パターンFはカトーで唯一(代)表示があるが、これもパターンC・Dと同様に目立たないハッチの有無の差なので、「代用」というのは酷な気がしなくもない。しかし、パターンCを見ているとそこまでやるなら8・9号車用も作っちゃえよと、中途半端に感じなくもない(w。まあ、十分許容範囲の代用ではある。
一方、4種類しかないトミックスはやはり代用が多い。前述の通り3号車はパターンD代用でも問題ないとして、パターンE代用の内訳は、2・7・15号車が本来はダクトが4つ並ぶパターンB、10号車がパターンFとなる。
※を付けたパターンEだが、実はトミックスには2種類(左写真の右側ハッチの幅)あって厳密には5種類の床下が存在する。便宜上写真上を「E広」、写真下「E狭」と呼ぶこととする。
「E広」は2・5(M)・7・10・12(M)・15号車、「E狭」は4・8・9・13号車が適合する。実車にもある差異のようで、「E広」で正しいのは5・12号車(いずれもパンタ車)、「E狭」は全車正しい。2・7・10・15号車は前述の通り代用なので、ハッチの幅以前の問題である。
「E広」で代用している2・7・10・15号車のうち、10号車は代用でやむを得ないとしても(量産車では4両が適合したパターンFも、Z0編成では10号車のみ)、5・12号車が「E広」でもパーツが異なる(動力車なので)ことを考えると、2・7・15号車には結局のところ、代用のために「E広」をわざわざ専用設計しているといえなくもなく、それだったらパターンBで製作すれば良かったのでは?という気がして、少々解せない。
床下全体のモールドはカトーの方が若干濃い程度の差で、両者ともきれいに表現できている。しかし、「再現度」は結構な差があるように思う。
まずカトーだが、「可能な限り実車に似せよう」というこだわりが感じられる。こだわりが多少空回りしている部分も見られるし(連結部の表現とか)、特に16号車は専用設計なのに車端部にエラーが見られるなど、惜しい点もある。しかし、全体の再現度からすればそれも些細な問題で、8・9号車も「代用」として扱うのは気が引けるくらい。ほぼパーフェクトといっていい再現度で、個人的には99点くらいあげてもいいと思っている。
一方、トミックスに点数を付けるなら・・・厳しすぎるかもしれないが50点くらいかなあ。
誤解のないように言っておくと、トミックスの床下はNゲージ製品として水準には達している。別にN700系としての印象を損ねているわけではないし、大部分の人はそこまで気にしない。そうした「現実」に合わせて中庸な表現とするのも間違ったアプローチではない。屋根上表現のページでも書いたように「妥協は悪くない」のだ。
しかし、床下については妥協ラインがちょっと低すぎるんじゃない?という気がした。一方で差異の目立つパターンBではなく、わずかなハッチの幅の差しかないパターン「E広」「E狭」をわざわざ作り分けそれを代用に充てるなど、力の入れどころが間違ってない?という局面も見られており、何がしたいのかわからないというのが正直な感想だ。
近年の模型は考証が進んで、誰も気にしないような床下がきちんと作り分けることも珍しくない。しかし、トミックスのN700系は2007〜2008年に発売された「近年の製品」のはずなのに、20年前の製品じゃあるまいし、実質4種類の床下だけで代用車多数(5両が多いかどうかは各自の判断次第だけど)とは。同社の700系3000番台(B編成)では、今回紹介したカトーのような「1両のためだけに床下を製作」というこだわりも見せていたのに(記事)、そこからの後退姿勢と・・・そして、カトーと比べてしまうと・・・
トミックスもビジネスでやっているわけで、そこにコストや妥協が入らざるを得ないことは筆者も十分理解しているつもりだ。しかし、ビジネスでやってるのはカトーも同じである。「誰も気にしないので省く」のか、「誰も気にしないけど表現する」のか。その差(しかも大きい)を実際に見てしまうと、前述の点数以上はどうしても付ける気がしなかった。
両者の台車と、実車の台車の写真(浜松工場イベントで撮影)を並べてみた。双方の台車の上から出ている金属は集電パーツでカトーは金属の板だが、トミックスはスプリングという違いがある。
N700系の台車は軸箱(車軸を受ける部分)を2つのバネで挟み込む0系以来の方式で、JR西日本やJR東日本がそれぞれ独自の方式の台車を採用しているのに比べると、JR東海は頑なにこの方式を採用。ボルスタレス台車となった300系以来、JR東海の新幹線の台車は外観的にはほとんど変わっていない。
模型の台車を見比べると、トミックスは軸箱上の軸ダンパを再現したり、モールドがシャープで細かいのだが、両端の軸バネがごっそり切り取られて台車全体がコンパクトになってしまっている。
この理由として、左は両者の先頭部分の台車取り付け部を撮影したものだが、トミックスはスペースが狭く、舵角を得るために台車をコンパクトにせざるを得ないのである。
なぜカトーはこのスペースを取れたかというと、台車カバーの形状をデフォルメしているから(加えてプラも薄い)。黄色い○がカバーのすぼみ部分なのだが、カトーはトミックスよりも後方でキュッと絞っている。台車カバーの形状に限れば、トミックスの方が実車に近い。
その他の違いとしては、台車の取り付けがトミックスがビス止めなのに対し、カトーはスナップオンと呼ばれる方式になっている点。また、車輪からの集電板の形状も異なっている。
実物とは比べ物にならないカーブを曲がる(=舵角が大きい)Nゲージにとって、台車横にカバーが付いている車両は鬼門。N700系の長さ方向にサイズ大きい台車を収める場合はなおさらだ。
実際のところN700系の台車スペースで苦しいのは先頭部分のみで、中間部ではそれなりのスペースはある。その上でカトーは台車は忠実にするがスペースが苦しい先頭部分のカバー形状をデフォルメ、トミックスはカバー形状は忠実だが台車をデフォルメと対応が分かれたというわけだ。
ところで、N700系と同様の台車を装備するカトーの700系、トミックスの923形「ドクターイエロー」もスペースは苦しいはずだが、台車を作り分けているので上記のような問題は発生していない(700系の台車記事)。カバーがあって見えにくい先頭部台車はある程度表現を省略しても問題ないし、中間部分はきちんとした台車になっている。パーツを2種類用意する分コストはかさむが、理にかなった方法だといえる。
その点、N700系では1種類の台車パーツで済ませているために前述のように対応が分かれたわけだが、トミックスは結果的に全編成中2箇所しかない先頭部分のためだけに、スペースの問題がない他の30箇所の台車も省略を余儀なくされてしまった。もちろんカトーも台車が要因でカバー形状をデフォルメせざるを得なかったわけだから、同社の700系からは後退しているといえるが、カバーのデフォルメはほとんどの人は気付かないレベルであるし、編成中数の多い中間の台車形状を優先したカトーの判断のほうが適切ではないかと思うのである。
コストを考えなきゃならないのはわかるし、中間車も台車カバーに覆われているN700系では、多少の台車表現が省略されても気にならないというのもわかる。しかし台車が全く見えないわけではないし、先頭部台車カバー形状を忠実にするこだわりがあるなら、台車も作り分けるこだわりがあっても良かったのでは・・・トミックスはモールド表現が素晴らしいだけにかなり惜しいと思った。
全周幌が特徴のN700系だが、連結部分の構造は両者異なる。カトーは「全周幌カプラー(筆者が勝手に命名)」、トミックスは「通電カプラー」という連結方式を採用している。
それぞれの連結方式の特徴は、カトー「全周幌カプラー」、トミックス「通電カプラー」、リンク先に解説があるのでそちらをご覧いただきたい。
カトーは連結間に幌のパーツが挟まっていて、トミックスは中間で分割されている。写真ではトミックスの幌の密着度が悪いが(上の方が開いている)、これは個体差というか連結場所により差がある。連結間隔は見ての通りカトーのほうが狭くてリアルだが、客用扉の窓から幌の一部が見えるのが気になるか。トミックスは幌が可動式なのでその動きに合わせた後退角があり、上から見ると中央部がすぼんで見える。
カトーの幌はほぼ車体とツライチ。トミックスは車体より一段奥まった位置になりボディの厚みを確認できるが、走行中はそれほど気にならない。
トミックスのR=317mmのカーブを通過中(アウト側)。リアリティという意味では両者ともアレだが、Nゲージではやむを得ない光景である。カトーは中央の幌パーツがねじり方向にズレている感じがするが、車体傾斜(後述)に対応するため、結構柔軟に動くのである。
連結部研究のページも見ていただきたいが、見た目はカトーが上手だが扱いやすさに難あり、トミックスはその逆という感じである。
カトーは直進時においてはN700系の全周幌をよく再現しているといえる。この全周幌カプラーは伸縮機能も持つから、連結間隔も狭くてリアルである。
気になる点といえば、客用扉窓からの幌パーツが目立つ点だろうか。上の写真の1号車+2号車はもとより、両端が客用扉になっている連結部だとさらに目立つ。窓はスモークがかかっているのだが、幌を隠す効果はないようだ。どうせ反対側は見えないのだから、窓を裏から黒く塗ってしまうのがいいかもしれない。この点トミックスの場合はカーブイン側のみ幌パーツが窓越しに見えるが、直進時はうまく隠れている。
トミックスは従来製品でおなじみの可動幌なのだが、食パンのようなシンプルな形状であり、伸縮カプラーではないので連結間隔も広く、見た目やリアリティという点では不利なことは否めない。
以下は筆者の推測であるが、同社の800系・700系では「TSカプラー」という伸縮カプラーを採用していたが、全周幌のN700系では採用が難しので従来の可動幌にしたのだと思う。しかし、それでは退化したような印象を受けるので、新しいギミックとして通電カプラーを採用したのではないかと思っている。もっとも、通電カプラーが走行に与えるメリットは確かなものがあるため、見た目を妥協してでも走行性能の向上に力を入れたのだと、好意的に受け止めている。
ところで、真っ白なトミックスの可動幌を見ていると、全周幌の蛇腹のようなモールドや印刷といったテクスチャがあってもいいような気もするが、幌が中央部で分割されている以上、上下にズレることもあるし、上の写真のように幌が密着しない場合もある。連結間隔も広いので、テクスチャがあったらあったで違和感を感じていたと思う。なにも施さなかったのは正解だろう。
どちらもカーブレールに乗せた状態だが、カトーは傾いているのがわかるだろうか?カトーのN700系には車体傾斜システムが採用されていて、カーブでは内側に傾くようになっているのだ。
なお、傾斜がわかりやすいように中間連結部で撮影・比較した。
カーブイン側から撮影したものだが、カトーはイン側(写真手前)に傾斜していることがわかる。
実車のN700系は車体傾斜装置の搭載が特徴であり話題になったが、模型でもカトーにはそれを模したものが搭載されている。カトーは在来線でも車体傾斜する製品はいくつも発売していて、それを新幹線に応用したのである。一方、トミックスには車体傾斜が搭載されていない。
しかし、実車の車体傾斜角はわずか1度で、車体傾斜装置が作動しているであろう写真(浜松駅通過等)を見ても、ほとんど傾斜を認識できないのが実情だ。乗車時でもほとんど体感できないし(それだけ制御がうまいとも言えるが)、その意味ではトミックスが物足りないということはない。
カトーは見た目にもわかるくらい傾斜してカッコイイのだが(特にカント付きレールに乗せると迫力)、実は傾斜角3度に設定されていて、あくまでもデフォルメされたものである。車体傾斜を模型でも再現したカトーの方がリアル…とは、一概にはいえないのだ。
トミックスは車体傾斜を採用しなかったわけだが、これは考え方の違いや技術力以前に、このシステムはカトーが特許を持っているため、他社はおいそれとは採用できないのである。
走行性能については、メンテナンス状態、レールレイアウト、個体差などの要素があるので、あくまでも筆者の主観が強いことをお伝えしておく。また、簡単に済ませたい。
まず、両者の一番の違いは動力車の両数で、16両編成中カトーは1両、トミックスは2両となっている。筆者の環境では平坦路線しかないのだが、平坦部では両者の動力性能は大差ない。ただ、勾配がある場合は動力が2両のトミックスのほうが有利かもしれない。あと、これは個体差かもしれないがカトーのほうが動作音が大きいような気がしたのと、通電カプラーの効果だろうか、トミックスは実にスムースに走る印象を受けた。
なお、両者とも脱線しやすいという噂も耳にするが、筆者の環境(トミックスのR=428mm+R=465mmを使用した複線エンドレス)では特に脱線したことはない。カトーは連結器を正確につなげないと脱線することはあるが、きちんとつなげていれば問題はないと思う。
カーブ通過半径はメーカー公称値はカトーがR=315mm、トミックスがR=280mmとなっているが、カトーもR=280mmをクリアすることは可能である(このページのコラム参照)。
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