●概要

2012年7月、カトーから923形「ドクターイエロー」が発売された。製品構成は以下の通り。

品番 商品名 両数 商品形態 価格
10-896 923形3000番台 新幹線電気軌道総合試験車「ドクターイエロー」 3両基本セット 3 紙パック 11,500
10-897 923形3000番台 新幹線電気軌道総合試験車「ドクターイエロー」 4両増結セット 4 ブックケース 9,600
フル編成価格
3両基本セット×1 4両増結セット×1 
21,100 円
矢印
博多
東京
矢印
CarInfoItem1
1号車 923-3001
3両基本セット
CarInfoItem2
2号車 923-3002[M]
3両基本セット
CarInfoItem3
3号車 923-3003
4両増結セット
CarInfoItem4
4号車 923-3004
4両増結セット
CarInfoItem5
5号車 923-3005
4両増結セット
CarInfoItem6
6号車 923-3006
4両増結セット
CarInfoItem7
7号車 923-3007
3両基本セット

2つのセットで構成されており、基本セットには1・2(動力車)・7号車、それ以外の車両は増結セットという、トミックスと全く同じ構成だ。動力車が2号車という偏った位置にある点も同じで、カトーにしては珍しい。

製品の詳細はアーカイブ(別窓)も参考にしてほしい。

923形プレビュー04

基本セット(左)と増結セット(右)。基本セットは紙パック+発泡スチロールでチープなものだが、凝ったデザインが人目を引く。パッケージに書いてあるうたい文句も含めて、スターターを意識していることがわかる。


923形プレビュー03

ブックケースには基本セット分も含めて、7両フル編成を収納することができる。

基本セットにはE5系「はやぶさ」と同様にリレーラーが付属している(路面電車用。正直使いづらい)のだけど、今回のブックケースはリレーラーの収納スペースが用意されていないのが残念。


ドクターイエローの模型は、923形に関しては長らくトミックスの牙城だったが(922形はマイクロエースが製品化)、まさかカトーからも発売されるとは思わなかった。ただし、プロトタイプはトミックスのT4編成(JR東海車)に対し、T5編成(JR西日本車)としてバッティングを避けている

T4編成とT5編成は細かな差異があり、それぞれ製品化する価値はあると思うが、それでも各1編成しかない事業用車が両方とも模型化されたということで、改めて実車の人気ぶりを認識させられる。基本セットのパッケージを見ても、これでもかとスターター・一般層を意識しており、当製品をNゲージ人口拡大の目玉としたい思惑もありそうだ。

というわけで、早速当製品のレビューをやってみたいのだけど、今回は各ポイントが分かりやすいのでトミックスとの比較を多く盛り込んでみたい。いずれ正規の比較レビューはやるつもりだが、今回はプチ・比較レビューということで。トミックスのレビューも併せて読んでいただけると助かる。また、同一メーカーの700系と共通する部分も多くあるため、700系のレビューも読んでおくとよりわかりやすいかもしれない。

●先頭形状

基本的に1号車をサンプルにした。

923形プレビュー01

ドクターイエローとして全く不満のない造形といっていいだろう。700系というベースがあるとはいえ、複雑な先頭形状をそつなく再現できていると思う。


923形プレビュー02

この角度から見ても問題なし。


923形プレビュー06

前面窓は700系と同じものを使用しているようで、残念ながらワイパーの表現はない。運転台のコンソールも700系に準じたものになっているが、マスコン類の表現がない新規パーツである。


923形プレビュー05

ドクターイエローの特徴である四角い窓の内部には、カメラの姿もしっかり再現。

この写真はあまり写りがよくないけど、内部のモールドはトミックスよりも立体的。


おまちかねトミックスとの比較、バーンと特大画像でいっちゃいましょう!

923形プレビュー12 923形プレビュー11

どちらもドクターイエローとして十分すぎる素晴らしい造形だが、細かな点では随所に差異がみられる。基本的には両社の700系に準じた差であり、例えば前面窓のサイズ(トミックスの方が大きい)や、ヘッドライト周囲の銀色塗装有無などが挙げられる。

カトーの前面窓には「T5」の印刷があるが、トミックスも付属のインレタで「T4」を再現することが可能。

ドクターイエローならではの差としては、カメラなどが格納されている窓の位置。改めて見るとトミックスは後方寄り、カトーは前方寄りとなっている。


923形プレビュー09

実車では若干後方寄りではあるけど、トミックスはちょっと後ろに寄りすぎ、カトーは前方に寄りすぎという感じが。両者の中間がちょうどよい位置なのかもしれない。


923形プレビュー13

真正面から見ても、ヘッドライトと検測窓の間隔に差が出る。実車云々は置いておいて、個人的には見た目のバランスがよいのはカトーだと思った。


923形プレビュー10

真横から見ても、700系の特徴(窓の上下幅とか)を引き継いでいる。

カトーは台車中心位置からちょい右、ボディ下端に切り欠きがあるが、これはJR西日本車の特徴。博多総合車両所のジャッキに対応したもので、700系等でも見られる差異である。

カトーは乗務員扉窓に「T5」の印刷があるが(同社がここに編成番号を印刷するのは初めて)、トミックスも付属のインレタで再現可能。トミックスはさらに車体下端の「T4」まで再現できるが(写真は未施工)、残念ながらカトーは未対応である。

その他、床下のモールドはカトーの方が濃くて分かりやすい。


923形プレビュー07

同門の700系と並べてみると、やはり直系であることが感じられる。とはいえ、この両者の発売(設計)時期は10年以上の差があるため、細かい部分で改修されたポイントもある。

例えばヘッドライトのガラスのツライチ度が増していたり、連結器カバーのモールドがより実車に近くなった(700系はカバーのヒンジ?の表現がなかった)、など。

ちなみに、トミックスのドクターイエローも基本的には10年前の製品であり、実はカトー700系と同期だったりする。


923形プレビュー15

よくできたカトーの先頭部だが、一つ気になるのが側面青帯の先端。なんていうか、鋭さがないというか。


923形プレビュー08

実車(T4編成)と比べると明らかで、特に細い帯が切れあがる位置に注目。実車では乗務員扉横にある手すり下端のあたりから切れあがっているのに対し、カトーはかなり前方で切れあがっている。しかも、先端もたれ下がり気味だ。


923形プレビュー17

上がT4編成、下がT5編成。実車もこうしてみると、確かにT5編成は前方で切れあがっているように見えるが・・・

これを再現したにしても、カトーは少し前に出すぎな気がする。


923形プレビュー14

ちなみに、トミックスはこんな感じ。かなり実車に近い雰囲気を出せていると思う。


923形プレビュー16

カトーの700系も先端がたれ下がり気味とはいえ、切り上げ位置は実車に近い。


923形プレビュー25

カトーでも反対側の先頭車(7号車)については、実車に近い位置で切れあがっている。


店頭で基本セットの窓から見た時点で、青帯の切り上げ位置や鋭さに違和感を感じた。改めてトミックス等と比べてみたら思ったより差異があったので、ついつい扱いを大きくしてしまった。某ショッピングサイトの画像を見ても同じなので、個体差というわけではなさそう。 微妙な先頭形状のデフォルメが後述のすれ違いセンサーの位置に影響し、青帯がそれに巻き込まれたとかも考えられるが、問題なのは1号車だけだし・・・

まあ、強引にフォローしておくと、走らせるなど遠目に見る模型視点であればそれほど気にならないと思う(もはや気持ちの問題?)。トミックスともども、全体的な造形がよくできていることに変わりないのだから。

●車体各部表現

923形プレビュー18

先頭部側面にある「すれ違いセンサー」は海側と山側で位置を変えているのはトミックスと同様(断面に黄色が見えてしまっているのも・・・)。ただし、こちらはセンサーの位置・形状ともに精度感に欠けるかもしれない。特に形状は真円に近く、実車との差異を感じる。


923形プレビュー24

ドクターイエローの客用扉(「客用」ではないな)は機材の搬入を考慮して、営業用車両の身障者対応車で使用されている幅広タイプとなっている。

カトーは扉の上部が角ばり気味だったり、手かけの表現がない、クツズリに銀色印刷が入っているなど、同社の700系に準じた仕様となっている。この辺はトミックスの方が実車に近い印象だが、窓のエッジはカトーの方がシャキッとしている。

号車番号の高さが異なるが、実は実車にもある差異だったりする(後述)。


923形プレビュー23

扉下部にある点検ハッチはT4編成(上)の「出っ張りタイプ」と、T5編成(下)の「ツライチタイプ」と形状が異なる。これは両者とも再現できているが、カトーは4隅のボルトを省略している。

また、カトーは700系などでも、本来は「出っ張り」のところを「ツライチ」で済ませることが多く、結果的に実車と同じになっただけかもしれない(カトーがT4編成を担当していた場合、「出っ張り」にしていたかどうか・・・)。


923形プレビュー28

ドクターイエローは基本的にブラインドを閉じて走行しているが、カトーはそれを再現。よって車内を見ることができない。


923形プレビュー69

ブラインドは室内に壁状のパーツを立てて表現するというプリミティブな手法。「ブラインドを閉じている」表現には少々苦しいかも?号車によっては、客用扉窓(本来ブラインドはない)にもこの壁がかかってしまっていることがある。

写真は7号車で、トミックスだとブルーの座席がずらりと並んでいるが、カトーは壁の向こう側は全号車で表現を省略。一応、室内灯を組み込める設計にはなっているが・・・


923形プレビュー27

Nゲージなので仕方がないが、窓やボディの厚みがどうしてもブラインドが奥まった印象を与えてしまう・・・それでもまあ、ブラインドだと思えばそう見えなくもないか。

窓ガラスのツライチ度はカトーの方が上。700系とは完全に逆転している。


●塗装・印刷

923形プレビュー20

カトーの黄色はトミックスよりも明るいことがわかる。トミックスも単体で見ると明るい黄色に見えるけど、並べてみると差が出る。他のモデルでも同じ事例があるように、メーカーの解釈の差でありどちらも正しい。実際、両者ともドクターイエローとして全く問題ない塗装だと思う。

光沢はどちらも強いが、トミックスの方が若干強い。


923形プレビュー21

ブルーの帯もカトーの方が若干明るく、両社700系の帯色の差そのものに思える。床下のグレーもカトーの方が明るめ。

床下はトミックスは完全な艶消し、カトーは半光沢くらい。落ちついて見えるのは前者だが、個人的には後者が好みかな。

検電アンテナはどちらも実車と同じ白。パーツ自体は他の新幹線形式と共用で使われているものだ。


923形プレビュー19

印刷クオリティは可もなく不可もなくというか、いつものカトークオリティ。「JR」のロゴは帯色と同じブルーになっているが、実車とは異なっている(JR西日本ブルー)。

クツズリ等の銀色と共用しているのか、形式番号は銀色で印刷されているが実車ではグレー。ちなみに、トミックスはグレーで印刷されている。


923形プレビュー22

個体差だと思うが、塗り分けのラインは若干粗い部分が見受けられる。中には写真のように、ブルーの帯が糸状に流れている車両もあった。

走らせている時とかは特に気になることはないが、トミックスはここまで拡大してもあまり粗は出ない。残念ながら、塗装クオリティは一歩劣る感がある。


923形プレビュー26

屋根上の滑り止めは同社の700系等のようにグレー塗装ではなく、トミックスと同様にモールドのみで表現である。

屋根上には号車番号が印刷済みとなるが、文字色がブルー(たぶん帯色と同じ)になっている。目立つことは目立つのだが・・・


923形プレビュー58

実車の4号車は見ての通りオレンジ。他の号車は白〜グレーくらい。トミックスは印刷がなくインレタで表現することになるが、実車通りの配色になっている。

トミックスの古いカタログを見てみると、リニューアル前の製品では屋根上の号車番号が印刷済みで、カトーのように濃い文字色だった。もしかしたら、実車もそういう時期があったのかもしれないが、カトーは現在の姿を再現(4号車の屋根が白)しているのだから、やはり実車とは異なる。


●灯火類

923形プレビュー33

E3系やE4系ですでに採用されているギミックだが、実車同様に内側の2灯(片側)を黄色がかったシールドビーム、外側の1灯を白色のHIDと色分けしている。

同社700系ほどではないが、光量が非常に多い「激マブ仕様」。写真撮ろうにもフォーカスが合わなくて大変だった。


923形プレビュー31

テールライトはカメラ用窓の内側で光るようになっているが、こちらの光量は常識的。でも十分かと。


923形プレビュー32

700系もそうだったが、ヘッドライトの光量の差は一目瞭然。また、黄色1色のトミックスよりも見た目のリッチさは歴然だ。

トミックスの光量も十分だけど、カトーは大きなレイアウトで走らせても相当目立つはずだ。


923形プレビュー53

カトーはヘッドライトの光がカメラ用の窓に若干移ってしまっているが、一体型のパーツであることが原因かもしれない。当然ながらドクターイエロー専用パーツとなるが、ヘッドライトのツライチ度が700系より増しているのはこのパーツのおかげである。

それはそれとして、安易な分解はしないでほしい。


923形プレビュー52

ヘッドライトのプリズムを格納するケースは上部はコクピット、前方にカメラを表現したドクターイエロー専用のものだが、全体的にやはり700系のものに似ている。


●屋根上

ドクターイエローの屋根上は検測車ならではのにぎやかさが見どころ。模型でも比較しがいのある場所だ。

●無線アンテナ

923形プレビュー29 923形プレビュー45

また大画像で。T5編成(上)とT4編成(下)では1号車の無線アンテナに差異がある。

T4編成は3つのアンテナは同じ形状で、中央は白で塗装されている。T5編成は前2つはシンプルな形状、残り1つはT4編成と同じ形状で、色はすべて黄色という具合。

模型では両者とも、その辺を忠実に再現している。


923形プレビュー30

7号車にもT5編成はアンテナが2つあり、T4編成にはないという差異がある。当然、ここもきちんと再現されている。


923形プレビュー46

上がT5編成、下がT4編成。


●2号車高圧線

923形プレビュー41

トミックスはなぜか2号車の高圧線が省略されてしまっているが、カトーはきちんと表現。終端部は700系と同じくストンと切り落とされた表現であり、妻面への引き込みは省略している。


●パンタグラフ周辺

923形プレビュー42

このゴテゴテ感がたまらない(?)ドクターイエローのパンタグラフ周辺。カトーにはなにやら穴のあいた個所があるけど、これはパンタ投光器が光るギミックがあるから(後述)。

パンタは700系と同じパーツを採用しており、これはカトー・トミックスに共通している。


923形プレビュー61

トミックスと同様、2号車と6号車でパンタカバーを作り分けることはしなかったようだ。ただし、トミックスがセンサー類のない6号車のカバーを採用しているのに対し、カトーは磨耗測定器がある2号車のカバーを採用(カバー上にスリットがある)。ただし、細かなセンサー類は省略されている。


923形プレビュー62

カバー内部のガイシの本数は作り分けれらており、6号車(左)はガイシが1本少ないことがわかる。ここはトミックスに対してアドバンテージ。

斜めになったガイシからパンタに高圧線が伸びているのもカトーの特徴。白だと違和感あるので色差ししたいところだが。


923形プレビュー44

カバーのスロープに施されたモールドも若干異なる。カトーはパンタを支えるガイシが白いことがわかるし、各ガイシの距離感が微妙に異なるなど面白い。


923形プレビュー63

6号車のパンタカバーから車端に向けて2本のケーブルがあるのだけど、カトーはここを1本で表現。しかも中央から生えてるなど実車とは異なる。もっとも、トミックスにはここの表現がないので、あるだけマシといえるか。


923形プレビュー43

カトーにはパンタ投光器が点灯するというギミックがある。上から見ることが多い模型では効果絶大だろう。こうしたインパクトのあるギミックは、スターター向けを意識している当製品にとって、わかりやすい訴求ポイントかもしれない。

なお、パンタ投光器の点灯はマイクロエースの922形ドクターイエローで実現例があり、今回が初めてというわけではない。


923形プレビュー65

写真は6号車で、車端にこのような光源ユニットが装備されている。コンパクトなので、一応室内灯の装備も可能。

たいていカトーはトミックスより価格が安いのだが、ドクターイエローではわずかに逆転。おそらく、このギミックが価格に影響しているのかもしれない。


923形プレビュー66

パンタカバーの裏にはこのようなプリズムが仕込んであり、ボディに空いた穴から光が伝わるようになっている。

この精巧さを見て、改めて大手メーカーはすごいなと感じた。


923形プレビュー70

最後に、実車の投光器が点灯している図。写真のように曇りの東京駅とかなら、昼間でもわかるかもしれない。


●パンタ観測ドーム

923形プレビュー48

3・5号車(写真は3号車)にはパンタ観測ドームがある。見た感じ、窓の大きさが異なるのと、ワイパー表現の有無(トミックスにはない)に差がある。


923形プレビュー47

実車と比べると・・・撮影の角度がよくないので、どっちが似てるのかはなんとも。ただ、カトーのワイパー位置は逆じゃない?

理由は後述の5号車とパーツを共用しているから。


923形プレビュー49

ドーム全体のシルエットはほとんど変わらないが、側面に施されたモールドはカトーは実車通り横線も表現。トミックスは省略となっている。


923形プレビュー51

5号車のドームにつながるジョイントの表現が異なるが、これは実車にある差を表現したものだ。

ジョイントから車端までの高圧線の有無にも差があるが、これはカトーとトミックスの伝統的な差であり、他の形式でも同様の例が見られる。


923形プレビュー50

T5編成(上)はジョイントが黄色、T4編成(下)はジョイントがグレー。模型はこれらを忠実に再現したものであることがわかる。

3号車では逆だったカトーのワイパーも、こちらでは実車通りになっている。


923形プレビュー54

トミックスのドーム内部は室内とつながっており、室内パーツに座席の表現もある。


923形プレビュー55

一方、カトーは室内とはつながっておらず、ボディに直接座席がモールドされている。内部が黄色く見えてしまうことがあり、若干チープさを感じることも。


●その他屋根上

923形プレビュー59

トミックスは2011年のリニューアル製品から、実車に合わせて4号車の屋根上を白で表現しているが、実車の現在の姿を再現しているカトーも同じく白で表現。

面白いのは表現方法の違いで、トミックスは塗装、カトーは別パーツとなっているところ。トミックスの旧製品は4号車の屋根が黄色時代のものだったので、そのボディを流用している以上、塗装で表現するしかない。

とはいえ、トミックスはしっかり塗装されているので、白さでカトーに負けてるようなことはない。


923形プレビュー56

実車ではケーブルヘッドガイシの下にあるスロープは白で塗装されているが、ここはトミックスが正解。別パーツでは限界があるのでやむを得ないが、思わぬところに塗装表現のアドバンテージが。


923形プレビュー60

5号車にあるプールみたいな個所(筆者の知識では役割不明)は、カトーは屋根上に直接モールドで表現、トミックスは別パーツという違いがある。モールド表現はカトーの方が強い程度で、その他はだいたい同じだ。


923形プレビュー57

実車と比べても全く問題ないといえるだろう。


●床下・台車

923形プレビュー68

カトー・トミックスともに床下の再現度は高く、車端部の床下まで作り込んでいる点も同じ。トミックスでは6号車の博多寄り車端にステップが表現されてしまっていたが、カトーはそこも抜かりなし。再現度は限りなく100%に近い。


923形プレビュー67

トミックスの6号車は車体に扉がないのに車端床下にステップが表現されてしまっている。しかし、実車と異なる個所はこのくらいで、全体的な再現度はトミックスも相当高いのだ。

床下に話を振っておいてなんだけど、パンタカバー遮音板の端の表現、カトーよりもトミックスの方が鋭い。


923形プレビュー64

実車と比べると、鋭いトミックスの方が近いようだ。

写真は2号車となるが、パンタカバー(ガイシ覆い)の側面に何か盛り上がりがある。調べてみたところ、2号車の山側のみにあるようだが・・・模型では両者とも、この表現はなかった。


923形プレビュー39

台車は同社の700系と同様、床下カバーの干渉に応じて先頭部と中間部で作り分けている。なお、トミックスも同様に作り分けている。


923形プレビュー40

ドクターイエローならではの、4号車の検測台車も比較。どちらも実車の台車の特徴をよく再現できていると思う。ヨーダンパ受けの形状が両者異なっているが、これは実車にもある差異(下にある実車の台車写真参照)。

他の形式でも見られる特徴だが、台車中心上にあるタンク状のものは、カトーはボディと床下で分割し、トミックスは床下で一体化。塗り分けがされているカトーの方が似ているが、上下でズレが出てしまうことも。

あと、台車カバーは中心からヨーダンパ受けの上あたりで途切れているけど、示し合わせたように両者同じような位置で途切れているのが面白い。

2本あるヨーダンパには黄色いラインが入っているが、模型で表現するのは難しいかも(材質の問題で塗料が乗らない)。


●連結方式

923形プレビュー38

連結方式はKATOダイアフラムカプラーを採用。E5系に使用されているものと全く同じで、バネで中央に復元する。構造上やむを得ないが、妻面のディテールはまったくない。


923形プレビュー35

連結間隔の狭さには定評あるカトーの例にもれず、この製品も相当なもの。実践はお勧めしないが、トミックスのR=280mmのS字カーブもクリアできた。


923形プレビュー36

下の実車と比べるとさすがにアレだが、真横から見てもなかなかの見た目。トミックスと比べると、車体間ヨーダンパの表現は若干弱いようだ。

ところで、3号車と4号車の号車番号の位置、高さが揃ってないような?


923形プレビュー34

実はこれ、T5編成実車(写真)の特徴だったりする。理由は不明だが、1〜3号車は少し高い位置に号車番号が貼ってあるのだ。車体各部表現の項で、2号車の号車番号表示の高さに差があったのはこれが原因。

そのうち全検とかで揃えられる可能性もあるが、現時点のT5編成を再現するという意味では、カトーは細かい部分にこだわったといえる。


923形プレビュー37

ちなみに、T4編成にはこの差はなく、トミックスも全号車で高さが揃っている。


●総評

以上、駆け足で書いてきてしまったが、いかがだろうか?トミックスは2011年にリニューアルされた製品とはいえ、ベースは10年前の製品。カトーは10年も後発であり、いろいろ盛り込んでトミックスを圧倒するのではないか?と思ったが、実際に手にとって比べてみると、意外にも一長一短でそれほどの差はついていないように思う。

カトーのドクターイエローは、2012年の製品として十分通用するクオリティなのは間違いないが、トミックスが思ったより食い下がっている印象だった。設計は10年前といっても、もともと現在でも通用するクオリティを持っていた・・・ということだろうか。もちろん、2号車の高圧線とかポカもやっているわけだが、カトーも細かく見れば不満な部分もいくつかあるわけで、筆者としては、総合的には互角であると結論づけたい。

したがって、どちらを買うのか迷った場合。見た目や好みで決めても、T4編成かT5編成で決めても、それ以外の理由で決めても全く問題ないと思う。7両編成なのでレイアウトにもお財布にも優しく、両方買って並べるのも全然アリだ。レンタルレイアウトで走らせても黄色の車体は目立つし、コストパフォーマンスも高いように思う。製品の性質上、再生産も頻繁に行われると思うので、今後とも入手しやすいのではないだろうか。


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