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2011年12月、トミックスから923形電気軌道総合試験車「ドクターイエロー」がリニューアルの上、発売された。製品構成は以下の通り。
品番 | 商品名 | 両数 | 商品形態 | 価格 |
92429 | JR 923形新幹線電気軌道総合試験車(ドクターイエロー) 基本セット | 3 | 紙パック | 9,900 |
92430 | JR 923形新幹線電気軌道総合試験車(ドクターイエロー) 増結セット | 4 | ブックケース | 9,900 |
トミックスの923形ドクターイエローは以前よりラインナップがあったが、今回のリニューアルで通電カプラーの採用やインレタの充実といった、近年他のモデルで行われているメニューが適用された。商品構成は基本セット3両と増結セット4両となり、共に同一価格の10,395円。フル編成なら20,790円である。
製品の詳細はアーカイブ(別窓)も参考にしてほしい。
プロトタイプはJR東海所有のT4編成となる。最初に発売された時点(2002年12月)では、T5編成はまだ登場していなかったので当然なんだけど。
今回のリニューアルと同時期にレールやコントローラもセットになったスターターセットも用意されているが、営業用車両ではない事業用車としては、異例のメジャーっぷりであることがわかる。
基本セット+増結セットでブックケースに収まる。車両は1両づつビニールで包まれていた。
前面窓など共用しているパーツがあるため、全体的な形状は700系とほとんど同じといってよいだろう(700系記事も参照)。というか、トミックスの700系関連はドクターイエローが一番最初なので、「ひかりレールスター」やB編成の方が「ほとんど同じ」といった方が正しいのだが。
700系もそうだが、実車の形状を的確に表現できており、ドクターイエローとして不満を感じる人はほとんどいないんじゃないだろうか。
そして、模型をケースから取り出して第一に思ったのが塗装が非常に良いということ。ベースの黄色も青帯もよく発色しているし、青帯のカスレもほとんどない(筆者の個体では7号車海側の乗務員扉のモールドにわずかに色が乗ってなかっただけ)。そして、トミックスにしては珍しく光沢感がある。実車もかなりの光沢を感じるから、これはポイントが高い。リニューアル前の製品も同様の発色・光沢なのかはわからないが、今回の製品は個人的にとても気に入った。
一方、床下は完全な艶消しとなっている。個人的には床下は半光沢くらいが好みだが、光沢感のあるボディに対してコントラストになっているし、これはこれで問題ない。
700系との大きな違いは、ヘッドライト下にある検測車ならではの四角い窓。内部にはカメラなどが設置されているが、模型でも簡単なモールドながら表現されている。
前面窓は700系ひかりレールスター(写真右)、B編成と共通。窓枠・ワイパーともに印刷表現となるが、JR東海車とJR西日本車でワイパーの形状が異なる点もきちんと再現。ちなみに、JR西日本所有のT5編成はJR東海タイプのワイパーが採用されている。
先頭部にあるセンサーは非常に小さく単に穴があいているだけだが、実車(下)と比べても位置(海側と山側で異なる)・形状ともに的確に表現できている。ただ、青帯は印刷なので断面の塗り残しだけはどうにもならなかったようだ。作業するには細かすぎるが、断面を黒などで塗装できれば改善されるだろう。
唯一残念なのが(「ひかりレールスター」もそうだが)、ノーズ側面から後方にかけてのパーティングライン(金型の分割線)が結構目立つこと。こんなのボディを新規製作しない限り解決しないとは思うが、ユーザが簡単に修正できるレベルのものではないし・・・全体的な形状は非常に素晴らしいだけに惜しい。
今回はプロトタイプが決まっているから、形式番号は印刷済みである。印刷品質はカスレなどは特になかったが、実車より文字が太くぼやけた感じがあり、まあツッコミは野暮かもしれないが「1」のフォントも異なっている。
ただ、文字の太さは小さい模型の中で適度に目立たせるためのものと解釈できるし、このように拡大撮影しなければ、普通に見る分には問題ないように思う。
形式番号のほか、JRマーク・号車番号は印刷済み。屋根上の号車番号は旧製品では印刷済みだったようだが、今回は印刷がなくなりインレタ収録となったので、その表現にはユーザが施工する必要がある。一方、今回の製品から窓ガラスなど貼る「T4」の編成番号もインレタに収録されており、全て施工すれば旧製品よりも見栄えするだろう。
ドクターイエローならではの2連パンタも的確に表現されている。パンタグラフ自体は700系と同じパーツである。
パンタを搭載するのは2・6号車で、模型ではパンタ、カバーともに共通のパーツとなっているが、実車(上が2号車、下が6号車)には差異がある。
まずは黄○。2号車にはパンタカバー上面にスリット状の磨耗測定器やセンサーがあるが、6号車にはない。赤○は2号車には傾斜したガイシと対になるガイシがあるが、6号車は傾斜したガイシのみしかないことを示している。
模型ではセンサーの表現がない点は6号車、ガイシがある点は2号車を折衷したような感じである。
パンタ車の隣の車両にあるパンタ観測ドーム。きちんとガラスパーツが入っていて車内も見える。ただし、実車にあるワイパーは省略されている。
今回のリニューアルで4号車の屋根上が白に変更された。これは実車が2006年に行った変更に合わせたものであるが、上から見ることが多い模型では、黄色のままの高圧線とケーブルヘッドが結果的によいアクセントになっている。
滑り止めは他の同社製品のように未塗装モールド表現なのであまり目立たないが、検電アンテナ等が白で表現されているため白・黄・グレーの鮮やかなコントラストを見せてくれる。最近の新幹線車両の屋根上は機器類が少なくシンプルであることが多いが、さすがはドクターイエロー、検測車ならではの賑やかさだ。
ただし、一つだけ残念な点がある。
2号車の屋根上は700系などと同様、パンタカバーから伸びた高圧線が妻面に引き込まれているのだけど・・・
なぜか、模型では高圧線の表現が全くない。同じパンタ車の6号車も高圧線がないが、そちらは正解。
ドクターイエローは全号車専用ボディなので(6号車を反転させたりとかではない)、高圧線の省略は不可解だ。
今回扱っているのはリニューアル品だが、ボディは旧製品から変わっていないはずだから、発売当初から高圧線の表現がなかったことになる。実車は2000年10月登場で、模型の最初の発売が2002年12月。初期には高圧線がなくて、模型の発売後に増設された・・・という可能性もあるので断定できないが(何しろ資料がない・・・でも、ある程度完成された700系ベースの車両で、高圧線の増設はありえるのか)、どうも表現し忘れ=エラーの可能性が高いような気がする。
この点が修正される可能性はゼロに等しいだろう。というか、リニューアルしたばかりなので、修正されるにしても数年先の話になると思う。細かいといえば細かいので妥協するのが一番いいような気もするが、全体的に完成度が高い製品だけに、惜しいというか、もったいないというか。
今回のリニューアルで通電カプラー化されたが、元々改良型フックリングカプラーの製品だったので一定レベルの見た目は確保されており、可動幌パーツは旧製品と同じものが引き続き採用されている。
ドクターイエローには「車端ギリギリの窓」がないため(幅広ドアゆえに車端からそれなりに余裕がある)、トミックスのリニューアルでは定番の車端部の窓ガラス追加は特に行われていない。
注目は車端の床下もきちんと表現されていること。700系では省略されてしまった、汚物タンクの排水口やハッチ、ドアへのステップなどがモールドされている。
同社の700系(レールスターとB編成)はJR西日本車なので床下はそもそも共用できず、専用(JR東海タイプ)の床下になっている。製品内での共用は3・5号車のみで、2号車は動力車なのでパーツを共用しているわけではないが、見た目は2・6号車も同じである。1・4・7号車は専用の床下パーツとなっている。
実車の写真と比較してみたところ、6号車博多寄り車端のみが異なっていた(上の写真、ドアがないのにステップの表現がある)。6号車の床下は専用のはずだが、なぜか2号車と全く同じパターンになっており、少々惜しい。逆にいえば実車と異なるのはその点だけで、全体的な再現度はかなり高いと言えるだろう。
一番上が先頭車先頭部、中段が中間部、一番下が4号車の検測台車。7両編成で3種類の台車を用意しているという、なかなか贅沢な構成である。
先頭部は狭い台車カバーに干渉しないように台車両側の軸バネが省略されているが、中間部はきちんと表現するなど作り分けている(カトーの700系と同じ手法)。
このドクターイエロー、下周りに関しては相当こだわっているといえそうだ。
N700系(16両編成)も、このくらいこだわりを見せてくれればね・・・ブツブツ
左から3〜6号車の室内表現となるが、動力車の2号車も含めて中間車はなんと各車両で作り分けている。ドクターイエローは窓が少なくて車内が見づらいが、こんなところまできちんと作ってあるのはすごい。何の装置や機器類を表現しているのかはさっぱりわかりませんが(苦笑)。
7号車(東京寄り先頭車)は700系と同じ設備の添乗員スペース(見学とかに使う?)が用意されていて、模型では「ひかりレールスター」の自由席と同じパーツが使われている。色もこの車両だけ、座席生地色のブルーで表現されている。添乗員スペースは1両すべてを覆い尽くしているわけではないが、窓から見える範囲ということならこれで問題ないだろう。
しかし、1号車の座席は窓との位置も微妙だし、色もグレーのまま。というか、1号車には添乗員スペースはないので座席の表現自体がおかしい。中間車でこだわりを見せる一方、1号車だけは7号車と同じパーツでお茶を濁してしまったようだ。
実車は通常ブラインドを下していて車内が見えないから、マスキングテープとかでブラインドを模して、車内を隠ぺいしてしまう方がリアルかもしれない。せっかく室内が作り込んでいるから、室内灯を組み込んだ場合などはもったいないが・・・
くどいようだが安易な分解はしないようにしてほしい。特にドクターイエローは可動幌を持つ製品にしては、通常の室内灯取り付けすら躊躇するほど分解・組み立てしづらいと思ったので。
ヘッドライトは700系の4灯に対し6灯となっていて(カメラ用ではないだろうか)、外側の2灯はHIDなので白く光るのだが、模型では6灯すべて同じ色で光る。光源も旧製品と同じ黄色LEDであり、電球色LEDの採用はない。テールライトは実車同様、カメラ用窓の内側で光るようになっている。
ヘッドライト・テールライトともに、光量は十分にある。お互いのプリズムに若干光が移ってしまっているが、明るい場所なら問題ないだろう。その他の隙間から光が漏れているようなこともない。
左が博多寄り。
動力車となるが、編成全体からすると位置が偏っているようだ。
先頭形状をはじめ、検測車ならではの屋根上の賑やかさ、床下などの再現度は非常に高いし、なにしろ塗装が良いと思った。一方で、古い製品ゆえに生産工程上の粗(先頭部のパーティングライン等)もあるが、全体的にハイレベルな製品といえる。トミックスのドクターイエローはリニューアル版で初めて買ったのだけど、個人的にはけっこう気に入った。
一方で、屋根上には残念な部分も見られた。パンタ周辺のパーツ共用はともかく、2号車の高圧線の件は本当に惜しい。一応ユーザ側でできる対策(工作)をコラムで後述したので、参考になるかはともかく、不満のある方は読んでみてほしい。
今回のリニューアルは主にカプラーや動力、集電に関する部分が中心で、見た目に関するものは少ない。大部分が旧製品からのキャリーオーバーで済んでいるわけだが、10年近く前の段階でなかなかの完成度を持っていたと言えるだろう。その上で、今回は動力や集電といった走行関係が改良されたほか、インレタによる細かい表記類が再現できるなど、元々良い製品がさらに魅力を増したんじゃないだろうか。
ドクターイエローの模型に興味がある、もしくは欲しいということであれば、入手を検討されてみてはいかがだろうか。7両編成と手軽ながら、レンタルレイアウトなどではかなり目立つと思うので、走らせても楽しいと思う。700系やN700系と並べれば、独特のイエローがより際立つこと間違いなしだ。 また、カトーのT5編成(JR西日本車)と並べるもの面白そうだ。
2号車の高圧線の件、模型の全体的な完成度が高いだけにちょっともどかしい。といっても、メーカーがフォローする可能性は非常に低い。そこで、自分で何とかできないかと足掻いてみたので紹介する。なるべく本体や塗装に影響がない方法でやってみた。
最初に考えたのは同社の700系B編成3号車車端から、「おゆまるコピー(E2系のコクピット再現で採用)」で高圧線を移植するというアイデアだったが、見ての通りかなり細いのと、TSカプラーと可動幌という妻面の違いなどから、相当難しいことは見ただけでも想像できてしまう。
未塗装のキットなんかだと、パンタ周辺の配管を移植したりするのにおゆまるコピーは有効だと思うけど、今回は相手が塗装済みの完成品なので断念。
そこで、市販の半円プラ棒を使う方法を試してみた。
プラ材料メーカー「エバーグリーン」の半円は最細は1.0mmまでなので、今回は「プラストラクト」の半円プラ棒、最細の0.8mmを使用する。タムタムとかボークスとか、大きな模型店などで購入できる(在庫がないこともある)。
模型にモールドされている高圧線と比較してみると・・・ちょっと太いくらいでかなり近い。これならイケそうだ。
高さは若干低いようだがこちらも大差なく、特に問題はなさそう。このプラ棒を、2号車のパンタカバーから車端までの長さに切断し、黄色で塗装して屋根上に取り付ければ・・・
実車の高圧線は先の700系の画像のように妻面に引き込まれるので、車端でストンと終わらせるのは物足りない気がするが、カトーの700系はこんな感じだし、一応許容範囲ではないだろうか。
高圧線がモールドされている3号車並べても、こうして見る限りは浮いた感じもないし、悪くないんじゃないかな。
取り付けは両面テープで貼り付けた。0.5mmくらいに切らなきゃならないし、まっすぐ貼る必要があるので簡単ではないが、太さを考えると接着でははみ出しの心配があるし、なにより車体(塗装)に影響する。失敗時のやり直しや、可逆性なども考えると、やはり両面テープが無難だろう。
今回使用した黄色はあてずっぽうで選んだタミヤ「クロームイエロー」のスプレー缶だが、車体色からするとやや赤味があるようだ。模型・プラモ用の黄色はたくさんあるので、もっと近い色があるかもしれないが、今回はこれで妥協した。なお、光沢感はちょうどよい具合で申し分ない。
少し手間かけて、同じプラ棒で妻面への引き込みを表現してみた。このプラ棒は加工性がいいというか、針金みたいに曲がるので、特に加熱しなくても写真のように曲げるのは容易。逆にいうと歪みやすいので、直線をきちんと出すには注意を要する。
そんなわけで、現物合わせで写真のようにプラ棒を曲げていき(妻面は可動幌の直上でカットするのがポイント)、塗装して実装。
「赤味のある黄色」がちょっとわかってしまうけど・・・
実車にある車体との押さえ金具は省略されてしまうが、素人の工作にしてはなかなかいいんじゃないだろうか?
このプラ棒を短く切って、つや消し黒などで塗装してやれば、同じような手法で車端部を渡る高圧線のケーブルも表現できる。
ドクターイエローの黄色い車体に、黒が良いアクセントになっていると思う。一応、ケーブルのたわみも再現してみたつもり(山側に振る)。
6号車のパンタカバーからは2本のケーブルが出ているのでそれも再現してみた。ここだけたわみを海側に振るのがミソ。
車体からケーブルがはみ出ているけど、このくらいの長さならS字カーブでも接触することはないし、一応ケースのウレタンにも干渉しない。ただ、廃車時に見られるケーブル切断のようで、ちょっと切ない(?)気もする。
さて、実車と比べると・・・うーん・・・ビミョー(苦笑)。
車体からのはみ出しも含めて成功しているとは言い難いか。カトーのようにまっすぐ表現したり、トミックスのように省略したりというのは、それなりに合理性があるのかもしれない。「過ぎたるは及ばざるがごとし」。
逆にいえば、車端で止めておくとか、下手に曲げずに直線にしておけば、それなりの見栄えを確保できるような気がする。ドクターイエローに限らず、トミックスはジョイントから車端までケーブルが省略されているので、施してやると効果的かもしれない。
筆者の腕では紹介した程度のものが限界だが、塗装も精度も、腕のいい人がやればもっと良くなるはずだ。特に黄色のチョイスは、かなりの余地が残されていると思う。
高圧線がなくても気にならない、という人はそれで妥協しても全く問題ないと思う。しかし、少しでも気になるという方は(筆者が黙ってればよかったかも?^^;)、ぜひチャレンジしてみてはいかがだろうか。
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