実車について |
模型の概要&製品ラインナップ |
比較レビュー1 序・先頭形状・車体各部表現 |
比較レビュー2 屋根上・パンタ周辺 |
比較レビュー3 塗装・灯火類・室内 |
比較レビュー4 床下・連結部分・ギミック |
比較レビュー5 全形式比較 |
比較レビュー6 収納性・付属品 |
比較レビュー7 総評 |
トミックス 500系7000番台(V編成)「こだま」レビュー |
2012年2月、トミックスから山陽新幹線「こだま」で活躍している500系V編成が発売された。製品構成は以下の通り。
引退した0系と入れ替わるように実車が営業運転を始めたのは2008年12月(V編成化完了は2010年6月)。模型化までの期間が早いか遅いかは判断に迷うが、500系はもともと製品が存在し、V編成化されても外観上は大きな変化はなく製品化のハードルは低いと思っていたから、個人的にはもっと早く発売されると思っていた。正直なところ、やっと発売されたという印象だ。
かつてのスター500系も、「こだま」化された後はマイナー車になってしまったということか。まあ、山陽新幹線限定になってしまったから、地域によっては(筆者にとっても)見るだけでも大変になったことは確かだけど。また、時期的にE5系やN700系S・R編成の話題が大きく、メーカーのリソースがそちらに割かれてしまったなどの事情もありそうだ。
V編成の製品化は今のところトミックスだけで、カトーには動きはないようだ。
8両フル編成が1セットで発売。全車ブックケースに収まる。
基本的な製品仕様はW編成と同じなので、ぱっと見には区別はつかない。
製品仕様は既存のW編成(16両編成)と基本的には同じだが、V編成化で見た目が変化した部分を新規製作して対応、その上で通電カプラー化するなど、近年のトミックスお得意の製品化手法が採り入れられている。
したがって、製品の基本的な解説はこれまでのW編成のレビューに譲り、今回は変化点を主に紹介・レビューする。
変化点を表にまとめてみた。「旧号車」はW編成のもの。
号車 | 旧号車 | ボディ | 屋根 | 床下 | 備考 |
1 | 1 | 変更なし | 変更なし | 変更なし | |
2 | 2 | 変更なし | 新規製作 | 変更なし | パンタグラフも新規製作 |
3 | 3 | 新規製作 | 変更なし | 新規製作 | |
4 | 4 | 変更なし | 8・9号車用流用 | 変更なし | |
5 | 13 | 変更なし | 8・9号車用流用 | 変更なし | 動力車 |
6 | 10 | 新規製作 | 変更なし | 変更なし | 乗務員室窓サッシ表現追加 |
7 | 11 | 新規製作 | 新規製作 | 新規製作 | パンタグラフも新規製作 |
8 | 16 | 変更なし | 変更なし | 変更なし |
W編成の該当号車を基準に、見た目に変化がない個所はそのまま、変化があった個所(主にボディ・屋根板)を新規制作して置き換えという製品手法であることがわかる。例えば、両先頭車は実車においてもW編成から見た目の変化はないから、全体的にそのままというように。
そして、後述するが今回は床下も新規制作されていることが特筆される。以下詳細をチェックしてみよう。
V編成化の際に喫煙ルームが設置されたことにより、窓が埋められるなど外観上変化がある号車のボディが新規制作されており、具体的には3・6・7号車が該当する。従来からのボディと違和感がないよう、当然ながら仕様は揃えられており、行先表示機なども凹モールドのままになっている。
3号車は博多寄りに喫煙ルームが設置されたため、窓が2個所埋められている。同時に座席表示機も移設。
7号車(旧11号車)も喫煙ルーム設置により、窓埋めと座席表示機の移設が行われている。今回新規制作されたボディは、ドア点検ハッチのモールドが少し濃くなったようだ。
6号車(旧10号車)は普通車(指定席)化改造により、客用窓上部に座席表示機を新設。細かい部分だが、このためにボディを新規制作しているというのはエライ。
6号車の乗務員室窓にはサッシのモールドと銀色が追加された。写真は山側だが海側も同様。限定品「さよならのぞみ」セットですでに実現している仕様だが、同セットはW1編成だったので銀色ではなくボディ色で塗装されていた。
V編成化で外観が大きく変化したのが、特徴的な翼型パンタグラフからシングルアームパンタに変わり、パンタカバーも形状が変更された点。上から見ることが多い模型では見どころになる個所であり、必要なパーツは新規制作で対応している。
2・7号車(写真は2号車)はパンタグラフや検電アンテナの設置などで大きく変化しており、唯一屋根板を新規制作している。滑り止めがモールド表現の未塗装なのは従来と同じ。
W編成時代はパンタカバー内にあった検電アンテナは、2・7号車に設置され露出するようになった。アンテナの根元にあるモールドは実車にもあり、忠実に再現されている
実車のアンテナ周辺。
V編成の特徴である角ばったパンタカバー。分割線なども忠実に再現されている。W編成と異なり屋根板とは別パーツになっているので後付け感があるが、実車も改造ゆえの後付け感があるのでむしろ好ましいと思う。
シングルアームパンタは実車においても新設計のもので、700系などに搭載されたものとは異なる。模型でも当然、新規制作されたパーツが奢られている。
W編成では台座も含めてグレー1色だったが、今回は台座が実車と同様にブルーになった。これでガイシが白なら完璧だったんだけど(自分で塗るか・・・)。
注目はカバー側面にきちんと穴があいていること。凹モールドで済まされることが多い個所だけに、小さいNゲージとはいえこの効果は大きい。ちなみに、他に穴があいている例はマイクロエースの200系くらいである。
上が2・3号車、下が6・7号車間となるが、パンタカバーから伸びたケーブル(従来通り車端までは省略されてしまっているが)の本数に注目。2・7号車で本数が異なる=パンタカバーを作り分けているのだ。写真は省略したがカバー内の機器・配管の差異も作り分けており、非常に細かい部分までこだわっている。
実車の2号車(上)と7号車(下)の車端部。ケーブル本数の違いがわかると思う。対する3・6号車のジョイントは大型タイプとなるが、これはW編成同様、別パーツを取り付けて表現できる。
こうして解説に画像を使えると、広島まで行って炎天下で撮った甲斐があったなと(w。
編成の中心にあたる4・5号車間には傾斜型ケーブルヘッドが設置された。従来ケーブルヘッドがあった8・9号車から移植したものだと思うが、模型も8・9号車の屋根板を流用して表現。
従来通り、ガイシパーツは付属している別パーツを取り付ける必要がある。
5号車はパンタがあった13号車が種車だが、V編成化でパンタを撤去している。ご覧の通り撤去跡目立つが、さすがにその表現はない。美しいものではないので好みが分かれるだろうし、編成ごとの個体差もあるのでやむを得ないか。
意外だったのが、今回は一部の床下が新規制作されたことだ。W編成の床下の記事も参照いただけると助かる。
3・7号車(写真は3号車)向けに、新たに床下が制作されている。W編成の記事でいう「パターンC」というやつで、W編成ではカトーにしかなかったので、トミックスW編成の3・11(現7号車)号車の床下は「パターンD」で代用されていた。
カトーのパターンCおよび、実車のW編成山側を見ると、車体床下中央部に山側では唯一のダクトが存在するのだが、今回のトミックスV編成には存在しない。エラーかと思って自分で撮ってきた写真(3号車)と比べると、実車にも山側のダクトはなく、どうやらV編成化の際に埋めた(カバー交換)されたようだ。
海側もV編成では小さなダクトが追加されており、厳密にはW編成のパターンCとは異なる。V編成化の際に機器の配置換えもあったそうなので、床下カバーに小変更があってもおかしくはない。
モールド表現は従来通りあっさりしすぎな点は変わっていないが、パターンに関しては代用はないに等しく、V編成の床下を忠実に再現しているといえる。唯一6号車の車端のみが実車と異なるが、種車のW編成10号車にもあったわずかな差異なので、全体的な再現度は相当高いと言えるだろう。
失礼ながら、床下代用と言えばトミックスの十八番だと思っていたし、特にアナウンスもなかったし、普通にパターンDで代用するものと思っていたので、床下に関してはノーマークだった。「3号車と7号車は相変わらず代用である・・・」とドヤ顔で書くつもりでいただけに、実際にモノを見てビックリ。嬉しい誤算である。
塗装はW編成と色調・光沢共にほぼ同じ(筆者には見分けがつかなかった)。元々塗装に問題があったわけではないし、W編成と並べたりすることを考えると、変わってないのは正解だろう。
印刷済み個所はおおよそW編成に準じており、JRマーク、号車番号は印刷済み、形式番号や編成番号はインレタ表現となる。V編成は全車禁煙(喫煙ルームは設置)になったので、禁煙車マークも印刷済みにしたのはよい判断。また、7号車の車椅子対応マークも印刷済みである。
付属のインレタは(拡大画像はなし)、前述の通り印刷済みになった禁煙車マークがなくなったくらいで、基本的にはW編成時代の内容を踏襲。ただ、「付録」と称された注意喚起表記はマニアックすぎたのか姿を消した。
収録編成はV2・3・5・6・8編成で、実車の在籍数が8編成と考えると収録率は高いといえる。ただし、V2編成にすると先頭部側面のセンサー窓(通称ホクロ)が収録されていないので、中途半端になってしまう。
ほい、V2編成ホクロの証拠。
W編成のインレタでは前身となるW2編成が収録されていたが、同時に収録されていたホクロは「W1編成用」と説明されていた(W1編成も収録)。うーん、もしかしてトミックスの中の人はV2(W2)編成にホクロがあるのを知らない?
V2編成に仕立てるなら、W編成のインレタを流用するしかなさそうだ(持ってるなら問題ないけど)。
W編成では少し前下がり気味だった、先頭部側面にある「JR500」のロゴは少し改善された気がする。「WEST JAPAN」の文字も安定しているように思う。
ただし、乗務員室扉の窓の高さを基準に比べると、模型のV編成は位置が若干高くなったようだ。
ヘッドライトは「さよならのぞみ」セットで採用された電球色LEDではなく、従来と同じ黄色LEDのままでちょっと残念。内部構造に変化はなく、光り方もまったく同じ。
近年のトミックス製品ではおなじみの通電カプラー。500系「さよならのぞみ」セットや、N700系のS・R編成で採用されているものと同じである。もともと「改良型フックリングカプラー」の製品なので、可動幌パーツは従来のものから変化していない。車端部の窓ガラスはもちろん入っている。
トミックスの山陽新幹線の模型(レールスター、N700系S・R編成など)は動力車が2号車に設定され、編成全体で偏っていることが多かったが、当製品は5号車と編成中心に近い位置に設定されている。両数は当然1両である。
他の製品は基本セット+増結セットという構成なので、基本セットにパンタ車を入れる必要があるから動力車の位置が偏ってしまうが、当製品にはそうしたしがらみがない。また、従来の動力車の床下をそのまま使う関係上、実車と相違ないパターンになるのは5号車のみであり、見た目にも編成間のバランス的にもよい結果となった。
動力車が2号車にあっても、正直なところ走行にはほとんど影響はないが、編成中心に近い位置にあるのは気分的になんか安心。
左が博多寄り。
動力車となる。
カトーもそうだが、500系はボディと屋根板が別パーツになっているので、模型の「V編成化」も比較的容易だったのかもしれない。W編成を製品化した当初は、500系が短編成化され「こだま」専用車になるなんて想定していなかっただろうから、先見の明があったとは言えないかもしれないが、結果的にはその設計を効果的に活用しているといえるだろう。
必要な個所はボディ・屋根だけではなく床下まで新規制作しているうえに、大部分の人は気付かないような個所=流用でも誤魔化せそうな個所までキチンと作り分けているなど、地味ながら非常にいい仕事している製品だと思った。500系は元の製品(W編成)がそこそこ古いとはいえ、それなりに手を加えると現在でも余裕でイケるクオリティを持っているのだと、改めて思い知らされた。
せっかく新しい床下を作ったことだし、今度はW編成のリニューアルも期待したい。単品があるセット構成も見直して・・・
8両編成と短くなった500系はらしくないとの批判もあるが、V編成に乗車経験がある筆者に言わせれば、現在の「こだま」仕様もそれはそれで魅力があると思う。16両編成の迫力は何物にも代えがたいが、模型で楽しむにはコスト的にもスペース的にもハードルが高いことは確かだ。その点、8両編成といえども500系をそれなりの迫力でお手軽に楽しめる当製品は、非常にバランスがよい製品だと思った。
2015年1月、当ページで紹介した500系V編成「こだま」のバリエーション製品2種が限定品で発売された。
いずれも通常品と同様、8両フル編成を1セットで構成している。
実車の時点で外観上はラッピングがあるかないかの違いしかないので、模型も500系V編成「こだま」にラッピングの印刷を追加しただけの製品といってよい。筆者は両製品とも購入していないため、2014年9月の全日本模型ホビーショーで公開された試作品をコラムとして簡単に紹介することにとどめる。
「プラレールカー」は1号車の車内を改造しプラレールのジオラマを設置、2014年7月から運転されている。
実車同様、1号車の車端に「プラレールカー」マークが印刷してあるがそれ以外は通常品とほとんど同じで、公式でも言及しているが室内の再現もない。充当編成であるV2編成の車番のほか、同編成の特徴である先頭車のホクロが印刷済みとなっている。
また、2号車は博多寄りに荷物置き場が設定された関係で一部窓埋め(おそらくラッピング貼り付けのみ)されているが、模型もその部分を塗装で表現している(写真左上に写っているのがそれ)。
「カンセンジャーラッピング」は2013年に運転されていたV8編成ではなく、2014年4月から運転されているV3編成がプロトタイプとなる。
ラッピングは1・7・8号車に印刷されている。車番もV3編成のものが印刷済み。
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