実車について |
模型の概要&アーカイブ |
比較レビュー1 先頭形状・各部表現・屋根上 |
比較レビュー2 塗装印刷・灯火類・床下・連結部 |
比較レビュー3 全形式比較・総評 |
E6系「スーパーこまち」の模型は2013年3月にカトー、2013年7月にトミックスから発売された。
カトー(奥)は実車の営業運転開始と同時発売、それから約4ヶ月後にトミックス(手前)が発売された。新幹線でトミックスの後追いは珍しいといえる。新幹線では初の鮮烈なレッド塗装は模型でも新鮮だ。
カトーは基本と増結の2セット構成で、増結セットのブックケースに全車両収納できる。
在来線に乗り入れる「ミニ新幹線」なので車体が短く余裕があるせいか、リレーラー収納スペースもある(ドクターイエローのときはなかった)。
車体を取り出しての第一印象は「小さい」。車体長はE3系と同等だが、屋根低さのおかげで本当にコンパクトに見える。
最近のカトーではおなじみの、基本セットに付属するリレーラー。相変わらず路面電車用だが、E6系は車体が短いので一応実用レベルである。E5系、ドクターイエローでは成型色が黄色だったが今回は変更されている。
カトーと同じく基本と増結の2セット構成で、それぞれに含まれる号車も全く同じ。当然、増結セットのブックケースに全車両収納できる点も同じだ。こちらはケース内に収納するような付属品はないが、一応スペースは確保されている。車両が左寄せなのがカトーと対照的で面白い。
限定品はフル編成の1セット構成で、最初からこの状態である。ケースのスリーブは特別デザインになっている。
プロトタイプはカトーがZ2編成、トミックスはZ4編成(付属インレタで変更可)、同社の限定品はZ3編成となる。実車ではZ7編成以降、パンタカバーや連結部外幌が変更されているが、模型はいずれもZ6編成以前の初期型となっている。
なお、今回紹介のトミックス製品は基本+増結セットの通常版で、数日後に発売された限定品は購入していない。もっとも、1セット構成であること、ケースのスリーブが特別デザインであること、Z3編成の車番が全車印刷済みであること、インレタの内容が異なる程度しか差はなく、今回のレビューの内容がそのまま当てはまると思われる。
カトーの製品構成は以下の通りだ。
品番 | 商品名 | 両数 | 商品形態 | 価格 |
10-1136 | E6系新幹線「スーパーこまち」 基本セット(3両) | 3 | 紙パック | 10,500 |
10-1137 | E6系新幹線「スーパーこまち」 増結セット(4両) | 4 | ブックケース | 7,600 |
トミックス通常品の製品構成は以下の通り。限定品は1セットであるだけで、価格は同じである。
品番 | 商品名 | 両数 | 商品形態 | 価格 |
92489 | JR E6系秋田新幹線(こまち) 基本セット | 3 | 紙パック | 10,800 |
92490 | JR E6系秋田新幹線(こまち) 増結セット | 4 | ブックケース | 11,200 |
東京寄り先頭車(E611形)をサンプルとした。
※今回のレビュー、赤に少々ノイズが出て汚く見える画像がありますがご了承ください(結構圧縮率低いのですが、Wikiによれば「jpegは赤と相性が悪い仕様」らしいです)。
どちらもスポーツカーのような塗装も相まって、E6系のイメージは十分出ているが、ヘッドライトの表現、運転席窓周辺の黒塗装の面積などに差があり、その印象は若干異なる。造形にも差があって、特にトミックスはノーズにかけての谷折り(?)のエッジがビシッと出ていて非常にシャープな印象。また、このラインは先端側でカトーは中央寄り、トミックスは外寄りに向かっている。
実車は・・・外寄りかな。ラインはトミックスの方が正確といえるが、エッジの強さはカトーの方が適正かもしれない。
E6系は両者(実車も)光沢が強いので、光線状態によって見え方がかなり変わる。上の写真はたまたまエッジが強く出る角度で撮影したが、場合によってはエッジがほとんど見えないこともあり、その意味では両者とも形状的な違和感はあまりない。
また、連結器カバー直後ある分割線(用途は不明、E5系にもある)については、カトーは表現、トミックスは省略している。
横から見た形状はどちらも概ね実車に沿っていると思うが、トミックスの方が若干鋭い印象がある。
後述するが、カトーはボディと床下が一体、トミックスは別体となっているので、後者は台車カバー前方あたりからの分割線が濃い。ただし、いいラインで分割している上に組み合わせ精度も悪くなく、普通に見る分には気にならないと思う。
この写真はあまりエッジが目立たず、極端に形状差を感じることはないようだ。前面窓はトミックスの方がやや黒の面積が大きい。後述するがノーズ部塗り分けの違いにより、トミックスは車体下部の白(飛雲ホワイト)が上方からでも認識できる。
どちらが実車に近いかはちょっと判断しにくいが、運転室後部の盛り上がり形状も若干異なり、カトーは短めで幅があり、トミックスはやや長めで鋭い。
前面窓はカトーは透明なガラスパーツ一体に黒塗装部分を表現しているのに対し、トミックスはガラスと窓枠のみ独立したパーツで、黒塗装は車体側に表現していて、なんとなく500系の設計思想の差を思わせる。
トミックスのライトガラスパーツは裏から取り付ける方式であることがわかるが、このパーツは超極薄なので、分解の時などは破損しないように注意。
前面窓の窓枠、ワイパーは印刷表現で、ワイパーは結構太さが異なる。スケール的にはトミックスが近いと思うが、模型として目立つのはカトーである。
前面窓のRはトミックスの方がきつく、黒の塗り分けも面積だけでなくラインも若干異なる。ただ、もともとテールライト部分のブラックアウトとか差が大きいわけで、あまり気にしなくていいかもしれない。
まあ、どちらが正しいのか、それと分かる上方からの写真がないんですけどね。日暮里じゃなく、王子(北とぴあ)で撮ってこないとダメかな。
運転室後部の信号炎管もきちんと表現している。カトーの方がモールドがハッキリしていて、位置的にも実車に近いと思う。トミックスはわずかに黒塗装から離れた位置にある。
カトーは屋根板が別パーツなので、ボディとの隙間(段差も少々)ができてしまっている。同社のE5系も別パーツながら、ボディとは色が異なっていたのでそれほど気にならなかったが、E6系では少々目立つ結果となってしまった。肩部の銀色塗装にも少し段差ができていて、精度感が少々欠けているようで残念。
一方、屋根が一体型のトミックスは非常に滑らかで、このへんも500系のそれに似ているかもしれない。ただ、トミックスはトミックスで銀色塗装ラインが少々安定していないのが気になる(後述)。
ここまで全体的によさげなトミックスだが、塗り分けのやや上にパーティングラインがあるのが残念。しかも(個体差あると思うが)、下段のように塗料が固まっているような個所や、重ね塗りみたいに色が濃くなっている(影に見えてしまう)個所があり、見る角度や光線状態で余計にエッジがあるように見える。
シャープな先頭形状も、正面から見るとイルカのような表情になるのも忠実。トミックスの方が前面窓周囲の黒塗装面積が大きいことがわかる。
こういうロングノーズの車両はフォーカス合わせが難しい・・・
スノープラウにフォーカスを当ててみる。カトーはE5系ではスノープラウ前のフィンが省略されていたが、E6系ではきちんと再現されている。後発のトミックスも同様だ。
中央のフィンを分割する曲線部に差があるが、実車を見ると両者の中間という感じで、カトーは狭く、トミックスは広い。
カトーの方がシャープで彫が深く、実車に近い印象。
フィンはどちらもモールドを工夫して表現しており、ヒレ状にはなっていないが見た目には問題ない。こうしてみても、カトーの方がシャープで彫が深いことがわかる。
カトーはE5系もこうしてほしかったと思うが、E6系よりもスノープラウとフィンの距離が近いので難しかったのかもしれない。トミックスははたしてどうなるか。
トミックスは窓ガラスにブラックアウトを施し、テールライトの「抜き」まで表現していて芸が細かいが、テールライト自体はその後方にあるので運転室内で光ってしまい、活かされておらず残念だ。とはいえ、消灯時でも見た目に相当効いているし、そのままテールライトが見えてしまっているカトーと比べたら、相当やっているといえるだろう。
また、トミックスはガラスが別パーツなので窓縁に光が反射しているが、実車がそうかどうかはともかくリッチに見える。
トミックスは標準状態では前面窓に編成番号(カトーの「Z2」)がないが、付属のインレタで表現できる。
E6系の特徴的で鋭いヘッドライト、両社はどう表現したか。
カトーはプリズムとライト表面が一体で、内部のカット(モールド)を工夫して単調にならないよう表現。プリズム自体は光源と直結していないため、上方から見ると黒い穴のようなものが見えることがある。
一方のトミックスは実車同様に4灯を表現しており、今回製品の白眉といえるだろう。形状やサイズ的にはやはり苦しく、写真では目じりがプリズム状になっているが、それでも普通に見る分には気になることはない。
どちらも形状的に破たんしておらず見事。トミックスはやや細めで、これも先頭部のシャープさに一役買っているかもしれない。
プリズム内部のカットだけでそれっぽく見せているカトーもかなり巧いし、発売当初は大したものだと思ったが、さすがにトミックスと比べるとキラキラ感が浮いてしまい、これまでの先頭部写真を見てもやや玩具的で、リアリティでは少々苦しいかもしれない。
実車はヘッドライトの内部までデザインされており、Nゲージサイズではどうなるかと思ったが、トミックスは正直ここまでやるとは思わなかった、というくらいハイレベル。カトーも頑張っていると思うが、今回は少々分が悪かったようだ。
トミックスは当初キラキラ感が足りないか?とも思ったが、実車でメッキ処理されているのはライトの周囲のみで内部は案外落ち着いており、妥当な線かもしれない。
先頭部の形状はデフォルメ傾向のカトー、実車に忠実なトミックスと「いつもの」感じだと思った。トミックスは精度的に少々惜しい点が見られたが、全体的なシャープさはかなりいい線いっていると思う。また、ヘッドライトの表現は特に抜きんでており、先頭部に関してはかなり見ごたえのある製品といえるだろう。
先頭部側面には乗務員扉くらいしかなくシンプルだが、全体的なモールドはカトーの方が濃く、出っ張り気味なドアノブが少々表現オーバーではあるが、遠目にも分かりやすい。両者ともそれぞれのメーカーでは標準的な表現方法となっている。ドアノブの銀色印刷はどちらも省略。
乗務員扉横の手すりやステップなどは概ね忠実だが、カトーは扉が縦に少々長い。サイズ的にはトミックスかなと思うが、実車では扉上部に銀色塗装が若干かかっている点を再現できているのはカトーで、うまいこと調整したのかもしれない。
乗務員扉の上の雨どい形状は位置的にノーズ流線型に含まれているから苦しそうだが、真横から見れば水平に近いので問題なしとしておきたい。ただし、トミックスは銀色塗り分けの途中にあり、位置的にはやはり少々半端な気がする。
実車。停車中のためステップが上がっている状態である。乗務員扉の窓枠に対し窓ガラスが前方にオフセットされているが、模型でも再現されている。ちなみに、試作車S12編成では窓枠が均等で、量産車との数少ない差異となっている(E5系の試作車と量産車にも同じ違いがみられる)。
11号車(先頭車)後位を見ても、モールドはカトーの方が彫が深くシャキッとしている。しかし、客用扉横のドア点検ハッチはトミックスの方が細かいなど、だいたい他形式製品でも見られる伝統的表現を踏襲している。
客用扉ステップの表現はカトーはザラザラモールド+ダークグレーだが、トミックスはダークグレー(ほぼ黒)を塗ってあるだけ。とはいえ、塗装がなかった同社の400系・E3系と比べたら引き締まったと思う。行先表示機はカトーは印刷済み、トミックスはガラス表現と異なるが、形状やサイズは後者の方が実車に近そうだ。
客用扉、客室窓、各種表記類の位置関係を見てみても、改めて模型に大きな問題はないといえるだろう。
細かいところだと、客用扉上部のエッジ(へこみ部分)には銀色がかかっているが、カトーはエッジよりも上に通っているので、この点はトミックスの方が忠実である。
12号車車端にある車掌室窓は、どちらもモールド+銀色印刷が入っていて大きな差異はない。雨どい形状も問題なし。ただし、室内側の問題でトミックスは向こう側が見えてしまっているので、カトーの方が車掌「室」な雰囲気が出ている。
E5系にもある車体中央部のハッチ(筆者の知識では用途不明)も再現されているが、ここでもカトーのモールドが濃いようだ。
ただし、サイズはトミックスの方が実車に近い感じ。モールドも節度感がある。
側面の窓ガラス(客用扉窓・客室窓)はトミックスはツライチに近いが、カトーはやや奥まり気味で状況によっては段差が少々目立つことがある。とはいえ、十分許容範囲ではある。
行先表示機はそもそも表現方法が異なるとはいえ、上部のわずかなRはカトーの方が出せてると思う。
いつも通りというか、だいたい他形式の製品と同じような差異であり、車体の各部表現は一長一短という感じである。
赤い塗装が眩しい屋根上には、どちらも黄色いラインを入れてアクセントとしている。トミックスがこの手のラインを入れるのは珍しいのだけど、さすがにE6系の屋根はそのままではシンプルすぎるという判断なのかもしれない。カトーはもともと入れていることが多く、例えばE5系にも黄色いラインが入っている。
カトーはE5系と同じく滑り止めのみならず、アルミ押し出し材の溶接ライン、さらに車端部ハッチ(?)の周囲のボルトもモールドしていてかなりリッチ。一方のトミックスは滑り止めしかなく、そのモールドも精密感に欠けあまり目立たないので、個人的には少々物足りないような気がした。実車も出場直後は滑り止めも溶接ラインも目立たないのは確かなんだけど。
前述の通り、カトーはボディ・屋根板は別体、トミックスは一体形となる
11・12号車間の黄色ラインはどちらも実車に忠実なものとなっている。カトーは黄色ラインに隙間があって(枠が独立しているというか)、トミックスは隙間なくつながっている感じだけど、実車を見るとトミックスの方がそれっぽい気がする。
16・17号車間。トミックスには16号車(左)に黄色い枠がないが・・・実車を見る限り正解のようで、逆にカトーはエラーとなってしまっている。筆者が撮ってきた動画を見る限り、量産車で16号車に黄色枠がある編成はなかった。
写真では分かりづらくて申し訳ないが、編成中2両あるパンタ車周辺の屋根はカトー・トミックス共に作り分けられていて、実車を忠実に再現している。防音壁が互い違いになっているのも実車通り。
E5系のような片持ち式のシングルアームパンタは、走行中は後位のパンタグラフを使用し前位は折りたたむ。
どちらもいい感じだが、トミックスは基底部下の赤い部分を別パーツで表現しているのはポイント高い。ガイシもトミックスの方が細かい。それにしても、パンタはさすがの大手2社で安定しており、しっかりリフトするので安心。マイクロエースの「East-i」では苦労させられたので・・・
パンタ基底部下に赤いカバーがあることがわかる。 ちなみにこのカバー、量産先行試作車(S12編成)には取り付けられていない。量産化改造の際に取り付ける可能性はあるが・・・
上方から見ても、基底部の形状に大きな差はなさそうだ。アームはトミックスの方が少々長い模様。
検電アンテナの形状には差があり、カトーは直線的だがトミックスは前後を絞っている。また、後者にはベース部分にボルトも表現されている。
実車を見る限り、トミックスに軍配が上がりそうだ。カトーはE5系の時点で直線的であり、E6も同じパーツを使用したのだと思うが、逆にいえばトミックスのE5系はE6系のパーツを使用する可能性が高く、E5系の実車も前後を絞った形状である以上(というか、実車の段階で共用なんでしょう)、アンテナに関しては引き続き優位に立ちそうだ。
E6系のパンタカバー(防音壁)は2種類あり、左の実車写真を見ても高さや大きさ、エッジの付き方に差があることがわかる。上段が16号車、下段が12号車でどちらも山側。海側はそれぞれ逆になる。なお、Z7編成以降では上段のタイプにフィンが付いている。
模型でもそれぞれ作り分けされており、取り付け位置も合っている。模型と実車の上下段はそれぞれ対応しているので参考にしてほしいが、エッジの付き方は、上段のタイプはカトーは狭すぎ、トミックスは広すぎ。下段のタイプはトミックスがちょうどよい、という感じだろうか。
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