●概要

N700系1000番台「N700A」の模型は2013年7月にカトー、2013年9月にトミックスから発売された。

N700A系レビュー01

N700系の改良型、「N700A」の模型はカトー(奥)が先行し、後にトミックス(手前)からも発売。どちらも発売前年に製品化発表されたものだが、ようやく出揃った。

N700A系レビュー02

カトーは基本セット(とスターターセット)が先行発売で、増結セットは約1カ月後に発売という非常に珍しい例となった。

この基本セットは従来型のN700系と異なり単品ケース入りではなく、発泡スチロールの簡易なものである。なお、4両セットということもあり今回はリレーラーは付属しない。


N700A系レビュー03

後に発売された4両増結セット、8両増結セットを合わせて16両フル編成となる。

2つのブックケースに16両を収納できるが、同社の他製品と同様に号車順に並び変えることはできない。筆者は比較的わかりやすいと思われる、片側に1・2・11〜16号車、片側に3〜10号車という方法で収納している。


N700A系レビュー04

トミックスは同社のN700系0番台(Z編成量産車)製品に準じたセット構成で、基本セットはZ0編成や3000番台(N編成)のようなスターター向けの紙パック仕様ではなく、ブックケースとなっている。

Z編成量産車は基本セットのウレタンの仕様上、号車順に並び変えることはできなかったようだが、今回製品はZ0編成・N編成と同様に号車順に並び変えることができるようになった。


今回紹介する製品は、基本的には両社それぞれの従来型N700系をベースとしたバリエーション製品である。カトーは連結方式が変わった関係でボディ・床下ともに新規製作しているものの、各部の表現は従来製品とほとんど変わらない。したがって、これまでのレビューの内容が大部分で通用することもあり、従来製品との差異がある部分を中心に紹介したい。

一部従来製品との比較も盛り込んだが、筆者はトミックスの0番台(Z編成量産車)を持っていないため、3000番台(N編成)を用いた。Z編成とはJRロゴの色違いだけなので特に問題ないと思う。

●先頭形状など

N700A系レビュー11

どちらも実車に合わせてヘッドライトの形状が変更された以外、従来製品と全く変わらない。まあ、実車も同じである以上、差があっては困るのだけど。

N700A系レビュー12

N700Aの特徴である、運転席窓あたりまで延長された青帯は当然のように再現。トミックスの方が先端が若干鋭いようだ。ヘッドライトも形状の差がわかる。どちらもボディが新規製作なんだけど(カトーは全車両、トミックスは両先頭車のみ)、各種ドアのモールドをはじめ、カトーは台車カバーの前方にあるボディ下部のちょっとした段差やパーティングラインが、トミックスはS・R編成では改善されていた扉下部の手かけの位置までもがそのままである。

インレタで表現できるトミックスはともかく、カトーは従来製品の時点でそうだったが、今回も先頭部側面は印刷(編成番号とかエンド表記とか)がなくシンプル。あと、台車カバー中心上にあるタンク状の空気ばね点検カバーの表現も変更されている(後述する)。

N700A系レビュー13

この角度だとヘッドライトの形状差が分かりにくい?カトーの方が鼻先の連結器カバーのモールドが濃いのも従来製品と同じ。運転席内の表現も変わらず。

カトーは今回も前面窓のサイドにスモークが施されていて、編成番号も印刷済み。従来製品はZ1編成だったが、今回はG3編成がプロトタイプとなる。トミックスは従来製品と同様に、付属のインレタで編成番号を表現できる。

N700A系レビュー14

カトーはプリズムのカットだけで立体感を再現したヘッドライトが相変わらず見事だが、N700Aではちょっとクリスタル(?)な感じになったので、ザラザラ感がある従来製品の方がリアリティがある。実車はN700・N700Aともにザラザラ。

トミックスはこの写真だと差があるように見えるが、従来製品ともども内部構造の表現はなく、ヘッドライトの表面までプリズム!というNゲージではよくある仕様のままである。

なお、カトーのN700Aはヘッドライト内側(写真左方)のラインが少し乱れているが、拡大撮影だからわかるというレベルのもので、普通に見る分には小さすぎて気にならない。これはトミックスの従来製品(こちらが外側)も同様だ。


N700A系レビュー15

ライト形状の違い。N700Aは目じりがつり上がった分、カトーは点灯部分がよく見えるようになった。実車もそんな理由で形状変更されたんだそうな。目じりのつり上げ具合はトミックスの方が強く曲線的で、それっぽく見えると思う。

それにしても、模型のヘッドライトは長さ6mm、幅1mm程度と相当細かいのに、改めてカトーの立体感は本当にすごいと思う。マクロ撮影で相当拡大しても全く破綻しない。


N700A系レビュー05

実車の違い。奥がN700A、手前が従来型。案外駅とかで見ても、意識しないとわからない差だったりする。内部の反射板を見ると、カトーはこれをきちんと再現していることがわかる。


●屋根上・パンタ

N700A系レビュー16

屋根上は滑り止め表現、アルミ押し出し材の溶接ラインの有無も含めて従来製品と全く同じ。パンタグラフおよび周辺も変更点はまったくない。もうちょっと書くネタがほしい(w。

N700A系レビュー17

実車のN700Aでは高圧線が屋根板と一体になったけど(実車編参照)、従来製品の時点で実車の「浮いている」ところまで表現していないので、ジョイントの形状等含めて変わらずである。写真は11号車で、大型ジョイントの再現有無もそのまま残っている。なお、屋根上の号車番号はカトーが印刷済み、トミックスがインレタ表現なのも同じ。

N700A系レビュー18

トミックスは先頭車のみ新規製作となるが、そのためか従来製品ではかなり細かいモールドだった滑り止め表現が、N700Aでは発売時期が近かったE6系のような粗いものに変更されている。

ついでに塗装について言及すると、カトー・トミックスそれぞれ従来製品よりも白さが増している。N700A同士であればトミックスの方が白い。光沢感はカトーは従来製品とあまり差はなく、従来製品の発売当時は相当強い光沢に思えたが、最近はさらに光沢のある製品が出ているので、今となっては普通に見えてしまう。トミックスは従来製品よりも光沢が強くなったが、極端に差が出ないようにしたのか「さよなら300系」やE6系ほどの光沢はない。


●印刷

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1号車後位を従来製品も含めて並べてみた。禁煙マークの位置がちょっとふらつき気味だが、実車と比べても各種表記類は特に問題ないように思う。

どちらもロゴを除けば従来製品と大きな差はないが、カトーはほとんど赤だったJRマークがオレンジ色になり改善され、形式番号は今回も印刷済みである。トミックスの形式番号はZ0編成が全車、N編成とZ編成量産車は基本セットのみ印刷済みだったが、今回は全車印刷がなくインレタでの対応となった。


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一番の注目点と思われる(?)「N700A」ロゴ比較。シャープさはトミックスの方が上だと思うが、グラデーション表現はドットが少々荒いし開始点もかなり上方にある。カトーは「A」下部の帯色→水色に変化する部分が少々ずれていたりするが、グラデーションの開始点やハイライトは実車に近いように思う。

「N700」ロゴの影はどちらも表現しているが、帯の明るさ関係でカトーの方が目立つ。「SHINKANSEN・・・」の文字はどちらも苦しそうながら、カトーの方が若干細かいかも。


N700A系レビュー21

グリーンマークや身障者マークで賑やかな9号車、11号車を並べてみる。カトーは先の1号車の写真では「A」内の白い部分がほとんどないことを考えると、安定感はトミックスの方がやや上手か。また、カトーは「A」の水色がやや明るいことが、いまひとつシャープさに欠けている理由かもしれない。ただ、やはりトミックスのグラデーションのハイライト部分は広すぎるように思う。

ところで、印刷とは関係ないのだけど、トミックスの今回製品は先頭車1・16号車が新規製作(ヘッドライト形状変更のため)、3・7・8・10・15号車はN編成製品化時に製作(Z0編成とは外観に差があるため)、その他はZ0編成からのキャリーオーバーという内訳になっている。客用扉横下にあるドア点検ハッチ、写真の9号車はカトーにあってトミックスにはなく、11号車はトミックスにあってカトーにはないという差があるが、Z0編成のボディを引き続き使っているからに他ならない(従来製品のレビューで書いたとおり、Z0編成と量産車ではハッチの位置が異なる)。

一方のカトーは連結方式の関係でボディがすべて新規製作となったが、従来製品がもともと量産車なのでハッチ位置や数などに変更は全くない(実車も変更なし)。ただ、ハッチのモールドは若干濃くなったようだ。四隅のボルトは相変わらず省略だが・・・

N700A系レビュー22

9・11号車の号車番号などを並べてみたが、カトーは従来製品よりも印刷がしっかり乗るようになったくらいで、両者クオリティには大きな変化はないようだ。

こんだけでかい画像なのに書くことないとか・・・


N700A系レビュー23

カトーは行先表示が印刷済みで、従来製品の博多行きに対し、N700Aは東京行きとなった。従来製品ではボディにただ印刷されていたが、N700Aではボディを新規製作したこともあり、E5系などと同様にやや窪みを付けた上での印刷となり地味に改善されている(座席表示も)。

また、従来製品が発売された当時のJRマークは1・8・16号車だけだったが、現在は全号車に貼られており、N700Aでは写真の12号車にもJRマークが追加されていることがわかる。なお、トミックスは0番台(Z編成量産車)で全号車JRマーク付きをすでに実現している。


かっぺ様より、N700Aでは行先表示・座席表示に窪みが付いているという情報をいただきました。情報提供、誠にありがとうございます。(2013/10/15)
N700A系レビュー08

トミックスは同社おなじみのインレタが付属する。内容的にはN編成やZ編成量産車製品に準じたもので、相変わらず各種表記が充実している。

収録編成はG2・5・6・7編成で、前述のとおりデフォルトの印刷はない。一部はカトーにも流用できると思うが、G3編成がないので先頭部側面や乗務員室扉窓の編成番号には残念ながら使えない(他製品から拾ってくればなんとか)。


従来製品ではかなり差が開いていたロゴ表現も、今回はカトーが一長一短レベル程度には肉薄してきていると思う。トミックスは試作品ではかなりロゴがショボかったで心配していたが、さすがに製品レベルのものになっていた。しかし、E6系もそうだったが、グラデーションの網がけドットが肉眼でもわかる程度に粗いのは少々気になる。N700Aはロゴが大きいからなおさらで、もう1色くらい使ってもよかった気がする。コスト的に厳しいのかもしれないけど、カトーの印刷が改善されてきていることも事実。うかうかしていると逆転されちゃうよ、と。

●灯火類

N700A系レビュー24

ヘッドライト・テールライトは内部構造に変更はなく、基本的には従来製品と変わらない。

N700A系レビュー25

両者ともN700Aの方が明るい。カトーはキラキラ感+プリズムの先端が光るようになったので従来製品よりもリアリティは少々後退した感があるが、走らせた場合に分かりやすくなったと思う。一応、片側2灯も表現できているしね。

トミックスは今回も片側2灯表現はないが、カトー以上に明るくなっているので、模型としての視認性はよいかもしれない。テールライトは変わらないから内部構造に変化があったとは考えにくく、ヘッドライト用LEDの光量が増えたのだろうか。


N700A系レビュー26

見る角度にもよるが、プリズム先端が光る傾向にあるのは相変わらずながら、トミックスN700Aは本当に明るい。小さいライトだが、明るい環境でも離れて見ても余裕で視認できるだろう。

カトーは内部構造の再現は相変わらず見事だが、個人的には従来製品の息をのむようなリアリティを推したい。こんなこと書くとまたカトーびいきだとか怒られそうだが(苦笑)、素直な感想だ。


●床下

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プレビューでは「従来製品と同じ」と書いてしまったが、カトーは床下を新規製作したついでにモールドも少々変更していて、具体的には左のダクト横にあるエアダムをやや拡大、右のダクト内に縦のモールドを追加している。また、16号車の車端にあったエラーも地味ながら修正されている。

一方のトミックスは左ダクトの逆凸形状を見ての通り、相変わらずZ0編成の流用となっている。N700A用に新規製作した床下もあることはあるが(後述する)、量産車の形状と混在させるわけにもいかず、それらもZ0編成と同じ形状で揃えられている。


N700A系レビュー28

写真はカトー12号車となるが、N700Aでは編成を通して横長のダクトが廃止されており、その点はカトー・トミックスともに忠実に再現している。


N700A系レビュー29

カトーの床下が新規製作であることがわかる図。N700AはDCCデコーダをセットする蓋のそばに、刻印が追加されている。


ここからは従来製品の床下レビューも参考にしてほしいが、大型ダクト間に小型や横長のダクトがないタイプの床下に着目してみた。カトーは従来製品の段階でダクトがない「パターンF」が存在しているが、パネル間隔がN700Aと異なっており、そもそも床下を作り直しているのでN700A用に新規製作したものを使用。トミックスはもともとダクトがない床下が存在しなかったため、やはりこのタイプを新規製作している。

パターン 画像
H N700A系レビュー30 N700A系レビュー31
I N700A系レビュー33
J N700A系レビュー32 N700A系レビュー34

従来製品からの続きで「H」から分類してみた。パターンHは中央部に狭幅ハッチが1つ、パターンIはハッチ2つで両方狭幅、パターンJはハッチ2つで左側が広幅となっている。なんと意外にも、このタイプに限ればトミックスの方がパターンが多いのだ。

号車 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
カトー A H C J(代) J D H J J(代) H(M) D J J(代) D H G
トミックス A H D(代) I J(M) D H I(代) I H D J(M) I D H G
実車 A H C I J D H J I H D J I D H G

実車は強引に模型基準で分類してみた。両先頭車用のパターンA・G、小型ダクトがあるパターンC(カトー3号車のみ)、パターンDは従来製品にあったものである。トミックスの3号車代用は従来製品の段階であったものだが、それ以外では8号車しか代用がない一方で、カトーは代用が3両。所詮目立たないハッチの差だし、トミックスはZ0編成ベースなので代用云々以前の問題かもしれないが、案外健闘しているのではないだろうか。

N700A系レビュー10

模型の台車カバーに触れる前に、実車を確認しておく。Z編成の最終増備車あたりから、台車カバー中心上にあるタンク状の空気ばね点検カバーが塗り分け(下段)からグレー1色(上段)となり、従来の編成にも順次波及している。N700Aはもちろん当初からグレー1色である。


N700A系レビュー35

カトーの台車カバーは従来製品と同じく、分割ラインが2本あるタイプで統一。従来製品ではボディと床下で点検カバーを分割し、初期の塗り分けタイプを再現していたのでどうなるかと思いきや、今回はボディ・床下がすべて新規製作だったことが幸いし(?)、グレー1色を問題なく再現してきた。

トミックスはやはりZ0編成の分割線がないタイプとなる。点検カバーについては当初よりグレー1色のタイプで、従来製品では間違っていたものがN700Aで正しいものになった。もっとも、従来型のN700系も1色塗りになりつつあるから、ようやく実車が模型に追いついた!?

トミックスの台車は相変わらず両端の軸バネが削られたもので、N編成の時に量産車用の台車を新規製作していたのだけど、今回はなぜか中央下部に何かの装置があるZ0編成の台車が使用されている。実車の写真を見る限り、N700Aの台車は量産車のタイプと同じだと思うが・・・


記事ボリュームからわかるように、個人的に今回の比較レビューで面白かったのは床下だった。といっても、カトーは新規製作とはいえ従来製品と大きく変わるところはあまりなく、改めて言及することは特にない。

トミックスの従来製品(N700系量産車)の床下は試作車Z0編成の流用で、当のZ0編成の時点で代用しまくり。他製品のレビューでも何度か書いているが、20〜30年前の床下だって平気で使いまわす。N700Aは従来型の床下とは異なるといっても、そんなメーカーが床下の新規製作することはあり得ず、実車と違っていようがなんだろうが、今回もZ0編成の床下流用だろうと思っていた。そして、2013年夏に見た試作品でZ0編成の床下流用を知り、カトーとはすでに勝負はついていて、こりゃもうフルボッコ状態だろうと。

実車のZ0編成ではダクトなし床下(パターンF)は10号車にしか使われておらず(2011年頃はその10号車もダクト付きになっていた)、パターンFが製作されなかったのは仕方がない面もあった。しかし、さすがのトミックスもN700Aでは間違いだらけになってしまうのは気になったのか、ダクトなしの床下を、しかも(1つは動力車用とはいえ)細かいハッチの違いまで新規で作り分けてきた。先頭車などはそのまま流用となれば、新規の床下でもダクト形状はZ0編成の形状に揃える必要があり、結果的には、Z0編成にも量産車にも存在しない架空の床下で対応したことになるが、それでも新規製作してくるとは、良い意味で裏切られた気がした。

そこを踏まえて評価すると、カトーは代用があるとはいえ、モールドや一部エラーが改善されていることもあり、従来製品で付けた(今となっては付け過ぎた気も・・・)99点で据え置き。一方のトミックスは50→60点くらいか。年収、じゃなくて、点数・・・低すぎ?確かに同社にしては新規製作でここまでやったのは頑張った方だ。それは認める。だが、基本的には相変わらずZ0編成の流用であること考えると、残念ながらこの点数が限界だ。

トミックスはN編成とZ編成量産車で、Z0編成の床下を丸々流用したツケが今回のN700Aで回ってきた気がする。これまでと同じように流用したら、実車と違いすぎる。完全に量産車仕様の床下を作ったら、従来製品はどうするって話になる。

ただ、Z0編成ベースの架空の床下といういささか中途半端な結論でも、少なくとも、同社が無関心だと思われた床下にジレンマを感じている?と垣間見れたのはちょっと嬉しかったし、今後に期待が持てる気もした。それに、ここまで書いておいてなんだけど、一般的にはそんなに気になるようなものでもないとフォローしておく。大まかなダクトの数や配置はN700Aに忠実なものになっているし、ダクトの形状違いも気にしなければそれまでだから。

●連結部

N700A系レビュー36

カトーの従来製品は実車の全周幌を模した複雑高等なカプラーを採用していたが、N700AではE5系、E6系、ドクターイエローと採用が続いているKATOダイアフラムカプラーに変更された。カプラーを兼ねた内幌が白いのは新鮮?

一方のトミックスは可動幌+フックリング式の通電カプラーであり、見た目も構造も従来製品と全く違いはない(なので画像も省略してしまった)。


N700A系レビュー38

カプラーが変更されての見た目は・・・ あーねー。予想できてたけど、まあそうなるよね。窓から全周幌は見えなくなったけど・・・

E5系やE6系は中間の黒いゴム部分が省略されただけな感じだったのでそれほど気にならなかったが、さすがにN700系では・・・外幌には蛇腹状のテクスチャもなく、残念ながらリアリティは大幅に失われてしまった。連結間隔も5mmとやや広くなっている。

もっとも、従来製品の全周幌カプラーは複雑で扱いが難しく、登場当時のカトーのサイトではトップページから連結方法についてのリンクを貼っていたくらいだったので、苦情や問い合わせがそれなりにあったと思われる。その後は改良されたと聞いているが、今回のN700Aで商品が大きく動くとなればトラウマ再びだろう。

N700A系レビュー09

しかし、カトーには全周幌を再現できる代替手段がなく、新開発や改良もハードルが高い。結果的には手堅くKATOダイアフラムカプラーとなり、見た目は大きく犠牲になってしまった。だが、この変更で使い勝手が大幅に向上したことも確かだ。

連結方式変更により見た目が劣化した例はトミックス800系があるけど、代替手段の有無で事情が異なることから、今回のは決して安易に変更されたものではないと判断する。


N700A系レビュー37

一方のトミックスはいつもの通電カプラー&可動幌で、見た目も使い勝手も従来製品とまったく変更はない。

●総評

当サイトはオープン時に、500系・700系・N700系・E2系のレビュー記事を用意していたのだけど、その中で最初に書いたのはN700系の記事。だから今見ると画像も小さいし、写真もイマイチ(現在が良くなったかは自信ないが・・・)、文章も書き直したい個所が大量にある状況なんだけど、N700Aで再びカトーvsトミックスの因縁の戦いを見て、1ページだけとはいえレビューを書きあげたのは個人的には感慨深かったりする。

冒頭で書いたとおり、模型自体はカトーもトミックスも、基本的には従来製品を元にしたバリエーションであるため、どちらもある意味安定している、こなれた仕様である。実車のN700Aが従来型と大きく変わらない以上、模型も大きく変わっては困るのだけど、カトーの連結方式を除けば側面ロゴ、ヘッドライトくらいしか違いがなく、今回はあまり書くことはなく終わってしまった(我ながら従来製品レビューで書き尽してしまった感がある)。

カトーは一時期、N700系(従来製品)の全周幌カプラー、東北新幹線系統のオープンノーズカプラーなど、他社よりも先進的なギミック満載でイケイケな感じだったが、ここへきて使い勝手よりも見た目を重視し過ぎたことのツケが回ってきたのか。最近のE5系、E6系、ドクターイエローなどと同様、N700Aでも堅実路線にシフトせざるを得なかった。一方のトミックスは、床下の項で書いたように、今回は珍しく(?)床下の新規製作をしたものの、従来製品で床下を流用し続けてきた結果、Z0編成の呪縛を断ち切ることはできなかった。どちらも方向性は違うとはいえ、改めて未来を見据えるのは難しいと感じさせられた製品でもあった。

とはいえ、カトーは「イケイケ」の従来製品からボディ・床下を一新してまで「初心者にもわかりやすい」路線に変更したものの、屋根上や床下など、従来製品で見せていた細かいこだわりはしっかり継承している。また、トミックスも従来の手堅いバランスの良さを継承しつつ、床下は意地を見せたと思う。その床下に問題アリといっても、ダクトの一部形状が異なる程度のものだ。最終判断は読者の皆様に委ねたいが、どちらも一応マニアにも納得できるセンは維持していると思った。

今回はプロトタイプが完全にかぶるので両方持つのは厳しいかもしれないが、従来製品でカトーが好きならカトー、トミックスが好きならトミックスを選べば間違いないと思う。両方買っても面白いけどね。N700系製品はかなりのラインナップがあるが(トミックスばかりだが・・・)、「A」ロゴが精悍な今回製品、さらに1本でも加えるだけの価値はあるのではないだろうか。


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