●実車の概要

E5系はJR東日本が所有し、東北・北海道新幹線で運用されている車両。200系、E2系といった汎用型の後継車両となる。量産先行試作車が2009年6月に登場、S11編成を名乗り各種試験を開始した。2010年末には量産車が登場し、2011年3月から東京〜新青森間の最速列車「はやぶさ」で営業運転を開始した。また、2016年春の北海道新幹線新函館開業に伴い、JR北海道がE5系の同形車「H5系」を導入し営業運転を開始した。

東北新幹線においてさらなる高速化を視野に入れた車両であり、360km/hでの営業運転を検証するために製作された、E954形高速試験車「Fastech360S」の技術が数多く反映されている(パンタグラフやブレーキディスクの締結方式など多数)。外観も2種類あった同車の先頭形状のうち、「アローライン」と呼ばれるタイプをより洗練させた形状が採用された。一方でE5系の最高速度はコストなどを検討した結果320km/hとなったため、E954形の特徴であった空気抵抗増加装置(エアブレーキ、通称「ネコミミ」)の搭載は見送られ、先頭部ノーズ長さも16mから15mに抑えられた。

その15mに及ぶ先頭部は、天狗の鼻のような長いノーズが特徴。近年の新幹線車両によくあるトンネル微気圧波対策を意識した形状である。ノーズ部と客室部は完全に分けられているため、先頭車の客室部はかなり小さいものとなった。ノーズ長さは同じながら、東海道新幹線準拠を意識せざるを得ず、ノーズ部にも苦労して客席を設置した500系とはコンセプトが異なることがわかる。

塗装は車体上部が「常盤グリーン」、下部が「飛雲ホワイト」、中央帯はE2系で使用している「つつじピンク」となった。従来の車両よりもE954形と似た塗装パターンとなったが、グリーンに「マジョーラ(見る角度により色が変わる塗料)」を使用していたE954形と比べると常識的な色調である。それでも光の変化で色調の変わりやすいグリーンとなっている。ヘッドライトなどの灯火類は400系やE2系のように運転室上部に配置されたため、E954形と比べてシンプルな顔立ちとなっている。

車内設備にも力が入れられ、特に航空機のファーストクラスを意識した、グリーン車よりも格上の「グランクラス」を導入。グリーン車も従来通り連結されているほか、普通車もシートピッチが拡大され、普通車初の可動式枕も装備するなどグレードアップが図られている。電源コンセント、フルカラーの車内表示機、防犯カメラといったアイテムも当然のように装備されている。

「はやぶさ」として営業運転を開始し、増備されるに従い「はやて」「やまびこ」「なすの」にも使用されるようになっている。E3系のほか、E6系「こまち」(当初「スーパーこまち」)との併結も2013年3月のダイヤ改正から開始された。デビュー時は300km/hだった最高速度も、現在ではE6系併結列車も含めて320km/hに引き上げられて本領を発揮している。

量産先行試作車S11編成と量産車3本の小所帯でスタートしたが、2012年度末にはS11編成を量産化改造したU1編成を含めて24編成、その後2015年度には全部で59編成が出揃い、東北新幹線の車両は新在直通用車両を除きE5系で統一される予定である。2016年3月の北海道新幹線開業後もE5系は主力車種として新函館北斗まで走ることになる。一方、上越・北陸新幹線への投入予定はない。

そして、北海道新幹線開業後はE5系と同形車ながら塗装・ロゴマーク、内装にJR北海道独自の意匠が盛り込まれた、H5系がE5系とともに活躍することに。E7/W7系に続くダブルネームの新幹線車両となる。

E5系16

那須塩原駅を通過するU18編成。単独運用だけでなく、E3系・E6系を併結した列車にも充当される。最速の「はやぶさ」から各駅停車の「なすの」まで、幅広く使用される東北新幹線の新しい顔。

E5系01

東京駅に停車中のU9編成。15mにおよぶロングノーズは見る角度や画角によりものすごく印象が変わる。メタリックグリーンの塗装も相まって、見た目のインパクトは抜群。

E5系02

筆者がE5系初乗車した「なすの」を郡山駅にて。天狗の鼻のようなノーズは長さを強調したほうがカッコイイと思う。


E5系03

320km/hの空気を引き裂くノーズはただ長いだけでなく、緻密に計算された結果であろう複雑な曲面を持っている。

ノーズに映る人たちはほとんどが見学者か撮影者。人気の高さが伺える。


E5系04

ノーズ先端部を見ても、側面からの膨らみが微妙な曲線で交わっており只者ではない印象。側面のピンクの帯はこの膨らみの途中で収束し、先端部までは回らない。


E5系05

東京駅で東北新幹線の最古参200系と並ぶ。200系はリニューアルされている編成だが、30年にわたる時間は見た目にはまったくの別物に進化させた。

しかし、E5系は200系、E2系に続く東北新幹線の主力を担う車両。正統であり、正常に進化した形式であるともいえるのだ。


E5系06

E5系は従来の形式と同様、他形式(E3系・E6系)との併結も行う。写真はE3系「こまち」との連結部で、E3系の上部とE5系の下部は共に「飛雲ホワイト」と呼称されているが、こうして見るとその色味は結構差があり、E5系はほとんど「明るいグレー」である。


E5系07

E2系と同様に、ヘッドライト・テールライトは前面窓上部に集中配置されている。ヘッドライトは丸型のプロジェクター式HIDが採用され、テールライトは赤色LEDのものを両サイドに配置。


E5系09

E2系1000番台のパンタグラフを発展させたような、片持ち式のシングルアームパンタを備える。E954形「Fastech360」で試験した結果を踏まえて開発されたもので、低騒音ガイシが互い違いに付いているなど、極めて独特な外観を持つ。

320km/h走行に備え大型の防音カバーも装備。なお、走行中は前位のパンタは折りたたまれ、使用するのは1基のみである。


E5系08

連結部は全周幌が採用されている。全てゴムで構成されるN700系のものとは異なり、車体色に近い塗装がなされたアルミ製のフレームと黒いゴム幕で構成されている。

これも「Fastech360」の試験結果から生まれたものだ。


E5系17

乗ったことないので外から強引に・・・

10号車に設定される「グランクラス」は1+2列シートで、航空機のファーストクラスのようにバックシェル付きなので後列の席に遠慮なくリクライニングできるのが売り。ニョキッと伸びているのは読書灯。

利用料金はグリーン車よりもさらに高いが、このシートに飲食サービス込みなので妥当なのではないだろうか。筆者にはなかなか手が出ないけど(苦笑)。


E5系18

普通車は従来通り2+3列シートながら、シートピッチが拡大されたり可動式枕が採用されるなど、これまでよりもグレードアップしている。窓側と車端ならコンセントも利用可能だ。


E5系19

ビジネスライクだが、グレー基調で明るく落ち付きのある普通車の車内。なお、1号車は客室部がかなり短く、見た目のインパクトがそれなりにある。


E5系10

先頭車後位には「はやぶさ(海洋生物っぽい?)」をモチーフにしたロゴが掲げられる。E2系などのロゴと比べると先進的なイメージだ。

なお、JR北海道所有のH5系は独自デザインのロゴが採用されている。


E5系11

行先表示機は近年普及が進んでいるフルカラーLEDのものが当然のように採用されていて非常に見やすい。「はやぶさ501号」は震災後の臨時ダイヤで設定されていた列車。


●編成バリーション

当初はJR東日本が所有するE5系しかなかったが、北海道新幹線・新函館北斗開業に伴いJR北海道が所有するH5系が加わることになった。

編成 所有者 編成番号 両数 MT比 番台 特徴その他
U JR東日本 1 10 8M2T 0 E5系量産先行試作車(元S11編成)。運用は量産車と同じ。
2〜59(予定) E5系量産車。東北・北海道新幹線の東京〜新函館北斗で運用
H JR北海道 1〜4 H5系。運用はE5系と同じ

●U編成

JR東日本が所有する「E5系」と呼ばれる編成。帯色がE2系で使用している「つつじピンク」であることが後述のH編成(H5系)との主な識別ポイントとなる。

全編成が10両編成であり、U編成を名乗る。主に東北・北海道新幹線の東京〜新函館北斗間で運用されており、デビュー列車でもあった最速列車「はやぶさ」に充当されるほか、従来からの「はやて」「やまびこ」、果ては各駅停車の「なすの」にも投入されており(列車によってはグランクラスサービスを省略化)、200系・E2系の正統後継車としての地位を固めつつある。また、秋田新幹線のE3系「こまち」・E6系「こまち(当初スーパーこまち)」との併結を行うほか、山形新幹線「つばさ」との併結も予定されている。最高速度は当初300km/hだったが、2013年3月以降は「はやぶさ」単独列車が320km/h、2014年3月以降はE6系との併結列車を含め320km/hとなっている。なお、E3系との併結列車は275km/hとなる。

E5系には量産先行試作車が存在し、S11編成を名乗り各種試験を行っていたが、2012年度末に量産化改造されU1編成となった(U1・S11編成の詳細は「製造年次や改造などによるバリエーション」で後述)。

上越新幹線へは試運転と臨時列車の運用実績があるのみで通常は乗り入れない(投入されても遠い将来の話だろう)。北陸新幹線については同線用の装備がないこと、別途新形式(E7/W7系)が用意されたため、やはり乗り入れはない。

●H編成

JR北海道が所有する「H5系」と呼ばれる編成。H編成はかつて200系の16両編成が名乗っていたが、H5系では「Hokkaido」の頭文字から採用したものと思われる(W7系のW編成が「West」からなのと同じ)。

基本的な外観、性能はE5系と同じと考えてよいが、帯色はE5系の「つつじピンク」ではなく「彩香パープル」となり、北海道とシロハヤブサをモチーフにした独自デザインのロゴマーク(貼りつけ個所もE5系より多い)を採用するなど、パッと見で識別できるポイントが多い。また、車内設備もE5系と同じだがカーペットやブラインドなどの色調や模様に北海道をイメージさせる独自の意匠が盛り込まれている。

JR東・西の共同開発であるE7/W7系は両者間でほとんど差がないのに対し、H5系はJR北海道がE5系をそのまま導入したような形態であるためか、外観・内装に少しでも独自色を出そうとしているように思える。同じダブルネーム新幹線でもこんな差があるのは面白い。

H5系31

外観上はあまりE5系と変わらないが、帯色のパープルで若干印象が異なる。4編成存在するが通常は2編成しか稼働していないため東京駅でもかなりレアな存在。ただし、2016年春現在は充当列車が決まっているため見るのは容易である。


H5系32

H5系の番台区分はE5系と同じ。E7/W7系と同様にJRマークの会社別色分けはされていない。


H5系33

E5系U28編成で採用された黒い外幌、吸音パネルが省略された台車カバーのほか、帯色の彩香パープル、独特なロゴマークなど、H5系の特徴が詰まった1枚。


H5系34

側面のロゴマークはシロハヤブサ+北海道がモチーフの独特なものを採用。


H5系35

E5系ではロゴマークがあるのは先頭車のみだったが、H5系は中間の奇数号車(3・5・7号車)にも掲げられている。


H5系36

車体やメカニズム関係はE5系と同じ。しがたってパンタグラフもまったく変更はない。


H5系37

その一方で車内はそれなりに差異があり、例えば普通車の客用扉の内側はE5系(右)が木目調のデッキ壁からつながる明るいブラウンなのに対し、H5系(左)はJR北海道のイメージカラーであるライトグリーンになっている。


H5系38

上段がH5系、下段がE5系の通路の柄でそれぞれ異なっている。グリーン車やグランクラスも同様で、その他カーテンの柄も北海道を感じさせる独特な装飾があり、JR北海道ならではの「色」を出そうとしていることがわかる。それだけに運用数が少ないのがちょっと残念。

なお、充当される列車は共通なのでシートについては柄も色も形状も同じである。


●製造年次や改造などによるバリエーション

2016年4月現在、E5系は31編成投入されているが外幌が変更された程度で仕様差がほとんどなく、大きな改造もされてない。全部で59編成が増備される予定なので今後なんらかの仕様差が出る可能性はあるが、路線の延長に伴い間隔をあけて増備されたE2系とは異なるため、N700系のように全編成で仕様がほとんど変わらない可能性も否定できない。なお、H5系は4編成しかないため同系列内での仕様の差はない。

比較的大きな仕様差が見られるのがU1編成(元S11編成の量産先行試作車)で、先頭部の客用扉がプラグドアになっているなどの差異があり、試作車時代の面影を残している。

●量産先行試作車U1編成

E5系20

S11編成から量産化改造され、営業運転に導入されたU1編成。下記に挙げた点以外、例えばノーズ形状などは量産車と全く違いはない。以前の形式では試作車と量産車でぱっと見でも判別できる違いがあることが多かったが、最近はそうでもないようだ。

E5系23

左がU1編成、右が量産車。量産車は上段がU24編成、下段がU3編成。

先頭部の客用扉の形状に違いがあり、U1編成は車体とツライチのプラグドア、量産車は段差がある一般的な引き戸になっている。先頭部以外はU1編成も引き戸である。先頭部がプラグドアでそれ以外が引き戸というのはN700系と同じ構成だが、E5系では位置的に先頭部のプラグドアは必要なかったのだろう。

また、乗務員扉窓が量産車では若干狭く前方にオフセットされているのに対し、U1編成は均一になっている。

下段の10号車(グランクラス側)も同じ構成。U1編成には赤い「がんばろう日本〜」のマークがないが、他形式を含めてこのマークを撤去、もしくは最初から貼らない傾向にありU1編成もそれに準拠している。


E5系22

9号車にある車掌室窓の上にある雨どい形状が異なる。左がU1編成、右が量産車(U16編成)。


E5系30

U1編成の5〜8号車(普通車)のシートの生地色はS11編成時代から赤基調(左上)で変わっておらず、全車グレー基調の量産車に対し異彩を放っている。ただし、U1編成も1〜4号車はグレー基調(右上)であり、指定席・自由席という区分なのだろうか。座り心地さえ変わらないなら生地を貼り替えなくても問題ないと思うが、荷棚下の読書灯も存置されており(量産車にはない)、量産化改造=サービスの均一化と考えると珍しい例だと思う。

なお、グリーン車は量産車と変わらないようである。グランクラスは量産化改造の際に設置されたため、やはり量産車との違いはない。

※2015年4月、5〜8号車のシートが他の号車と同じグレー基調になっていることを確認。E5系普通車から赤基調のシートは消滅した(読書灯は引き続き存置)。


あおば様より、シート色の変更について情報をいただきました。情報提供、誠にありがとうございます。(2015/5)
E5系25

先頭車屋根上にあるハッチ(無線アンテナ?)の色が異なる。左がU1編成、右が量産車(U9編成)。上段が1号車、下段が10号車。

1号車はU1編成がボディと同色なのに対し量産車はグレー。10号車はどちらもグレーである。


E5系29

U1編成(上)には先頭車の台車カバー最前部にハッチがあるが、量産車(下)にはない。


E5系12

(光線状態が極めて悪い)大宮駅で偶然撮影できたS11編成時代。

E5系13

左がS11編成、右が量産車。S11編成時代はグランクラスが準備工事状態なのでマークがなかった。また、先頭車後位の「はやぶさ」ロゴもなかった。

いずれもU1編成への量産化改造で追加された。


E5系39

非常に細かい違いとなるが、運転室側窓先端部の窓枠(サッシ)の分割がU1編成と量産車で異なっている。E5系はU28編成を挙げたが、手持ちの写真ではU2編成以降同じであることを確認。H5系はE5系量産車に準じている。


Tak701様より、窓枠の違いについて情報をいただきました。情報提供、誠にありがとうございます。(2016/5)

●外幌形状

E5系21

左が当初から量産車で採用されている外幌で、車体色に近いアルミ製の幅が均一になっているが、中央のU1編成では車体と結合している側(右)の幅が若干広い(S11編成時代も同様)。 また、右も量産車となるが車体結合側の幅が揃っていないものに置き換えられつつある。

U1編成と右に関して、基本的に新青森寄りが幅広になっているが、6・7号車間のみ東京寄りが幅広になっている。


E5系26

U28編成からは、E6系Z7編成以降で採用された黒いゴム製の外幌に変更されている。車体形状の関係で、E6系よりも直線的な印象。

なお、H5系もこのタイプの外幌が採用されている。


●パンタ周辺の変化

E5系24

3号車のパンタ周辺を見る(7号車も基本的には同じ)。

上段はU1編成で、S11編成時代にあったパンタ投光器などは撤去されている。中段はU2〜4編成(写真はU3編成)で、パンタの根元付近にやや出っ張りがある。下段はU5編成以降(写真はU9編成)で出っ張りはない。

運転開始時に登場しているU2〜4編成の3編成のみ、出っ張りがあることになる。また、U1編成はU5編成以降の仕様に合わせていることがわかる。


●台車カバー違い

E5系27

U1〜20編成(上)には台車カバーに吸音パネルが装備されていたが、U21編成以降(下)ではパネルが省略されシンプルなものとなっている。


E5系28

こちらは先頭部の台車カバーで、上段がU1編成(写真右が前方)、中段がU2〜20編成(左が前方)、下段がU21編成以降(左が前方)。U1編成は前述の通り最前部にハッチがあり、U21編成以降は中間部と同様に吸音パネルが省略されていることがわかる。


●筆者の所見など

カトーのE5系のレビューを書いたときに困ったのが、当初は実車の写真が用意できなかったことだった。2011年3月5日の営業運転開始当日は混雑で撮影どころじゃなさそうだったので、翌週の3月12日に東京駅でディテール撮影等行う予定だったが、その前日に発生した東日本大震災により1週間も経たずに長期運休となってしまった。その後4月下旬に復旧、GW中にようやく実車を見て、撮影できたという経緯がある。

E5系14

震災後の臨時ダイヤで運転されていたU3編成「はやぶさ501号」初撮影。23番線停車だったため、東海道新幹線14番線ホームから捕えた。あちら側のギャラリーの多さから、かなり注目されていることがわかる。

当時のE5系は3本が稼働していて、震災復旧後の臨時ダイヤでは朝に2本の「はやぶさ」があるだけだったのでなかなかお目にかかれない形式だったが、20本以上稼働している現在では全ての時間帯で見ることも珍しくなくなった。それでも全席指定の「はやぶさ」「はやて」は人気が高くなかなか乗るにも苦労するが、各駅停車の「なすの」は自由席でも座れる機会が多く、筆者も「なすの」で初乗車を済ませている。

さて、E5系の長いノーズは15mあり、これは500系と同じ長さであるが、両者の印象は全く異なる。あくまでも筆者の感想・感覚だが、10年以上前にデビューした500系の方が今でも未来的なのに対し、E5系はなんとなく古さを感じる。なぜだろう?ということで、ちょっと両者を並べてみた。

E5系15

ほぼ同一縮尺でトリミングできていると思うが、どちらも同じ15mのノーズ長を持つ。500系は運転室の位置がかなり前方に寄っていて、客室がノーズ部から存在しているが、E5系は客室がノーズ部よりも後ろに存在することがわかる。

500系は「ロングノーズ」といわれているが、ヘッドライトや運転室のあたりを「顔」と考えるなら案外「ノーズ」は短いように思う。そんな運転室や客室が前方に寄った「キャビン・フォワード」スタイルが、フェラーリやランボルギーニといった未来的なイタリアン・スーパーカーのフォルムを思わせるのではと思った。これらはエンジンを後方に搭載するミッドシップ・レイアウトなので必然的にノーズは短くなるのだけど、500系の未来感はその辺と似ているのではないかと。

それに対し、E5系の正真正銘「ロングノーズ」は、V8エンジンを長いボンネットにブチ込んだ、「ロングノーズ・ショートデッキ」スタイルのマッチョな古典的アメリカンスポーツカーのように感じた。「シボレー・コルベット」とか「ダッジ・バイパー(V10だが)」のような。長いボンネットに、ほとんど後輪の直前に座るような短い居住空間。E5系にも通じる点ではないだろうか。

そして、ボンネットが長い乗りものはなんとなく古く感じる気がする。181系や485系といったボンネット特急電車然り、東武DRC然り。新幹線なら0系や100系も。ボンネットとは違うかもしれないけど、小田急ロマンスカーも古いNSE・LSEあたりは展望室屋根先端と運転室の間に距離がある。その意味では、E5系は進化しながらも先祖がえりしているのかもしれない。

もちろん、E5系の形状は320km/h走行に対する研究の上の結果であって、古さを感じる=悪いわけではない。今後も東北新幹線に君臨する車両の強烈な個性と考えるのが妥当だろう。事実、見た目のインパクトは500系にも決して遅れをとっていないと思う。E5系はまだまだ増えるから、そのうちインパクトは薄れてしまうかもしれないけど・・・それでも、こんな車両が各駅停車に投入されるどころか、新在直通車を除けば全て統一されるというのだから、すごい時代になったな思う。


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