●屋根上表現

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屋根に黒いラインがあるのがカトー、ないのがトミックス。ぱっと見でも誰もが判別できる違いである。


●滑り止め表現

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「滑り止め」とは作業員が屋根を歩くために用意されたもので、その表現はカトーはダークグレーの印刷(塗装)でモールドなし、トミックスはモールドで塗装なしという差がある。上の写真ではわかりづらいので、トミックスのモールドの様子がわかる写真を左に用意した。ザラザラの部分が滑り止めである。


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滑り止めのパターンも若干差があって左の図のようになる。トミックスは高圧線ジョイント(後述)を避けるようなパターンだが、下の実車写真を見るとトミックスの表現が正しそうだ。

カトーはこの「避け」がないので、結果的に滑り止め間の間隔がトミックス(もしくは実車)と比べて広くなっている。


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動画からの切り取りなので画質が悪く、わかりづらくて申し訳ない。


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パンタカバー部分の滑り止めはトミックスのように1本中央に通っているだけだがカトーは太く表現。実車のパンタカバーの汚れもこんな感じなので、カトーの場合滑り止めというより「汚れ」の表現なのだろう。


●先頭車無線アンテナ

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先頭車にある2つの四角形は無線アンテナで、0系以来の装備である(700系の後期編成から省略され、N700系は最初から装備してない)。写真の521形は2つ、522形は1つだが後者はアンテナかどうかは不明。

500系では屋根に埋め込まれた形の無線アンテナだが、ここも滑り止め表現と同様、トミックスはモールドで表現しているのに対し、カトーはダークグレーの印刷のみで済ませているシンプルなものだ。

カトーの方式は両先頭車で屋根板を共用できるメリットがある。トミックスは両先頭車で作り分けている。


●高圧線ジョイント

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500系では屋根中央部に高圧線が引き通されていて、車体間は「直ジョイント」という方式でケーブルを渡し、半永久固定されている。直ジョイントは500系で初めて採用され、その後の形式はもとより、300系も後に改造されるくらい普及した方式である。

ジョイントの大きさや位置、形状は両者ほとんど同じながら、カトーはジョイントから連結面にかけてケーブルを表現しているが、トミックスは省略。これは他のモデルでも見られる両社の特徴でもある。

ケーブルは先に掲載した実車写真にあるように「たわみ」があるのだが(他形式と異なり、500系は海側にたわみがある)、模型ではストレートになっているのでそこまで考慮していないようだ(その後発売された同社のN700系ではたわみが表現されるようになった)。

細かい部分では、ジョイントの根元部分にカトーはボルトの表現があるが、トミックスは省略しているという差がある。当ページ上方にある「滑り止め表現」の拡大写真のほうがわかりやすいかも。

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6・7、10・11、14・15の各号車間の高圧線ジョイントは大型タイプとなっている。車体間のケーブルがわたっているほか、7・11・15号車側は連結面に引きこまれている高圧線があるので2本ケーブルが生えている。


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カトー(左)・トミックス(中央)ともに標準状態では小型のジョイントが屋根板にモールドされているが、トミックスは大型ジョイントの別パーツが付属しているのでそれを再現できる(右)。概要のページでも書いたが、見た目がほとんど同じである526形と528形の外見上の判別ポイントにもなっている。


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パーツは単に元のジョイントにかぶせるだけで(両面テープか接着剤で固定)モールドには及ばないものの、一体感は悪くない。

左はトミックスに付属する大型ジョイントパーツで、ニッパーなどで切り取る必要がある。上の白いパーツは後述する「ケーブルヘッド」用のガイシパーツ。


カトーにはこのようなパーツはないので、大型ジョイントは526形と528形の違いも含めて再現できない。ただし、元のジョイントの大きさがトミックスとほとんど同じなので、連結面側のケーブルを避けるように加工したり、色を合わせて塗装する必要があるが、トミックスパーツの流用取り付けは可能かと思われる。腕に自信のある人はチャレンジしてみては?

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2号車と15号車は高圧線の終端になるのでジョイントの後方には高圧線がないのだが(写真は2号車東京寄りのジョイント)、2・3号車間はなぜかケーブルが渡されていない(下の実車写真)。


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2号車はなんのためにジョイントがあるのかわからないのだが、カトーはケーブルが表現されているのでエラーといえばエラー。15号車の屋根板と共用なのでやむを得ないといえる。

もっとも、最初からケーブル表現のないトミックスを正しいというのは抵抗があるが。


●ケーブルヘッド

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編成の中間部である8・9号車間はジョイントではなく「傾斜型ケーブルヘッド」で高圧線を渡しており、検査時などは容易に編成の切り離しができるようになっている。

カトーとトミックスの差、実車との差はご覧の通りだが、全体的にはトミックスのほうが似ているといえる。カトーの取り付け傾斜部が少し長いし(行先表示機との位置関係を見ればわかる)、端部で傾斜が少し緩くなる部分も表現していない。ガイシ(白い巻貝のようなパーツ)の形状も短くてずんぐりしていて、正直あまり似ているといえない(他形式のパーツ流用なのだろう)。ただ、ガイシの取り付け部はカトーのほうがそれっぽく、トミックスはガイシの根元下部に少しパーツのはみ出しがある。

もうひとつのポイントとして、トミックスは購入状態ではガイシが付いてなくて、ユーザが付属の別パーツ(高圧線ジョイントの項で紹介したパーツ)を取りつける必要があるということ(写真は筆者が取り付けを行った後の状態である)。パーツを切り離して取り付け部に差し込むだけの簡単作業だが、前述したガイシ根元下部のパーツはみ出しはこれが原因でもある。一方、カトーは最初からガイシが取り付け済みなので、ユーザが手を加える必要はない。

ところで、500系のケーブルヘッドは編成中1箇所なのでガイシは2つあれば間に合うはずなのに、やけにパーツ数が多い。これはガイシパーツが同社の300系(旧製品)付属のものを流用しているから。300系もガイシを取り付ける必要があるのだが、すべての連結部がケーブルヘッドだったのでガイシもそれに足りるパーツ数を用意しておく必要があった。なので500系では余りまくるのである。

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ガイシの下部の屋根には切り欠きがあり、こちらも両者で開く角度などが異なる。実車のこの部分はわからないので、どちらが似ているかはコメントを避けたい。ケーブルケッド周辺の滑り止め表現はトミックスは実車通りになっているが、ダークグレー塗装で表現しているカトーは塗装が斜めになっていたり表現が少々ラフだ。


ここまで見てのとおり、滑り止め表現を塗装しているか、モールドを施しているかが、ぱっと見でも印象が異なるくらいの差異になっているわけだが、理由としてはトミックスは新車出場直後や全般検査直後で屋根がきれいな状態、カトーはある程度走りこなれた状態を表現しているから。特にトミックスはカタログでも記載しているので明らかだ。

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W7編成の全般検査後だろうか。屋根にはほとんど汚れがなく、色合い的にもトミックスの表現に非常似ている。ちなみに、前述の大型ジョイントの項で紹介した実車写真もこの編成のものである。


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こちらはある程度走りこなれたW2編成で、屋根の中央部が汚れているのがわかるが、カトーのように滑り止めだけがくっきり汚れているかというと否。

余談だが並走している床屋のポールサイン(?)みたいな奴は伊豆急「アルファリゾート21」で運転の「リゾート踊り子号(東京〜伊豆急下田)」。最後まで500系が充当された「のぞみ29号」ともに東京駅12:30同発で、この撮影をした田町駅くらいまでは並走してくることが多かった。


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この写真のように、撮影状態によってはくっきり滑り止めが表れることもあるが・・・これも汚れというより、滑り止めのザラザラが光の反射具合で表れているだけである。


トミックスは滑り止め・無線アンテナもモールドで表現しているし、大型ケーブルジョイントもユーザ取り付けながらも再現することができる。ケーブルヘッドの形状も実車に似ている。屋根上表現に関してはトミックスのほうが実車を忠実に再現しているといっていだろう。カトーは滑り止めの「汚れ」を塗装で表現しているが、実車があそこまでくっきり汚れることはないし、大型ジョイントやケーブルヘッドのことを考えても、正直なところ「リアル」な表現とは言い難い。

しかし、リアルかどうかは別にすれば、屋根上にビシッとダークグレーのラインが走るカトーの滑り止め表現は、引き締まった印象を与えることは確かだ。逆にトミックスは屋根の色が全体的に明るいこともあって、どこか淡白な印象なのは否めない。特にレイアウトでの走行シーンなど上方から離れた視点で見る場合は顕著で、その意味では前ページで書いた模型視点を重視したカトー、間近で眺めることも重視したトミックスという両者のコンセプトの違いが、ここにも表れているといえよう。ジョイントもケーブルヘッドも模型視点では大した差を感じる部分ではないので、カトーはあまり力を入れていないのも納得できる。

カトーは悪く言えば塗装だけで手っ取り早く済ませているともいえるが、リアリティの追求ではなく模型としての演出・デフォルメと考えれば、最大の効果を発揮しているとはいえる。逆にトミックスは頑張っている割には理解されにくいというか、少し不憫に思えてならない。リアリティを追求すればいいってものじゃない・・・「鉄道模型」の難しいところであり面白さでもある。どちらがよいかは完全に好みの問題であり、正解はないといえる。

他には、別パーツの扱いにも違いがある。カトーはユーザが手を加える必要がなくて楽だが、大型ジョイントの表現は我慢しなければならないし、トミックスはユーザが手を加えなければならないが、カトーにはない表現を楽しむことができる。後述のインレタ表現もそうだが、トミックスの「ユーザが手を加える」については、面倒と感じるか楽しいと感じるかは人それぞれである。

●パンタグラフおよび周辺

500系の特徴でもある「翼型パンタグラフ」は5号車と13号車に装備されている。サンプルは5号車としたが、13号車もまったく同じである。

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ぱっと見で違いがわかるのがパンタの色でカトーは銀、トミックスはグレー。実車のパンタ本体の色はグレーなので、ここはトミックスが正解。しかし、カトーはパンタを支えるガイシが白パーツになっているのはポイントが高い。パンタの台座部分は屋根と同じブルーなのだが、この点は両者とも表現されていない。パンタの摺り板部分は切り欠きを表現しているカトーのほうが細かい。

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パンタをリフトした高さは同じくらい。パンタカバー横の縦線モールドはカトーのほうが正確だ(トミックスは1本少ない)。しかし、横線のモールドは両者表現していない。表現が難しいのかも?


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両者パンタ横のボルテックスジェネレータも表現しているから驚く。カトーの方が模様はリアルだが数が少なく上端まで達していない。トミックスは上端まで達しているが模様はやや大雑把。

Nゲージサイズで表現しているだけでもすごいので、どっちがリアルだとか比べるのは野暮かな。


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実車同様、パンタは横倒しにして格納。カトーは起こした後で上に引き上げる2アクションとなっているが、トミックスはそのまま起こすだけだ。「パンタグラフ」の語源はひし形の製図用具から来ているので、もはや「パンタグラフ」では・・・まあ、集電装置=パンタグラフで定着しているのでツッコミは(ry

前述の通り、パンタ台座は左写真ようにブルーである。この台座には「SHOWA」のロゴが入っているが、自動車部品メーカー「ショーワ(ホンダ系列)」が開発したパンタグラフだから。80年代後半のF1で「マクラーレン・ホンダ」チームにショックアブソーバなどを提供していた同社に、300km/h走行に対応するパンタグラフの開発を依頼したというわけだ。

それにしても、実車編で触れた車体間ヨーダンパの「カヤバ」といい、案外新幹線は自動車部品メーカーの世話になっているものだと気づく。


通常のパンタと異なりバネ上昇式ではなく、圧縮空気で上昇する特殊な方式である。この写真では空気が入っていないので、前出の駅で撮影した状態に比べ低くなっていることに注目。パンタ下の座席に座ると、トンネル内では圧縮空気の音が「シュパーン!」と響くのが聞こえたほどだ。

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パンタカバーはどちらも同じような大きさで、屋根板と一体成型である。内部にモールドされたパーツは細部が若干異なるが、ほとんど見えないので気になる程のものではない。

パンタ以外に別パーツになっている白いガイシは、カトーはパンタに高圧線が伸びているがトミックスは省略(ただし高圧線が白というのは違和感があり塗装したいところ)。

もう一つの別パーツはあまり知られていないが補助のシングルアームパンタ。前述の通り500系のパンタは圧縮空気方式なので、そのトラブルに対応するために補助パンタを搭載しているのであろう。検修場の移動時に使うこともあるようだ。補助パンタパーツはトミックスは台座部分を一体成型だが、カトーは屋根板側にモールドで表現。奥行き感があるのはカトーだが、実車のこの部分の写真がないので詳細なコメントは避けたい。

パンタの見た目でいえば、実車とは異なる色だが銀色のカトーのほうが派手で目立つ。ここでもリアリティよりも演出を重視しているカトーの特徴が表れているということか。一方で、ガイシを白い別パーツにするなどリアリティに配慮している部分もあり、2アクション式であることを除けば、パンタについては若干だがカトーに軍配が上がるような気がした。


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