実車について |
模型の概要&製品ラインナップ |
比較レビュー1 序・先頭形状・車体各部・屋根上 |
比較レビュー2 塗装・灯火類・室内 |
比較レビュー3 床下・連結部分・ギミック |
比較レビュー4 全形式比較・総評 |
トミックス H5系北海道新幹線 レビュー |
比較レビューに用いる製品は以下の通り。
カトー(奥)、トミックス(手前)。
トミックス製品は基本+増結セットの通常版で、同日発売の限定品は購入していない。もっとも、特製ケース入りの10両1セット構成であること、U21編成の車番が全車印刷済みであること、インレタの内容が異なる程度しか差はなく、今回のレビューの内容がそのまま当てはまると思われる。
E523形(東京寄り先頭車)をサンプルとした。
どちらも実車の特徴的なロングノーズのイメージをよく捉えているが、メタリックゆえの光の当たり具合で、エッジの強弱や面構成に微妙な形状の差があることがわかる。
E5系はロングノーズかつ、複雑な形状であることを再認識させられる。どちらもデフォルメはされていると思うが、全体的にE5系の特徴を忠実に再現できていると思う。ただ、スノープラウ周辺はトミックスに軍配が上がるようだ。
サイドからの比較は特大画像になってしまった。実車は画像反転させている。こうして実車と比べると両者とも造形は大まかには同じだが、スノープラウの位置関係、サイドの膨らみからスノープラウに向けてのライン、運転室の盛り上がりとそのサイドのエッジ等を見る限り、トミックスの方が実車に近いと思う。
また、カトーはノーズ横の膨らみが立ち上がるあたりから、乗務員扉の直前にかけてパーティングライン(金型の分割線)がある。ノーズ形状に自然に溶け込ませようという苦労の跡が見えるものの、見る角度や光線状態によっては目立ってしまうこともあるようだ。
トミックスはノーズの幅が若干広い。その他、サイドの膨らみからノーズ先端にかけてのラインの曲率の違いや、運転室横のエッジの付き方にも違いがある(トミックスの方がシャープ)。
画角が違うのでなんともだけど、ノーズ横の膨らみ先端から乗務員室扉の下端に至るラインを見ると、実車はほぼ水平だが模型では後方にかけてやや上方に向かっており、特にカトーはその傾向が強い。
前述の通り、サイドの膨らみからノーズに向かってのラインに違いがあることがわかる。また、カトーはスノープラウが前方寄りなので、この角度からでも先端が見える。
E6系もそうだったが、ノーズの連結器カバー直後にあるラインはカトーは表現、トミックスは省略となっている。
何しろE5系の正面顔はフォーカス合わせが大変で、このくらいが限界だった。後述する下部のスノープロウ周辺を除けば、どちらも大きな差異はない。
画角が違うので実車との比較は伝わりにくいかもしれないが、模型はどちらも大きく外していないことだけは確かだと思う。
ノーズ下部に目を向けると、スノープラウ前のフィンの有無が異なり、カトーは省略、トミックスは表現となっている。上から見ればあまり目立たないことも確かだが、表現があるのとないのではやはり印象が違う。
東北新幹線系統の車両ではおなじみのスノープラウ、前方のフィンがE5系の特徴のひとつだと思うので、カトーの省略は少々残念に思う。
ノーズ先端を下側から。E6系と同様に、トミックスはモールドの工夫でスノープラウ前のフィンを表現。カトーはスノープラウが前方寄りのため省略してしまったのだろうか。また、連結器カバーに切り欠きがあるのが特徴。
運転室の盛り上がりも形状が異なる。下の写真にあるようにトミックスの方が実車に近いが、金型の跡というかポッチが思いっきり真ん中にあるのが残念。
改めて実車の運転室盛り上がりを見ると、トミックスの方が近い形状であることがわかる
前面窓はどちらも窓枠・ワイパーともに印刷で表現。ワイパーはトミックスの方が細く、運転台コンソールのパーツ色も落ち付いている。カトーには編成番号「U2」が印刷済みだが、トミックスも付属のインレタで編成番号を表現できる。
カトーは他製品ではサイドの窓がスモーク処理されている製品もあるが、E5系は窓が小さいせいか透明なまま。また、サイド窓の後端ラインはカトーは丸め、トミックスは鋭いという差異がある。
裏から見ると印刷の具合が良く分かる。トミックスはワイパーだけでなく窓枠も全体的に細くてシャープだが、窓の上部にブラックアウト処理があり、ヘッドライトを覗く窓の面積が小さくカトーと大きな差異となっている。
左の実車を見ると確かにヘッドライトの上にブラックアウト処理があることが分かるけど、後述するが模型ではヘッドライトの見た目に悪影響を及ぼす結果に。
実車が複雑な形状ということもあり、一部省略個所があったり、生産技術的な問題で粗がないわけではないが、両者とも全体的なモデリングレベルは高いと思った。実際問題、どちらが実車に近いかを瞬時に感じ取ることができる人は少ないと思うので(筆者も無理)、平均的にE5系として違和感がない形状を実現しているといえるだろう。
ただ、細かく見ると造形の正確さではトミックスが一歩抜きんでていると思った。発売時期の違いや後発の有利さもあるとは思うが、「造形のトミックス」の面目を保っているといえるだろう。
1号車の乗務員扉・客用扉周辺を見る限り、各種モールドの濃さ、ドア点検ハッチなど、両社おなじみの表現となっている。どちらも乗務員扉窓が前方にオフセットされている量産車の特徴を再現できている。客用扉はトミックスの方が若干広いようだ。
乗務員扉の周囲のモールドを見てわかるように、カトーは濃いめ、トミックスは標準的という感じだが、表現そのものはトミックスの方が細かく、ドア下のクツズリまでモールドになっているのは珍しいといえる。一方のカトーは印刷表現で済ませている。
中間部の客用扉も先頭部のものと同じ意匠で、身障者対応の幅広ドアも同様のイメージで表現されている。
客用窓の形状はカトーは四隅のRがきつくて角ばり気味、トミックスは丸みを帯びている。実車と比べてみると後者の方が近いように思う。
窓下にあるハッチの形状はそれぞれ同門のE6系と全く同じ表現で、あちらがそうであったように、E5系でもトミックスの方が似ている気がする。
どちらもモールド+印刷で窓枠を表現しているが、トミックスの方が実車に近いバランスかも。窓上の雨どいはどちらも量産車の直線的な形態を再現しており、ほとんど差は見られない。
トミックスは室内パーツに車掌室の壁があるのだけど、半端に向こう側が見えてしまいややボリューム不足のようだ。もっとも、カトーは完全に抜けてしまっているので、それよりはマシかもしれないが。
各部の表現はこれまでのカトー・トミックスの比較で見られる「いつもの」差異であり特に目新しいポイントはないが、ここでも全体的なモデリングの正確さでトミックスがわずかに上回っているように思えた。「模型での見せ方」というものあるから正確=正義ではないけれど、モデリングという基本的な部分がきちんとしているのは重要だと思う。この点に関しては今回のトミックス、結構やっているように思う。
ほぼツライチのトミックスに対しカトーは若干引っ込み気味だが、それでも比較的いい線いっているように思う。トミックスは光線状態によってはガラスの厚みが目立つことも。後述のガラスパーツの色が原因かもしれない。
トミックスは客用窓のみならず、客用扉窓、行先表示機に至るまで清々しいまでのツライチっぷり。一方のカトーも全体的にツライチに近いのだけど(行先表示機はガラスではないので念のため)、車端の客用扉窓のみ若干奥まり気味である。車端じゃないところは奥まっていないので、パーツの組み合わせの都合かもしれない。
カトーのガラスパーツはスモーク入り、トミックスは無色透明。他の製品でも見られる差異である。
側面の行先表示機・座席表示機はカトーは印刷済み、トミックスはガラス表現というおなじみの構成。トミックスには行き先ステッカー等は付かないので、表現したければ自作かサードパーティ品で対応。
実車が回送表示になってしまっているが、客用窓との位置関係や大きさ、形状に着目するとトミックスの方がわずかながら実車に近い気がする。
カトーの印刷済み行先表示は、(N700Aではない)N700系やE3系がボディにただ印刷しているだけだったのに対し、E4系と同じく段差を付けた上で印刷されている(座席表示も同様)。普通に見るだけだと段差を認識するのは難しいが、うれしい配慮だ。
E5系の屋根上はパンタグラフくらいしか目立つものがなくシンプル。両者とも屋根板が別パーツ、車端に黄色いライン入り、メタリック塗装ではない点が共通している。
トミックスはE6系ではボディ・屋根板一体型だったが、E5系では別パーツとなった。一方、カトーはE6系ともども別パーツである。どちらも連結部の構造上、妻面に余裕がないためパーツがかなり薄いことがわかる。
屋根板の表現については、カトーは滑り止めモールドのほか溶接跡のラインも表現されているのに対し、トミックスは滑り止めモールドのみで、N700系やE6系でも見られる差異である。トミックスはE6系ではモールドの目が荒かったが今回は細かい。
屋根板はメタリック塗装でないので、先頭部ではボディとのコントラストが見られる。ボディと屋根板のパーツの組み合わせは基本的には良好だが、個体差かもしれないけどトミックスは隙間がやや大きい。
実車もこんな感じでコントラストが出ることがある。新車や全検あがりだとあまり差は出ないようだけど。
先頭車車端の無線アンテナがグレーで塗装されていたり、周囲に赤ラインが施されていてぱっと見は同じように見えるが、カトーはボルトなどのモールドがあるのに対し、トミックスは単なる塗装表現だったりする。
カトーの中間車車端ハッチは、周囲のボルトをモールド表現しているほか、6号車のハッチ(写真中央)を大きいものにするなど実車に忠実に作り分けているが、トミックスは終始ハッチのモールドはなく、大きさの作り分けもしていない。
左が一般的な中間部、右が5・6号車間で6号車側のハッチが大きく、カトーはこの差異を忠実に作り分けていることがわかる。一方、トミックスの6号車は他の中間車と共通の屋根板のため、この差異を表現していない。
8・9号車の新青森寄り車端はハッチがなく、これは両者忠実に再現していて差もあまり見られない。
しかし、8・9号車の東京寄り車端にはハッチがあり、ここも8号車と9号車でハッチの大きさが異なっている(8号車の方が大きい。大きさは6号車と同じ)。やはりカトーは作り分け、トミックスは共通部品となっている。
E5系の屋根上は高圧線やジョイントが露出していないのでシンプルであり、あまり書くネタがなく終わってしまった。ただ、少ない観点ながらも屋根上の造りはカトーの方が細かく、ハッチの作り分けなど一見しただけでは気づきにくい部分も忠実に再現していることがわかると思う。
細かく見ると、トミックスの屋根上は先頭車用(1・10号車)、パンタ車用(3号車)、パンタ車用(7号車)、中間車用(8・9号車)、中間車用(2・4・5・6号車)の5種類、カトーはそれらに6号車用、8号車用が分けられ7種類となっている。これだけならあまり差はないように思えるし、注意して見ないと(そのことを知らないと)気づきにくい差異ではあるのだけど。
実際にメーカーがどう考えていたかはわからない。あくまでも筆者の個人的な印象として。E5系はどちらも屋根板が別パーツになっているのは、カトーは各号車の屋根上を忠実に作り分けるため、トミックスは極力部品数を減らすためのように思えた。正直なところ、屋根上についてはカトーに軍配が上がると思う。
E5系のパンタグラフは3・7号車に装備されている。E5系の屋根上はシンプルなだけに、パンタグラフの存在感は大きい。
写真は3号車のものだが、7号車も大体同じ。カラフルな赤いアームは雪の中でも目立つように配慮されたもので(E2系でも見られる)、模型でもシンプルな屋根上で良いアクセントになっているのは言うまでもない。
トミックスはパンタが傾いているが(7号車は普通だった)、筆者所有品の初期不良だったようで、後日修理にて修正されている。
トミックスはパンタ基底部や検電アンテナのグレーが明るく、ガイシ根元に黄色いラインが施されている(カトーにはない。ちなみに、同社のHOゲージ版には表現がある)といった違いがみられる。また、トミックスはガイシの根元のそばに周囲が黄色く塗られたスリット状の穴があるが、カトーにはこの穴がなく盛り上がり形状になっている。
これはカトーがU2〜4編成(左)に準じたもので、同社が製品化した当時の量産車はそれしかなかったから当然といえる。一方のトミックスはU5編成以降(右)の形態である。
リフトした状態と畳んだ状態。トミックスの方が若干パンタアームが長いが、どちらも特に問題ない。E5系では進行方向に対し前方のパンタを折りたたみ後方のパンタを使用する。模型でも走行させる際、面倒くさがらず再現してみたい。
パンタ周辺を見てみると、カトーは屋根板の滑り止めのほか継ぎ目やボルト類もモールドで表現しているが、トミックスは滑り止めのモールドしかない。
ただし、(そもそも同じパーツだと思うが)E6系と同様に検電アンテナは前後を絞った形状になっていて、根元のボルトも表現しているトミックスの方が実車に近く、屋根上では数少ない同社の優位点となっている。アンテナ周囲に赤いラインがあることがわかるが、これはどちらも再現している。
パンタのリフト量はどちらも十分。パンタ遮音板の形状はものすごくわずかな差ではあるけど、トミックスは角ばり気味でカトーの方が実車に近いかもしれない。
パンタ自体はどちらも互角といったところで、屋根板の表現はカトー、検電アンテナはトミックスが優位といったところだろうか。ただ、トミックスにしては珍しい演出というか、ガイシ根元の黄色いラインはシンプルなE5系の屋根上において、なかなかのアクセントになっていると思う。
製品化した時期による結果的なものかもしれないが、実車のE5系でも数少ない変化点であるパンタ根元の屋根上表現が両者異なっているのも楽しい。
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