●実車の概要

JR東日本とJR西日本が共同開発を行い、所有している北陸新幹線向けの車両。E2系の後継車という点ではE5系と同じだが、性能要件が異なるため別途用意されたのが本形式である。E7系は2013年11月に登場し、2014年3月から東京〜長野間で営業運転開始。W7系は2014年4月に登場、北陸新幹線金沢開業の2015年3月から営業運転を開始した。

JR東日本からすれば初めて他社への乗り入れを行い、共同開発した新幹線車両ということになるが、同社の車両は形式名に「E(East)」が付くため、これまでなら番台区分(E7系○○番台とか)するところをJR西日本向けは「W(West)」をつけて区分するという、新幹線では初めてのダブルネームとなった。なお、同様の事例としてJR北海道が所有するE5系ベースの車両が「H5系」を名乗っている。

基本部分はJR東日本が主導しているのか、E5系やE6系の面影が随所に見られるが、ロングノーズだったりカモノハシ状の複雑なラインになることが多い近年の新幹線車両にしては、「ワンモーションライン」といわれるシンプルな先頭形状が特徴でノーズ長さもE2系と同等レベルで収まっている。これは運用線区の営業最高速度が260km/hと最近の新幹線にしては低いためで、先頭形状だけではなく屋根上や台車カバー、連結部の仕様も速度に見合ったものになっていることから、E5系をベースにE2系レベルの性能にディチューンした車両といえそう。一方でE5系にはない性能として、北陸新幹線ならではの複数周波数(50Hz/60Hz)や碓氷峠の勾配抑速に対応している。

速度要件が低い分余裕ができたことに加え、E6系に続き奥山清行氏がデザイン担当。精悍な先頭形状に「和」をイメージしたといわれる「空色」「アイボリーホワイト」「銅色」の塗装はスピード感と高級感を演出。 結果的に、近年の新幹線車両にしては「見てくれ」のデザインがなされたものとなった。

運用区間が伸びることからE2系の8両編成から12両編成となり、普通車・グリーン車に加え、E5系に続きグランクラスで構成される。車内設備は近年の新幹線車両に沿ったものだが、初めて普通車全席がコンセント付きになった。なお、グランクラスの正式サービスは金沢開業後に開始された(それまでは座席のみ提供)。

北陸新幹線用に開発された車両ではあるが、E7系については従来車の置き換えの関係からか車両自体は開業よりも1年以上前に登場しており、東京〜長野間の「あさま」で先行的に営業運転を開始。金沢開業後はW7系ともども「かがやき」「はくたか」に投入された。また、「あさま」はJR東日本管内、「つるぎ」はJR西日本管内の列車となるが、E7/W7系の両方が充当されている。

金沢開業時点でE7系はわずかに増備が完了していないが、引き続き増備されE2系N編成を完全に置き換える予定である。事実上の北陸新幹線専用車であり、上越新幹線の高崎以北はともかく東北新幹線で営業運用される可能性は低そうだ。スペック上は最高速度275km/hとされているのでE2系が走っている限りは問題ないし、今後320km/hが標準になっても引き続き仙台までは回送される機会はあるが、それでも臨時列車運用が限度だろう。

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熊谷駅を通過する「あさま」で運用中のF2編成。堂々とした長さの12両編成は東北・上越新幹線開業以来、なじみが深い両数だ。

E7W7系レビュー0301

近年の新幹線にしてはシンプルな先頭形状で、ヘッドライトの形状や位置のバランスからして正統派なデザイン。塗装の配色や塗り分けも「カッコよく」見せることを意識していると思う。

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ぱっと見シンプルな形状ながら、ブルーと銅色の塗り分けラインに稜線があり、肩まで延びているカタマラン(双胴船)な造形が凝っている。


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「ワンモーションライン」と呼ばれる先頭形状。ノーズ長さはE2系と同レベルだが、造形的にはE7系の方がシンプルに見える。それでも、ノーズ横には窪みがつけられていてトンネル微気圧波への対策は十分になされている。


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シンプルで鋭い形状はどの角度からもカッコよく見える。下部に見えるエッジは前述の窪みによってできたものだが、微気圧波対策の効果はもとより、見た目にも効いていると思う。


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運転室窓周辺はキャノピー風の処理がなされており、ブルーの塗装もあいまって500系のそれを思わせる。JR西日本との共同開発の影響だろうか。


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E6系と同様にプロジェクター式HIDのヘッドライトを採用。E7系の精悍さをより強調していると思う。


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E6系とデザイナー(奥山氏)が同じであるためか、ヘッドライト周囲にはなんと金色メッキ処理した凝ったものを採用。テールライトは目尻の部分にコンパクトなものが設置されている。


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E5系やE6系を見慣れたうえで先端部を見ると改めてノーズの短さを実感。スノープラウ前のフィンもかなり前面に出ている。

12両編成のE7/W7系では分割併合運転を想定していないため自動分割併合装置はなく、ノーズ先端部は単なるカバーである(内蔵の連結器も非常用)。


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窓の大きさや形状、車体下部のハッチ、フルカラーの行先表示といった側面の意匠を見る限り、E5系、E6系と基本部分は同じあることがわかる。


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一方で、乗務員扉横の手すりはE5系、E6系で採用されていた格納式ではなく性能に合わせたプリミティブな固定式になっており、E2系1000番台のそれに近い。

写真の12号車(金沢寄り先頭車)にはグランクラスが設定されている。座席数はE5系と同じながらノーズが短くなったため、後位に客用扉やデッキが追加されている。


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パンタグラフはE5系が装備しているものと同じだが、すり板形状の変更や遮音板が省略されており、やはり性能に見合った仕様となっている。また、E5系、E6系では編成中1つのパンタで走行するが、E7/W7系では従来どおり2つのパンタを上げる。


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パンタグラフ周辺は極めてシンプルながら屋根上全体は高圧線、ジョイント、ケーブルヘッドなどがむき出しで、E5系、E6系と比べるとコンサバな印象を受ける。E2系1000番台からパンタを変えただけ、といっても過言でもなさそうだ。


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4・5、6・7号車間にある傾斜型ケーブルヘッドもE2系1000番台や700系等でお馴染みのもの。濃いブルーで塗装されているせいか、ちょっとだけ新鮮に見えなくもない?


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先頭車後位の検電アンテナはE2系やE4系では屋根上の窪みに埋め込まれていたが、E7/W7系では700系やN700系といった東海道新幹線系統の車両のように露出するスタイルになった。

屋根上の号車番号表記もこれまでのJR東日本の車両にはなかったものであり、おそらくJR西日本の意向が反映されたのかもしれない。


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台車カバーもE2系レベルのものであり、E5系のようにフルカバーされたものではない。ただし、ブレーキディスクは中央締結式になっており、部分的にはE5系などで採用された最新技術も盛り込んでいる。


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連結部も全周幌ではなくE2系と同様の外幌を採用。車体間ヨーダンパすら省略されているので前任車両であるE2系0番台レベルの仕様といえるが、先頭車と次位の車両間にはヨーダンパの準備工事らしきカバーがついている(写真左)。


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先頭車側面に掲げられるロゴマークは「7」をモチーフにした鋭く精悍なデザイン。写真はE7系のロゴとなるが、W7系では「JR WEST JAPAN〜」となる。

E7系が落成した直後はロゴマークがなくどうなるものかと思っていたが、営業運転開始までに貼り付けされた。


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行先表示はもはや定番のフルカラー式を採用。3色LEDのE2系では見られなかったが「あさま」は青地となる。またE5系のようにグランクラスマーク、グリーン車マークも表示される。


●編成バリーション

大きく分けるとJR東日本が所有するE7系と、JR西日本が所有するW7系が存在する。増備期間が短いこと、ある意味登場時から完成されている(新要素が少ない)ためか、増備過程での仕様変更によるバリエーションには乏しい(とうかほとんどない)。

編成 所有者 編成番号 両数 MT比 番台 特徴その他
F JR東日本 1〜18 12 10M2T 0 E7系。東京〜金沢間で運用中。
W JR西日本 1〜11 W7系。東京〜金沢間で運用中。

●F編成

JR東日本が所有する「E7系」と呼ばれる編成。F編成はかつて200系の12両編成、240km/h対応車が名乗っていた。12両編成は東北・上越新幹線開業以来の伝統的な両数で、E1系引退でいったん途切れたがE7系で復活した。前述のとおり性能要件的に技術先進性はない車両のため、量産先行試作車は製造されることなく第1編成から量産車となっている。2014年3月から東京〜長野間の「あさま」、2015年3月の金沢延伸後は「かがやき」「はくたか」で活躍中。富山〜金沢間のシャトル列車「つるぎ」にも充当されることがある。

Rapid様、キサロハ様より、E7系「つるぎ」の運用情報をいただき記事を修正しました。情報提供、誠にありがとうございます(2015/4)。

●W編成

JR西日本が所有する「W7系」と呼ばれる編成。W編成は500系の16両編成が名乗っていたが、東北新幹線系統にはもともとW編成が存在しなかったので、JR西日本(WEST)としてわかりやすい記号だったといえる。車両・編成はF編成とほとんど同じであり、形式番号とロゴマーク内の文字(「EAST」→「WEST」)が異なる程度である。営業運転開始は2015年3月の金沢延伸後からで、E7系と同様「かがやき」「はくたか」に充当されているほか、富山〜金沢間のシャトル列車「つるぎ」で活躍中。また、一部「あさま」でも運用されている。

ゆのまち様より、W7系「あさま」の運用情報をいただき記事を修正しました。情報提供、誠にありがとうございます(2015/4)。
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東京駅に入線したW3編成。見た目はE7系とほぼ同じだが所有はJR西日本。東京駅23番線に入線すると、東海道新幹線側のJR西日本所有車と並ぶことも?

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ロゴマークもE7系と共通だが「WEST JAPAN」になっている。E7系との差異といえそうな箇所はここだけで、その他の外装・内装ともに違いは見られない。ただし、車内のチャイムは異なっていて、W7系は東海道新幹線系統のJR西日本車と同じく「いい日旅立ち」が採用されている(E7系は上越新幹線と同じ)。


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形式番号は「W」から始まる。番台区分はE2系・E5系に準拠したE7系とは異なり、W7系ではユニットごとに100番台を加算する独特な付番となっている(そのため、厳密には0番台が存在しない)。所有者で(E7/W7系は事実上)同一形式の番台区分が異なる新幹線車両は本形式のみである。

東海道新幹線系統のJR西日本車のJRマークはブルーになるが、こちらは他の東日本車と同じグレーとなっている。


●筆者の所見など

筆者は当初、E7系は金沢開業時まで運転しないものだと思っていた。車両の登場が早くてもしばらく試運転を行うのだと。ところが量産車は次々と出てくるし、トミックスが模型の製品化発表したタイミングも早すぎるのでは?と何がなんだが・・・それがとりあえず、「あさま」で運用開始ということでようやく納得した経緯がある。

筆者が新幹線の新形式と接する場合、もはや模型の発売タイミングとは切り離せない状況になってしまっているのだけど、トミックスのE7系は当初2014年3月とされていた中、大宮駅に試運転列車を狙いに行くもことごとく外れ(試乗会も行われていたが都合上行けず)、なかなか実車を見ることが叶わなかった。結果的には模型は発売延期となったため、営業運転開始後の撮影でも十分間に合う状況になったが、東京駅ではかなりの人気でギャラリー多数。撮影(情報収集)にはなかなか苦労することに。

また、E7系は運転区間が短いこともありE5系・E6系デビュー時に比べたら日中でも東京駅で見る機会は多かったものの、発着番線の都合上ディテール、特に下回りの撮影には制約を伴った。

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営業運転開始以来、2014年5月時点ではE7系充当列車の東京駅発着番線は20番線か23番線しかなく、形式写真や下回りの撮影には大きな制約があった。20番線なら東海道線10番ホームから撮ることはできるが、ご覧のとおり床下や顔にフェンスがかかってしまう。

23番線は東海道新幹線側から狙えるが、やはり下部にはフェンスがあるうえ、東海道新幹線列車が止まっていたらその時点でアウト。しばらくはE7系の増備と21・22番線入線列車の設定を待つしかなかった。


E7W7系レビュー0318 E7W7系レビュー0318

2014年8月、ようやく日中に21・22番線に入線する列車が登場。東京駅での他形式との並びも実現した。隣のホームに併結列車でも来ない限り、写真のように前後2両はかぶることなく先頭形状も床下も撮り放題という美味しい状況に。

E7/W7系の人気は上々で、最近はTV番組等でも新幹線が特集されることが多く、それだけ一般への認知度が高くなったこともあるだろうけど、車両自体のデザインが良いことも無関係ではないだろう。

もちろん、これは何度か触れたように性能要件が低いことによる余裕であり、E5系のように300km/h以上出るようなモンスターマシンと優劣比較はできない。それでも、フル規格車両ながら「見てくれのデザイン」をきちんとやっているのは感心。E6系に続き奥山氏がデザインを担当することになったが、E6系が効率重視の先頭形状をなんとか上手くまとめ上げたという感じなのに対し、E7/W7系は形状自体に無理がなく、素直に「カッコいい」と思わせる何かがある。

また、各部のディテールを見ても、同世代のE5系、E6系をベースにしつつ速度に合わせてE2系レベルの仕様が散見される。その上で、先頭車の検電アンテナは700系・N700系、グリーン車の内装はN700系S・R編成、運手席のキャノピーは500系、JR東日本の車両にはこれまでなかった屋根上の号車番号表記・・・いずれも性能に起因したり、JR西日本との共同開発となった結果だけども、なんかイロイロ混ざってる感が、マニア的な視点でも非常に面白い。

E7/W7系はほとんど同じ車両であり、その意味ではJR東海・JR西日本の合作N700系と同様といえる。しかし、(少なくとも見た目には)JR東海が主導し、JR西日本の意匠はほとんどなさそうなN700系に対し、E7/W7系はJR東日本が主導しつつ、JR西日本がかなりねじ込んだ印象があり、同じ車両ながらそれぞれのテイストが感じられる。

カッコよくて、面白い」。これが同形式の魅力といえるだろう。


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