●床下機器

●モールド

500系_0323

6号車などに入る526形の床下だが、全体的に細かく深いモールドのカトーに対して、トミックスは浅めのモールドでありダクト表現も横線だけと、かなりあっさりした印象である。ただ、下端に並ぶボルトについてはトミックスのほうが表現が強い。

500系_0322

先頭部分は各種パネルの分割線、ボルト位置・数、ハッチなどは両者とも再現度に大きな差はない(ボルト表現はトミックスは一部省略があるが)。モールドの濃さの差はここでも出ていて、やはりカトーの方がはっきりとした印象である。

500系_0611

海側の連結部で、500系は主に2パターンが交互に配置されているが、両者とも再現できている。10号車のみドアの位置関係でステップ位置も違うので、10号車前後は実車と異なっているが、それでも再現レベルはなかなか高いといえるだろう。

カトーはハッチやステップの縁取りもモールドしていて、やはり細かく深い。写真はないが、山側の表現もカトーの方が1枚上手な感じがする。

車体間ヨーダンパは両者とも省略。こうしてみるとカトーは連結器がないように見えるが、ダイアフラムカプラーという幌で連結する方式だから(後述)。


500系_0321

台車カバーは両者おおよそ実車の通りに再現できているのだが、ぱっと見でもわかるくらい(撮影時の露出は揃えている)パネルの継ぎ目部分のモールド深さに違いがある。直接目で見ても、ちょっとトミックスは薄すぎるような気が。

また、台車カバー中央部にあるタンク状の物体(用途不明)もカトーは上部が膨らんでいるがトミックスは分割線に合わせて平坦。実車に写真を見ると、ここはカトーの表現が正解。

余談だが実車写真の左側に写っている白い物体は300系の先頭部。


500系_0330

カトー(上)は床下底面がパネル状になっているが、トミックス(下)は完全に平面となっている。ほとんど目に入らない部分だし、実車の床下面は見たことがないので、どちらが実車に近いかは言及を避けたい(近かったところで大したアドバンテージでもないし)。

この写真でも、両者の床下モールドの濃さの差がわかる。


●バリエーション

すべて海側のみで、山側については割愛。表中の(M)は動力車、(代)は代用を示す。

使用号車 画像
A K:1
T:1
500系_0612 500系_0616
B K:2,4,6,8,10(M),12,14
T:2,4,6,8,10,12,14
500系_0613 500系_0617
C K:3,5(代),7,9(代),11,13(代),15
500系_0614
D T:3(代),5(M),7(代),9,11(M・代),13,15(代)
500系_0618
E K:16
T:16
500系_0615 500系_0619

カトー・トミックスともに4種類の床下パターンを用意している。

500系の床下は意外とシンプルで、中間の偶数号車はすべてパターンBとなっている。両者ともこのパターンは用意しているので、偶数号車に関しては代用はない。

一方、中間の奇数号車は実車では2種類の床下パターン(C・D)があるのだが、両者とも1種類しか用意してない。カトーがパターンC、トミックスがパターンDを用意しているが、その結果正しい車両と代用車両が互い違いになるという面白い結果に。代用車の数はカトーが3、トミックスが4なので、カトーのチョイスの方が一枚上手?

先頭車は言うまでもなく専用設計なので正しい床下になっている・・・はずなのだが、先頭形状のページでも述べたが、カトーはW1編成の1号車にしか存在しない乗務員扉下の切り欠きが1号車・16号車にともに表現されてしまっている。また、16号車の床下の博多寄り(写真左側)の小ダクトも(なぜか)表現されていない。一方、トミックスは先頭車に関しては特に問題点はない。

ただ、こうして見るとやっぱりトミックスはモールド薄すぎじゃない?

床下は多少実車と違いがあっても、実車のイメージを大きく損ねることは少ないのでパーツは代用されがちである(このことに特に異論はない)。考証が進んでいる近年の模型では床下を完全再現してくる例も少なくないが、500系は両者とも比較的古い設計のモデルなので、いかに人気車種といえどもその点は少し妥協が見られる。

まあ、代用といってもダクト1つがあるかないか程度の違いが3〜4両あるというだけなのだが。3〜4両が多いか否かは各自の判断におまかせするしかないが、筆者的には発売時期を考えたら妥当な線かと思う。

カトーは代用が1両少ないが一部エラーがある車両がある。そう考えると「実車の再現度」では両者同レベルといっていいだろう。しかし「表現力」となると話は別で、モールドが濃くシャキッとした印象のカトーに比べ、トミックスはモールドがあまりにも薄すぎ&あっさりしすぎ。この点は模型視点でも間近で見ても、カトーに軍配が上がると思う。

●台車

500系_0601
500系_0610

500系の台車は「軸梁式」という軸箱を片持ちで支えるというシンプルかつコンパクトな方式で、後に700系B・E編成(JR西日本所有)や、九州新幹線800系などにも波及している方式である。部品点数が少なくて済むからか、最近はJR東日本の通勤電車(E231系等)でもよく使われている。

双方の台車の上から出ている金属は集電パーツでカトーは金属の板、トミックスはスプリングという違いがあるがこれは両社の在来線も含めた他製品でも見られる違いである。

ざっと見た感じでは、カトーは台車上部の空気バネまで表現しているが、トミックスはカバーで見えない部分はばっさり省略。モールドもカトーのほうがシャープで細かい。ただし、全体的なスケール感はトミックスのほうが実感的かもしれない。ヨーダンパ(横棒みたいなやつ)の位置も実車では軸箱の高さとほぼ同じでトミックスはその通りになっているがカトーは若干下方にある。軸箱もやや大きめで全体的に骨太感が。

実車写真を見ても軸箱に対して車輪の面積が大きい(=軸箱が小さい)ことが分かる。この実車写真はヨーダンパの位置が低いように見えるが、これはホーム上の高さから撮影しているのでそう見えるだけである。模型とヨーダンパの方向が逆になっているが、ヨーダンパは全台車が車両中央方向に向いて取り付けられているから。模型でもその点は再現されているので問題ない。

500系_0602

カトーは台車が肉厚で、金属の集電板の形状も異なることがわかる。カトーは軸受け部分で集電して平板で車体に通電させているが、トミックスは軸受けで集電するも複雑な形状でスプリングを介して通電させている。

トミックスのこの方式は「新集電システム」といい、500系では2006年10月のリニューアルから採用された。それ以前は、車輪裏側の車軸部分で集電する方式だった。台車は両者ともタッピングビスで車体に取り付けられている。


トミックスの台車は連結器と一体型で、フック側とリング側という2種類の台車があり方向性がある。分解した場合、方向を間違えないように。博多寄りがフック台車、東京寄りがリング台車となる。カトーは連結器が別にあるので台車に方向性はない。

実車とは比べ物にならないくらいの急カーブを曲がるNゲージ、ましてや新幹線のように側面にカバーがある車両では台車を納めるのも苦労なのだが、500系の台車はコンパクトなおかげで特に省略される部分もなく(カバーに隠れている部分は除く)、両者とも実車の形状を忠実に再現していると言っていいだろう。

ただし、写真を見比べての通り両者の表現方法にはそれなりに差があり、モールドは細かいが全体的に骨太感のあるカトーに対し、トミックスはかなりすっきりした印象がある。

500系実車の台車は最高速度300km/hの健脚の割には華奢な感じがするのだが、その意味ではやはりトミックスはスケール感を重視しているといえるだろう。逆にカトーの骨太感は離れていても台車が少しでも見えるようにデフォルメしていると解釈したい。

●連結部分

500系_0603

カトーは「ダイアフラムカプラー」、トミックスは「改良型フックリングカプラー」という連結方式を採用している。

それぞれの連結方式の特徴は、カトー「ダイアフラムカプラー」、トミックス「改良型フックリングカプラー」、リンク先に解説があるのでそちらをご覧いただきたい。

500系_0604 500系_0605 500系_0606

カトーのダイアフラムカプラーは幌自体が連結器になっていて、連結させると内幌・外幌という実車のような構成となる。ただ、急曲線に対応するために外幌は小さめで内側への後退角も大きい。トミックスは可動幌というパーツで外幌を表現していて、幌の密着度は連結場所により個体差があるものの、真横から見たときの連続感は悪くない。トミックスは幌が可動式なのでその動きに合わせた後退角があるが、角度がそれほど大きくないことも要因だろう。連結間隔は伸縮機構を持つカトーの方が狭い。

500系_0607
500系_0608

写真を撮る前は構造が実車に似ているカトーの圧勝?と思っていたが、この角度では外幌の後退角により妻面が見えてしまう。トミックスの「改良型」可動幌はボディのプラも薄いので、むしろこちらの方が連続感を感じるくらいである。ボディの断面にきっちり塗装が回っていればもっと良かったと思うが・・・

左は実車だが・・・Nゲージでこれを再現しろというのは酷か。両者とも模型としては十分だと思うし、走らせている状況では気になるものでもない。


500系_0609

トミックスのR=317mmのカーブを通過中(アウト側)。リアリティという意味では両者ともアレだが、急曲線を曲がるNゲージである以上はやむを得ない光景である。

連結部研究のページも見ていただきたいが、両者ともそれぞれ実績のある方式を採用していて、500系ならではの特殊な連結機構というのはない。

カトーのダイアフラムカプラーは構造が実車のようで評価が高く、逆にトミックスは(500系に限らないが)フックとリングで連結し、外幌が曲線では動く方式がプラレールだとか玩具などと酷評されることがままあるのが実情だ。このことが転じて模型全体の評価に影響している例も少なくない。

しかし、トミックスのフックとリングというシンプルな構成は走行安定性が非常によく、連結方向が決まっているので使い勝手もいい。見た目についても、こうして改めて比較するとそんなに悪くないことがわかる。それなのにトミックスが酷評されることがあるのは、フック・リングの方式は玩具のプラレールと同じ方式であること、同社の0系旧製品のように初期の可動幌は見た目があまり良くなかったので、そのへんが毛嫌いされているというあたりが理由だろう。

実態よりもイメージや思想(だから厄介なんだけど)で酷評されてることへのフォローというわけではないが、使い勝手などを含めて客観評価した(つもり)の筆者としては、ハードウェアとしては両者とも一長一短で大差ないを結論としたい。

●ギミック

カトー・トミックス共に、特に「ギミック」と呼ばれるような機構は搭載していない。

●走行性能

走行性能については、メンテナンス状態、レールレイアウト、個体差などの要素があるので、あくまでも筆者の主観が強いことをお伝えしておく。また、簡単に済ませたい。

まず、両者の一番の違いは動力車の両数で、16両編成中カトーは1両、トミックスは2両となっている。筆者の環境では平坦路線しかないのだが、平坦部では両者の動力性能は大差ない。ただ、勾配がある場合は動力が2両のトミックスのほうが有利かもしれない。トミックスは2006年10月のリニューアルで動力をフライホイール搭載に変更しているが、これは実に音が静かで、スムースに走ることを付け加えておこう。

カーブ通過半径はメーカー公称値はカトーがR=315mm、トミックスがR=280mmとなっているが、カトーもR=280mmをクリアすることは可能である(このページのコラム参照)。


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