●あなたもE4系が好きになる?

筆者の偏見や妄想は相当入っているが、E4系は見た目には「カッコイイ」車両ではないと思うし、バリエーションも表立ってのものはそんなにない。その意味ではマニア受けはあまり良くないような気はする。一般的にはポケモンラッピングでの活躍、分割併合、でかくて派手な塗装などユニークな特徴をもった人気車のような気もするのだが・・・

ところが、今回レビュー記事を書いてきてE4系に対する見方が変わったような気がする。調べるうちに(細かいけど)意外とあるバリエーション、そして、700系と同様に実車はイマイチに見えていたものが、模型になるとカッコよく見える「模型映え」をこの形式も持っているということ。実車で上方から見下ろすというのはあまりないが、E4系のひょうきんな(?)外観も模型視点になると意外にもカッコよく見えるのだと認識させられた。

E4系はイマイチと思っている方も、模型を所有してみると案外意識が変わるかも?

●見た目が楽しいカトー、堅実なトミックス

E4系もカトーとトミックスで競作となったが、やはり両社のコンセプトの違いが他の模型と同様、随所にみられる。大まかにいえば、模型としての見栄えを重視するカトー、スケール感を重視するトミックスという違いである。カトーの新幹線模型では「Ready to Run」コンセプト(行先表示を印刷済みにするなど)を初めて採り入れたE4系だが、それでも「vsトミックス」という視点では、従来からのコンセプトが大きく変わったわけではないようだ。

カトーは印刷済み個所が多いし、特に屋根上の塗装・印刷個所が多いというのは上から見ることが多い模型では効果絶大で、メリハリを出すことに成功している。オープンノーズカプラーの採用、シースルー動力など新しいフューチャーも盛り込んだ上に、ヘッドライトや一部車両の室内灯の照明色を分けるなどこだわりも見せる。その結果、見ているだけでも楽しい製品に仕上がったと思うし、筆者が所有している模型の中でお気に入りの1つだったりする。

一方、トミックスは精度感やスケール感を重視しているのは従来通りで、ギミック的にも新機軸のものは採り入れておらず、真面目で堅実な印象である。細かいモールドや精密感のあるヘッドライトなどが、トミックスのコンセプトを体現しているものといえるだろう。ただし、その分カトーと比べると面白みは今一つという印象がぬぐえなかった。また、これもくどい話だが、紫苑ブルーの塗装が厚すぎてモールドが埋もれてしまうといった、生産技術的な問題も気になった。

●トミックスは少し「ズルさ」を覚えたら?

「面白み」というと語弊があるが、模型としての見栄えを良くするテクニックと言おうか、そういうのはやはりカトーは巧いなと思う。例えば屋根上に細かいモールドはなくても、銀色や黄色を入れるだけでリッチな印象が出る。こうした単純な工夫で見栄えを向上させるのは模型にとっては重要なことで、決して禁じ手ではない。工作派の人も参考にできるテクニックではないかと思う。

方針がバラバラだから面白いのだし、各メーカーが同じ方向に行くことを望んでいるわけでもない(このサイトのネタがなくなっちゃう)。それでも言えば、極端なデフォルメに走る必要はないけど、トミックスも簡単な工夫で見栄えを良くするということを、少しは採り入れてもよさそうな気がする。精度感、モールドの細かさを重視するのは素晴らしいことだが、それだけではユーザに良さを理解してもらうのは難しい。E4系に限った話ではないが、トミックスはこういう部分で評価損をしている(報われていない)気がして、ちょっと惜しいと思うのだ。

ここまでトミックスに不利なことばかり書いてきたが、カトーも問題がないわけではない。オープンノーズカプラーや1台車駆動のシースルー動力といった新しいギミックが、走行性や使い勝手に若干不安をもたらしていることは否めない。この点では、オーソドックスかつ堅実なトミックスの方が安心感があり、レンタルレイアウトとかにも不安なく持ち込めるかと思う。

結局のところ、見るならカトー、走らせるならトミックスという感じだろうか。ただ、カトーだってよほど厳しい条件でなければ問題なく走るし、トミックスの見た目もNゲージとしては水準以上のクオリティはある。なんだかんだいって両者一長一短、ものすごく差が付いているわけでもないのだ。ここで書いてあることはあくまでも筆者の主観にすぎないので、最終的には各自の価値観で評価していただければと思う。

●購入ガイド

マニアにはあまり受けが良くない(?)と思われるE4系も、一般的には人気があるのか比較的入手しやすい模型の一つである。カトーは「ベストセレクション」という商品群に含まれていて、再生産が定期的に行われているので基本セット・増結セットともに店頭ではよく見かける。トミックスはここ最近(2011年2月現在)再生産が行われていないが、あるところにはあるという感じで、絶望的な品薄状態には至っていない(どちらかといえば、Bセットの方が入手しやすい模様)。ヤフオクでも入手しやすく、プレミアが付くには程遠い状況だ。

E4系は実車のバリエーションがあまりない(あるけど細かい)ので、厳密には違いはあるのだけど実質同一プロトタイプであり、カトー・トミックスでバリエーション違いを楽しむのは難しい。どちらを選ぶかという話になったら、相変わらず進歩がない意見で申し訳ないけど、模型に一長一短ある以上、最終的には各人の好みでチョイスということになるだろうか。

もちろん両方買って並べるのもいいが、E4系は重連や「つばさ」との併結も考慮する必要があるかもしれない。カトーのE3系「つばさ」を持っていたらE4系は必然的にカトーになるし、重連のためにもう1本買うような場合も同一メーカーで揃える必要がある。両社のE4系でそれぞれ重連をやるとなると、4本も所有することになるのだ(w。こう考えると、両社の連結器に互換性があるといいのに、と思わなくもない。改造は・・・難しいだろうな。

ところで、トミックスのAセット・Bセットの選択であるが、廉価版と割り切った上で、価格が安く固定式パンタで初心者にも安心なBセットを選択するのも悪くない。しかし、前述の通りBセットをAセットにグレードアップすることはパンタ以外は実質不可能なので、こだわるならAセットにした方が無難だと思う。

8両編成というのはスペース的にも優しいし、物足りなければ重連16両で大迫力を楽しめる。E4系の実車は併結・重連とフレキシビリティのある運用が特徴だが、模型もある意味そんな柔軟さを引き継いでいるので、各自のレイアウトや予算に応じて製品選びができることも魅力といえよう。


<前ページ Speed Sphereトップ 次ページ>
<前ページ Speed Sphereトップ 次ページ>