実車について |
模型の概要&製品ラインナップ |
比較レビュー1 序・先頭形状・車体各部表現 |
比較レビュー2 屋根上・パンタ周辺 |
比較レビュー3 塗装・灯火類・室内 |
比較レビュー4 床下・連結部分・ギミック |
比較レビュー5 全形式比較 |
比較レビュー6 収納性・付属品 |
比較レビュー7 総評 |
トミックス 500系7000番台(V編成)「こだま」レビュー |
まずは先頭車を上方から。ぱっと見でもわかるくらい差があるのが屋根からノーズ部にかけてのブルー塗装で、カトーは濃く、トミックスは明るい。屋根上の滑り止め塗装もあって、カトーはより濃く見えるような気がする。
ベースのグレーはカトーの方が若干暗い程度でほとんど差はないが、窓部分のダークグレーはカトーのほうが濃い(黒に近い)。前面窓周辺や滑り止め塗装よりも濃い。トミックスは先頭部も側面も同じ濃度のダークグレーである。
窓下のブルーの帯もトミックスのほうが若干明るく鮮やかな感じ。ベースのグレー以外、カトーのほうが濃い目という感じだろうか。
先頭部運転室後方のダークグレー塗装ラインの差。カトーのほうがRがきつく深いが、こちらの方が実車に近い。カトーはモールド(別パーツ)だがトミックスは塗装。その差だろうか。
側面のダークグレーの差に比べて、こちらは両者ほとんど差がないことがわかる。
連結部はカトーは外幌が車体と一体化しているが、トミックスは可動幌となっている。可動幌パーツは3色のパーツが組み合わされたもので未塗装(プラの地色)である。印刷塗装なので仕方がないが、トミックスはボディの断面にダークグレーとブルーが回り込んでおらず、エッジ部分も塗料の乗りが悪い部分があり、連結させたときの連続感がやや損なわれているのが残念。
ノーズ部の塗装・・・え?3種!?
左と中央がカトーで、右がトミックスである。左はカトーの初期から2007年くらいまでのロットで塗装が先端まで達してなかった。もともと別パーツによる塗り分けのトミックスは当初より先端に達していたので、下の実車写真を見ればわかるとおり、この点ではトミックスに水をあけられていた。
それが2007年くらい(詳細な時期は不明)のロットから、ノーズ先端まで塗装が達するように改修された姿が中央である。ただ、この改修後の塗装は塗り分けが少しぼやけている感じで、シャキッとしていない。全体的にはピントがあっているから、ピンボケではない。
筆者がなぜ改修前と後のロットを比較できるのか?続きは本文にて。
従来の東海道・山陽新幹線の白と青の塗装とは一線を画す500系の塗装(JR西日本オリジナル塗装として、窓下の帯色以外は他形式にも波及してはいる)。ここまで見てのとおり、模型では両者の色調にはそれなりの差がある。
実車を肉眼で見るにも写真で見るにも、天候や場所、光線の向き、写真であれば露出の状態などでいくらでも色調が変化する。模型はそれらを参考にする以上、塗装を行う者(今回はカトーとトミックス)のセンスや解釈に依存する部分が多く、単純にどちらが実車に近いかどうかを決められない難しさがある。
実際に実車を見てもカトーのような色調になることもあるし、トミックスのようになることもあるので、どちらも実車をよく再現しているといえる。カトーは曇りの日、トミックスはピーカンの日に順光で撮影したような色合いだろうか。個人的には、鉄道雑誌の写真などはカトーの色調、このサイトの写真だとトミックスの色調に似ているような気もする。言い換えればプロがキチンとした機材で撮るとカトー、筆者(ド素人)がコンデジで撮るとトミックスの色調になるというか(筆者は一眼レフカメラすら持っていない)。
個人的には自分の写真の腕に近いトミックスの塗装のほうが愛着があるが(w、コントラストが強くて模型として見栄えしているのはカトーかもしれない。ここでもカトーは模型視点を重視しているといえるが、くどいようだが色調についてはどちらも正解といってよく、最終的にどちらの塗装を気に入るかは各人の好みの問題である。
全体的な塗り分けは大差ないが、ノーズ先端部分の塗装は少し(?)触れておかねばなるまい。
写真のコメントでも書いたが、カトーは発売当初は短い塗装であり、途中から先端まで塗装が伸びるように改修されたのだが、全くアナウンスされなかったので改修時期は不明である(2007年ごろと思われる)。概要編で書いたとおり、カトーは2006年10月に製品構成の変更を行っているわけだが、同時期にリニューアルし数々の問題点を改修したトミックスに対し、ノーズの塗装をはじめとする従来からの問題点はそのままだった。筆者はそれは製品に自信があったのか、あるいは改修が容易ではないので見送ったと思っていた。
しかし、その後わずか1年くらいで(しかも予告なしに)「やっぱり改修しました」というのは個人的には釈然としないものがある。「予告なしに変更されます」は別によいのだけど、見えないパーツ類ならともかく、模型の顔とも言えるノーズ部の塗装でそれをやるのは・・・新幹線模型はライトユーザが多いし、ヘビーユーザでも気にしない人はいると思うので、カトーもこの程度のことは問題ないと判断したのかもしれないが、2006年10月の商品構成変更時に同時に対応しておけばもっとスマートだったのではないだろうか。
さすがに現在はロットが一巡して改修後に統一されていると思いたいが、この結果改修前と後のものが混在して市場に出回り、しかも店頭でパッケージを見るだけでは判別もつかないという状態になってしまった(パッケージは現在に至るまで変わっていない)。これでは一部ネット上で「闇改修」と揶揄されることもむべなるかな、だ。
そんな筆者の所持品だが、改修前と後のロットを両方持っているわけではなく、4両基本セット1つで上の写真が撮れている。つまり、521形は改修前、522形は改修後が混在しているセットを持っているということである。・・・いや、白状すると混在していることがわかっていてヤフオクで落札したセットである。このサイトを立ち上げることを決めた後の購入だったので、改修前後が同時に手に入るというのは筆者にとっては都合がよかった(増結セットは別途購入)。・・・ただ、筆者のように変わった目的で購入するならともかく、普通の方が購入することを考えたらロット管理に問題があるような気もした(レアケースだとは思うが)。
500系は先頭部の「JR500」こそインパクトがあるが、その他は形式番号・号車番号と標準的なものとなっている。
522形の先頭部だが、カトーはJRマークが、トミックスは形式番号が印刷されていない。また編成番号(実車写真のW9)も両者印刷されていない。トミックスの形式番号はインレタで表現できるが、カトーのJRマークはフォローがないので完全な省略となる。
「JR500」のロゴは大きさ・位置ともに両者大差はなく、実車と比べても適切だと思う。
比較的にぎやかな8号車。グリーン車マークの緑はカトーが「いかにも緑」なのに対しトミックスは少し薄い。左の実車写真ではトミックスに近いようだ。もっとも、個体差や経年によって色が変わることもあるので、これも解釈の差。どちらが間違っているわけでもない。
前述の522形と同じく、JRマークと形式番号がそれぞれ互い違いに印刷されているが、全体的な印刷位置関係は両者大きな問題はないようだ。
両者の印刷状況を一覧で見てみよう。
表記箇所 | カトー | トミックス |
形式番号 | 印刷済み | なし(インレタ) |
JRマーク(1、8、16号車) | なし | 印刷済み |
号車番号 | 印刷済み | 印刷済み(4・6・12・14号車はインレタ) |
禁煙マーク | 印刷済み | なし(インレタ) |
グリーン車マーク | 印刷済み | 印刷済み |
車椅子対応マーク(11号車) | なし | なし(インレタ) |
「JR500」ロゴ | 印刷済み | 印刷済み |
行先表示 | なし(ステッカー) | なし |
編成番号(前面窓) | なし | なし(インレタ) |
編成番号(1・16号車乗務員扉窓) | なし | なし(インレタ) |
編成番号(先頭車側面下部) | なし | なし(インレタ) |
業務用扉表示(7、11号車業務用扉窓) | なし | なし(インレタ) |
屋根上号車番号 | なし | なし(インレタ) |
カトーは基本的な部分は印刷済みであり、トミックスはそれより若干印刷箇所が少ない感じである。ただし、トミックスはユーザが手間をかける必要があるものの、付属のインレタをすべて施工すれば非常に充実した表記類が楽しめる。逆にカトーは印刷されていない箇所は「非対応」であり、その点はトミックスに軍配が上がる。
カトーのアドバンテージは側面の行先表示ステッカーが付属すること。トミックスはこの点まったくフォローされていないので、自作するかサードパーティ製か、このカトーのステッカーを流用するしかない。
ステッカーの内容は東京と博多、座席表示は指定席だけというシンプルなもの。実車は(というか「のぞみ」は)2003年10月から1〜3号車が自由席になったがそれは再現できない。また、東京・博多以外の運用がないわけでもない。
500系が華々しく活躍していた時代から一度もステッカーが刷新されなかったことが原因ではあるが、「500系W編成は東京〜博多のぞみでキマリ!全盛期を再現できれば十分!」というのも潔いとは思う(個人的にも全車指定席の時代のほうが思い入れがある)。
なお、このステッカーだけでは16両分(しかも両側)足りないような気がするが、基本セットと2つの増結セットにそれぞれ1枚づつ、フル編成で合計3枚用意されるので心配無用だ。
一方トミックスにはインレタが付属する(画像クリックで拡大)。上の一覧で挙げたもの以外に、5・13号車床下に貼る「はしご位置表示」、W1、W2編成のホクロ(実車編参照)を再現する「点検窓」、付録として屋根上の注意喚起表記なども収録され、非常に充実した内容となっている。1枚で16両編成が賄えるが、フル編成で揃えれば2枚用意されるのである程度失敗してもリトライできる。
ちなみに、2006年10月以前のリニューアル前にもインレタが付属していたが、形式番号と一部の号車番号が収録されていた程度で、現行製品よりもかなりシンプルだった(形式番号はW3編成が印刷済みだった)。
形式番号と編成番号はW1、W2、W8、W9の4種類が用意され、W1編成は実車と異なってしまう部分(量産車との差異)もあるが、それ以外の編成はどれでも問題ない(W2編成はホクロを忘れないように)。なお、4・6・12・14号車のみ号車番号がインレタになっているが、これらの車両は単品発売で印刷なしの状態であるため、そのフォローである。
禁煙マークもインレタになっているので、以下に挙げた実車の禁煙車の変遷を再現できるようになっている。
なお、東海道・山陽新幹線では2011年3月から3号車が新たに禁煙車になったが、W編成が引退した後の話なので適用外である。ちなみに、V編成は全車禁煙(喫煙ルームはある)となる。
カトーは禁煙マークが印刷済みなのだが、印刷されている車両は1・2・7・8・13号車のみで中途半端である。こだわるなら、トミックスの禁煙マークインレタを流用・上書きするのがいいかも。そもそも、形式・編成番号以外のインレタであれば、カトーに流用してグレードアップというのも十分アリだ。
ついでに書くとこのインレタ、2006年10月リニューアルの初回ロットは屋根上号車表示の8号車分がないというリコールがあった。筆者もそれを買ったクチだがただちに対策が取られ、公式サイトのWebフォーム入力することで修正版がほどなく送られるようになっていた。インレタの右上に「Ver.2」と書かれているのはそのためである。現在発売中のものは問題ないはずである(長期在庫品とかでなければ)。
実車でもインパクトのある「JR500」ロゴだが、両者とも微妙に斜めっていたりするのは車体が円錐状になっているので技術上やむを得ないのだろう(トミックスのほうが前方寄りが下がっている傾向がある)。
カトーは521形と522形で文字の太さが若干異なってるが(521形は「WEST JAPAN」も薄い)、トミックスは比較的安定している。模型視点で見る分には大差ないので、両者とも特に問題はないといってよいだろう。
形式番号の比較だがトミックスは白色プラ版に転写したものである。一番下の2つは実車。
カトーは車両ごとにカスレがあったり薄くなっていたりと印刷品質の安定度に欠ける。一方トミックスは安定はしているがインレタのせいかシャキッとした感じがしない(施工者の腕もあるかも)。
文字のカスレを別にすれば、フォントはカトーのほうが似てるかもしれない(特に3段目の527-700形)。
号車番号もカトーには文字カスレが見られる。それぞれ2枚あるのは東京寄りと博多寄り両側を撮ったからだが、カトーは車体全体を横から見た場合に「八」のようなイメージで少し斜めっている。円筒形の車体が原因なのかもしれない。トミックスはその点は安定しているし、下の実車写真と比べてもフォントも似ているようだ。
11号車にある車椅子対応マークはカトーにはなく、トミックスのインレタに含まれるだけである(カトーに流用可能)。
ところで、印刷品質はかなり拡大して撮影しているので、形式番号も含めて模型視点で見る分にはほとんど問題はないことを付け加えておく。自覚しているが、このサイトの指摘が細かすぎるのである。
グリーン車マークは前述の通り緑色の色調が異なる。大きさについてはトミックスの方が適正っぽい。印刷品質はどちらもきれいに印刷できていると思う。
カトーの号車番号が斜めっているのは、この写真でも確認できると思う。
すぐ上に実車の写真があるついでに、禁煙マークには白地があるのだが、カトーは禁煙マークがそのまま印刷されてしまってる。トミックスはインレタだが白字は再現されている(写真では施工していない)。この白地がうまい具合にマスクしてくれるので、カトーに流用・上書きしても問題ないと思う。
カトーは形式番号や号車番号といった必要最低限の印刷はすべて実施済みであり、行先表示のステッカーがつく構成だが、これは同時期の同社製品(100系グランドひかり、700系など)に準じた構成である。ユーザが手を加える箇所は少なく楽であるが、現在の水準では編成番号などが省略されていて少しさびしい印象はある。近年の同社は「Ready to Run」と称して行先表示まで印刷済みにして充実しているが(これはこれで意見があると思うが)、500系発売の頃はそこまで印刷には配慮されていなかったのでやむを得ないだろう。
あとは印刷品質が若干悪い個所がある。グリーンマークや「JR500」ロゴはそんなに悪くないのだが、形式番号・号車番号にはカスレがあり、どちらも模型視点ではあまり問題にならないのは確かだが、特に形式番号は至近で眺めていてもけっこうわかってしまう。印刷品質は500系に限らず見受けられるカトーのウィークポイントでもある。
一方のトミックスは購入状態ではカトーよりも印刷が少ないくらいだが、付属のインレタをすべて施した場合は近年の各社のモデルと比較しても遜色ない印刷表記が楽しめる。
インレタ付属は同社の製品ではおなじみで、写真コメントでも述べたが初期の500系発売時はもっとシンプルなインレタだったが、2006年10月以降は形式番号などのほか「グレードアップ用」という編成番号やその他表記類が収録され内容が充実した。2000年代に入ってから同社製品はインレタが充実していくのだが、500系をはじめとして、E2系や0系などがリニューアルした時もインレタの刷新・充実が図られ、同社の定番手法となっている。
この500系のインレタは同社の公式サイト「情報室」ページでもアピールしていた自信作で、その内容の充実度はすでに挙げたとおりで、同社の他製品のインレタと比べても一歩抜きんでている感じがする。裏技的だがカトーに流用することもできるので(トミックスをフル編成でそろえると1枚余る!)、非常に利用価値の高いインレタといえよう。
ただ、問題点がないわけではない。それは仕上がりがユーザの技量に左右されること、そもそも作業は大変手間がかかるという点。インレタ貼りは難しい作業ではないが細かい表記もあるし、きちんと貼らなければ(斜めってたりしないように)台無しである。
また、16両分を施工するというのはかなりしんどい。グレードアップ用なども施すとかなりの労力で、これは工作が好きな人(筆者含む)には逆に楽しめる可能性もあるが、最近のカトーが「Ready to Run」と称してなにからなにまで印刷済みにするのはユーザの工作離れがあるからだそうで、向かない人には苦痛でしかないかもしれない。特に新幹線はライトユーザが多いと思われるので、そのへんのギャップが気になるところだ。
トミックスのインレタレベルの表記をすべて印刷済みにしたらコストに跳ね返るだろうから、どのレベルまでインレタを施すかもユーザ任せにするのは間違っていないが、ユーザを選んでしまう気もする難しい問題である。しかし、このインレタはその労力が報われるほどの効果はあるだろうし、自分で作業したものは愛着もわく。工作が苦手という人もチャレンジする価値があると思う。
言うまでもなく、両者ヘッドライト・テールライトともに点灯する。ただし、ヘッドライトはご覧のとおりかなり色が異なる。これは光源にカトーは白色LED、トミックスは黄色LEDを使用しているから(カトーも初期製品は黄色LEDだったらしい)。実車は電球色(シールドビーム)なので、どちらもリアリティという意味ではいまひとつか。ホワイトバランスの問題か、カトーはこの写真だと電球色っぽいが肉眼で見るとかなり「白」という感じである。
ヘッドライトの点灯具合を角度を変えて見てみる。上段と中段の写真だとトミックスは強く光っている個所があるが、カトーはほとんどない。
実はカトーは見る角度によっては暗く感じる。周りが明るい環境だと点灯しているのかどうかもわからない場合もあるくらいだ。そして、斜め上方や真上から見ると強く光る場合がある。トミックスは上方から見るとライトの先端が光る傾向があるが(プリズムの特性か)、全体的に光量は安定しているし周辺の環境によらず点灯が認識できる。
下段の写真はカトーのライトパーツは前方から挿し込む構造、トミックスは下からはめ込む構造なのがわかる(カトーはライトからボディの断面が見える)。
実車のライトはこのように片側2灯になっているが、残念ながら両者ともそこまでは再現できていない。まあ、Nゲージでこれを再現しろというのは酷だろう。
くどいようだが安易な分解はしないようにお願いしたいが、先頭車を分解すると光源のLEDはこのようになっている(黄色○がヘッドライト用)。
青い下矢印が先頭台車の中心位置となるが、それに対するLEDの位置がかなり異なることがわかるはず。カトーはとにかく前方に寄っている。
このことは横から見てもわかる。赤○はテールライト用で、こちらも位置に差はあるがヘッドライト用ほどではない。
カトーのテールライト用LEDは透明(うっすら赤い)だが赤く光るし、トミックスのヘッドライト用LEDは透明だが黄色く光る。LEDは発光色と見た目が一致していない場合ことが多くて奥が深い。
この光源とボディを組み立ててみると・・・白い枠はボディ側のヘッドライトがある位置で、黄色○が光源のLED、黄色い縦線はLEDの先端部を示している。こうしてみると、トミックスはヘッドライトのプリズムの後方からLEDが照らしているのに対し、カトーはヘッドライトのほぼ真下から照らす構造なのがわかる。
カトーの白色LEDは直接見ると目がやられそうなくらい高輝度なのだが、高輝度白色LEDは指向性が強く光が拡散しないことが多い(スポット的)。このように真下にLEDを配置しても前方は強く照らすが、上部にはあまり光が回らない。カトーのヘッドライトの光量不足はこの構造が原因である。ただし、上方から見るとライトからLED本体が見えることがあり、その場合は強く光って見えるのである。
おそらく黄色LED時代はある程度拡散するタイプを使っていて、それなりの光量は確保していたのではないだろうか。しかし、設計はそのままで指向性の強い白色LEDに交換したので、光軸があさっての方向を向いてしまい、光のほとんどをロスしているのではないかと推測する。
テールライトは両者とも窓ガラス内側で光るようになっている(Nゲージサイズでこれはお見事)。光量や色味はほとんど差はないが、形状は正方形に近いカトーに対してトミックスは横長となっている。
実車は横長なので(実車編も参照)、形状はトミックスのほうが似てると言えそうだ。
テールライトのパーツでも形状の差がわかる。ライトのプリズムはカトーが赤、トミックスが透明となるが光源はどちらも赤色LEDなので点灯結果は変わらない。
車体に組まれた状態での消灯時はどちらも黒くしか見えないので、分解しないとわからない差である。
正面から見た場合の形状はトミックスのほうがよさげに思えるが、斜め上から見ると立場が逆転。カトーは上方からでも点灯している状態がわかるが、トミックスは点灯がまったくわからない。
これはトミックスはプリズムが少し奥まっていることが原因。実車は奥まってないし、模型では上方から見ることが多いからこれはちょっといただけない。もっとも、実はパーツの精度が悪いだけなので調整は可能である。調整方法は後のページで後述したい。
最後に周りを暗くして光漏れのチェック。カトーはLEDがあさっての方向を向いてる割には、前面窓内一部とテールライトに少し光が漏れる程度で済んでいる。一方、トミックスは前面のブルーの塗り分けを別パーツでやっているので、パーツの合間から少し光が漏れてしまっている。前面窓もプリズム状になってしまうのか、窓枠にも光が回っている。
テールライトは逆にトミックスのほうが光漏れがなく(窓の縁に少し反射があるが)、カトーはヘッドライトに赤い光が漏れてしまっている。
もっとも、どちらも部屋をかなり暗くしないとわからない程度の漏れなので、一般的な環境ならほとんど気にならないだろう。
今回は分解までして両者を比較してみたが、やはり500系の鋭い先頭形状に起因する構造や設計の苦労がうかがえた。もし現在新規制作したとしても、実車のような4灯式にするのは並大抵のことではないだろう。両者とも10年以上前の設計だし、Nゲージとしては十分な仕様なのかもしれない。
どちらが優れているか・・・設計段階から異なるし、点灯している結果も一長一短である。これは各人の好みで判断していただきたい問題で、はっきりいって優劣をつけるのは難しい。いずれもNゲージとしては及第点だと思うし、カトーは光量が足りないとか書いたが、上方から見れば強く光る場合もあるので模型視点であれば十分なレベルに達している。
ただ、これは発売時期が古いこともあるのだが、ヘッドライトの色はカトーもトミックスも実車とかけ離れているので、そろそろなんとかしてもいいような気がする。500系が発売された時期は安価な黄色LEDを選択せざるを得なかったのだろうが、最近は模型でも電球色LEDを採用する事例が増えてきたので、今後のリニューアルでの採用を期待したいところである(※トミックスの「さよならのぞみ」セットでは電球色LEDが採用されている)。
両者とも右からグリーン車、普通車、動力車。カトーはグリーン車が動力車になっているが、トミックスは普通車が動力車である。普通車は2+3列、グリーン車は2+2列の配置もきちんと再現されているのだが、カトーの動力車はグリーン車にも関わらず座席配置は2+3列。ほとんど目立たないので問題ないが、ほかの車種のシートの流用だろうか(トミックスも流用だとは思うが)。集電板がむき出しになっている箇所があるのも特徴である。
カトーがグリーン車・普通車とも明るいグレー1色で済ませているのに対し、トミックスは実車の普通車がパープルグレー、グリーン車はウォームグレーとなっているのをシートの色を分けて再現している(実車のシートはもう少しパープルが強い気もするが)。
床部も含んだシートパーツはカトーのほうが狭い。これはカトーの側面窓ガラスが奥まっている(先頭形状・モールドのページ参照)ので狭いのだろう。シートもトミックスに比べると合わせて狭くなっている。
また、床下とボディをはめ込むツメの部分で両者ともシートに切り欠きがあるが、最小限に抑えているトミックスと比べると、カトーはかなり切り欠いている。
シートが上記のような様子なので、窓の外からシートが目立つのもトミックスとなっている。カトーは窓ガラスがスモークになっていることもあるがシートを視認しにくいのに対し、トミックスは走行中などの模型視点でも普通にシートが見える。
カトーはシートが大きく切り欠いている個所があると書いたが、間近で見た場合は窓の外からそれが見えてしまう場合がある。
トミックスの普通車は2・4・6・12・14号車(526・528形)はシートの位置が他の車両に比べて少しずれている。1段目の他の普通車に対して、2段目の写真はシートが少し前方にある。これはシートパーツを共用しているからだが、526・528形は微妙に位置が合わないのだろう。一方、写真は用意しなかったがカトーにはこのズレは見られない。
グリーン車も8号車(3段目)と9・10号車(4段目)でわずかに差がある(正しいのは8号車)。カトーはやはりズレは見られないのだが、どうやらトミックスの中間くらいの位置にセットして、両者の差分を吸収しているようである。
前述の通りトミックスのほうが外からシートが目立つので、気になる人には気になるかもしれない・・・気にしなければ大した問題ではないのだが。
通常の状態では気付きにくいシートの色分けも、室内灯を組み込むとそれなりに差はでる。ただ、シート地がブルーで派手な700系やN700系に比べると、500系はそれほどの差にはなっていないようだ。こうしてみると、カトーはシートが奥まった位置にあることがわかると思う。
車内表現はトミックスのほうが凝っている印象がある。カトーは構造上やむを得ないがシートが外から目立たないし、逆にトミックスのほうが模型視点で目立つというのは珍しいパターンである。
重ねてのお願いであるが、くれぐれも安易な分解は避けていただきたい。特にカトーは分解しづらく下手すると破損の恐れがある。工作の心得がなかったり、自己責任でできない人は分解しない方が無難である。
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