●屋根上表現

一見真っ白でシンプル、ぱっと見では差がわかりにくいN700系の屋根上だが、表現方法にはやはり違いがある。

●滑り止め表現

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うーん、とてもわかりづらい。左に図を描いてみたが、屋根上には滑り止めというザラザラな部分(検査時などに作業員が屋根を歩くためのもの)が、オレンジ色のラインのように引かれている。

どちらもザラザラがモールドで表現されているのは同じだが、カトーのほうが表現は強いようだ。従来のカトー製品(500系や700系)ではモールドではなく塗装で表現していたのだが、N700系では宗旨替え…というよりも、実車がデビューして間もない時期だったため屋根もそれほど汚れておらず、塗装表現にしなかったのだと推測する。一方、トミックスは従来よりモールド+無塗装が基本であり(JR東日本の車両は別)、N700系もそれを継承している。

細かいことだが、トミックスはなぜか滑り止めが車体中央部分で抜けている部分がある。下の実車の写真の通り、ここはつながっているのが正解だが・・・よっぽど近くで見ないと認識することはできないので、大した問題ではないと思うが。

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カトーのもう一つのポイントはアルミ押し出し材の継ぎ目を表現してきたこと。左の実車写真で屋根上にラインが数本走っているのがそれで、700系やN700系のようなアルミダブルスキン構造ならではの継ぎ目である(すれ違っている300系には無い)。このラインを表現した製品は、カトーのN700系が初めて。


●検電アンテナ

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先頭車後方に位置する検電アンテナは、位置・形状ともに差がある。両者ともパーツ自体は0系のものと共通のようで、N700系だけでなく他の製品にも使いまわされている。まあ、特定の形式のためだけに専用設計するようなパーツでもないとは思うが…

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その上で実物と比較すると、強いて言うならトミックスのほうが近いような気がする。先端は実車と比べて太いが、Nゲージではこのくらいが限界だろう。


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位置はカトーが車端に近くトミックスが遠いが、実車の写真を見る限りは車端からの距離はアンテナ根元長×1.5くらい。模型でも両者そんな感じなので、どちらが間違ってるとも一概には言えない。アンテナのサイズ(根元幅)がそもそも異なるし。

なお、カトーにはアンテナ台座部分にモールドがあるが、トミックスはフラットな屋根板そのままだ。


●高圧線ジョイント

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N700系は屋根に高圧線が引き通しされているが、車両間は500系や700系のように「直ジョイント」という方式で接続している。

ジョイント自体の大きさや形状、位置は両者ほとんど差はないが、カトーは車端にケーブルが伸びていて、トミックスは省略されているという違いがある。これは従来製品も同じなのだが、従来のカトーはジョイントから車端までまっすぐケーブルを延ばしていたのに対し、N700系では山側にカーブを描いている。

左の写真は手前がN700系(汚れがすごいなあ)、奥が300系なのだが、車両間のケーブルがN700系は明らかにたるみが大きく、カトーはこれを再現したのだと思われる。すべて山側に向けられているのも実車通りだが、さすがに車体間をつなぐケーブルは省略されている(そもそも再現は難しいのだが)。ケーブルを黒で塗ってやるとよさそうだ。

なお、カトーの屋根上には号車番号や注意喚起の赤い枠線などが印刷されているが、トミックスも付属のインレタを施すことで同等の表現ができることは付け加えておく(筆者のは施工していないだけ)。

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実車の3・6・11号車の東京寄りは大型のジョイントになっていて2本のケーブルが生えている。1本は車体に引き込まれてモーターなどに電力を供給するわけだが、この大型ジョイントを再現しているのはカトーのみで、トミックスは通常のジョイントのままである(写真は模型・実物共に6号車東京寄り)。


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カトーはケーブルが屋根と接触するあたり(ケーブルにはローラーがついている)の滑り止めが少し逃げているところまで再現していて、とにかく芸が細かい。

カトーがここまで作り込めるのはボディを16両分作り分けているから。トミックスは4・6号車のボディが共用なので、すべての大型ジョイントを省略せざるを得ないのである。


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14号車東京寄りの高圧線引き通しの終端部分だが、カトーは少し中央からずれているのに対しトミックスはまっすぐ。


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実車の14号車も中央からずれて車体に引き込まれているため、カトーの方が実車に近いといえる。カトーは車体に引き込まれている部分もきちんと表現しているが、トミックスの終端はそのまま切れているだけである。


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3号車の東京寄りだが、トミックスはジョイントが省略されている!?…が、ジョイントが別パーツで用意されているので問題ない。ただし、本来はカトーのように大型ジョイントであるべきだが、通常のジョイントで妥協することとなる。


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下の写真の上がジョイントのパーツで(下はパンタ車用パーツ)、治具も付いているので位置決めはしやすい。取り付けはゴム系接着剤か両面テープで。

ただ、3号車は専用ボディなので別パーツ化の意味が不明。同社のN編成(3000番台)の3号車にはジョイントがモールドされているからなおさらで、ユーザの手間が無駄に増えてるだけのような…


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8号車と10号車の屋根上(写真は8号車)には赤枠で囲まれた箇所があるが(業務用室の上にあるのでハッチだと思う)、カトーはここもモールドして再現。トミックスはインレタ(赤い枠線収録)でハッチの再現は可能だが、ハッチ部のモールドは特にされていない。


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実車の写真を見ると、この部分がハッチであることを裏付けるかのように滑り止めの範囲が広いが、カトーはハッチ部分のモールドに加えて、この広くなった滑り止めまできちんと再現していて非常に凝っている。


●ケーブルヘッド

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編成の中央に当たる8・9号車間は「傾斜型ケーブルヘッド」で高圧線を渡している。N700系では全周幌への干渉を避けるためかガイシ(巻貝みたいな奴)の位置が高く、ずんぐりしたスタイルが特徴である。両者のガイシの間隔に差が大きいが、これはガイシの位置の違いに加えて、連結間隔の差も関係している。トミックスの場合は連結間隔が広いので、その分ガイシの距離も開いているという具合。

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実車(Z41編成、出場直後の試運転中なので真っ白!)のずんぐり感やサイズ、車端からの位置、ガイシの太さや角度など、トミックスのほうが似ている印象だ。

カトーの場合は傾斜部が長くてその分スマートになってしまっている。ガイシも短くて(トミックスもそうだと思うが、他製品の流用?)、角度もあまり立っていない。実車はガイシ先端と車端はほぼ同じくらいだから、その意味でもカトーは少しはみ出し気味だ。

鉄道模型は実物よりも上から見ることが多い。そのため、床下と比べると屋根上の表現というのはメーカーにとっても腕の見せ所である。しかし、0系や200系の時代と違い近年の新幹線車両の屋根はシンプルなので、その見せ方には苦労していることも確かだろう。

従来はトミックスはモールド、カトーは塗装と屋根上の表現が異なっていた(例外もある)。N700系ではカトーもモールドによる表現となったわけだが、同じモールド表現でもカトーには気合、トミックスには妥協というイメージを抱いたのが正直な心境である。

誤解しないでほしいのだが、筆者は模型において「妥協」は悪いことではないと考える。メーカーだってコストを考えるし、大部分のユーザが満足するレベルで妥協するからこそ、現在の価格で提供できるのである。カトーだって他製品では妥協と思われるような例はいくらでもある。トミックスの屋根上表現は量産車発売まで見越したボディの共用が要因ではあるけど、それによってユーザに提供する商品のラインナップを増やそうという方向性もまた正しい。

現実問題、トミックスの表現でもN700系のイメージを損なうわけではないし、問題はない。しかし、それはそれとして大部分の人が気にしないようなところでも、ほとんどパーフェクトに再現したカトーの仕事ぶりは評価するべきだと思ったし、伝えるべきだと思った。

●パンタグラフおよび周辺

サンプルは5号車(785形)だが、12号車も同じである。

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全体的なイメージは特に差はないが、カトーのほうがグレーが濃く(写真では露出の差が出てしまったようで、実際の差は少ない)、パンタ台座の光沢が強いという特徴がある。左は実車のパンタ。


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カトーは若干台座の位置が高いが、パンタをリフトした時の高さは両者ほぼ同じ。パンタ関節部が少し太くなっているトミックスのほうが実車に近いか?微妙な差だけど…


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この写真だとパンタのグレーの濃さの違いがわかるだろうか。全体的に、トミックスのパンタは本体も台座もシャープな印象。トミックスは台座のボルトの穴や、架線と接する摺り板も表現されているがカトーは省略。

なお、一見1本のアームに見えるN700系のパンタだが下半分がパンタ台座に隠れているだけで、実は「<」の形をしたシングルアームパンタである。しかし、模型では両者とも1本のアームによる表現だ。素材はいずれも軟質プラである。細かくでデリケートなパーツなので、取扱いには注意。

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パンタ台座は、カトーのほうが幅が広い。パンタカバーもカトーの方が肉厚で、全体的に骨太感がある。

注目すべきはパンタ下(カバー内部)の表現で、カトーは高圧線やその他装置までモールドされていて細かい。一方、トミックスは最低限の表現で済ませている。覗きこまないとわからない部分なので、致命的な差ではないと思うが。

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パンタカバーのモールド表現はトミックスのほうがシャープ…というより、カトーは塗装の厚みでややボッテリしている印象。トミックスはパンタカバーがボディとは別パーツになっているのに対し、カトーはボディと一体成型。そのへんの差も関係しているのかもしれない。トミックスのパンタカバーは一体成型と勘違いするほど車体との接合がよいことを書き加えておく。

ところで、実車のZ0編成にはパンタ車の車端寄りに点検用の投光器を備えているが、これは別パーツによって表現することになる(前述の別パーツ写真参照)。これも治具があるので位置決めしやすいが、ユーザによる作業が必要だ。

別パーツ化した理由としては、量産車の発売を見越してのものだろう。パンタ車には喫煙ルームがないので、ボディだけならZ0編成・量産車で共用できるはずだが、もし投光器がモールドされていたら、量産車のパンタ車はボディを新規作成する必要がある。別パーツ化のおかげで、後で発売されたN編成のパンタ車(5・12号車)はボディ流用で済んでいる。妥当な判断だったといえるだろう。


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