実車について |
模型の概要&製品ラインナップ |
比較レビュー1 序・先頭形状・車体各部表現 |
比較レビュー2 屋根上・パンタ周辺 |
比較レビュー3 塗装・灯火類・室内 |
比較レビュー4 床下・連結部分・ギミック |
比較レビュー5 全形式比較 |
比較レビュー6 収納性・付属品 |
比較レビュー7 総評 |
カトー・トミックスを見比べてまず目立つのが、屋根上滑り止め(作業員が歩くための目印)の表現である。
カトーは滑り止めのラインをグレー(やや濃いめ)の印刷塗装で表現していてかなり目立つ。一方、トミックスはザラザラのモールドで表現しているが塗装がないので目立たないと対照的だ。
カトーは屋根中央を通る高圧線の上にも印刷が施されているが、本来ここには滑り止めはない。印刷工程上やむを得なかったのだろう。
左の写真のように、トミックスの滑り止めはモールドで表現。同じメーカーでもE編成の方がモールドが濃いようだ。
カトーはこの手のモールドは一切なく、塗装のみで表現している。
トミックスは画像にグレーを入れてみたが、1-2号車間の滑り止め表現が異なっている。カトーは4本の滑り止めだが、トミックスは2本しかない(E編成も同じ)。
どちらかが間違っている・・・わけではなく、実車編では触れなかったがこれもC・B編成の差異。左の写真は15・16号車間で奥がC編成、手前がB編成なのだが同じように差があり(動画とはいえよく撮影できたな^^;)、それを再現しただけである。
この差は1・2号車、15・16号車と、ケーブルヘッド(後述)のある4・5号車、8・9号車、12・13号車間で見られる。E編成はB編成と同じような2本渡しであり、4本渡しはJR東海車の特徴となっている。
先頭車後方にある検電アンテナは、カトー・トミックスともに他製品(0系など)でも使用されているパーツを共用している。そのせいか、どちらも実車と比べると傾斜が不足している感じがするが、おおよその形が似ていれば問題ないということなのだろう。
単にアンテナの形状だけ見た場合、トミックスの方がそれっぽい感じはするが・・・車体の白に対して、若干アイボリーがかっている。
実車のアンテナはかなり傾斜が強く先端部が細い。Nゲージでこの細さの再現は困難で、金属パーツならできるかもしれないが、強度や手に持つ危険性を考えると、ある程度太くなってしまうのはやむを得ないだろう。
アンテナの位置はカトーよりもトミックスの方が車端寄りである。アンテナの形状自体が実車と異なるので、どちらが実車に近いかの判断は難しいが(強いて挙げるならトミックスの方が近いか)、どちらも違和感を感じることはない。
博多寄り先頭車(723形)屋根上には2つの無線アンテナがあるが、その表現はカトーは一部のモールドが強い程度で、両者ほとんど変わらない。
ところでこの写真、白というよりグレーに見えるがモールドが分かるように露出をかなり落として撮影しているため。
実車の無線アンテナと見比べてみても、特に問題なく再現できているといえるだろう。写真はC編成のものだが、B・E編成も変わらない。
連結部間は「直ジョイント」という半永久固定方式で高圧線を渡している。500系で初採用され、700系にも引き継がれた。
ジョイントの位置はトミックスの方がやや車端寄りで(ほとんど差はない)、ジョイントから連結面にかけてのケーブルをカトーは表現、トミックスは省略という違いがある。これは他のモデル(500系など)でも見られる両社の特徴でもある。
ケーブルは実車写真にあるように山側に「たわみ」があるのだが、模型ではストレートに表現されている。
ジョイントの形状はカトーはやや細身でシャープだが、あまり大きな差は見られない。トミックスはB・E編成でまったく同じ形状である。
一部のジョイントはこのように大型ジョイントとなっている。2本生えたケーブルうち、1本は車両下部に引き込まれている。
C・B編成では6号車・11号車、E編成では3号車・6号車のいずれも博多寄りで見られる。
トミックスE編成ではこの大型ジョイントを再現しているが(ケーブルが省略なのは前述の通り)、カトーC編成・トミックスB編成では再現していない。
トミックスB編成は6・11号車ともにボディの共用はないので、再現していてもよかったと思うが・・・
C・B編成の3号車博多寄りの終端処理は、トミックスは屋根中央に引き通された高圧線がそのまま妻面を通して車体下部に引き込まれている。一方カトーはストンと切られるような形で高圧線が終了している。
実車写真を見れば、トミックスの方が実車に似ているといえる。もっとも、カトーは連結方式の都合上妻面の表現は難しいため、やむを得ないのかもしれない。
なお、E編成は博多・新大阪寄りともにパンタ部分が終端になっているため、特殊な終端処理はない。
C・B編成の14号車博多寄りの終端処理は両者とも似ているが、やはり高圧線の引き込み表現に差がある。写真ではわかりにくいが、トミックスは高圧線の留め具まで再現していて芸が細かい。
写真はC編成で(B編成も同じ)、ジョイントと一体化した四角いカバーがあるが、ジョイントの形状、カバーの形状(東京寄りは幅が狭い)ともにトミックスの方が実車に近いようだ。
四角いカバーの上にも滑り止めがあることがわかるが、カトーは印刷が難しいのか表現されていない。一方、トミックスは写真では分かりにくいが他と同様にモールドにて表現されている。
高圧線は連結部屋根上では直ジョイントという半永久固定になっているが、C・B編成の4・5号車、8・9号車、12・13号車間、E編成の4・5号車間は分割が容易な「傾斜型ケーブルヘッド」で接続されている。
ちなみに、E編成のケーブルヘッドはE13編成以降から装備されたもので、2003〜2004年(詳細な時期は不明)くらいにE1〜E12編成にも装備されたという経緯を持つ。トミックスが発売した2003年初頭の頃はケーブルヘッドがある編成とない編成が混在していたが、現在では全編成に装備されているため差異はなくなっている。
模型でも実車通りにケーブルヘッドが再現されていて、ガイシ(巻貝のようなもの)の取り付け部の大きさや傾斜、位置には大差ないものの、ガイシは三者三様という構成である。トミックスのB編成とE編成でパーツを共用していないというのは少々意外な感じである(B編成の方が太い)。
実車(B編成)のケーブルヘッドだが、トミックスB編成が一番近いような気がする。逆にカトーはちょっとずんぐりした感じだ。E編成はそんなに悪くないがやや細身である。
カトーはガイシパーツをユーザが取り付ける必要がある(同社にしては珍しい)。接着剤などは不要だが、細かいので作業には注意されたい。スペア分は用意されているので多少の失敗はカバーできるが・・・
このガイシパーツは他の新幹線製品でも広く使われているもので、初出はおそらくE1系。ずんぐり感もそのためである。
新車出場後や全検出場後は屋根上の滑り止めは車体と同色だが、走り込めば汚れてラインが目立ってくる・・・カトーとトミックスの表現の差はまさにこれで、前者はある程度走りこなれている状態、後者は出場直後の表現ということになる。これは屋根上に限らず見られる両社の考え方の違いであり、500系などでも見られる差異である。
その結果、ぱっと見の印象はカトー・トミックスでかなり異なるものとなっている。カトーの滑り止めグレーはかなり濃い目であり、車体が白い700系では特に差を感じるといえよう。
実車の再現という視点だと、いくつか挙げてきた実車写真を見ての通り、屋根は全体的に汚れてくるので(滑り止めは汚れやすいのかラインとしては認識できるものの)、カトーのように白い車体にグレーのラインがビシッと描かれている状態というのは実際にはありえない。実車の滑り止めはザラザラ(滑り止めだしね)なのに塗装のみの表現で済ませている点を考えると、トミックスは全体的に地味で淡白な印象があるものの「実車に忠実」であるとはいえる。
しかし、「模型としての見栄え」としては(500系の記事でも似たようなこと書いたような気がするが・・・)、リアルかどうかはさておきカトーの方が「リッチに見える」のは確かだ。逆にトミックスは実車に忠実ではあるが、真っ白な屋根は変化に乏しく(後述するがプロトタイプがB編成なのでパンタカバーも白)、単調に見えてしまっているのは否定できない。
カトーはリアリティよりもデフォルメ重視型といえるが、走行シーンなど離れて見るような場合はその効果がはっきりと出る。必ずしも「実車に忠実」が正解をもたらすとは限らない好例である。もちろん、トミックスの「実車に忠実」路線も間違っているわけではない。間近でしげしげと見るような場合、塗装のみで滑り止めを済ませているカトーがチープに見える場合だってある。これらは優劣ではなくメーカーの考え方の差であり、それをどう評価するかはユーザの好み次第である。
あれこれ書いてきたが、結論から言えばカトー、トミックスの2モデルとも、後述のパンタ周りも含めて実車の微妙な違いをよく再現していているといえる。
その中でも、最後発のトミックスB編成は連結方式のおかげということもあるが、高圧線の終端処理等も凝っていて頭一つ抜きんでていると思う。大型の高圧線ジョイントを再現していたらパーフェクトだったかも。
サンプルは5号車(725形)だが、12号車も同じである。
第一印象はカトーはにぎやか、トミックスB編成は「白っ」という感じ。E編成はグレー1色という感じだが、パンタカバーの色が車体とは若干異なる。
前述の通り、カトーの滑り止め表現はデフォルメと考えると、実車に最も近いのはトミックスB編成ということになるが、「模型」として見た場合はそれが必ずしも良いとは限らないという好例かもしれない。
そう考えると、E編成のカバーと車体の色違いもある意味アクセントになっていて、これはこれで正解かも。
パンタを完全にリフトした場合、トミックスの方が若干高い(パンタ関節部の位置を見るとわかる)。
パンタグラフカバーの形状は大差ないがカトーはRがややきつく、横に空いてる四角い穴も若干小さめだ。トミックスE編成の四角い穴の横にはハッチがあるが、B編成にはないことから両者はパーツを共用していないことがわかる。
なお、カトーのパンタカバーは前述のケーブルヘッドガイシと同様、ユーザによるパーツ取り付けが必要である(現行品は取り付け済みの模様)。
ユーザ取り付けのカトーは少し別付け感があるものの、実物を見る分にはあまり気にならない。側面の四角い穴は深めのモールドでシャープ。
トミックスB編成はカバーを取り付けてから塗装しているのか一体感が強い。反面、メリハリが欠けている感がある。側面の穴もモールドが薄いので、黒で色差ししてやるとよいかも。
トミックスE編成は塗装されていない分シャープだが、側面の穴のモールドは浅めだ。
ついでなので実車も見比べてみる(上からC、B、E)。側面の穴の大きさは・・・カトーの方が近いかな。
E編成のカバーには穴の横にハッチがあることもわかる。パンタカバーは汚れで車体と異なる色味であることも多く、トミックスE編成は車体と色が違うと書いたが、それはそれでいいのかもしれない。
パンタ本体を見比べると、カトーは全体的にアームが太く関節部分もごつい印象だ。トミックスも模型である以上、左に載せた実車のパンタと比べても太めではあるが、比較的実車に似ていると思う。ただし、その代償としてかなり華奢なので取扱注意!
台座部分はトミックスは肉厚でシャープだがゲート後(パーツを切り離した跡)が少し残っている。パーツ自体はB・E編成で同じものを使っている模様(成型色は若干異なっているが)。
カトーは4本脚のガイシ部分が白になっているが、車体へは台座底面にある3本の脚で固定している。一方、トミックスのガイシはグレー(成型色)のままだが、固定は実車同様に4本の脚で行っている。
パンタカバー内部はカトーはガイシ以外なにもなくシンプルな仕上げ。一方、トミックスは各種機器類を表現している。ただし、カトーにはガイシからパンタまで伸びる高圧線表現がある。白い線だと不自然なので、ここは色差しでもしたいところだが・・・
パンタカバーの傾斜部の滑り止め面積の違い(実車編参照)も再現されているが、モールドはカトーは深くてシャープ、トミックスは薄めである(滑り止めも表現)。ここの滑り止めはパンタ直近で汚れるのか結構目立つので、カトーは屋根の滑り止め同様、グレーで塗装してもよかったのでは?
上の写真を見るとカトーとトミックスでガイシの向きが異なるが(トミックスはガイシが斜めについてる)、これは左の写真のように実車にもある差異のようで、滑り止め面積が広いタイプはまっすぐ、狭いタイプは斜めにガイシが付いている感じで、カトー・トミックスB編成は実車に忠実といえる。
E編成は滑り止めが広いタイプにも関わらず斜めに付いているが、筆者が広島で撮影した動画を見る限り、E編成は全車斜めについているようだ。したがって、こちらも忠実といえるだろう。
パンタカバー周辺屋根の滑り止めパターンを簡単な図にしてみた。カトーとトミックスE編成と、トミックスB編成のパンタカバー傾斜部の滑り止めの面積の違いもわかるかと思う。
トミックスの2車は2本のラインがそのままパンタカバーの下に潜り込むようなラインだが、カトーはパンタカバーを避けるようなラインになっている。
左図の違いはJR東海車とJR西日本車と違いそのものであり、写真は省略するが実車の動画を見る限りは模型でも忠実に再現されているといってよい。
パンタカバーの車端側はジョイントになっているが、カトーは高圧線がそのまま生えているタイプ、トミックスはパンタカバーにジョイントが埋め込まれているようなタイプだが、これも実車のC編成、B・E編成に見られる違いである(実車の写真は左がC編成、右がB編成)。
前述の滑り止めのラインも差があることがわかる。
前項の屋根上表現で書いたことが大部分当てはまるが、カトー・トミックスともに実車を忠実に再現してると思う。それぞれJR東海車とJR西日本車の違いも表れているので、見比べるだけでも楽しくなってくる。
トミックスの2車は真っ先に共用パーツにされそうなパンタカバーなども、B編成とE編成できちんと作り分けしていて、同社にしては珍しいと思う(失礼)。
ひとつだけ気になったのがトミックスE編成のパンタカバー。デフォルトで印刷されている車番はE15編成、付属インレタもE13、E14編成が収録されているので、公式的にE13〜E15編成をプロトタイプにしているのは明らかなのだが、滑り止めの面積が広い旧タイプが採用されていて実車とは異なっている。筆者の憶測にすぎないが、カバーだけは旧タイプで作ってしまったという感じだろうか。前述したが、現在ではE1〜E12編成にもケーブルヘッドが装備されているので、車番をE1〜E12編成に変更すると実車に忠実な結果となる。
まあ、パンタカバー違いなんてほとんどの人は気にしない(気付かない)わけだが・・・カトーも含めて700系は全体的に再現度が良いので、ちょっと惜しいなと思った。
<前ページ | Speed Sphereトップ | 次ページ> | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
0系
300系
500系
700系
N700系
200系
400系
E1系
E2系
E4系
|