模型の概要&アーカイブ |
比較レビュー序 製品構成・価格 |
比較レビュー1 先頭形状・車体各部表現 |
比較レビュー2 屋根上・パンタ周辺 |
比較レビュー3 塗装・灯火類・室内 |
比較レビュー4 床下・連結部分・ギミック |
比較レビュー5 全形式比較・収納性・付属品 |
比較レビュー完 総評 |
トミックス300系初期製品について |
トミックス 「ありがとう。300系」レビュー |
ここまでトミックスとマイクロエースの比較レビューをやってきたが、前者はリニューアル後のシングルアームパンタ仕様がネタだった(F編成も)。普通は現行品の比較レビューで十分だと思うが、リニューアル前の初期製品もあえて扱ってみたい。
結論から書いてしまうようだが、もともとフル編成志向ではなかった20年前の設計であり、それが長らくリニューアルもされず放置された結果、フル編成志向の時代に突入した時には取り残されてしまった悲運の製品でもある。それゆえに仕方がない部分もあるが、残念ながら問題点を数多く挙げるレビューになってしまった。
しかし、300系のNゲージとしては初の製品であり、絶版状態とはいえ現在のところ唯一の下枠交差型パンタを再現した製品としての存在価値もあるから、やはりスルーすべきではないと思った。また、リニューアル後の製品がどれだけ改善されたのか、その姿がより一層見えてくるという意味でも、言及しておいて損はないように思う。
リニューアル後も基本的なパーツは初期製品ほとんど同じ。例えば先頭車のボディは同じものを使用しているから先頭形状は全く同じだし、ヘッドライトや前面窓ガラスも同じパーツが使用されている。ぱっと見の違いは屋根がグレーになっている程度だ。
初期の実車がそうであったように、パンタグラフは下枠交差型、車両間は傾斜型ケーブルヘッドとなっている点は、リニューアル後の製品と大きく異なる。
白いガイシパーツは全てユーザ取り付けとなる。
何度も書いているが、初期製品は現在のようにフル編成志向が強くない時代の製品なので、16両全ての形式が模型化されていないのは当然といえば当然である。しかし、リニューアルもされずそのままフル編成時代に突入してしまったため、同社のカタログの編成例でも提示されていたように、一部車両を代用せざるを得ない状況になってしまった。
これより前の0系、100系等でも形式代用がなかったわけではないが、2両1ユニットで汎用性が高く、最大公約数的な車両だけで割と済んでいたといえる旧車両と比べると、300系は生涯編成の入れ替えや短縮がなかったようにユニット構成がシビアであり、各号車の独自性も必然的に高くなる。その結果、強引とも思われる代用も出てしまったようだ。
以下写真はすべて海側(写真左側が博多寄り)。
実車では13号車に割り当てられている326-500形(動力用とトレーラー用が用意されている)だが、3・7・15号車にも割り当てられている。以下、リニューアル後に新規製作された本来の車両と比べてみると・・・
3号車(329形)
7号車(326-400形)
15号車(329-500形)
3号車と15号車は博多寄りの客用扉の位置が違う程度で、代用でもそれほどおかしくないかもしれないが、売店設備がある7号車は東京寄りに業務用の扉があったりするので、結構無茶な気がする。
実車では8号車に割り当てられている315形。ただし、実は10号車の316形のボディを反転させただけなので、行先表示機が博多寄りにある(本来は東京寄り)、山側にはないはずの業務用室の窓が存在し、その大きさも異なるなど微妙な違いがある。また、この車両は9号車にも割り当てられている。
これが10号車(316形)で、こちらは実車に忠実な車両となっている。上の315形はボディを反転させただけというのが、なんとなくわかるかと思う。
リニューアル後に新規製作された8号車(315形)。行先表示機が実車と同じ東京寄りとなっているほか、業務用室の窓の大きさや位置も修正されている。
3両あるグリーン車のうち、9号車(319形)は唯一代用とされている形式。見ての通り315形とはかなり異なり、こちらも強引な代用といえる。315形が316形の反転と考えると二重に代用されているようなものだ。
2号車は4・14号車と同じ車両になっているが、客用扉や窓配置(ボディ)は実車と相違ないものの、屋根上が異なっているので厳密には代用といえるかもしれない(カタログでは代用扱いになっていない)。
7号車と9号車がかなり強引な気がする。なお、リニューアル後は代用されていたボディはすべて新規製作され、形式代用は一切なくなった。
下枠交差型パンタグラフを唯一再現した初期製品だが、残念ながら中途半端な再現度になってしまっている。
上が5・6号車間、下が11・12号車間。ケーブルヘッドガイシはユーザ取り付けで、写真では中途半端で申し訳ない。パンタは0系などでも使われていた固定式のエッチング製で、E4系などで使われている可動式に交換することができる。
2両にわたる大型のパンタカバーは形状が2種類あり、ここでは5・12号車は船底の先端部のような形状を「船底型」で、6・11号車は「平型」と呼ぶことにする。
ここで実車の話(図では分かりやすくするため傾斜を大袈裟に描いた)。300系は当初パンタを3基搭載しており、パンタカバー形状は5・12号車が「船底型」、それ以外は「平型」という配置になっていた。走行中は進行方向前方のパンタを畳んで2基を使用、9号車のパンタは常に使用していたことになる。図の小さな三角はケーブルヘッド。
9号車はグリーン車なのでパンタが原因による乗り心地の悪さが問題となり、J30編成以降からパンタが2基に。8・9号車はカバーもとろもなくなり、ケーブルヘッドに置き換えられた(比較レビューの屋根上編も参照)。また、カバー形状は「平型」のみとなりパンタは2基常用となった。J29編成以前とF編成全車も同様の改造を受け、2000〜2002年にかけてシングルアームパンタ化されるまでその姿を維持していた。
以上のことから模型を見ると、3パンタ時代の場合は5・6号車、11・12号車のカバー形状は正しいが、前述の通りそもそも9号車(319形)がないので再現不可能。2パンタ化された後は「船底型」カバーは廃止されているので、これまた正確に再現できないことになる。パンタカバーの組み合わせをもう1セット用意して、パーツを交換するしかないのだ。
初期製品の屋根板パーツは両先頭車で2種類、パンタカバーに応じた2種類、その他中間車用の5種類しかなく、そもそも9号車(319形)が模型化されていないので仕方がないが、8・9号車間の特殊なケーブルヘッドは再現されていない。また、屋根上に何もない2号車や、高圧線終端処理がある3・15号車(どちらも代用車だが)の屋根も再現されていない。
形式代用されていることもあり、3・15号車の高圧線終端処理が再現されていないので、先頭車から2両目の2・15号車の屋根上両端にケーブルヘッドが存在することになり、写真(1・2号車間)のように先頭車側のケーブルヘッドが途切れてしまう。
何かと残念な初期製品の屋根上だが、リニューアル後はシングルアームパンタ仕様になっただけでなく、高圧線終端処理などもきちんと再現されるようになり、基本的な問題はなくなった。E3系で実現しているが、リニューアル後の製品を下枠交差型パンタに変更できる屋根パーツセットとか発売されると面白いのだが・・・
0系や100系の初期製品と共通した構成の連結面。ここの設計だけに関していえば30年前のものである。
後退角の大きい可動幌、ボディの厚み・・・残念ながら大味といわざるを得ないようだ。ただし、リニューアル後もボディの厚みはそのままなので、ものすごく改善されたわけでもない。
これも初期の可動幌製品の特徴だが、可動幌との干渉を防ぐため車端部にある客用扉の窓ガラスは省略されている。
あと、300系に限らないが初期型可動幌の持病ともいえるのが経年による可動幌パーツの黄ばみ。新品でも長期在庫していたりする個体は黄ばんでいることがあるようだ。
リニューアル後は通電カプラー化と同時に、連結間隔の短縮が図られある程度改善された。また、車端の窓ガラスも装着されるようになった。
表記類はグリーン車マークが印刷されているくらいで、その他の形式番号、号車番号、編成番号の類は一切印刷がない。この写真は1号車車端だが、本来なら存在するJRマークもない。
インレタやステッカーの類も一切用意されていないので、表記類の再現性はゼロに等しいといえる。ただ、発売当時は(カトーも含めて)0系、200系などとともに、印刷表記類がないのが一般的だった。
後述の車両ケースへの収納をフォローする意味もあるが、なにしろ号車番号すらないので筆者はこのようなラベルを床下に貼って対応している。
リニューアル後は号車番号が印刷済みとなり、形式番号や編成番号、禁煙マーク等が収録されたインレタが用意されたので大幅に改善された。なお、インレタは初期製品にも流用することができる(号車番号は含まれていないので100系X・G編成のインレタあたりから流用するか)。
発売時の時代背景を考えたらやむを得ないのだが・・・
基本セット(左)のケースは先頭車とパンタ車が集中しており、増結セット(右)は屋根上が普通の車両となっているので、編成順に並び替えようがない。また、それぞれ7両づつという中途半端な設定であり、16両フル編成では2両があぶれることになる(単品ケースのままになる)。前述の通り号車番号の印刷もないから使い勝手もすこぶる悪く、残念ながら収納性はかなり悪いといえる。
リニューアル版では16両すべてが編成順に収納できるように改善されている。
おまけで台車を。それほど悪くないと思うが、モールドの深さやシャープさ、各種再現度を比べると、やはりリニューアル版は相当良くなっていることが分かる。ヨーダンパにある蛇腹もラフな表現である。
冒頭に書いたように発売当時の時代背景、その後の経緯を考えるといろいろ残念な点は多い。下枠交差型パンタ時代の300系も重要なバリエーションだと思うが、実車が引退してしまった現在、例えば屋根上パーツを新規製作してのリニューアルも難しいように思う。ただ、後年登場したマイクロエース製も屋根板が別パーツになっているので、同社の性格(?)を考えると、案外そちらで下枠交差型パンタ時代をフォローする可能性があるかもしれない。
パーツの互換性の高さを利用して、リニューアル後の製品をベースに初期製品の屋根上を移植して、より実車に近い下枠交差型パンタ時代を製作する方法もある。ただ、初期製品とリニューアルでそれぞれフル編成必要なほか(号車によっては片方だけで済む車両もあるが、必要な車両だけ都合よく調達というのは難しいと思う)、パンタカバーのパーツももう1セット分必要になるからコストがかさむ。こだわるなら一部直ジョイントをケーブルヘッドに置き換えるための切削加工もいるし、屋根板パーツは外せる上に単色だから難しくはないが、屋根上の塗装も必要になる。それでも工作としては比較的簡単な方だとは思うが、万人に勧められる方法ではなさそうだ。
それでも現在唯一の下枠交差型パンタ時代を再現した製品であり、どうしても欲しい場合はこれしかないが、絶版品なので中古での入手が前提となる。とはいえ、ヤフオク等でもたまに出るし、現在のところは特にプレミアもついていないので比較的入手はしやすいと思う。
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