動力車はトミックスが3・7号車、カトーが7号車となる。
今回はカトーが後発となったが、発売時期的にお互いの手の内を見ることができないガチの競作といってよいだろう。E6系、E5系に続く、JR東日本の新型新幹線シリーズのE7系。模型でも両者これまでのE6系、E5系の設計を継承しているけども新たな発見もあり、そのうえで高度な一長一短の攻防。模型をチェックしていても、そしてレビューを書いていても正直楽しかった。
トミックスは大雑把な屋根上や、なにより意味もなく(例えばE2系よりも)劣化した台車や可動幌など、相変わらず800系的な同社の悪癖が少なからず見られるが、これも気分的に面白くないというだけの話であり、許容できるかどうかは人によりけりだけども、その見栄え自体には大きな問題がないことも確かだ。
一方で造形は相変わらず見事だし、一見の価値はある塗装の光沢感。今回はそれだけでなく、パーフェクトに近い再現度の床下、ロゴマークの印刷、インレタの一部収録内容復活など、少なくとも筆者がここ最近同社に感じてきた不満がいくつか改善されているのが嬉しかった。個人的には昨年の800系以降、正直なところ印象が悪かったトミックスを少し見直したかも、という製品だった。
カトーは屋根上はトミックス以上であり、E6系ではトミックスに水をあけられたヘッドライトも同レベルに揃えてきた。Nゲージの業界はライバルに負けないように、という意識は低い印象だったのだけど今回は火が付いたか。あまりギミックが盛り込める車両ではないので、そつのない仕上がりになっているが、ある意味安心できる製品であるともいえる。
しかし、ボディ流用で車体間ヨーダンパの準備工事を省略するあたりはらしくないと思った。また、実車が発売時点でそうである以上どうしようもないが、印刷済みの行先表示が「あさま」なのも今度の展開として気になる。金沢開業後の看板列車は「かがやき」「はくたか」。その時点で製品仕様を変更するのか(筆者もさすがにもう買わないと思うぞ・・・)、ステッカーでも発売するのか。「あさま」は残ることは残るから、そのままスルーか。カトーの「Ready to Run」コンセプトによる行先表示印刷済みは楽だけども、今回はその限界も見たような気がした。
いずれにせよ、同時期の開発・発売による競作でここまでハイレベルな応酬というのは珍しい。ボディ共用でそれぞれ脛に傷を持っているというのも面白い。E7系は模型映えも十分だし、ぜひコレクションに加えておきたいところだけど、12両編成と内容が少々重いし、プロトタイプも丸かぶり(特にトミックス限定品は編成まで一致)なので、両方揃える判断はなかなか難しいかもしれない。今回のレビューを見てどのように感じられたか・・・それは読者の方々にお任せするしかないけど、本当に一長一短で圧倒的な差はないとだけは断言できる。なので、あれこれ考えるよりも見た目とか感覚で自分が気に入った方を買うのがベストであり、後悔もしないと思う。
ある日、某巨大掲示板を見ていたら「7号車と9号車の車番が実車と違う」という旨の話題が上がっていた。「何ぞ!?」と思い、模型と実車を改めて比較してみたら・・・とりあえず、下の写真を見てほしい。
左が7号車、右が9号車でそれぞれ模型(写真はトミックス)と実車の車番を比較したものだ。左下は号車番号が写っていないが、普通車でドア点検ハッチが2つ並んでいることで7号車であることがわかる。レビュー書いているときには全く気が付かなかったが(まだまだ修業が足りんな・・・)、確かに模型の7号車はE725-200、9号車はE725-400なのに対し実車は逆になっている。なお、末尾の番号は編成の違い(模型はF2編成、実車はF3編成)なので問題ない。
この件、カトー・トミックス共に同じ現象が起きており、マニュアルの編成図まで両社とも実車と違っていて揃ってエラー?と思ったものの、E7系の実車がプレス発表された2013年11月の時点では、どうやら模型と同じ7号車200番台、9号車400番台になっていたようだ。これはE7系発表後の雑誌、「鉄道のテクノロジー」に掲載された形式写真等で確認できるし、同誌や「新幹線EX」の編成図もそうなっている。模型メーカーもこの時に取材したなら、この時点の車番を採用するのは道理だ。一方、上の実車写真は2014年3月25日に撮影したもので、タイミング的に営業運転開始時点ですでに7・9号車の番号が差し替えられたと考えられる。
E2系、E5系がそうであるように、E7系においても多目的室や業務用室がある7号車が400番台を名乗るのは自然だと思うけど、なんでまた差し替えることになったのか・・・いわゆる「形式変更改番」ではなく、実車がエラーで闇改修されたとか模型的な勘繰り(wをしてしまうのだけど、筆者には事実関係はわからない。プレス発表時の編成はF1編成だったが、その他の編成も同じだったのかも不明。言えることは、現在走っている実車と模型では7・9号車の車番に差分がある、ということだけだ。
さて、ユーザとしてこのことをどう考え、対処するか・・・少なくともF1編成は取材時点で「そうだった」のだから模型が間違いとは言い切れず、メーカーに落ち度はないわけで、瑕疵による交換やリコールなどは難しい(ていうか無理)。どうせ目を凝らして見なければわからない数字が「2」と「4」で違うだけだし、対処・・・とはいえないかもしれないが、(゚ε゚)キニシナイ!!というのはアリだと思う。
しかし、現在走っている実車と違うことも事実だし、他の形式はちゃんとしているのにE7系だけ・・・とムズかゆい気持ちになる人もいるだろう(実は筆者もそうだったり)。これで手の打ちようがないなら諦めるのだけど、トミックスのインレタを使うことで対処できなくはない。本文中に書いたように、今回のインレタはすべてマスク付で上書きできるようになっているから、それを活用しようというわけだ。ただし、形式番号が収録されているのは通常品のみ。限定品もしくはカトーしか持っていない人は、そのうち「テックステーション」に出てくるのを待つか、なんらかの方法でインレタをゲットしよう。
まずはトミックスで印刷済み車番とインレタの車番を比較する。見てのとおり、インレタの文字は若干大きいことがわかる。
どちらかといえば、カトーの方が大きさが近かったりする。車体のアイボリーはトミックスとほとんど変わらないから、インレタのマスクはそのまま使えそうだ。
まず一つ、インレタに収録されているF3〜5編成に変更する手がある。この場合、7号車と9号車のインレタを入れ替えて施せば完了となる。ただし、カトーの場合は前面窓の「F1」をどうにかしたいし、トミックスも含めて「F1編成」または「F2編成」にしておきたいこだわり(?)もあるかもしれない。なによりせっかく印刷済の車番、12両分施すのは面倒といえば面倒だ。
そこで、インレタの末尾だけ切り取って、例えば7号車なら「E725-40」までを上書きする方法をやってみた。写真ではシートを切り取ってしまっているが、プラ用ニッパーでインレタの印刷面だけに切り込みを入れるような力加減で軽く握ると、少々慣れが必要だがお目当ての数字だけをシートに残せる。そちらの方が転写し易く、筆者もこの後はそうした。
インレタを大きめにカットしているのはラインを見て水平を出しやすくするため。慎重に位置決めしたらマスキングテープでインレタを固定し加圧・転写、さらに裏紙(筆者は別途トレーシングペーパーを用意)の上からこすり定着させる。
カトーの7号車に施すとこんな感じ。位置決めが甘く「1」の前が少し空いてしまったが、ぱっと見には問題ないレベルになったと思う。文字の大きさもちょうどよいし、マスクも違和感なく溶け込んでくれた。
トミックスも同様に施してみたが・・・やはり印刷済みの末尾の「2」が小さいようだ。肉眼で見る分にはそこまで気になるものではないから、ここで妥協するのもアリっちゃアリだけど。
というわけで、末尾の数字を拾って追加してみた。インレタ上に「2」はたくさんあるのでF2編成には都合がよかった。この「2」だけというのはかなり小さいので、やはり前述のニッパーで軽く握る方法でシートに残して転写するのが楽。細かい作業なのでルーペスタンドがあると便利。
こちらは位置決めがうまくいったのか、文字間隔もフォントも揃っていい感じになったと思う。他号車と文字の大きさに差が出てしまうことになるが、並べるわけではないから問題ナシ。
9号車も同じように「E725-20」で上書きすれば、元の車番を生かしつつ実車と同じ番号にすることができる。ただ、インレタはシールより圧倒的に薄いとはいえ残念ながら「施した」感は残るので、あえて車番を変えずに元の印刷の自然さを残す判断もまた正しいと思うし、車番の違い以前に造形などでゲフンゲフン・・・な製品もあるわけで、気にしても仕方がないというのも言えてる。しかし、今回の件は比較的ユーザ側で解決しやすいことも確か。なので、各自納得できる方法を採ればよい・・・と、またもやブン投げるのであった。ただし、今回の件はメーカーに問い合わせるのやクレームは筋違いだと思うので、それだけは弁えたい。
2015年2月、トミックスよりJR西日本のW7系が発売された。同形式はJR東日本のE7系とほとんど違いがないこと、実車が1年近く前から試運転を行っていることから模型化も容易だったと考えられ、実車の営業運転開始(3月14日)を待たずに発売となった。
そんなわけで、模型自体は予想どおりすでに発売中のE7系とほぼ同じであり、レビュー本編に書いた内容がそのまま通用するため、数は少ないが変化ポイントのみ押さえて紹介したい。なお、カトーからもW7系の発売とE7系の仕様変更が予定されているが、こちらも印刷とセット構成の変更程度と思われる。
例によって通常品で購入。E7系とはセット構成が異なり、基本セットは目立つ紙パックの3両セットではなくブックケースで4両セットとなる。また、増結セットAは簡易な紙パックの2両セットとなり、0系とかならともかく最近の車両では珍しいと思った。
なお、12両フル編成で特別デザインの外箱入りの限定品も同時発売された。
2つのブックケースに号車順に並び替えて収納できる点は同じだが、ウレタンのカットを少々変更。特に先頭車部分には流線型を埋めるような取り外し可能なスペーサーが用意された。
E7系も再生産でこのウレタンが採用される可能性がある。
実車もそうだが、E7系との最大の違いは印刷だけ。ロゴマーク内の文字がE7系は「EAST JAPAN」、W7系は「WEST JAPAN」になっていることがわかる。E7系のロゴマークは少々太い感じがするがおそらく印刷個体差だろう。
形式番号もW7系のものに変更され、通常品はW1編成、限定品はW2編成のものが印刷済み。通常品は付属のインレタでW3〜5編成に上書きして変更可能。
ただ、予想外の変更点として屋根上のブルーは色調変更が行われたようで、並べてみないと分からない程度ながらE7系よりも若干濃くなっている(実車には差はないと思われる)。アイボリーと銅色には差はないようだ。
最後に細かい点として、12号車(グランクラス)の室内パーツは車両後位の通路部分の壁が少し低くなっている。これはE7系で室内灯の取り付けに支障があった(レビュー本編参照)ことへの対策と考えられ、E7系も今後の再生産で適用されると思われる。
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