E3系の模型はカトーとトミックスから発売されている。
E3系は1997年3月の秋田新幹線開業時に「こまち(R編成)」、1999年12月に山形新幹線が新庄まで延伸されたときに「つばさ(L編成)」が登場しているが、 模型としては「こまち」が2000年12月、「つばさ」が2001年2月と、相方となるE2系がE3系との併結を念頭に1997年には製品化されていたことを考えるとやや遅かったといえる。いずれもトミックスからの発売であり、カトーから発売されるのはさらに数年後の話である。
「こまち」の方が先行して発売されているが、当初より「つばさ」の発売も想定してたようで、どちらかといえば「つばさ」を基準にした設計であることがうかがえる。「こまち」は1998年に増備されたR17編成をプロトタイプにしているが、この編成は「つばさ」のL51、52編成と同期であり、前面窓のワイパーが2本であることも共通しているから(R16編成以前は1本)、前面窓パーツが共用できるなど都合がよかったのだろう。しかし、パンタカバー周辺も「つばさ」と共用であり実車と異なってしまったし、屋根上がR2〜16編成の仕様になっているなど、いろいろ折衷したような仕様であり、R17編成に忠実とはいえない製品であることも確かだった。
一方、「つばさ」は各ディテールは実車に忠実であったが、塗装(特に車体下部の色)が実車と比べて違和感のある独特なものであり、これはこれで不満を感じる製品であった。形式番号はL51編成のものが印刷されている(なお、発売時にL53編成はまだ存在しなかった)。
トミックスのE3系は東京寄り先頭車(E311形)に格納式TNカプラーを備え、E2系や200系、後に発売されたE4系との併結に対応。先頭車が動力車になっているなど、すでに発売されていた同じミニ新幹線の400系に準じた仕様となっている(実際、床下や動力は400系のものを流用している)。
カトーは2006年5月のE2系1000番台でようやく併結ギミックを搭載したような状況だったので、E3系もトミックスの発売から数年遅れての製品化となった。後期車であるR18編成以降のうちR22編成をプロトタイプとし、トミックスとのバッティングを避けている。先頭形状やライトの位置はトミックスとは異なる味付け(解釈)であり、塗装はホワイトをE2系と揃えたため、やや暗めであるのが特徴。
その他には、同社のE2系との併結に対応するため東京寄り先頭車(E311形)に「オープンノーズカプラー」、中間の連結は新開発の「KATOダイアフラムカプラー」を採用。また、現在のカトーにも共通する仕様として、行先表示類は印刷済みとなるなど、最新の仕様が採り入れられた。より実車への考証が進んだ時代に発売されたこともあり、パンタ周りは「こまち」用に作り分けされ、床下なども作り分けられるなど、後発の強みを活かした製品となった。
続いて2009年4月には「つばさ」も製品化しており、同社E4系の相方が揃うこととなった。E3系1000番台のラストナンバー(模型化当時は3編成しかないけど)、L53編成をプロトタイプとし、基本的な仕様は「こまち」と大部分で共通しているが、塗装はトミックスよりもずっと実車に近いものとなった。
トミックスは2010年5月に「こまち」、同年6月に「つばさ」をそれぞれリニューアルした。フライホイール動力への変更、インレタにより編成・形式番号の選択に対応するなど、先行してリニューアルされていた400系に準じた内容となったが、「つばさ」の塗装が400系の新塗装と同じものに変更され、かなり実車のイメージに近くなったほか、「こまち」もホワイトやピンクの色調変更が行われ、従来品よりも明るく派手な印象になった。また、両者ともかなり光沢が強い塗装となった。
加えて、「こまち」はこのリニューアルでプロトタイプをR18編成以降に変更。カトーとバッティングする結果となったが、R17編成+前期型の屋根上が混在していた問題点は解消した(パンタカバーは相変わらず実車とは異なったままだが・・・)。また、前期型に改造できるパーツも用意された(後述のコラム参照)。なお、「こまち」「つばさ」ともに通電カプラーは採用されていない。
400系置き換え用に増備された2000番台は山形新幹線の主力といえるほどの勢力になったにも関わらずなかなか模型化されなかったが、2015年にはようやくカトーから発売。やや遅れてトミックスからも発売された。2014年から行われている新塗装化で注目された影響が大きかったと思われる。なお、カトーからは新塗装のみ、トミックスは新旧両方というラインナップで、いずれも従来製品をベースとしながらも2000番台用のボディを新規制作している。また、トミックスは通電カプラーが採用されている。
「こまち」は後継のE6系に譲ったものの、R18編成以降の後期車は比較的経年が新しいため廃車されずに現在も改造されたりして生き残っており、「こまち」ロゴを撤去して「やまびこ」「なすの」で活躍している編成がトミックスから発売され、R18編成を改造した「とれいゆ」はカトーからラウンドハウスブランドで発売済み(ただし「こまち」製品を塗り替えただけ)。いまだにバリエーション展開が続いている状況である。
他にもR23〜26編成を「つばさ」用に改造転用したL54・55編成、R19編成から改造される「現美新幹線」、量産先行試作車R1編成(蟻さんならきっと・・・)なんてのもあるし、「とれいゆ」もタイプ製品ではない完全版も・・・まだまだネタは尽きないので、各種気長に製品化を期待したい。なお、派生車であるE926形「East-i」はマイクロエースから発売された。
品番 | 商品名 | 両数 | 商品形態 | 価格 |
10-221 | E3系秋田新幹線「こまち」 6両セット | 6 | ブックケース | 17,000 |
品番 | 商品名 | 両数 | 商品形態 | 価格 |
10-222 | E3系1000番台山形新幹線「つばさ」 7両セット | 7 | ブックケース | 18,300 |
品番 | 商品名 | 両数 | 商品形態 | 価格 |
10-937 | E3系700番台山形新幹線「とれいゆ つばさ」タイプ 6両セット | 6 | ブックケース | 18,800 |
品番 | 商品名 | 両数 | 商品形態 | 価格 |
10-1255 | E3系2000番台 山形新幹線「つばさ」新塗色 7両セット | 7 | ブックケース | 18,800 |
同社の1000番台「つばさ」と同じく7両フル編成で1セットを構成。例によって付属品はほとんどない。
プロトタイプは新塗装化第一弾のL64編成となる。
品番 | 商品名 | 両数 | 商品形態 | 価格 |
92725 | JR E3系秋田新幹線(こまち) 6両セット | 6 | ブックケース | 19,800 |
品番 | 商品名 | 両数 | 商品形態 | 価格 |
92726 | JR E3-1000系山形新幹線(つばさ) 7両セット | 7 | ブックケース | 21,800 |
品番 | 商品名 | 両数 | 商品形態 | 価格 |
92803 | JR E3系秋田新幹線(こまち) 6両セット | 6 | ブックケース | 19,800 |
品番 | 商品名 | 両数 | 商品形態 | 価格 |
92804 | JR E3-1000系山形新幹線(つばさ) 7両セット | 7 | ブックケース | 21,800 |
品番 | 商品名 | 両数 | 商品形態 | 価格 |
93519 | JR E3系秋田新幹線(ありがとうこまち) 6両セット | 6 | ブックケース | 20,400 |
品番 | 商品名 | 両数 | 商品形態 | 価格 |
92564 | JR E3-2000系山形新幹線(つばさ・新塗装) 基本セット | 3 | 紙パック | 10,800 |
92565 | JR E3-2000系山形新幹線(つばさ・新塗装) 増結セット | 4 | ブックケース | 11,200 |
品番 | 商品名 | 両数 | 商品形態 | 価格 |
92891 | JR E3-2000系山形新幹線(つばさ・旧塗装) 7両セット | 7 | ブックケース | 22,000 |
品番 | 商品名 | 両数 | 商品形態 | 価格 |
98944 | JR E3-0系東北新幹線(なすの) 6両セット | 6 | ブックケース | 20,800 |
トミックスの「こまち」は2010年5月にリニューアルされた際、プロトタイプがR18編成以降に変更されたが、屋根上パーツ交換で従来品のような前期型に改造できるパーツセットが用意された。トミックス製品のパーツ類を通販している「テックステーション」のみで購入できるもので数量限定品。リニューアル「こまち」と同時に購入したものだが、このパーツに触れているサイトや書籍はほとんどなく、ブツを見たことがある人は少ないと思うので紹介してみたい。
同社の単品ケースに入った状態で送られてきた。「TS-003」という品番が割り当てられたテックステーションオリジナル商品。
改造に当たっては車両を分解、屋根板を交換するという作業が発生する。切削などは必要なくポン付け程度の工作となるが、やはり慣れは必要なためかタイトルに「上級者向け」と付いている。
内容物はほとんどが屋根上パーツで、中間車4両(12号車〜15号車)の屋根板、16号車のケーブルヘッドガイシと交換する小さなカバー、ガイシパーツ(500系に同梱されているものと同じ)のほか、前期型の編成・形式番号が収録されたインレタ(クリックで表示)が含まれている。
インレタに収録されていのはR2・7・11・14編成で、それ以外は製品本体に付属するインレタの内容に準じている。
前述の通り、改造はポン付けレベルのものなので、工作慣れした人ならマニュアルを見ながらやれば簡単に前期型へ改造できるだろう。ただし、実車の前期型(R2〜R16編成)は前面窓のワイパーが1本となるが、トミックスのE3系は2本ワイパーなので厳密には異なる。ワイパーを1本削り落とせば実車と同じになるが、前面窓は透明パーツゆえに難易度が高いため妥協したほうがよいだろう。だいたい、パンタカバーの形状から違っているのだし。
パーツの組み合わせ次第ではR17編成も再現できるが、インレタから番号を拾って組み合わせる必要がある。R17編成が印刷されている旧製品を持っているなら、リニューアル後の製品を改造した余りパーツを流用しR2〜16編成の屋根上になっているのを是正して、真・R17編成にした方がいいかもしれない。
最後に、比較的簡単な工作とはいえ、この手の改造はたとえメーカー純正パーツであっても、基本的には自己責任で行うものである。工作は苦手、もしくは慣れていないという人は、なるべく出来る人に作業を依頼したほうがよいだろう。
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