東北・上越新幹線(現在は後者のみ)で運用中の、E1系に続くオール2階建て車両。「Max(Multi Amenity eXpress)」の愛称も引き継がれ、2階建て新幹線としては2代目となる。1997年12月から運用を開始した。
先代のE1系は宇都宮・高崎といった(新幹線にしては)近距離の通勤需要にも対応するため、2階建てにして座席数を増やすというコンセプトで開発されたが、12両という編成は最大16両編成まで対応できる東北新幹線において、混雑時には容量不足、閑散時には持て余し気味という問題があった(E1系登場時は200系の12両編成が主力だったため、それに倣ったのだと思われる)。
そこで、E4系はE1系のコンセプトを引き継ぎながらも、分割併合可能な8両編成にすることで需要の変動に対応できる弾力性を備えた。8両編成単独の運用のほか、8両編成同士を連結した16両編成時の定員は高速鉄道車両としては世界最大の1634名となり、混雑時にはその威力をいかんなく発揮している。
外観はトンネル微気圧波対策を強化したもので、シンプルな形状のE1系と比べ、近年の新幹線でよく見るカモノハシやアヒルを思わせる複雑な形状となった。どこか緩い表情に大柄な車体の組み合わせは賛否はともかく、極めて独特な雰囲気を醸し出している。車体は鋼鉄製のE1系に対しアルミ合金製となったが、性能的には最高速度240km/hと据え置かれた。
車内設備はE1系と同じく自由席車(2階席のみ)は3+3列のシートを採用し通勤需要に対応するほか、指定席車は2+3列シート、グリーン車(2階席のみ)は2+2列シートと多彩な内装を持つ。階下席はすべて2+3列シートで、グリーン車階下部は普通車となっている。その他、平屋部分に座席が存在する個所もある。階段部にはエレベータが装備されたためワゴンによる車内販売が可能となり、ここはE1系から進化した部分である。また、5号車には近年の新幹線ではすっかり見なくなった売店が設置されている。
東北新幹線の「やまびこ」「なすの」、上越新幹線の「とき」「たにがわ」で使用され、8両編成単独、8両編成同士の重連(16両編成)、山形新幹線「つばさ」用のミニ新幹線車両400系・E3系と併結したりと幅広く活躍していたが(ミニ新幹線車両との併結は車体の大きさの差が一目瞭然で面白かった)、2012年9月に東北新幹線から撤退した。東北新幹線での活躍は東京〜盛岡間が中心で、八戸や新青森に乗り入れたことはなかった(試運転除く)。また、長野新幹線も通常は乗り入れない。
東北新幹線は高速化を目指してE5系に統一される計画であり、最高速度が240km/hのE4系は高速化の足を引っ張ることから、2012年9月に先輩格のE1系が廃車されると同時に東北新幹線から撤退、E1系の後任として上越新幹線に活躍の場を移し塗装も変更されている。しかし、一部廃車も始まっており、ここ数年の動向は予断を許さないかもしれない。
E3系を従えて、那須塩原を通過中のP10編成。2階建ての絶壁のような側面が高速通過する様子は圧巻!
正面から見るとゆるキャラのような顔立ちで、新幹線の中でも癒し系のポジションか!?見た目に反し、これでも240km/hで走れるのだ。
運転室から屋根にかけての三角はイカのようもであるし・・・外見のインパクト・個性は非常に強い。
側面から見ると結構尖っていたりする。トンネル微気圧波対策を考慮した、空力に優れた機能的な形状でもある。これなら240km/h走行も納得?
2階部分まで傾斜を維持しているので、実は結構ロングノーズで先頭車の乗車定員は少ない。
ヘッドライト部分の盛り上がりは有機的で生物を連想させる。Youtubeあたりで見たが、これらの曲面は職人がアルミ板を叩き出しているのだから驚く。
500系が東京に来ていたころの写真で、個性派同士が並ぶことも珍しくなかった。編成長が違うので顔が並ぶこと滅多になかったが。
愛嬌のある顔なのに、見る角度によって印象が変わるE4系。
肩口からヘッドライトまでのスドーン!という流れに、兵器のような迫力さえ感じる。案外、迷彩塗装とか似合ったりして(w。
灯火類はコンパクトにまとめられている。ヘッドライトはシールドビームとHIDの併用で光の色が違う。
テールライトはLED式のものを上部に配置。
緩くて曲面を多用した先頭形状の割には、側面は極めてスクウェアな形状。
E1系もそうだが、2階建てで居住性を確保するため、車体断面を建築限界いっぱいまで使っているためだ。
通常の車両なら床下に機器を配置するが、2階建て車両には無理なのでこのように車端の平屋部分に機械室を配置している(E1系も同じ)。
この部分の車内は通路が狭く窓もないので(場所によっては片側の壁に寄っていたり)、迷路のような雰囲気が味わえる。
一方、機械室ではなく客室になっている個所もある(右の車両の窓は車掌室)。2号車の東京寄り、4号車の盛岡寄り、6号車の東京寄りが相当する。
2・4号車は14名、6号車は8名分しか定員がないため、グループで貸し切ればちょっとした個室気分?
パンタグラフはオーソドックスな小型の下枠交差型を採用。パンタ部分は屋根が低くなっているため、側面の壁がそのままパンタカバーの役割を担っている。
他の形式ではパンタカバーの形状にかなり悩んだ様子が見られるが、2階建て車両は車体とカバーを一体化できる点で有利なのかもしれない。
E4系の見どころの一つ「分割併合運転」。「つばさ」の400系・E3系と併結したり(上)、同形式同士の重連(下)などが可能。ただし、「こまち」との併結は最高速度の問題もあり行わない。
「つばさ」用の車両はミニ新幹線車両であるため、大柄なE4系と併結するとそのギャップが面白かったが、上越新幹線専用となってからは見られなくなってしまった。
同形式同士で重連できるのはE4系のみ。E4系は編成両端に連結装置を装備しているが、他の形式は編成片側だけにしか装備していないためだ。
グリーン車は7・8号車にあるが、2階部分のみで階下席は普通車となる。そのため、グリーン車マークは2階部分にしか掲示されていない。
グリーン車と普通車はシートピッチの関係で窓の大きさも異なるため、2階・階下で窓のピッチが合っていない。
デッキ階段部分にはワゴン専用エレベータが装備され、ワゴンによる車内販売ができるようになっている。
ワゴン販売がなかったE1系より進化した部分だが、エレベータのおかげで他の形式に比べてワゴンはやや小ぶりな上、床面積も増えているのでなかなか販売が来ないことがある。未だに売店が設置されているのは、そのフォローではないかと推測する。
上からグリーン車、普通車指定席、普通車自由席でいずれも2階席。写真は載せなかったが、階下席と平屋部分にも座席があるなど多彩な車内空間があるのがE4系の特徴で、「Max(Multi Amenity eXpress)」と呼ばれるゆえんである。
車体が大きい新幹線ゆえか、2階席・階下席ともに在来線の2階建て車両のような狭さは感じない。
一番下の普通車自由席は3+3列シートで、リクライニングもしないシートである(シートが分割されていないことがわかる)。通路も狭くて相当無理している感が否めないが、観光や出張ならともかく、とにかく座れることが重要な近距離通勤輸送も想定しているのでやむを得ないだろう。
なお、自由席車のデッキ部分にはジャンプシート(折りたたみ式の補助席)も存在する。
側面の行先表示機はLED式で、E4系のデビュー時期を考えると標準的な装備。
表示機の位置が低いため、撮影の際にはガラスへの写り込みが避けられなかった。
号車表示もLED式なのは、古今東西新幹線車両を見渡してもE4系のみの特徴。
前述の通り、同形式による重連を行うと号車番号が1〜8、9〜16となり、しかもどの編成が前後に来るかもわからないので、号車表示が簡単に変更できるというのは重要である。
写真では16号車を表示していて、単独での運用では表示することがない番号である。
E1系と同様に「Max」のロゴが大きく描かれている。ロゴデザインもE1系と同じだが、青・黄・赤といった原色でデザインされたE4系の方が派手な印象だ。
上越新幹線に活躍の場を移して以来、「Max」ロゴに朱鷺のマークが追加された。なお、「Max」ロゴがない8号車海側にも追加されている。
2013年5月の時点でP81・82編成にマークが追加されていることを確認。その後P12〜15編成にも少しデザインを変えて追加された。しかし、新塗装化が始まっていた2015年7月時点でP81・82編成から撤去されているのを確認。
E4系は全車JR東日本の所有で編成は1種類のみ、製造年次ごとの仕様変更もほとんどなく、バリエーションには乏しい(少なくとも2012年春現在は)。量産先行試作車に相当する車両もなく、それだけ完成された車両といえるが趣味的にはちょっと寂しいかも。
編成 | 所有者 | 編成番号 | 両数 | MT比 | 番台 | 特徴その他 |
P | JR東日本 | 1〜22 | 8 | 4M4T | 0 | 上越新幹線で運用(かつては東北新幹線盛岡以南でも運用) |
51,52 | 長野新幹線軽井沢まで運用可能 | |||||
81,82 | 長野新幹線長野まで運用可能 |
E4系は8両編成のP編成のみ。したがって概要で書いた内容がそのまま当てはまってしまい、ここで書くことは特にない(涙)。
全部で26編成在籍しているが、P51、52編成は長野新幹線の急勾配(碓氷峠)に対応しているため軽井沢まで、P81、82編成はさらに電源周波数の切り替え(軽井沢を境に50Hz/60Hzに替わる)に対応しているため長野まで乗り入れることができる。しかし、それらの乗り入れ装備は簡易なものと言われており、長野新幹線への入線はほとんどないのが実情だ。
外観も車内設備も、P1〜22と長野新幹線乗り入れ対応車はほとんど同じで、見ただけでは区別がつかない。したがって、E4系は全編成区別されることなく東北・上越新幹線(現在は上越のみ)で運用されている。
ちなみに、製造番号はP1〜P16、P51、P52、P17〜P22、P81、P82の順で割り当てられている。
長野新幹線乗り入れ対応車のP82編成だが、このように通常見るだけでは外観上それとわかる判別ポイントは編成番号以外にない。
E4系の数少ない外観上の違いとして、パンタのある5・6号車間で、P81・82編成のみ5号車(写真手前)側の切り欠き形状が異なる。黄色いラインを入れて見たが、上が通常編成(P51・52編成含む)、下がP81・82編成。ケーブルヘッドのガイシの位置も、前者が車体中央にあるのに対し、後者は海側(写真右側)にオフセットされていることがわかる。
該当箇所を「北とぴあ」最上階から(何気なく撮ったらP81or82編成だったという・・・)。
おそらく複数周波数対応の関係でそうなっていると思うが、関連機器が露出しているわけではないようだ。また、同じくパンタのある3・4号車間にはこの差異は見られない。
製造年次による仕様変更は、外観上のものはなくはないが非常に少ない。改造された個所もあまりない。
客用扉下部脇にある点検ハッチの形状は、上段の「出っ張りタイプ」と下段の「ツライチタイプ」が存在する。後者はP81・82編成のみで、その他の編成は前者を採用している。前述の通りP81・82編成といえば長野新幹線乗り入れ対応車だが、そのこととハッチ形状の関連はない。
E4系(E1系もだが)では2フロア分の乗客を捌く必要性もあり、他形式では身障者対応車で使う幅広ドアが標準採用されている(先頭部除く)。そのため、点検ハッチも2つ並ぶ形となっている。
P21・22編成に限り、1号車山側、5号車山側(新青森寄り)、4号車海側(東京寄り)、8号車海側の車端部に2つのハッチが並んで装備されている。用途は筆者の知識では全く不明。
非常に細かなことだが、機械室の側面ハッチにある小ハッチ(?)のボルトの数に差がある。左のボルト8点タイプがP1〜10編成、右の14点タイプがP11〜82編成となっており、時系列的にはボルトが多い方が新しい。
2013年3月あたりから(筆者が初撮影した時期であり、もっと前からあったのかも)、車端のケーブルヘッド周囲の屋根形状が変更された編成が現れ始めた。左が従来のもので、中央、右が変更後の形状。変更後の写真はP7編成のものだ。この時併結していたP5編成は従来のままだった。
形状変更されたのはパンタと対になる個所だけで他は従来から変わっていないが、パンタ車の4・6号車で形状が異なっている(中央が4号車、右が6号車)。
期間限定とはいえ、E4系のバリエーション(?)といえばこれしかないだろう。JR東日本が夏季限定でポケモンキャンペーンを行っており、新幹線もいくつかの編成にポケモンのラッピングが施されて子供たちの注目を集めている。
2008年から2010年現在まで毎年行われており、E4系は2008年がP11・12編成、2009年がP8・9・17編成、2010年がP9・19・21編成にラッピングが施された(2011年は未実施)。
写真は2009年版のP8編成。実施年ごとにポケモンの内容や配置が変更されている。
他の形式にもポケモン編成があるが、派手な印象の黄色ラインと緩い表情のE4系が一番ポケモンラッピングに似合っていると思うがどうだろうか。
2012年秋、上越新幹線開業15周年を記念して、沿線の名物・名産品をモチーフにしたSuicaペンギンのラッピングが登場。対象はP7・8・17・18編成(写真はP17編成)。ペンギン編成併結の16両も多く見られた。
2014年4月以降、P5編成を皮切りに帯色が黄色から以前E1系がまとっていた朱鷺ピンクに変更された。全編成が変更される予定。
ホーム上でこうしてみると、E1系が復活したかのような雰囲気だ。帯色が変わっただけだし、E4系のユーモラスな外見が幸いしてか、ピンクになっても違和感はほとんどないように思う。
塗装と同時にロゴマークも変更されたが、朱鷺の翼の先端やロゴの周囲に余白が多く残されており、少々やっつけ仕事な印象を受けるのが残念。
塗装変更は順次対応のため、新旧塗装の重連も見られる。
別に嫌いなわけではないが、正直なところ外見上の「デザイン」は個人的にはちょっとイマイチかも(苦笑)。また、「バリエーション厨」を自称する筆者としては、ちょっと寂しい印象もなくはない。
鉄道ファン全体的にもあまり好まれていないと思われる同形式だが、E5系のように高速化でますます尖る車両の中で、今後はユニーク&ユーモアなデザインが癒し系(?)新幹線として見直されてくるのではないだろうか。ポケモンラッピングなんて似合いすぎてて、このために開発された車両なんじゃないかと勘繰りたくなる(w。
筆者は東北新幹線は仙台までならたまに乗るが、最速達の「はやて」は混んでいるので、多少時間がかかるものE4系の「やまびこ」は比較的よく乗っていた。E4系は仙台始発の「やまびこ」に充当されたことが多く(福島で「つばさ」を連結する列車)、しかも仙台発車時点ではガラガラであることが多いので、帰りはE4系の列車をチョイスすることも少なくなかった。
そんな中でも狭い3+3列シートの自由席は利用したことがないし、仙台くらいの距離では使いたいとも思わないけど、この車両の用途の一つである通勤輸送では効果を発揮しているのではないだろうか。在来線の通勤でも同じだが、座るのと立つのでは雲泥の差があるし、それは年末年始の輸送でも活かされているのだろう。元々混雑時の使用を想定している車両なのだから、詰め込み主義という批判は当たらないと思う。
一方でグリーン車は相変わらず快適で、普通車の2+3列シートは座面もスライドするタイプなのでやはり快適。2階席なら眺めもいいし、階下席は半分地下鉄みたいになってしまうが、自由席も2+3列シート。読書や居眠りには最適だと思う。最近はすっかり見なくなった売店も営業中で、近年の新幹線にしては多彩な車内空間が楽しめる。乗ることでその良さがわかる車両なのかもしれない。
まだまだ主力といっていいくらいの活躍を見せる同車だが、かつては独壇場だった「つばさ」との併結相手をE2系に譲り、2012年9月に東北新幹線から撤退した。上越新幹線に活躍の場を移しても東京駅には来るので、「見る」だけなら今までとほとんど変わらないと思うが・・・
上越新幹線の乗車機会がほとんどない筆者にとって、東北新幹線時代に割と多く乗ったのは良かったのかもしれない。手軽に乗るなら東京〜大宮間という手もあるが、あの区間では「新幹線な」走行を味わうのは難しいから・・・引退は当分先のことだと思っていたら、すでに廃車が始まっていると聞く。車両のサイクルが早い新幹線、今のうちから記録したほうがよいかもしれない。
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