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比較レビュー序 製品構成・価格 |
比較レビュー1 先頭形状・車体各部表現 |
比較レビュー2 屋根上・パンタ周辺 |
比較レビュー3 塗装・灯火類・室内 |
比較レビュー4 床下・連結部分・ギミック |
比較レビュー5 全形式比較・収納性・付属品 |
比較レビュー完 総評 |
トミックス300系初期製品について |
トミックス 「ありがとう。300系」レビュー |
323形(博多寄り先頭車)をサンプルとした。
大まかには、どちらも300系として違和感を感じない。それでも「味付け」には差異があり、ややふくよかなトミックスに対し、マイクロエースはシャープな印象である。
モールドについても、マイクロエースは連結器カバーやスカートの表現が強く、メリハリがあってどんな角度からでも見やすい・分かりやすいのに対し、トミックスは節度感はあるものの、見る角度や光線状態によっては薄く感じる。
また、後述するが塗装の光沢の強さも印象違いの要因になっていると思う(マイクロエースの方が光沢が強い)。
両者の印象が異なる要因と思われる例を、ひとつ説明したい。
300系の先頭部は小さい写真にラインを引いてみたが、内側のライン(黄)と外側のライン(オレンジ)の2本のエッジ(全体で4本)で構成されている。
それを踏まえた上で模型を見比べてみると・・・
トミックスは2本のエッジの強さがほぼ同じなのに対し、マイクロエースは外側が強いことが分かる。ついでにいうと、マイクロエースの外側のエッジはヘッドライトから下がほとんどなく、内側のラインのみで収束している感があり、結果として鼻先が細く見えるため(前掲の上方からの写真でもわかる)、シャープな印象をもたらしているのではないだろうか。
どちらかといえば、トミックスの方が実車に忠実な気がする。エッジの収束点の位置も、マイクロエースはやや高めだ。
実車のスカートの端はちょっと切り上げたようなラインになっているが、ここもトミックスの方が似ていると思う。
正面から見ても、ふくよかなトミックス、シャープなマイクロエースという感じが出ている。
左の実車@浜松からわかるように、300系は正面から見ると意外と下ぶくれというかふくよかな感じで、ここもトミックスの方が近い気がする。マイクロエースは車体下部に至るラインを絞り込んでおり、やはり実車よりもシャープな印象だ。
スカートにある4つの窪み、実車では窪みというよりツライチな感じがするが、両者とも凹モールドで表現している。
真下から見ても、マイクロエースのスカートは絞り気味でシャープであることが分かる。
後方から見たラインは、前述のスカート端の切り上げラインを除けば大差ないようだ。後述するが、トミックスは前期型のプラグドア仕様なので、左の実車写真(引き戸)とは異なっている。
トミックスは黄色いラインにパーティングライン(金型の分割線)がある。車体下部は若干粗いものの、全体的にはそれほど目立たない。
マイクロエースは前述の「外側のエッジ」に沿ってパーティングラインが引かれている。トミックスよりも若干ラインが目立ってしまっているようだ。
おおよその形状は実車に準じているが、トミックスは車体に対してツライチ〜やや飛び出し気味、マイクロエースは奥まり気味になっている。トミックスは取り付け精度が若干悪く、個体差だと思うが少し飛び出してしまっていることがある(一応調整可能)。
ライト周囲の縁はトミックスはやや太めだが、遠目にも目立つ。ついでにいうと、リニューアル前の製品に比べて銀色の光沢が増している。マイクロエースの縁は細くてスケール感はよいのだけど、一部成型に乱れがあってシャープさには欠けるかも。
ライト間のグレーのラインは、ライト下端に達しているマイクロエースの方が実車に近いかもしれない。これでライトが車体とツライチだったらと思うとちょっと惜しい。
大きさ・形状的にはほぼ同じ。窓枠やワイパーをモールド+印刷で表現している点も同じである。マイクロエースには「J61」の編成番号が印刷済みになっているが、トミックスも付属のインレタで表現できる。
微妙に異なるのが外側の縦窓枠の位置。トミックスは外寄り、マイクロエースは内寄りとなるが、実車と比べると後者の方が近い感じだ。
マイクロエースは車体に対して(ほとんどわからないが)若干段差があるのに対し、トミックスはツライチに近い。また、マイクロエースは窓上部に2つの手すりを表現しているのに対し、トミックスは省略となっている。
運転席のパーツの色が異なっており、トミックスはコンソールがはっきり見えるがマイクロエースは真っ黒。上の実車写真では真っ黒なので、マイクロエースの方が実車に近いかもしれない。ただ、トミックスはリッチに見えることも確かだ。
トミックスの運転席は客室内パーツと一体型なので、コンソールの色もブラウン(シートの色)であり、F編成(グレー)と並べると差が出てしまう。また、車体の断面の白が見えてしまっている。このへんは色差ししてやると化けるかもしれない。
トミックスはコンソールや運転席が客室のパーツと一体、マイクロエースは別体(照明ユニットの上に表現)であることがわかる。マイクロエースは肘掛の表現かあったりと細かいが、黒いので外からでは全く認識できないのが残念。
マイクロエースのワイパー先端には、なにやら表現されているようだが・・・
たぶん、実車に付いているワイパー浮き上がり防止のスポイラーではないかと。ちなみに、形状は若干違うが400系もスポイラーを装備していた。
トミックスの前面窓ははめ込み具合があまり良くなく、少しめくれ上がっているように見えることがある。扱いによっては写真のようになることも。パーツ自体はツライチになるように設計されているので調整は可能。筆者は両面テープで固定して回避した。
実車に忠実なトミックス、独自の解釈でアレンジ・デフォルメしているマイクロエースという感じだろうか。この手の解釈の違いはvsカトーでもあるので特に珍しいわけではないが、300系に関してはマイクロエースはカトーと考えが近い(デフォルメ傾向)ということだろうか。模型では実車に忠実であることが正義とは必ずしも言えず、その意味では両者は一長一短であり、どちらが好みか、どちらがよくできていると感じるかは、各自の判断にお任せするしかない。
それはそれとして、今回比較してみて思ったのは、トミックスは旧製品と同じボディを使用している=20年前の設計なのだけど、そうは思えないくらい実車に忠実なモデリングを実現しているなと思った。設計時期的にCADは実用化されていたと思うが、20年前の設計の製品が現在の新製品と互角かそれ以上にタメ張れるとは・・・トミックスの300系、モデリング(造形)に関しては個人的に高ポイント。
トミックスは客用扉がプラグドアの前期型、マイクロエースは引き戸の後期型ということで、実車写真もそれぞれ用意した。実車のプラグドアはF編成になっているが、J編成のプラグドア車をあまり撮っていなかったので(涙)。
ぱっと見た感じ、マイクロエースはモールドがかなり強いことがわかる。トミックスはプラグドアなのでどうしてもスッキリしすぎる感があるが、ここでも節度感のあるモールドだと思う。
マイクロエースの乗務員扉は窓に銀色のサッシが表現されていたり、クツズリや扉横の手すりにも銀色が入っている。さらに窓の向こう側がシースルーになっていたり、かなりリッチな印象だ。一方のトミックスは非常にシンプルで、ちょっと物足りないかもしれない。乗務員扉窓から室内パーツが見えてしまっているなど、やはり設計の古さを隠せていない個所もある。
しかし、マイクロエースはサッシ表現が少々太く、窓が小さく見えてしまっている。300系は扉に対し窓が比較的大きいので、この点はトミックスの方がそれっぽい気がする。また、ドアノブが回転するための窪み表現もマイクロエースは少しラフな感じだ。
マイクロエースには「J61」などの表記類が充実しているが、トミックスもインレタで表現することができる。
マイクロエースの引き戸の表現はかなり強い。同じように引き戸である他社の700系などと比べても段差が大きいように思う。そのせいか、青帯の塗装乗りが悪い個所もあるようだ。
ただ、離れて見ても引き戸車であることはわかりやすい。
ここでもプラグドアと引き戸の違いがあるが、先頭部のものと全く変わらない。
マイクロエースは周囲に縁があるが、上部角のRは少し角ばり気味。扉と窓の比率も、トミックスの方が実車に近い。ドア上部にある雨どいの位置はどちらも実車に忠実だと思う。
分かりづらいが、実車ではプラグドア車は青帯の中、引き戸車は青帯の直下に手かけがある。しかし、模型では両者とも省略。
また、客用扉下方横にあるドア点検ハッチについても、4つのボルトが表現されている点は同じだが、モールドの濃さや表現は異なる。
こうして実車と比べると、トミックスの方がスケール的にも節度感があってよいと思う。マイクロエースはハッチがよく目立つが、ちょっと大袈裟な気がする。
300系の車端下部には分割線があるが(車高が結構違う・・・)、ここもマイクロエースのモールドは濃い目だ。
それにしても、マイクロエースの点検ハッチ目立ちすぎ・・・
実車のものと比べると、やはりトミックスの方が近い。マイクロエースの方が存在感があることも確かだが・・・
2号車海側の車端両端、客用扉下にあるステップ(四角いモールド)は、トミックスは博多寄り(写真左側)、マイクロエースは東京寄り(写真右側)と位置が異なっている。
実車はどうなのかというと、偶数号車海側の東京寄り・山側の博多寄りある(奇数号車にはない)。つまり、サイドビューや形式写真では、常に写真右側にステップが来るような配置になっていて、下の写真(模型と同じく2号車海側)の黄丸で示した通り、博多寄りにステップはなく、東京寄りにあることがわかる。
その観点で見ると、マイクロエースは海側・山側ともに実車に忠実だが、トミックスは山側は問題ないものの、2・4・14号車(いずれも旧製品から流用の同一ボディ)の海側はなぜか博多寄りにステップがあり実車と異なっている。なお、パンタ車の6・12号車はリニューアル時に新規製作されたボディであるためか、海側・山側ともに実車に忠実。また、グリーン車である8・10号車は客用扉が1つしかないため、この問題は発生していない。
ステップが車端いっぱいに寄っているマイクロエースに対し、トミックスは若干車体中央寄りにステップがあるが、実車では海側が車端いっぱい、山側が中央寄りとなっており、両者とも基本的にはそうなっているが、トミックスの2・4・14号車は山側に合わせてしまったエラーではないかと推測する。
博多総合車両所のジャッキに対応したジャッキ穴はF編成(JR西日本車)の特徴で、数少ないJ編成との差異のひとつ。
トミックス・マイクロエースともにJ編成ベースであるため、ジャッキ穴は印刷で表現している。これをモールドで表現するとF編成専用のボディを別途作らなければならないから、やむを得ないだろう。それ以外のモールドはJ編成にもあるもので、トミックスの方がシャープな感じだ。
表現はそれぞれ異なり、トミックスは黒1色、マイクロエースはグラデーションとなっている。後者は4階調のグラデーションとなっているが、一番下はほとんど認識できない。
印刷表現ということで、やはり周囲のモールド(乗務員扉のステップなど)との整合感が気になる。こうしてみると、マイクロエースはモールドに合うようグラデーションにしたようで、黒1色で浮いてしまっているトミックスよりも違和感が少なく思う。
ただし、実車は周囲の穴も含めて「黒」という感じなので、トミックスが間違っているとは言いきれない。むしろ、モールドに黒を色差ししてやればトミックスの方が実車に似るかもしれない。
一方で、光線状態によっては実車もグラデーションっぽく見えることはあるので、マイクロエースもまた正しいといえる。
どちらかというと周囲のステップ等が黒という感じなので、これらが単なるモールドであることが話をややこしくしている気が・・・
車掌室窓はどちらもモールド+銀色でサッシを表現。なお、トミックスのリニューアル前製品はモールドも塗装もなかった。
窓の上部にある雨どいや、サッシ内側がやや楕円形になっているなど、マイクロエースの方が凝っている。ただし、ここもサッシが太めなのと、ボディとの隙間が大きいため精度感には欠ける。
先頭部と同様、ここもマイクロエースのモールド表現が強いことがわかる。離れていてもディテールが目立つから、走らせる場合など遠目に見てもわかりやすい。ただ、ちょっと各ディテールの主張が強すぎる気がして、全体的にはバランスを欠いている感がしなくもない。カトーも同じような傾向があるが、もっと節度感がある。
一方、トミックスは平均的なモールドであり、プラグドア車ということもあって遠目に見ると物足りないかもしれないが、全体的なスケール感というか、バランスはこちらの方が良いような気がした。
走行重視か、近くで眺めるかで両者の評価が違ってくるかもしれない。
側面の窓ガラスはマイクロエースの方が若干ツライチに近いようだ。とはいえ、トミックスも20年前の設計ながら、現在でも通用するレベルである。ガラスパーツの平面性はトミックスの方がやや良いようだ。
マイクロエースは上方が少し引っ込んでいるが個体差だろう。普通に見るだけなら認識できるものではない。
この写真ではマイクロエースもまっすぐはまっているし、ツライチ度も高いことがわかる。実車と比べると両者ともガラスの厚みが目立つが、Nゲージとしては標準的である。
トミックスのリニューアル前製品では、車端にある客用扉の窓にガラスが入っていなかったが、今回扱っている製品では窓ガラスが追加されている。
余談だが、300系はブラインドを全開にしても外側から少しサッシが見えている(上の写真でもわかる)。ガラスの厚みから難しいが、模型でも表現したら面白いかも。
300系の客室窓は縦辺が若干カーブを描いているが、マイクロエースの方がRが大きい。窓間の間隔を見る限り、ここはマイクロエースの方が実車に近いように思う。
個人的な感想だが、当サイトのアーカイブの形式写真で、窓がずらりと並ぶのを見ていると、なんとなくマイクロエースの方がそれっぽい感じがする。
トミックスは車内のシートが見えないけど、シートパーツの関係で窓間に隠れてしまっているから。詳細は室内編で後述する。
ガラスパーツはどちらも無色透明。マイクロエースは乗務員扉窓の細かい印刷が見える。マイクロエースはボディにうっすらシミのようなものが見えるが、接着剤(おそらく流し込みタイプ)で固定してあるから。ガラスパーツを接着固定するというのは同社製品の特徴で、改造等でガラスを外したい場合は少々難儀するものの、室内灯の取り付けなどでガラスがポロッと落ちるようなことがない。トミックスは組み立て時にガラスが外れることがたまにあり、少々イライラすることも。
マイクロエースと比べるとトミックスは若干奥まり気味だが水準レベルであり、設計時期を考えたら十分健闘しているといってよいだろう。よって、窓ガラスに関しては両者問題なしと判断したい。
実車の写真が海山逆転してしまった。
行先表示機・座席表示機については、トミックスはボディに凹モールド、マイクロエースはガラス表現という差がある。トミックスは2010年のリニューアルで新規製作されたボディがあるが、従来品と合わせるため凹モールドを維持している。
各表示機の大きさは、大きさはトミックス、客室窓との距離感はマイクロエースの方が実車に近い気がする。ただ、その差はわずかなものであり、どちらも全く問題ないと思う。
ただ、座席表示機と客室窓との横位置については、マイクロエースは実車に対して若干ずれがあるようだ。左の写真でも、トミックスよりも左寄りであることがわかる。
トミックスが凹モールドなのは設計時期の要因が大きい。もしも現在、トミックスがボディを新規製作したらガラス表現にしていたのではないだろうか(さよならセットのボディがどうなるか・・・)。
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