●マイクロエース「East-i」を鍛え直す(?)

レビューで書いたとおり(このページを読む前に一読していただけると)、マイクロエース「East-i」は正直ビミョーな出来であることが分かった。なかなか製品化されなかった車両なので期待していた人も多いと思うけど、その一方で他社のE3系、ひいては他の同社新幹線製品と比べるといろいろ不満に感じられる点も多かったのではないだろうか・・・当サイトのレビューを読まなければ満足していた人もいたかもしれないが(汗)。

しかし、そうした不満をメーカーが改良する可能性は無いに等しく、あっても数年先の話。車両の性質や人気的に他社が出す可能性も低い。ならば、「無ければ作る」は鉄道模型の基本・・・とは言い過ぎかもしれないが、現実問題として、ユーザ側でできるところはなんとかするしかない。

結果的には思ったより深入りしてしまったが、造形など根本的にどうにもならない部分はあるにせよ、塗装はそのままの軽工作レベルでも結構改善できることがわかったので紹介してみたい。欠点を書きっぱなしというのも気が引けるし(他製品もホントはフォローしたいのだ)、少しでもこの製品をなんとかしたいと思っている人の参考になるなら・・・

なお、当記事は工作中に撮影しているのでカッティングシートの上での撮影や、削りカスなども平気で写っており、お見苦しい点があることはご了承いただきたい。

●警告

以下の工作は当然、ご自由にチャレンジされて構いませんが、「軽工作」レベルといってもリスクを伴います。失敗したら替えが効かないパーツを切削することで、場合によっては製品そのものをダメにする危険性があり、切削中に怪我をする可能性もあるし、塗装等でシンナーを使うなら火気は絶対厳禁、換気も必要です。

いかなる結果にも当サイトは一切責任を負いませんので、実行は自己責任にてお願いします。それができなかったり、工作が苦手という方は読むだけに留めておいてください。

●屋根空調機・ステップ塗装

まずは軽いジャブから。いわゆる「色差し」という程度の工作だが、屋根上の空調機と、色がおかしい側面のドアステップを再塗装してみた。

マイクロエースE926形レビュー01

レビューでも書いたとおり、製品では真っ白な屋根上の空調機を銀色にしてみることに。

最初は「メタルック(極薄の銀シート)」を貼る方法を試してみて、フィット感、光沢ともに申し分なかったのだけど、写真のように貼り付けたらカッターで切り出さなきゃならない。実際やってみたら真っすぐ切るのも難しく、ちょっとでもズレれば傷になってしまう。これを6両分やるのは厳しいということで、この方法はボツ。


マイクロエースE926形レビュー02

というわけで、オーソドックスに銀色で塗装することにした。使ったのはタミヤのエナメル「クロームシルバー」。写真のようにマスキングして筆塗り。


マイクロエースE926形レビュー06

タミヤエナメルは粒子が細かいのでNゲージでもラメ状にならず、輝きもまあまあ。塗膜が弱いのが難点だけど、この場所ならあまり触ることはないし問題ないだろう。派手な試験車の屋根がさらに派手に?


マイクロエースE926形レビュー03

客用(?)扉下にあるドアステップ、製品は銀色に塗ってありおかしいので、ここもマスキングを施した上で塗装してみた。

暗めのグレーなら何でもよいと思うが、ここではガンダムカラーの「ファントムグレー」を使用した。


マイクロエースE926形レビュー04

マスキングを剥がすとおかしなことに。どうもドアステップの銀色の上は塗料が乗らないようだ。

仕方なく、元のドアステップ塗装を1000番のサンドで落とす羽目に(周囲はマスキングテープで養生した方がいい)。さすがに銀色を剥がしたら塗料がまともに乗るようになった。


マイクロエースE926形レビュー05

実車のドアステップには銀色の縁があるが、元のモールドがあっさりしているので妥協した。一応、ステップの上部にある細いモールドに銀色を入れてみたが効果は微妙な気が(苦笑)。

「ファントムグレー」は半光沢ながらそこそこ光沢があるので、最後に艶消しにした方がいいかもしれない。筆者はクレオスの「トップコート(艶消し)」を塗料皿に吹いて筆で上塗りした。


●コクピット(運転席)表現

2013年の製品にも関わらず、コクピット表現が省略されたこの製品。ここはもう(他社E3系を持っていることが前提だが)「おゆまるコピー」しかないでしょ! 「おゆまるコピー」についてはE2系レビューのコラムも参照してほしい。

マイクロエースE926形レビュー07

で、他社E3系のコクピットパーツを使うとして、カトー(左)とトミックス(右)のどちらを使うか。コンソール部分は大差ないものの、カトーは全体的に彫が深く座席などもハッキリしていてトミックスよりもリッチな印象がある。

だがしかし、ここはトミックスをオススメしたい


マイクロエースE926形レビュー12

なぜなら「East-i」のヘッドライトの遮光カバーは意外と高さがあり、前面窓との隙間がわずかしかないから。パーツが薄いトミックスをベースにした方が有利という訳。

トミックスは持っていなくて、カトーしかない人は・・・カトーをベースにするとコンソール部分だけで限界だろう。実際には座席まではほとんど見えないので、それでも十分といえば十分だけど。


マイクロエースE926形レビュー08

「おゆまるコピー」の実際の行程は前述のE2系のレビュー記事を見てもらうとして、光硬化パテでパーツをコピーしてみた。座席や後ろの壁がちょっと甘いが、どうせ削ったり見えなかったりする。コンソール部分が出来ているのならとりあえず妥協。

パーツの底面がウミウシみたいになってしまっているが、これからバリバリ削っていくので問題ない。また、出来たばかりのパーツは周りがベタベタするのでシンナーで軽く拭き取っておく。


マイクロエースE926形レビュー10

後方の壁も低く抑え、壁から後ろも全てカット。前方もサイドもかなり削っていることが分かると思う。底面も平滑状態になっている(水平がきちんと出るよう心がけたい)。ここまで削らないと「East-i」に組み込むのは難しいのである。

光硬化パテで作ったパーツは切削性はよいが粉塵がかなり出る。なるべく耐水ペーパーを使った水砥ぎをオススメしたい。


マイクロエースE926形レビュー11

壁の後ろ底面は窓ガラスのパーツに干渉するため、少し斜めに削っておく。


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そんな感じでボディにあてがいながら、適切な位置になるまで現物合わせで削っていく。はっきりいって根気のいる作業だが、前面窓の大きさが近く、パーツのベースでもあるトミックスと比べてもいい感じの位置に。正面からも見てコンソール高さもチェックしておきたい。


マイクロエースE926形レビュー13

削りと位置決めが終わったら塗装する。(必須ではないと思うが)自動車用のプラサフを吹いた後、クレオスの「ニュートラルグレー」(「ねずみ色1号」よりも濃い)を塗ってみた。

取り付け方法はかなり悩んだが、ヘッドライト遮光カバーの上に乗せるのが一番楽だと思う。固定は両面テープで十分だろう。

座席のモールドがあまり良くないがキニシナイ。


マイクロエースE926形レビュー55

位置としては黄色○、遮光カバーのエッジに対しコンソールのモールドをやや後方ずらして合わせる感じ。粘着力が弱い両面テープで仮固定してボディと床下がきちんと合うかチェック。合わないようなら前方を少し削ったり、さらに薄く削って調整(塗装前にやった方がいいかも)。

写真くらいに薄く(少なくとも1mm以下)削らないと収まらないが、強度もかなり落ちる。仮止めの両面テープでも下手に剥がすとパーツが割れることがあるので注意(実際割ってしまったし)。


マイクロエースE926形レビュー14

実際に車体に組み込んでみると・・・前後、高さとも適切な位置にできたようだ。ボディと床下もバッチリ合った。


マイクロエースE926形レビュー15

トミックスと並べると(立ち位置逆になってしまった)、位置はいいのだけどグレーが意外と明るくて違和感というか、ちょっと五月蝿い感じがする。E3系&「East-i」実車の前面窓は明るいグレーに見えないもんね。トミックスのコクピットは真っ黒で味気ないが、E3系として自然に見せるためにそうしているのだろう。


マイクロエースE926形レビュー16

そんなわけで、ステップ塗装でも使った「ファントムグレー」(左)に変えてみた。かなり濃いグレーだが黒ほど味気なくない。塗ったままでは光沢が結構あるので(写真の状態)、艶消しトップコートを吹いて落ち付かせた。

「ファントムグレー」は鉄道模型でも結構使えると思う(床下機器とか)。ていうか、工作(塗装)するならガンダムカラーでもなんでも使えるものはガンガン使わなきゃもったいない。


マイクロエースE926形レビュー17

両先頭車に組み込んでみたがどうだろう。きちんとパーツの存在を確認できながらも、落ち付いていて主張しすぎないバランスになったと思う。


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正面から見てもコンソールがきちんと見えている。

上手い人がやればさらに精度の高いものができると思うが、とりあえず他形式の製品と並べても遜色ない程度にはなったのではないだろうか。


●パンタグラフの改良

今回の「East-i」でだれもが挙げるダメな点は、絶望的に上がらないパンタグラフだろう。他社製のパンタに交換する方法もあるが、パーツを調達しなきゃならないし、取り付け方法も違うのでポン付けというわけにはいかない。細かい作業になるが、元々装備されているパンタをどうにかできないかと調整してみた。

マイクロエースE926形レビュー19

車体から取り外してみても・・・改めて上がらないパンタなのであった。


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そんなパンタをさっさと分解すると、4つのパーツで構成されていることがわかる。材質は軟質プラなので多少のことでは折れたりしないが、根本的に細かいパーツなので慎重に扱いたい。


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上の写真で下から2番目にあるアームの関節部分を拡大すると、黄色○内のストッパーがあり、これがパンタが上がらない原因の一つ。そこで、手前側のようにストッパーを削ってしまおう(細かい作業なので慎重に)。


マイクロエースE926形レビュー21

左がノーマル、右が施工後。どちらも目いっぱい広げた状態だが、ストッパーを削ったことで後者は明らかに改善されている。


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もうひとつの上がらない原因である下部アームの根元側。こちらは黄色○の部分が動きを抑制している。


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こちらも黄色○(下がノーマル)の部分を削る。角度を鋭く、長さも若干短く。


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パーツ修正後に組み立てると、かなりアームが上がるようになったことがわかる。もっと削ればさらに上げられるがこの辺が適正だと思うので。


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パンタ3つ分を同じように加工・組み立て、さらにガイシ部分を白で塗装してみた。パンタの材質自体がチープなので根本的解決になったかどうかは微妙だが、それでもノーマルよりは相当マシになったと思う。

さて、一番右のパンタは集電舟が付いていないが・・・白状すると、ピンセットで組み立て中に思いっきりすっ飛ばしてしまった。経験上、この大きさのパーツを弾き飛ばしたら発見は絶望的。未だに見つかっておらず、物理的にこの世から消滅したとしか思えない(苦笑)。普段から「細かいパーツは慎重に」といいながら面目ない。ピンセット使うのはやめた方がいいかもですよ。


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マイクロエースにはASSYパーツがないので困った・・・そこで、トミックス800系のパンタが1つ余っていたのでそこから集電舟のみ移植。新幹線用のシングルアームパンタはどれも似たような設計なので、流用は比較的簡単なようだ。一応、マイクロエース側の取り付け穴を0.5mmピンバイスで若干拡大して取り付けた。


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とりあえず、集電舟をクレオスのピンクで塗ってみたが・・・明らかに色が違うな(汗)。この後ピンクを7、赤を3くらいの割合で調色したものを塗り、艶消しトップコートをかけたら気にならないレベルに溶け込んでくれた。

とはいえ、ガイシの塗装+パンタのリフト量アップでかなり見てくれが良くなった気がする。これ以上パーツ飛ばすのが怖いので(この後さらに1つ、いつの間にか無くなっていた・・・)、集電舟はリフトした状態で水平になるよう調整して接着固定してしまった。


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横から見ればノーマルとの違いは一目瞭然。ようやく他社並みになったといえる。

今回の加工を行うとパンタを畳んだ状態では関節部分が少し緩くなり、左右にフラフラしてしまうことがあるが、上げてしまえば特に問題ないようだ。


結構効果が大きい工作だと思うが、パンタの組み立ては細かい作業で難しく、可逆性無しなのでリスクもそれなりにある。筆者のようにパーツを2つも紛失するというマヌケな結果になりかねないので、無理に加工せず他社製パンタへの交換も検討したほうがよいかもしれない。

まあ、結局は交換してしまったんですけどね(後述のコラム参照)。

●架線測定装置の光り方改善

先頭車の架線測定装置は光り方がスポット的で、精度感があまりないため光の均一化を試してみた。実車では光らない個所なので手を加える意味はないかもしれないし、リアリティ派はスイッチOFFなんだろうけど、一応。

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レビューでも書いたとおり、ここは高輝度LED(マジで眩しいので直接見ないように)でただ照らしているだけなのでどうしてもスポット的に光る。


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そこで、光を拡散させるプリズムを製作。透明アクリル板から切り出すとかいろいろあると思うけど、楽なのは「光栄堂」という建築模型材料メーカー(ここのサイト、鉄道模型に使えそうなアイテムが多くてちょっと気になる)の2×2mm透明アクリル棒。何かに使えるかもと昔ユザワヤで買っておいたものがここで使えるとは。

まず、LED側(底面)に丸棒ヤスリでアーチ状に削り、光らせる側の表面に適当にスジ彫りを入れ(筆者はタミヤのエッチングソーを使用)、さらに表面を1000番くらいのサンドを入れて擦りガラス状にする。


マイクロエースE926形レビュー31

長さを合わせれば光源ユニットの隙間にプリズムがすっぽり入る(アーチ側を下にすること)。固定は細く切ったマスキングテープを使ったが、そのままプリズム上にもテープを通してある。LEDが高輝度すぎるので、テープでも拡散すると思ったから。


マイクロエースE926形レビュー32

光らせるとこんな感じ。緑の方はともかく、オレンジの方は均一になり落ち付いた感じになったと思う。


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左が加工前、右が加工後。ここでもオレンジの光が均一化されていることが分かると思う。ただ、緑の方はギラギラ感は無くなったものの、平準化という意味ではその効果は微妙かも。


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プリズムを作らなくても、さらに簡単なのはトレーシングペーパーをかぶせる方法。ディフューザ代わりとなって光を拡散してくれる。ただし、光量は前述のプリズム方式より若干落ちる。

というか、拡散する以上プリズム方式も元の状態と比べたらやはり光量は落ちる。製品状態のギラギラしたほうが好みという人もいるかもしれないので、この工作はお好みで。


●ヘッドライトの改善

今回紹介する工作の中で失敗したらシャレにならないのがこれだ。

ヘッドライトの光り方も「East-i」で何とかしたい点の一つだけど、問題の大半が基本設計の悪さに起因するだけに、手を入れる個所も奥深いものとなり、それは「リスク」で返ってくる。パンタグラフは失敗しても他社製に交換する手もあるが、ヘッドライトは失敗したら製品を買い替える羽目になるかもしれない。そうしたリスクに加え、細かくて加工も大変な割に効果が出るかは運次第なところもある。

しかし、筆者が実行した結果がそれほどのものかはわからないが、決まればリターンは非常に大きいことも確かだ。まさにハイリスクハイリターン。覚悟のある人だけやってほしい。

マイクロエースE926形レビュー33

ヘッドライトや赤外線投光器のプリズムを外して光らせると、見た目は他社のものと比較しても悪くないことに気づく。右側の投光器にはカメラのモールドもしっかり表現されており、内部的な設計はそこそこイケるレベルだと思う。

これがプリズムにスポイルされることなく表に出てくれればいいのだが・・・


マイクロエースE926形レビュー34

ボディ側のヘッドライトの部分を見ると、結構奥まった位置からプリズムを差し込む設計であることがわかるし・・・


マイクロエースE926形レビュー35

実際問題、ヘッドライト・投光器のレンズもかなりの奥行きを持ったプリズムになってしまっている。透明度も今一つで、これでは内部的な設計が良くても、表じゃ眠くなるよねって。

一方、カトーやトミックスはどうなのかというと、ライトレンズが薄い板状になっているので内部構造がほぼそのまま表面に出る。大手老舗の2社、その技術力はやはり伊達じゃないんだな・・・


マイクロエースE926形レビュー36

だったら、同じようにしてやればきちんと光るのでは?と思いライトのプリズムを切り刻む。かなり細かいパーツ・細かい作業なので、カッターナイフやレザーソーでは難しく、切断にはタミヤのエッチングソーを使用した。

ヘッドライトの黒い縁を間違って切断しないように、余裕をもって慎重に作業していく。


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理論上は図の左側ように分厚いプリズムを、右のように薄く削ってしまおうと。車体への取り付けが問題だが、接着固定で行くしかないと覚悟を決める。


マイクロエースE926形レビュー37

最初は金属ヤスリで大まかに削り、次にサンドで400→1000→2000番と削っていくが(細かいので間違えて表面側を削らぬよう)、それだけでは完全な透明にならない。そこで、最後は普通の紙(コピー用紙とか)で磨けば楽勝。パーツを指の腹で押さえ紙の上を滑らせて磨く。すると写真のように向こう側が完全に見通せる、びっくりするほど透明なパーツになってくれる。さらにサンドの番手を上げたり、コンパウンドで磨く必要はまったくない。

この削る過程で黒い縁が少し落ちてしまったので、この後タッチアップした。


マイクロエースE926形レビュー38

ヘッドライトの奥行きが白いままだと目立つので黒く塗っておく。慎重を期してマスキングを忘れずに。


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レンズを少量の透明ゴム系接着剤で固定、その結果は・・・

ある特定の角度で見ればまずまずの結果が得られたと思うが、角度を変えると相変わらず眠いままだったりする。ヘッドライトも投光器も、見る角度により眩しく光ることがあれば見えなくことがあるなど、全体的に安定しないのだった。特に正面(中段右)は投光器が光っておらず製品状態より悪いかもしれない。

光源自体がカトー・トミックスよりも奥にあるため、同じような設計にしても無理があったか。


マイクロエースE926形レビュー61

結局のところ、ライトレンズを表面と完全に平行に、しかも薄く削らないと光軸がずれてしまうということだ。ものすごく細かいパーツである上に、レンズ4つを完全に同じに揃えるなんて・・・松岡修造だって諦めるって。上の写真は結構調整したのだけど、少なくとも筆者にはこれが限界。

「理論は正しくても実践は難しい」といったところか。


今回は1号車のみ工作を行い、6号車はそのままにしてある。違うアプローチの構想もあるので、何か進展があれば追って報告したい。

●パンタ観測窓の透明ガラス化

「East-i」4号車のパンタ観測窓は黒の印刷表現であり、他社の「ドクターイエロー」と比べるといささか寂しい。そこで、この個所に穴をあけてガラス表現化してみた。ただし、この工作はボディに直接穴開け加工するため可逆性はないし、工作難易度はヘッドライトよりは低いといえるが、失敗した場合のリスクはヘッドライト同様にとってもデンジャラス。こちらも覚悟のある人以外は実践しない方が賢明だ。

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この手の穴を開ける方法の定番は「小さい穴から少しづつ広げていく」だと思うので、まずはスクライバー(けがき針)で3か所位置決めし、ピンバイスで0.5→0.8→1.2mmとドリルを太くしていく(写真中段が1.2mm)。最終的には1.8mmまで使い、3つの穴が1つに結合された。

なお、車体はマスキングテープでカッティングシートに固定したうえで作業している。


マイクロエースE926形レビュー42

後は細いヤスリで形状を整えていく。元の黒印刷が削っていい限界となる。

注意点として、削っている最中に余計な個所にダメージを与えぬよう、周辺は必ずマスキングテープで養生しておきたい。何しろ失敗したらボディの替えはないのだから。さらに、今回のように車内にまでヤスリが貫通する場合は、車内側も養生するべきだ。


マイクロエースE926形レビュー41

細いヤスリがなければプラ棒(ここは前述の透明アクリル棒を使用)に両面テープでサンドペーパーを貼って使う。写真は400番だがこれなら1000番以上のサンドで仕上げにも使える。使えるものはなんでも使え!


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そんな感じで慎重に削っていくと、写真のような状態に。四隅が少し甘いのでこの後少し調整したが、だいたい予定通りの大きさに穴をあけることができた。


マイクロエースE926形レビュー44

グリーンマックスのキットなどではめ込みガラスを作るのと同じ要領で、透明プラ板や塩ビ板(ここでは塩ビ0.5mmを使用)を穴の大きさに合わせて切り出していく。削っては穴に合わせの連続で根気のいる作業だが、可能な限り大きさを合わせる。

実車の窓はツライチではないようなので少し奥で固定した。実車のこの部分は窓枠があったり、窓の幅ももっとある感じだけど、今回は黒印刷を置き換える程度で妥協した


マイクロエースE926形レビュー48

さらに、エバグリの1.5×0.5mmのプラ棒を加工してカメラのようなものを作ってみた。カメラ部分はねずみ色1号、その他は艶消し黒。レンズ部分はコピックの極細スミ入れペンで表現してみた。


マイクロエースE926形レビュー45

裏は塗っていないが見えないので問題ない。取り付けは床下(室内パーツ)側に付ける手もあるが、調整時にいちいちボディを付けたり外したりするのが面倒なので、車体側に取り付けることにした。位置や高さを調整し両面テープで固定。ステーを艶消し黒で塗ったのは目立たなくするためだ。

窓ガラスは少々隙間があるように見えるが・・・外から見る分にはほとんど分からないので、とりあえずこれで。


マイクロエースE926形レビュー46

カメラの大きさや形状は改善の余地があるかもしれないが、窓の向こうに存在していることが分かる。ドクターイエローにも応用できるかもしれない。


マイクロエースE926形レビュー47

少々荒削りな感じはするが(汗)、黒1色の印刷表現よりはマシになったのではないだろうか。


●連結間隔の短縮

ようやくラスト。この製品は連結間隔が無駄に広いので短縮化を行った。内容的には「East-i」に対してというよりも、「マイクロエース新幹線カプラー」に対してという感じなので、同じカプラーを採用する200系とかにも応用できるかもしれない。

マイクロエースE926形レビュー62

加工前の状態から、改めてマイクロエース新幹線カプラーの構造を見てみる。

押し方向の連結間隔を決めているのは赤○のピンの先端で、引っ張り方向を決めているのは黄○のフック部分。このフックあるので引っ張っても外れることなく連結できるというわけだ。この部分には0.5mm程の隙間(遊び)があり、「East-i」の場合は6.5〜7mmくらいの範囲で連結間隔が変わる。


マイクロエースE926形レビュー63

そこでまず、このピンを削ってしまう。というか、ニッパーで大胆にカットしてしまおう。(・・・ちょっと古いが)こんなに削って大丈夫か?大丈夫だ、問題ない。

最初はヤスリで慎重に削っていたのだけど、少し削った程度では一向に連結間隔が縮まる様子がないため、しびれを切らしてニッパーで一気に切ってしまったというのが真相。ニッパーで切断するとパーツの破片が「飛ぶ」ので、目とかに入らぬよう対策を。


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レールの上に載せては削って調整という感じなので、カプラーパーツを外すのではなく車体に付いたままやる方が効率的。ただし、特にヤスリで削る場合はパンタ観測窓と同様、周辺の養生を忘れずに。


マイクロエースE926形レビュー64

先ほどのようにピンを切断するとこんな感じに。縮まる分外側のフックが干渉するので、黄○の根元のステーも切り取ってしまおう。ステー1本で支えることになるが、強度的には全く問題ない。だいたい、このカプラーは強度も無駄に持たせすぎなのだ。

ピンを削った後の厚み(緑線の間隔)は0.6〜0.7mmくらいで、これでだいたい4.7〜5.0mmの連結間隔となる。柔軟性のある軟質プラなのでもっと削れるかもしれないが、これ以上はさすがに強度的に不安。

あとは外側のフックとの間にできた広い隙間(赤部分)をどうするか。


マイクロエースE926形レビュー50

ここは外側のフックにプラ材料を取り付け対処する。使ったのはエバグリの2.0×0.75mmのプラ棒。0.5mmだとフックの厚みに足りず、1.0mmだとはみ出てしまうかも。0.75mmのプラ材料となると、エバグリくらいしか選択肢がない。

取り付けはゴム系接着剤を使用したが、軟質プラの割にはなかなかどうして接着してくれる。面倒なので筆者はそのままにしてあるが、材料の白が気になるならグレーで塗ればよい。


マイクロエースE926形レビュー51

最終結果がこれ。先の隙間がプラ材料で埋められたのがわかるし、遊びもかなり抑えられた。プラ材料は厚み(0.75mm)が写真上下方向で、幅(2.0mm)が左右方向である。こうしてみると1.0mm厚でもいけるかな。

ただし、この加工により「レール上で付き当てて連結する」は出来なくなる。外す時は加工前と同じく「片方の車両を持ちあげて外す」ままなので、逆に「片方の車両を持ちあげてかぶせる」ように連結させることになる。


マイクロエースE926形レビュー52

上が加工前(6.8mm)、下が加工後(4.7mm)。外幌をテープで固定しているのは押し方向に詰めて計測したいからだが、明らかに間隔が狭くなったことが分かる。ついでに、上はパンタから集電舟がなくなっていることもわかるorz。


マイクロエースE926形レビュー53

レビュー記事に掲載した写真と比べたらずっと見栄えが良くなったと思う。とはいえ、これでも4.7〜5.0mmといったところで、ようやく非伸縮のトミックスE3系と同じレベルである。限界まで削ってもこんなものだから、どんだけマージン持たせてんだよと。他に方法もあると思うが(いっそのことTNカプラー化とか)、時間やコストの問題もあるしこれで良しとしよう。

気になる曲線通過性能は腐っても伸縮カプラー、直線→曲線、その逆であればR=280mmのカーブを余裕で曲がれた。S字はR=345mmでは曲がれたものの、片側の車輪が若干浮いた。R=428mm以上なら問題ない。ポイントの渡り線などで出来るS字だったら余裕でクリアできるので、実用上は全く問題ないといえるだろう(何度も言うが、ポイント以外の急曲線S字を走らせるのはやめよう)。

最後に、今回のカプラーの削り量は「East-i」に限ってのものだということ。これより間隔が狭い200系等で同じ量を削ると狭くなりすぎる可能性があるので注意したい。

●工作を終えて

最初はパンタの調整とコクピット製作くらいで済ますつもりだったのが、思ったより深入り、ヘッドライトやパンタ観測窓のような切断や削り、穴開け加工といった失敗したら最後な工作にまで手を出してしまった。中古で買ってきたとか古い製品ならともかく、買って間もない新製品にここまで手を入れるとは自分でも思わなかった。

それだけこの製品の出来が(以下略)だといえるが、一方で工作に対する効果もそれなりにあるので、楽しめたことも事実だった。リスクが高い工作もあるので万人にはオススメしにくいが、それでも技術力よりも気合と根性で乗り切れるものが多かった気がする。手持ちの「East-i」に不満があるなら、(あくまでも自己責任で)いろいろ試してみてはいかがだろうか。

ただ、前面窓上部のRとか、台車カバーの形状とか、引き戸のようなプラグドアといった根本的な部分に関しては改善方法が見当たらなかった。大まかに見れば「East-i」しているので妥協してしまえばいいのだが、今回の工作により部分的に改善が進むと、他の個所が気になり出すのも事実だ。

こだわるなら、いっそのこと当製品を素材として活用し、「他社E3系とのニコイチ」にしてしまうか。例えばトミックスE3系をベースに、当製品の側面や屋根上の一部だけ移植したり。これまで改造でしか手にすることができなかった「East-i」が、ようやく完成品で出たと考えると本末転倒としか言えないのだけど・・・手元にトミックスE3系「つばさ」旧製品が余っているのは悪魔の囁きだろうか(w。

【コラム】もう何も怖くない(?)

これもそろそろ古いな・・・

ピンセットなどで細かいパーツを扱っているとき、誤ってはじけ飛ばすというのは「Nゲージ工作あるある」の一つだが、本文で書いたように飛ばしたパーツがその後発見に至ることはまずない(大げさ?)。グリーンマックスのキットとかならバルクでも買ってきてリカバリすることは可能だが、ASSYパーツを扱わないマイクロエースの場合、パーツによっては取り返しがつかないことになりかねない。

実際問題、今回は「East-i」のパンタパーツを2つ紛失するという新幹線模型を扱うサイトの管理人としてあるまじき失態をしたわけだが、そんな失意の筆者が(移転による)閉店間際の東急ハンズ横浜店を彷徨って見つけたアイテムを紹介したい。

マイクロエースE926形レビュー54

「フチオカ」という会社(研磨関係の製品を扱っている模様)の「ホビー作業ボックス」。透明なPET製で簡単な組み立て式、両側から手を突っ込んで中で作業すれば、細かいパーツがあさっての方向に飛んで無くなるというのを防いでくれる。モーターツールによる研磨、ニッパーでの切断で破片が飛び散るのにも有効だろう(先の連結器のような)。


作業時にいちいち用意するのは面倒だしスペースも取るが、パーツを無くすよりはマシと思って今後も活用するつもり。パンタで懲りた後なので、ヘッドライトの加工は実際にこの中で行ったのだった。

【コラム】その後のパンタ

本編で書いたとおり、集電舟パーツを2つ紛失してしまったパンタをなんとかしなきゃならない。マイクロエースにはパーツ別売はないが他社他形式のパーツを流用することは可能であり、実際トミックス800系パンタのパーツを流用したのは前述のとおりだ。しかし、パーツの手持ちは1つだけだったので、もうひとつ分は買ってくるしかない。

しかし、どうせ買うなら800系用である必要はなく、そもそもE3系のパンタも普通に入手できる。そうなると集電舟パーツだけもぎ取るのも馬鹿らしいし、パンタの出来自体、正直トミックス>>>マイクロエース。ここまできたらパンタごと交換した方がよいとの結論に。

ちなみに、トミックスを選択したのは取り付け穴の位置が同じだから。カトーは位置が異なるので取り付けには労力を要するだろう。

マイクロエースE926形レビュー65

トミックスのE3系パンタは2個入り。「East-i」はパンタ3つなので2箱買わなきゃならない。というわけで秋葉原の某店でパーツ調達してきたら・・・

色ちげーし!

品番は0231で同じだが、旧製品ロットをつかまされたらしい。箱開けなきゃ分からないとはいえ、こんな孔明の罠があるとはorz。交換してもらおうにも箱開けちゃったし、中身も取り出しちゃったし、また店に行くのも面倒だし・・・

自分で塗るからいいよもう・・・


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800系のパーツ流用時と同様クレオスのピンクを7、赤を3で混ぜたものを塗り、艶消しトップコートをかける。左が新ロット、中央が今回塗ったもの、右が旧ロット。

塗ったやつは全然色合ってないように見えるが、直接見る分にはほとんど差を感じない(本当)。どうやらカメラで撮ると差が出るようだ。同じカメラで撮っているのに、左は上の写真の左と同じだが全然違う色を出している。そりゃまあ、人の目とカメラは違うからねえ。

パンタは軟質プラなので、色味より塗料の食い付きの方が心配だが(プライマーとか塗ってない)・・・


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色の件はとりあえずOKとして・・・マイクロエース(左)とトミックス(右)は取り付け穴の位置は同じだが取り付け方法が異なる。前者はガイシを直接車体に取り付けるのに対し、後者は屋根裏からガイシパーツを通してその上に取り付ける(穴があることがわかる)。要するに、ポン付けはできないということだ。

それ以前にパンタにはガイシパーツが付属していないので、そのままでは取り付けしようがない。


マイクロエースE926形レビュー68

そこで、マイクロエースのパンタからガイシ部分をニッパーで切断して取り出した。さらば元のパンタ。上面が平らになるよう切り取るのがポイント。細かいので紛失しないよう発砲スチロールに差し込み、「Vカラー」というソフトビニール用の白で再塗装(写真は塗装前)。

「Vカラー」はソフトビニール用の塗料であり、軟質プラにも塗れるし隠ぺい力も高いのだけど、臭気が強烈、というか凶悪。クレオスや鉄道カラーの臭気なんざオモチャ同然。特に専用シンナーはマジヤバレベルで少量でも使うのに気が引けるほど。鉄道模型でも利用価値はあると思うが換気はしっかり。

まあ、普通の塗料でも問題ないと思う。


マイクロエースE926形レビュー69

塗装したガイシを取り付ける。元々付いていたパーツなので問題なく取り付け可能。


マイクロエースE926形レビュー70

マイクロエースのガイシは細いのでピンバイスで穴を開けるのはとても無理。接着固定のためにトミックスのパンタは左のように取り付け用の突起を切り落とす。

左が塗装したやつで底面はまともに塗ってない。右は未塗装のオリジナル色。底面にあるのは調色時に塗った跡。目で見る分には全然差がないんだけどなあ。


マイクロエースE926形レビュー71

あとはガイシの上に少量のゴム系接着剤つけ、位置をきちんと合わせてパンタを載せ、圧着して固定するだけだ。マイクロエースには高圧線パーツもあるからそれも意識して取り付ける。


マイクロエースE926形レビュー72

かくして取り付けは終了となるが、トミックス(上)ではパンタを畳んだときに両端のホーンがパンタカバーの切り欠き中央部に来るようになっているが、マイクロエース(下)では少しずれる。アーム長さ等が異なるからだと思うが、そこは割り切る必要がある。

また、接着面積が極めて小さくしかも軟質プラ。パンタを上げる時はガイシの上から押さえながらの方が安全かも。


マイクロエースE926形レビュー73

いろいろ問題はあったが、とりあえず違和感なく取り付け出来たと思う。当然だが、リフト量も比べ物にならないくらいまともになった。一番奥が塗装したやつで4号車に取り付けた。この写真は割と目で見る色に近くて4号車だけちょっと暗い感じがするが、実車も汚れていて一定の色ではないから許容範囲とした。



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