実車について |
模型の概要&製品ラインナップ |
比較レビュー1 序・先頭形状・車体各部・屋根上 |
比較レビュー2 塗装・灯火類・室内 |
比較レビュー3 床下・連結部分・ギミック |
比較レビュー4 全形式比較・総評 |
トミックス H5系北海道新幹線 レビュー |
床下のモールドはカトーが濃く目立つが、トミックスも水準以上である。実車の吸音パネルはほぼツライチだが、模型ではどちらも凸モールドの横線で表現している。
カトーはダクト内のスリットはビシッと表現できているものの、ダクト自体は立体感に欠ける。対しトミックスは奥まった感じで実車に近いと思う。また、カバーのボルト類も表現している。
E5系の雰囲気を損ねるものではないが、スマートに見せるためのデフォルメか、カトーは床下全体の上下寸法が少し狭い(薄い)。一方、トミックスの寸法は申し分なく、珍しく床下でアドバンテージを見せているかもしれない。
E6系と同様に、カトーはボディと床下が一体、トミックスは別体となる。
ただ、今回のトミックスはボディと床下の組み付け精度があまり良くなく、ボディとの隙間が目立つ個所が多少なりとも見受けられるのが残念。床下も全体的に反り気味なのが気になる。
すべて海側のみで、山側については割愛。
パターン | 画像 |
A | |
B | |
C | |
D | |
E |
どちらも5種類の床下パターンを用意している。各号車への配置は以下の通り。
号車 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
カトー | A | B | D | B | C | B | C(M) | B | D | E |
トミックス | A | B | D | B | C | B | C(M) | B | D | E |
E5系は基本的に2両1ユニットであるため、中間の偶数号車はパターンBで統一されていてシンプルである。それゆえかどうかはわからないが、両者ともパターン再現度はパーフェクト。特に床下流用が十八番のトミックスに代用がないのは非常に珍しいといえる。
E5系は試作車を別にすると、新幹線では初めて台車部分までフルカバーとなったため、全体的にスマートというか独特な印象である。また、側面からは台車を見ることはできない。
吸音パネルは同じような感じながら、トミックスはカバーのボルトも表現していて細かい。ボディ側にある小さなハッチ(?)にあるボルトはどちらも省略。なお、実車のU21編成以降はカバー上の吸音パネルが省略されているため、トミックス限定品は厳密には実車と異なっている。
トミックスは前述した床下の「反り」がわかるだろうか。車輪へのカバーのかかり具合を見ると、車端側(写真右側)に向かって少し垂れ下がっている。
先頭部の台車カバーも中間部と同じ意匠になっている。トミックスは中間部も含めて、台車の脱線逸脱防止ガードをチラ見せしているのがポイント。
カトーの台車はE5系用に新規製作されたもので、実車の台車カバーを外した写真と見比べてみたが、忠実に再現されている。E2系ではE1系の流用だったし、E5系はカバーで見えないのだから流用で構わないと思うが、それでもきちんと作っているのは好感が持てる。
トミックスはパイオニアV・・・ではなく、E6系同様のシンプルなものを採用。こちらもE5系専用品であり、台車は見えないのに中心部がE6系よりも凝ったものになっているのは、カバー内幅に余裕があるからだろうか。前述の通り、軸箱下には逸脱防止ガードが表現されている。
たいてい床下はトミックスが不利になることが多いが、今回はモールドのみならず、ダクトなどのパターンでもカトーに対し互角以上だったと思う。もっとも床下にルーズなメーカーも、少し変化してきたということだろうか?本当にそうなら喜ばしいことだけど、今後の製品も見ながら長い目で判断したいと思う。ただ、今回のE5系についてはよくやっているのは確かだ。
残念なのは、前述したとおりボディと床下の組み付け精度が低い点。全体的に床下が反り気味で、これまでの写真を見てもわかるが、ボディとの隙間が目立つ個所がある。加えて筆者が購入した個体は一部車両でボディ車端部が緩くガバガバだったため、メーカーに修理依頼する羽目に。それでも、反りについては「仕様」とのこと修理されず、諦めるしかなかった。床下自体の表現は良かっただけに、こういう部分でマイナスになるのはもったいない。
カトーは「KATOダイアフラムカプラー」を採用。もともとはミニ新幹線(E3系)で採用されていたもので、フル規格新幹線に採用されたのはE5系が初めてである。その際にスプリングが組み込まれ、E3系のようにプラプラすることなく中央位置に復元するなど改良されており、現在では同社の新幹線の定番カプラーとなった。従来のダイアフラムカプラーと異なりねじれ方向にも結構柔軟に動くので、後述の車体傾斜システムとの相性も良い。
一方のトミックスはE6系に続いてフック・U字型の通電カプラーを採用。使い勝手の改善はまったくないが相方と揃える以上、同じものを採用したのだろう。可動幌もE6系同様のプレーンなものが採用されている。
実車の全周幌はアルミの枠(塗装されている部分)とその間の黒いゴム幕という組み合わせになっているが、カトーはカプラーの都合上、ゴム幕の部分を省略。N700系の全周幌カプラーは使い勝手に難があったためか、無理に採用しなかったようだ。
トミックスはおなじみの可動幌で連続感はあるものの、E6系と同様にゴム幕の表現はなくシンプルなものである。こちらもU28編成以降の幌に改造するとかにはよさそうだが、もうちょい色気が欲しいところ。非伸縮カプラーなので連結間隔がカトーより広いが標準的なレベルである。
カトーは全周幌の黒いゴム部分が省略されているが、この角度からはさほど違和感ないように思える。トミックスもゴム部分の表現はないが、可動幌がメタリック塗装ではないことがボディと良いコントラストになっている。黒いゴムを塗装等で自力で表現すればもっと良くなる可能性あり。
車体間ヨーダンパの表現はトミックスの方が奥まっていてそれっぽい感じ。ダンパが途中で太くなっているが、実車では黒い蛇腹のカバーがかかっている部分である。黒で塗ってやると引き締まるかもしれない。
外幌にメタリックが入っていないのは実車も同様で、左の写真のように車体と色調の違いが出ることがある。上の写真ではカトーも色調が違うように見えるが、外幌にやや後退角が付いているから反射でそう見えるだけで、車体と同じ色である。
どちらもそれぞれの東北新幹線系統の製品と同様に、先頭部には格納式の連結器を備えている。実車がそうであるように、E514形(新青森寄り先頭車)のみに装備。
カトーはE2系などに採用されていた「オープンノーズカプラー」ではなく、トミックスのように先端部がキャップ式でボディから外れるようになった。使い勝手の向上が最大の狙いだろう。一方のトミックスは400系以降採用され続けている実績のある方式を踏襲している。
E5系はノーズ部のオーバーハングが長く、E2系・E3系あたりと比べるとカプラーも長くなってしまうようだ。カトーの方がカプラーが長く、先端の重さで若干垂れ下がっており見た目にはいまひとつ。トミックスも短いとは言えないが、全体的にカッチリしており精度感は一歩抜きんでている。
正面から見ると、トミックスは実車よりもゴテゴテしているが、その分リッチな印象を受ける。対してカトーはシンプルすぎて大雑把な感じがする。開口部周囲のプラの厚みはカトーが薄く、これは他の形式でも見られる差異である。
いずれにしても、連結器を出してそのまま走行するものではないし、連結させてしまえば大した問題ではないのだけど。
E6系と併結させた場合、やはりどちらも連結間隔が広い。それにしても、E6系の記事でも書いたがカトーの12mmという間隔はさすがに広すぎだろう。一方のトミックスは8.5mm程度と、同社のE2系+E3系あたりと比べると広くなってしまったが、それでもカトーよりは縮めてきたし見た目もカッチリしていて精度感がある。ただ、後述するが連結中心がややE5系寄りになっている。
相方をE3系にした場合はもう少し狭くなると思うが・・・ なお、どちらもR=280mmのS字をクリアできる。
まあ、E6系の方でいろいろ書いたし、今回はノーコメントで・・・
トミックスは同社のE6系よりも明らかに連結器が短い・・・というより、連結器のパーツ自体が奥まっていることがわかる。このことは連結間隔の短縮に一役買っているものの、カバーを取り付ける突起がボディにかかってしまい従来製品よりも脱着しづらく、操作性が少々悪くなってしまった。
トミックスのヘッドライトのスイッチはE6系と同様に連結器操作とは分離されているが、今回は車体が広いせいか窪みも広くなり、人差し指でも余裕で操作できて工具いらずに。
カトーも同じような位置にスイッチがあるが、こちらは工具なしでは操作不可能。
立ち位置が逆になってしまったが、カトーは同社のN700系と同様に、カーブでは車体が傾く車体傾斜システムを搭載。実車の傾斜角1.5度に対し、模型では数値の公表はないが、N700系と同じ3度にデフォルメされていると思われる。
一方、トミックスにはこのギミックは採用されていない。
E6系の記事で書いた内容とかぶってしまうが、やはり連結間隔はノーズ(オーバーハング)の長いE5系とE6系を連結させるとどうしようもないようだ。特にカトーはいくらなんでも広すぎで、中間連結部分の間隔は狭くて引き締まって見えるだけに非常に残念。トミックスはそれよりマシではあるけど、やはり広いと言わざるを得ない。いずれもR=280mmのS字カーブを曲がれるようにしているためだが、そこまでフォローする必要があるのかと思う。とはいえ、メーカーがそうしてしまった以上はどうしようもない。通常のカーブであれば4.5mm程度の間隔でも十分曲がれるので、ここにカトーの連結間隔短縮方法を書いてみた。興味があれば参考にしていただきたい(トミックスもなんとか短縮化できないかと思案中・・・)。
カトーがオープンノーズカプラーの採用を見送ったことについて、技術的な後退と見るか、使い勝手向上と見るかは評価が分かれるところだろう。ノーズの細長さを考えると、そもそも実装が難しかったのかもしれないが。個人的には使い勝手が良くなったことは評価しているのだけど・・・トミックスは従来通りの方法を踏襲しているので安心して使えるのだけど、前述したようにカバーの脱着がしづらいのが気になった。
カトー・トミックスともに、10両編成をブックケースに収納することが可能。
カトーはブックケースの大きさが異なっている。増結セットAが大(右)、増結セットBが小(左)となっていて、基本セット分はブックケース大に収納できる。
先頭車、パンタ車の位置が決まっているため、編成順に並び変えることはできない。写真は製品状態の並びになっているが、筆者は左のブックケース小に中間の偶数号車(2・4・6・8号車)を収納することで多少分かりやすくしている。
トミックスは基本・増結セットともに同じブックケースで、1つあたり8両収納できるためかなり余裕がある。先頭車はどちらのケースにも収納可能であり、パンタ車の位置も結構柔軟に設定できるので、編成順に並び変えることは極めて容易。写真のようにお互いのウレタンを入れ替えれば美しく収まる(基本・増結で微妙に色違うけどね・・・)。
筆者は写真のように1〜5号車、6〜10号車という、限定品と同じ配分とした。先頭車の位置さえ決まれば4:6どころか2:8とかもできるのでお好みで。
付属品は以下のような構成となっている(スリーブや注意書き等は除く。リンククリックで画像表示)。
カトーは後のドクターイエローやE6系にも引き継がれた、基本セットのリレーラー(車両をレールに乗せるための補助具)付属はE5系が初で、発売時は結構ユニークだったと思う。「セット名表示シール」とはブックケースの「増結」という文字が気になる人向け?のステッカー。ケースとの質感に差が出てしまうので、使用はユーザの好み次第。プラ製ドライバーは連結器の操作や、灯火類のON・OFFに使用する。
製品 | 付属品 |
基本セット(3両・紙パック) | マニュアル・プラ製ドライバー・リレーラー |
増結セットA(3両・ブックケース) | マニュアル・セット名表示シール |
増結セットB(4両・ブックケース(小型)) | マニュアル |
トミックスは通常品・・・限定品も同じだが、付属品は実質インレタのみ。基本セットのインレタはマニュアルの袋に入っていたが、増結セットのは独立した袋に入っていた。E6系では動力台車取付棒が付属しなかったが今回は付属。ただし、前述の通りE5系では工具なしでも余裕で操作できるようになったので、あまり出番がないという皮肉な結果に。
製品 | 付属品 |
基本セット(4両・ブックケース) | マニュアル・インレタ・動力台車取付棒 |
増結セット(6両・ブックケース) | マニュアル・インレタ |
ところで、カトーの付属リレーラーについて・・・
リレーラーの裏には「UNITRAM」という刻印がある。ユニトラムはカトーの路面電車用レールのことで、ある意味新幹線とは対極にある路面電車用のリレーラーが流用されるというのは面白いのだが・・・
路面電車用なので長さが足りない(苦笑)。両方の台車を乗せることすらできないので、使い勝手は正直イマイチ。
台車がカバーで隠れているE5系では、カトーのリレーラーは確かに便利なので付属させたことは評価できると思う。 ただ・・・あくまでも「おまけ」だと思うのであまり文句は言いたくないが、新幹線用としての使い勝手が考慮されているとは思えず、路面電車(富山ライトレール)用をそのまま入れるだけというのは「やっつけ仕事感」が否めない。面白い試みだけにちょっと残念だ。車体が短いE6系では、このリレーラーでも特に不便はなかったのけど。
車体の寸法について比較する。なお、数値については以下注意点を挙げておく。
単位はmm | 先頭車全長 | 中間車全長 | 全幅 | 全高 | 連結間隔 | 編成長 |
カトー | 164.0 | 152.0 | 21.2 | 22.7 | 4.0 | 1,580.0 |
トミックス | 164.0 | 153.0 | 21.0 | 23.0 | 5.0 | 1,597.0 |
実車/160 | 164.1 | 153.1 | 20.9 | 22.8 | 3.1 | 1,581.3 |
実車 | 26,250 | 24,500 | 3,350 | 3,650 | 500 | 253,000 |
計測は1号車と2号車で行った。
カトーは中間車が伝統的に1mm短いのだが、 先頭車はほとんど差がない。全幅・全高も含めて、基本的には実車をほぼ忠実にスケールダウンしている。
車体長のほか連結間隔の関係で、フル編成時の全長はカトーの方が実車に近いが、10両編成ということもあってトミックスとそれほど差は付いておらず、並べてもそれほど気になるものではないと思う。
<前ページ | Speed Sphereトップ | 次ページ> | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
0系
300系
500系
700系
N700系
200系
400系
E1系
E2系
E4系
E5/H5系
|