300系の模型はトミックスとマイクロエースから発売されている。
一番最初の300系の模型はトミックスから発売された。300系の営業運転開始は1992年3月となるが、同社のカタログでは1992年発売(詳細な発売日は不明)とあったため、Nゲージブームがひと段落していた時代と考えると、同年内での模型化はかなり早かったといえるだろう。1991年のカタログでは量産先行試作車のJ0編成が表紙に抜擢されているほか、同編成の写真を添えた発売予告ページ(2ページ見開き)もあり、結果的には量産車が製品化されたとはいえ、0系、100系に続くトミックスの新幹線模型として、かなり早い段階で企画されていたことがうかがえる。
300系の営業運転開始から間もない時期に発売されたため、初期車であるプラグドア編成・菱形パンタグラフがプロトタイプとなっている。しかし、車両は全形式用意されず、フル編成にするには代用形式が発生するとか、屋根上の表現に不備があるとか、印刷表記類が全くないといった、「おおらかな」時代背景(当時はフル編成で模型を揃えることは珍しかった)に沿った製品仕様でもあった。
2000年代に入るとNゲージブームが再来、新幹線製品も急速にラインナップを増やすこととなったが、この時期の東海道・山陽新幹線の花形は500系、700系であり、初代「のぞみ」として注目を浴びた300系も、「ひかり」「こだま」と地味な役回りに徹していたため、他社から同形式が発売されることはなく、長らくトミックスだけが発売している状況が続く。
その後、ますます新幹線製品は充実し、フル編成化が当たり前となった時代にあわせて考証も進み、形式代用など考えられない時代になっていくが、300系の模型はリニューアルすらなかなかされず、発売当時の仕様のままで細々と発売されていた。実車の注目度が低かったとはいえ、取り残された感は否めなかった。
しかし、N700系が登場し、代わりに300系の引退が徐々に進行してくると、2010年にようやくトミックスがリニューアルを実施。基本的な仕様は変わっていないが、模型化されていなかった形式の新規製作、実車にあわせたシングルアームパンタ化、同時に屋根上の不備を解消したうえで、通電カプラーやインレタによる表記類の充実といった、同社の定番メニューで近代化された。主なリニューアル内容は以下の通り。
さらに実車の引退が近づいてきた2011年末に入ると、トミックスからJR西日本車である3000番台(F編成)の製品化が発表。従来製品(J編成)ベースの製品なのでこちらもプラグドア仕様の初期車となるが、翌年の3月、実車の引退と同時期に限定品で発売された。事実上の「さよならセット」といえるだろう・・・と思っていたら、正真正銘の「さよならセット」といえる製品が発売発表された(後述)。
また、トミックスのF編成と同時期にマイクロエースからも製品化が発表、ついにトミックス以外のメーカーからも300系が発売されることとなった。J編成・F編成の同時発売となったが、トミックスと異なり後期車の引き戸仕様をプロトタイプに選定することでバッティングを避けている。
マイクロエース製が発売され、300系の模型はようやく落ちつきをみせたと思われたが、トミックスから同車が引退した3月16日の1か月前から施された、「ありがとう。LAST RUN」の装飾付き仕様が発売された。プロトタイプはさよなら運転に充当されたJ57編成となり、従来の製品と異なり後期車の引き戸仕様であることから、基本は従来品と変わらないながらもボディを新規製作して対応している。また、この製品をベースにした通常製品が「後期型」として発売され、同時にプラグドアの編成は生産中止となった。
実車の登場および、最初の模型の発売から約20年。実車の引退が注目されたことがきっかけというのも皮肉な話だけど、土壇場のラインナップ拡大により初代「のぞみ」車両としての面目を保ったといえるだろう。
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