300系の模型はトミックスとマイクロエースから発売されている。

●製品ラインナップ

311
カトー
300系 0番台 新幹線「のぞみ」
発売日:2022年10月18日
発売区分:特別企画品・限定品
プロトタイプ:J21編成
実車の登場から30年後、まさかのカトー300系。引き戸・シングルアームパンタの、晩年のJ21編成がプロトタイプ。最新作らしくヘッドライト4灯表現などが盛り込まれている。特別企画品でフル編成セットのみ発売というのも変わった試みだ。
トミックス
JR 300系東海道・山陽新幹線
発売日:1992年
発売区分:新製品
プロトタイプ:J2〜J15編成(下枠交差型パンタ)
最初の300系模型。下枠交差型パンタの製品は現在のところこれだけで、基本的なモデリングは問題ないものの、発売時期が古いため形式代用が多い、屋根上の表現が中途半端、印刷表記類がないといった問題がある。
トミックス
JR 300系東海道・山陽新幹線
発売日:2010年3月27日
発売区分:リニューアル
プロトタイプ:J2〜J15編成(シングルアームパンタ)
従来の製品をベースに、J編成のシングルアームパンタ仕様としてリニューアル。形式(ボディ)や屋根上の新規製作のほか、通電カプラーの採用や表記類のインレタが付属するなど、かなり改善された。
トミックス
JR 300-3000系東海道・山陽新幹線
発売日:2012年3月23日
発売区分:特別企画品・限定品
プロトタイプ:F1〜F5編成(シングルアームパンタ)
JR西日本の3000番台(F編成)を限定品で発売。J編成製品がベースのため、プロトタイプはF1〜F5編成のプラグドア仕様となる。側面のジャッキ穴は印刷で表現されるほか、パンタカバーの色や車体表記もF編成に準じたものになっている。
トミックス
JR 300-0系(ありがとう。300系)
発売日:2012年11月29日
発売区分:特別企画品・限定品
プロトタイプ:J57編成
300系のさよなら運転に充当されたJ57編成を製品化。客用扉は従来品のプラグドアではなく、実車に則して引き戸のボディを新規製作して対応。特製パッケージにブックレットを付属した、トミックスお得意の「さよなら運転」製品。
トミックス
JR 300-0系東海道・山陽新幹線(後期型)
発売日:2014年6月20日
発売区分:新製品
プロトタイプ:J16〜J58編成(シングルアームパンタ)
同社の300系ラインナップに、客用扉が引き戸に変更された後期型が登場。「ありがとう。300系」をベースにした通常展開製品と考えられるため、J16〜58編成のシングルアームパンタ仕様がプロトタイプになると思われる。
308
トミックス
JR 300-3000系東海道・山陽新幹線(後期型)
発売日:2019年1月25日
発売区分:新製品
プロトタイプ:F6〜F9編成(シングルアームパンタ)
以前発売されたF編成の限定品に対し、こちらは通常品で引き戸になったF6〜9編成がプロトタイプ。側面のジャッキ穴は印刷で表現される点など、ドア形状が異なる以外は仕様的には従来製品と変わらない。
310
トミックス
JR 300-0系東海道・山陽新幹線(後期型・登場時)
発売日:2022年5月20日
発売区分:新製品
プロトタイプ:J16〜29編成
トミックスでは久々の、下枠交差型パンタが3基搭載された300系登場時を再現した製品。3・15号車の高圧線終端処理が再現され、ケーブルヘッド途切れも形式代用も解消。客用扉が引き戸になったJ16〜29編成がプロトタイプとなる。
マイクロエース
300系 東海道・山陽新幹線「J61」編成 シングルアームパンタ
発売日:2012年6月15日
発売区分:新製品
プロトタイプ:J61編成
トミックスとは異なり、客用扉が引き戸になった仕様をプロトタイプとし、JR東海所有(J編成)の最終編成であるJ61編成が設定されている。床下などもきちんと作り分けされている。
マイクロエース
300系 東海道・山陽新幹線「F9」編成 シングルアームパンタ
発売日:2012年6月15日
発売区分:新製品
プロトタイプ:F9編成
こちらはJR西日本の最終編成・F9編成がプロトタイプ。パンタカバーの色が異なるほか、印刷で表現された側面ジャッキ穴でJ編成との差別化している。
309
マイクロエース
300系新幹線 F8編成 パンタグラフ削減後
発売日:2021年12月9日
発売区分:新製品
プロトタイプ:F8編成
従来製品の屋根上を下枠交差型パンタで編成中2か所に削減された時代に変更。編成プロトタイプはJR西日本のF8編成となる。ヘッドライトが改良され、点灯時の見栄えが向上している。

●概要

一番最初の300系の模型はトミックスから発売された。300系の営業運転開始は1992年3月となるが、同社のカタログでは1992年発売(詳細な発売日は不明)とあったため、Nゲージブームがひと段落していた時代と考えると、同年内での模型化はかなり早かったといえるだろう。1991年のカタログでは量産先行試作車のJ0編成が表紙に抜擢されているほか、同編成の写真を添えた発売予告ページ(2ページ見開き)もあり、結果的には量産車が製品化されたとはいえ、0系、100系に続くトミックスの新幹線模型として、かなり早い段階で企画されていたことがうかがえる。

300系の営業運転開始から間もない時期に発売されたため、初期車であるプラグドア編成・菱形パンタグラフがプロトタイプとなっている。しかし、車両は全形式用意されず、フル編成にするには代用形式が発生するとか、屋根上の表現に不備があるとか、印刷表記類が全くないといった、「おおらかな」時代背景(当時はフル編成で模型を揃えることは珍しかった)に沿った製品仕様でもあった。

2000年代に入るとNゲージブームが再来、新幹線製品も急速にラインナップを増やすこととなったが、この時期の東海道・山陽新幹線の花形は500系、700系であり、初代「のぞみ」として注目を浴びた300系も、「ひかり」「こだま」と地味な役回りに徹していたため、他社から同形式が発売されることはなく、長らくトミックスだけが発売している状況が続く。

その後、ますます新幹線製品は充実し、フル編成化が当たり前となった時代にあわせて考証も進み、形式代用など考えられない時代になっていくが、300系の模型はリニューアルすらなかなかされず、発売当時の仕様のままで細々と発売されていた。実車の注目度が低かったとはいえ、取り残された感は否めなかった。

しかし、N700系が登場し、代わりに300系の引退が徐々に進行してくると、2010年にようやくトミックスがリニューアルを実施。基本的な仕様は変わっていないが、模型化されていなかった形式の新規製作、実車にあわせたシングルアームパンタ化、同時に屋根上の不備を解消したうえで、通電カプラーやインレタによる表記類の充実といった、同社の定番メニューで近代化された。主なリニューアル内容は以下の通り。

  • 3号車(329-0)、7号車(326-400)、8号車(315-0)、9号車(319-0)、15号車(329-500)を新規製作
  • 車端部の窓ガラス追加
  • 各種表記類の充実(一部印刷済み、インレタ付属)
  • 通電カプラーに変更
  • 新集電システムを採用
  • フライホイール付き動力ユニットに変更

さらに実車の引退が近づいてきた2011年末に入ると、トミックスからJR西日本車である3000番台(F編成)の製品化が発表。従来製品(J編成)ベースの製品なのでこちらもプラグドア仕様の初期車となるが、翌年の3月、実車の引退と同時期に限定品で発売された。事実上の「さよならセット」といえるだろう・・・と思っていたら、正真正銘の「さよならセット」といえる製品が発売発表された(後述)。

また、トミックスのF編成と同時期にマイクロエースからも製品化が発表、ついにトミックス以外のメーカーからも300系が発売されることとなった。J編成・F編成の同時発売となったが、トミックスと異なり後期車の引き戸仕様をプロトタイプに選定することでバッティングを避けている。

マイクロエース製が発売され、300系の模型はようやく落ちつきをみせたと思われたが、トミックスから同車が引退した3月16日の1か月前から施された、「ありがとう。LAST RUN」の装飾付き仕様が発売された。プロトタイプはさよなら運転に充当されたJ57編成となり、従来の製品と異なり後期車の引き戸仕様であることから、基本は従来品と変わらないながらもボディを新規製作して対応している。また、この製品をベースにした通常製品が「後期型」として発売され、同時にプラグドアの編成は生産中止となった。

実車の登場および、最初の模型の発売から約20年。実車の引退が注目されたことがきっかけというのも皮肉な話だけど、土壇場のラインナップ拡大により初代「のぞみ」車両としての面目を保ったといえるだろう。


Speed Sphereトップ 次ページ>
Speed Sphereトップ 次ページ>