●意外と小さい設計時期の差

E2系はカトー・トミックス共に最初の発売は1997年と結構古く、特にトミックスは最新の2010年リニューアルのロットでも、基本設計は当時から変わっていない。今回レビューに用いた2004年リニューアルのロットは言わずもがな。一方、カトーは「あさま」はトミックスと同時期の設計であるが、「はやて」は2006年の発売であり比較的新しい。今回、中心的に扱った「はやて」同士の比較となると、実に10年近い設計時期の差があることになる。

当サイトの比較レビュー記事で、ここまで設計時期に差がある模型は初めてである。とはいえ、実際いろいろ比較してみたところ、思ったより設計時期の差は感じなかった。言いかえればトミックスには古さをあまり感じなかったということになるが、複数回のリニューアルにより適度にブラッシュアップされてきたということだろう。

また、デフォルメ傾向のカトーと、スケール感重視のトミックスという両社の方向性は、設計時期の差にあまり関係しないということも分かったような気がする。

今回はカトーの「あさま」が扱えなかったことと、トミックスは最新の2010年リニューアルのロットではないことを申し訳なく思う。所詮、私物でのレビューなのでご容赦願いたいのだけど、今後なんとか入手する機会があればフォローしたいと思っている。

●設計時期とは関係のない問題点も、なくはない

カトーは「オープンノーズカプラー」を除けば目新しいギミックなどは特にないし、屋根上の細かな塗装などに近年の同社製品の「Ready to Run」コンセプトの片鱗が見えるものの、全体的には堅実な仕上がりだと思う。部分的にはトミックスの方が優れている部分もあるし、先頭形状などのデフォルメ具合も好みが分かれるかもしれないが、「製品としての設計」はほとんど問題ないと思う。

しかし、トミックスは残念ながら疑問が残る点がいくつかあった。ざっと挙げると、

  1. 先頭部のノーズ中心を走るパーティングラインが目立つ
  2. 前面ガラスの固定用ツメが目立つ
  3. コクピットのパーツがない
  4. 印刷個所が極端に少ない(2010年リニューアル後でも)
  5. 「はやて」において、ピンク帯の隠ぺい力が低く下地が見えてしまっている
  6. 可動幌の後退角がやけに大きく、見た目をスポイルしている

いずれもこれまでのレビューで指摘した内容だが、1.と2.は「設計が古いから」という理由でも仕方がないように思えるが、他は同時期、それ以前の他製品には見られない仕様なので、何故そうしたのか、首を傾げざるを得ないのが正直なところだ。4.と5.においても、2010年のリニューアルでも改善されていないのはやはり疑問が残る。

見た目には「E2系」を大きく損ねるものではないが、やはり上記のような粗が目立つのは少々残念。中にはボディを新規製作・・・ほとんど全てを新規製作しないと対応できないものもあるし、そもそも最新のリニューアルから時間が経っていないので難しいが、今後機会があるなら少しでも改善していってほしいと思う。トミックスはスケール感が非常に良いだけに、なんだかもったいない。

●購入ガイド

カトーの「はやて」は現在でも店頭で見かけることが多いし、トミックスも「はやて」「あさま」共に新品での入手はまだまだ可能。ヤフオクでもよく見かけるし、中古でも入手しやすいと思う。カトーの「あさま」は長らくカタログ落ちていて、市場在庫がほとんどない状態が続いたが、2012年7月に久々の再生産が予定されている。

「はやて」はカトー・トミックスでプロトタイプが異なっているので、単純にどちらが良いかという比較はできない。「はやて」の0番台欲しいとなったら、仕様に若干難があるとしてもトミックスを選択するしかない。でも、問題点の改善はそう簡単にはできないし、トミックスにも優れた点はたくさんある。よって、0番台が欲しければトミックス、1000番台が欲しければカトーということで、(ここまでレビューを書いといて言うのもなんだけど)細かいことは気にせず楽しむ方が幸せかもしれない。それは両方入手した場合も同様だ。

ただし、相棒のE3系を連結する場合は注意。E3系も両メーカーで揃えているなら問題ないが、どちらかしか持っていなくて、かつ併結運転を考えているなら、カトーかトミックスの選択は慎重に行う必要がある。同一メーカーでないと連結できないからだ。

「あさま」については共に0番台だし、E3系との併結は気にしなくてよいので、好みによる選択しかないかも。

【コラム】カトー E2系東北新幹線「はやて」 全線復旧1番列車 軽レビュー

E2系レビュー01

●概要

2012年4月、カトーからE2系1000番台「全線復旧1番列車」が限定品で発売された。製品構成は以下の通り。

  • 10-868 E2系東北新幹線「はやて」 全線復旧1番列車 10両セット \25,200

2011年3月11日に発生した東日本大震災で大きなダメージを受け、長期運休になってしまった東北新幹線だが、減速区間ありの暫定ダイヤだったとはいえ、同年4月29日に全線復旧を果たした。その時の東京駅発の1番列車である「はやて115号」を再現したのが当セットである。

カトーにしては、この手の限定品は珍しい。しかも開業一番列車やさよなら運転ではなく、社会的な影響を反映した製品いうとさらに珍しいのではないだろうか。

E2系レビュー02

外箱はブックケースが2つ入るだけで通常のデザインと同じ。発売予告ポスターの「希望を乗せて疾風(はやて)は再び走りはじめた」というコピーや、震災復旧を記憶に留めるために発売、という煽りからトミックスの限定品のようなデザインを期待していたのだけど、ちょっとガッカリ。


E2系レビュー03

当然、10両編成が2つのブックケースに収まる。通常製品と異なりケースのサイズは同じ(通常品は基本セットのケースが小さい)。1両分抜かれていない6両用のウレタンが採用されていて、1〜5号車、6〜10号車の順で収まっている。


●製品チェック

E2系レビュー04

左が通常製品、右が今回の限定品だが・・・ボディをはじめ、パーツ類は全く同じものを使用した製品である。したがって、先頭形状などのレビューは通常製品のもので代えさせていただき、以降は変化がみられる点に絞って紹介してゆく。

ただし、筆者所有の通常製品は初期のロットなので、現在発売されているものとは異なる点があるかもしれない。その点はご容赦を。


E2系レビュー05

プロトタイプは通常製品のJ68編成(右)から、一番列車に充当されたJ59編成(左)に変更。実車においても両者同じ仕様であり、通常製品も別に不具合があったわけじゃないから、新規制作パーツが全くないのは当然といえば当然。


E2系レビュー06

当製品最大の目玉(?)は先頭部側面にある「つなげよう、日本。」「がんばろう日本!がんばろう東北!」の円形マーク。震災復旧後から、2012年5月現在でも貼られているステッカーを再現したものである。

実車(写真はE3系)と比べると、「つなげよう」の文字がひょろっとしているとか、下北半島の形が微妙だったりする。ただ、拡大撮影でもしないと気付かないレベルなので、Nゲージとしては及第点だと思う。


E2系レビュー07

号車番号や形式番号、ロゴマークなどは印刷個所・クオリティともに通常製品とまったく変わらないが、2007年3月に東北新幹線が全車禁煙となった後の姿なので、全車両に禁煙マークが印刷されている点は異なる。


E2系レビュー24

付属のステッカーは専用品で、「新青森」が追加された(「八戸」は廃止)。当製品のモデルとなった列車は「はやて」となるが、一応「やまびこ」も収録されている。

また、東京〜盛岡間で併結していたE3系「こまち115号」用に、側面マークのステッカーが用意されている。E3系はステッカーの厚みが出てしまい、見た目にはイマイチになってしまうが・・・


E2系レビュー08

通常品(奥)と比べ、屋根上の滑り止めに塗装されたグレーが濃くなっている。トミックスのE2系はもうちょい濃いが、近いものとなった。


E2系レビュー09

ものすごく微妙な差だが、飛雲ホワイトの色調が若干異なる。通常製品(左)と比べて、黄味が抜けて少し明るくなったというか。カメラでその違いを撮影するのは困難で、両者を並べて直接目で見たほうが伝わるかも。

光沢感は両者ほとんど差が見られなかった。


E2系レビュー10

ホワイトの色調が変わったといってもごく微妙な差だ。上の写真と入れ替わってしまって申し訳ないが、右が通常製品である。

ピンクの帯は変化がないようだが、車体下部のブルーは濃くなった感じで、光沢も通常製品より強い。


E2系レビュー11

ブルーは色調が変わったというより、塗料が良く乗っているという感じだ。上の通常製品はモールドのエッジで下地が透けて明るくなってしまっているけど、下の今回製品では改善されている。

トミックスのE2系もブルーの色乗りが良く光沢感が強かったが、それに近くなったかもしれない。


E2系レビュー12

「がんばろう〜」マークの周辺にパーティングラインが目立つ(上のマーク拡大写真でもわかる。特に10号車が顕著)。通常製品ではそんなことはなかったし、(実際のところはわからないが)同じ金型を使っているはずなのに不思議である。

また、個体差だと思うが10号車ノーズ部分(連結器カバー周辺)のピンク帯も塗装の乱れが見られた。


E2系レビュー13

上が10号車、下が3号車となるが、ピンク帯の太さ、帯と窓の距離が微妙に異なる。他の号車は3号車と同じ感じだったので、また10号車か!という印象。ちなみに、通常製品ではこのようなことはなかった。

これも個体差かもしれないが、どうも筆者所有の10号車は呪われている模様(w。微妙な差なので、別にメーカーに問い合わせる気もないけど・・・


●各形式写真

左が東京寄り。

●1号車(E223-1009)

E2系レビュー14

●2号車(E226-1109)

E2系レビュー15

●3号車(E225-1009)

E2系レビュー16

●4号車(E226-1209)

E2系レビュー17

●5号車(E225-1409)

E2系レビュー18

動力車となる。

●6号車(E226-1309)

E2系レビュー19

●7号車(E225-1109)

E2系レビュー20

●8号車(E226-1409)

E2系レビュー21

●9号車(E215-1009)

E2系レビュー22

●10号車(E224-1009)

E2系レビュー23

通常製品と同様に、オープンノーズカプラーを装備。

●総評

全体的には定評のある同社の通常製品と同じだから、E2系1000番台の模型としてはほとんど問題はない。しかし、模型自体が通常製品と同じなのはいいとしても(というか、プロトタイプを考えたら同じでないと困る)、地味なケース(外箱)まで通常製品と同じであり、ブックレットなどの付録一切なしというのでは、マークを印刷してJ59編成にして限定品にしただけじゃん・・・なんていうか、テーマである「全線復旧1番列車」を再現した限定品としての製品価値が希薄で、中途半端に感じた。

もしも、「さよならセット」などの限定品でおなじみのトミックスが同じ企画をやったとしたら・・・当日併結していたE3系(「こまち115号」)も含めた16両編成セットにしていたと思う。当日のE3系は前期型のR10編成だったようだが、R1編成(量産先行試作車)でもない限り、実車とは細部が異なる「タイプ」だったとしても、無理矢理セットに組み込んで、派手なパッケージ、ブックレット付きで40,000円以上の製品にしていたに違いない。

そうした製品は、既存の製品をハリボテでデコレーションしているだけの商売っ気優先企画、という見方ができることは否定しない。実際、トミックスの限定品には肝心の模型がおろそかになっていて、豪華なパッケージの前にやることあるだろ、という製品が存在することも確かだ。その点、カトーのE3系は後期型なので実際と異なる編成にしたくなかったのかもしれないし、E2系だけにすることで価格を抑えたかったのかもしれない。考証も盛岡以北の運用だと考えれば問題ない。トミックスの限定品に比べたら、ずっと真面目に取り組んでいるという見方もできる。

それでも、この手の製品はコレクターズアイテム・記念品的な側面もあるわけで、模型の品質のみならず、プレミアム感というか、演出というか、ハッタリも必要ではないだろうか。トミックスの「さよならセット」も、かつてのマイクロエースの木箱セットも、所詮「ハッタリ製品」には違いないけど、それなりに効いていると思う。ましてや、「希望を乗せて疾風(はやて)は再び走りはじめた」というコピー、震災復旧を記憶に留めるために発売、とまで煽るのならば、それなりに訴求力のある演出は欲しい。

しかし一方で、震災復旧1番列車というのは人によっては思いは様々であり、デリケートなテーマでもあるから、そうした「ハッタリ」が逆に不謹慎に思われる可能性もある。カトーが今回の製品で演出を盛り込まなかったのは、そのへんを配慮・自粛した結果かもしれない。でもそれでは、何のためにこのテーマを取り上げたのか。配慮が必要な時点で、適切な企画だったのか。単に「現在のE2系」として発売したほうが良かったのかもしれない。

・・・悪いことばかり書いてきたので一応フォローしておくと、記念品的な考えを一切捨てて、マークが貼り付けしてある現在のE2系を再現した模型としては申し分ないと思う。10両が一度に入手できるのも手軽でいいし、通常製品と異なりブックケースも統一されていて、号車順に収納できるといったメリットもある。筆者も実はE2系のバリエーションとして購入しただけなので、その点ではあまり不満はなかったりする。

PCでマークを自作して、ステッカーやデカールとして印刷したものを通常製品に貼る方法もあるが、やりたくない人、できない人もいるだろう。それでも現在のE2系が欲しいと思うなら、(限定品なので手軽に入手できる期間は限られているが)今回の製品はうってつけといえる。


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