●概要

2016年1月、トミックスからE2系1000番台が発売された。

トミックスE2系1000番台レビュー01

トミックスのE2系ラインナップに1000番台が追加。従来製品(0番台)は商品名が「はやて」だったが、今回は「やまびこ」として発売。

トミックスE2系1000番台レビュー02

セット構成は0番台と同じ3セットとなるが(号車の配分も全く同じ)、ブックケースにフル編成が収納できない欠点もそのまま引き継がれてしまった。多少スカスカでもE5系は10両編成、 E4系は8両編成が2つのケースで収まってたから今回は改善されると思ったのに・・・

付属品はインレタと動力補助棒のみとかなりシンプル。


トミックスE2系1000番台レビュー03

ブックケースのウレタンは0番台と同じものを流用しているため、パンタ車の収納には深刻なほど注意を要する。

1000番台は0番台よりもパンタが車体中央寄りになっているので、そのまま4号車の位置に収納するとパンタが接触するギリギリになる。最初普通に収納したらいきなりパンタがぐにゃりと曲がっているので何事かと思ったら、集電舟がウレタンに接触していた模様。6号車はパンタ関節側になるので大事にはならなかったけど、それでもギリギリであることには変わらない。


トミックスE2系1000番台レビュー04

結局ウレタンカットで対応したが、場合によってはパンタ破損してもおかしくなかった。下の5号車も傾斜型ケーブルヘッドの切り欠きなどは全くなく、本当に何も考えずに0番台のウレタンを流用しているようだ。


筆者はキャスコのウレタンに入れ替える前の0番台では大窓の7・8号車を単品ケースに入れていたので、今回もそれに倣って1〜6号車を順に収納していたら上記のような事態に。そもそも10両入らないわけなので先頭車以外の収納は自由自在といえるけど、それでもブックケースにパンタ車を入れるなら4・6号車の位置だろう。この記事を書いている現在、キャスコの新幹線10両ケースが市場にないため現状はウレタンをカットするか(作業する場合はカッターに注意)、3・5号車の位置に逆転して入れるか、パンタ車を単品ケースに入れるしかない。

これまでE2系製品のうち、東北新幹線向けのJ編成はカトーとトミックスから発売されていたが、それぞれ1000番台、0番台をプロトタイプにしており棲み分けができていた。しかし、E3系2000番台が発売され特に新塗装の相方が現状E2系1000番台に限られていることから、トミックスからも1000番台が発売されることになった。ただし、プロトタイプは新青森延伸時に増備された最終増備車(J70編成以降)が選定されたため、J54〜69編成がプロトタイプのカトーとはバッティングすることなくE2系の新たなラインナップが加わる結果に。

結論からいうと、従来製品をベースにボディを差し替えただけの製品である。そのため、主にトミックス従来製品(0番台)からの変更点を中心に紹介するにとどめる。また、カトーとの比較レビューも合わせて読んでいただければと思う。

●各部チェック

トミックスE2系1000番台レビュー21

基本的な構造(床下など)は従来製品のボディを変えただけということもあり、先頭形状は0番台とほぼ同じである(若干ブリスターフェンダーのエッジが鋭くなったかも?)。それよりも、0番台ではノーズ中央部にパーティングラインがあって興ざめだったが今回製品では完全に改善。その他のラインも実にうまく処理されてほとんどわからなくなった。

カトーとは1000番台同士の比較になるが、ノーズやブリスターフェンダーの形状は0番台との差に準じている。なお、いつもなら東京寄りのE223形を用いるところだが今回は都合上E224形で比較している。

トミックスE2系1000番台レビュー05

塗装の光沢は従来製品並みとはいえ、肩からのラインやブリスターフェンダーのハイライトが印象的。前面窓パーツ(後述)は新規作成されたもので、ボディとのフィッティングは極めて良い。


トミックスE2系1000番台レビュー06

1号車(右)の連結器カバーには分割線がない。従来製品からの流用だから仕方がないが、実車ではJ7編成以降は分割タイプになっているため今回製品はエラーとなっている。

また、J70編成以降ではカバー周辺にリング状の分割線が追加されている編成が存在するが、今回製品にそのモールドない。デフォルトで車番印刷されているJ71編成、インレタ収録のJ75編成ならば分割線がないので問題ないだろう。


トミックスE2系1000番台レビュー22

1000番台はワイパーが2本になったため前面窓パーツは新規制作となった。従来製品と異なりサッシ・ワイパー共に印刷表現となりスッキリした印象に。窓中央部にあった固定用のツメもなくなったため、かなり見栄えが良くなったと思う。突き出しピン(?)のような2つの丸い跡はそれほど気にならない。

トミックスE2系1000番台レビュー08

0番台では省略されていたがコクピットが新規制作パーツで実装された。ただし、フィット感はいまひとつで隙間ができて見通せてしまっている。


トミックスE2系1000番台レビュー07

下から見ると前面窓まで見えてしまうレベル。この点だけに限れば、筆者がおゆまるコピーしたやつの方がいいかも(?)。


トミックスE2系1000番台レビュー23

右の従来製品の灯火類ユニットをベースにコクピットが追加されていることがわかる。


トミックスE2系1000番台レビュー24

床下とボディの内部的な寸法が従来製品と同じなので、灯火類のユニットはコクピット部分も含めて互換性がある。パーツの入手が問題になるが、従来製品への流用も可能ということだ。

前面窓パーツの取り付け方法も、前方寄りのツメがなくなっていることがわかる。


トミックスE2系1000番台レビュー10

実車同様に客用扉は引き戸に変更されている。0番台から改善された点として、乗務員室扉窓にサッシが追加されてカトーと同等レベルになった。

上方から見る分には気にならないが、先頭車は床下パーツがややボディより下方にはみ出してしまっている。


トミックスE2系1000番台レビュー11

J70編成以降の特徴である大型化されたフルカラーの行先表示機はガラス表現。フルカラーはそのままでは表現されていないので、自作が社外品(あれば)ステッカーで。


トミックスE2系1000番台レビュー12

グリーン車の車掌室窓にサッシが追加されている。もっとも、0番台でも2010年リニューアル(通電カプラー化など)で実現している。筆者所有の0番台は2010年リニューアル前のものだからサッシ表現がないタイプ。


トミックスE2系1000番台レビュー26

0番台の大窓車よりも窓ガラスはツライチ度がアップ。大型化された行先表示機も同レベルに。


トミックスE2系1000番台レビュー25

塗装は色味・光沢も含めて0番台とほとんど変わらず、違いがあっても誤差レベルだと思う。ついでに行先表示機の大きさや客用窓の大きさ、客用扉の形状、ドア点検ハッチの違い(0→1000番台)にも注目。

グリーン車マーク、「はやて」ロゴマークは従来製品と変わらないが、トミックスのE2系としては初めて号車番号が印刷済みとなった。また、J70編成以降は全車禁煙化後の登場なので禁煙マークも全車印刷済みである。

トミックスE2系1000番台レビュー17

付属インレタはJ71(基本セット分はデフォルトで印刷済み)・72・75編成を収録。号車番号などは印刷済みなのであとは編成番号くらいしかなくシンプル。珍しく「付録」として屋根上の注意喚起表示が収録されている。


トミックスE2系1000番台レビュー28

屋根上は滑り止め表現が塗装+モールドであることは0番台と変わらないが、車端部に黄色い注意喚起表示が追加された。どこかおかしかった0番台の検電アンテナ周辺も実車と同じ形状になったし、無線アンテナの周囲には赤い注意喚起のラインが施されている(付録扱いになっているが、インレタでさらにラインを追加できる)。他の号車も細かいボルト類も含めて、屋根上にあるモールドはカトーにあるものはすべて表現されている。


トミックスE2系1000番台レビュー27

8号車の高圧線終端処理は留め具の表現、車端部で少し曲がっているところなど0番台よりも明らかにパワーアップしている。写真は省略したが、2号車側の終端処理も周囲の滑り止めのパターンを含めてパーフェクトに近く、屋根上に関してはカトーと同等かそれ以上になった気がする

また、滑り止めはザラザラ感が強くストーン調で、この表現がリアルかどうかはさておき筆者はかなり好き。


トミックスE2系1000番台レビュー29

1000番台ならではの4・5号車間の傾斜型ケーブルヘッドは今回製品でようやくカトーとの比較が。ただ、形状自体も両者の差分も700系などと変わらない模様。


トミックスE2系1000番台レビュー30

実車と順序が逆になったが、パンタは同社の800系と同じパーツの色違いを採用している(実車も同じなので問題なし)。カトーはパンタ基底部が屋根(ボディ)と同じ色だが、トミックスはやや暗いグレーになっているのでメリハリがある。カトーはガイシの根元部分が滑り止め表現を兼ねていることにも注目。

カトーはパンタ横の肩部にパンタカバー準備工事の突起がモールドされているが、トミックスはJ70番台以降なので表現がない。また、カトーの妻面には隣の車両に高圧線を渡すための穴が表現されているが、トミックスは可動幌なので妻面をあまり弄れないのか表現がない(800系にはあったが)。

トミックスE2系1000番台レビュー09

4・6号車のパンタ周辺は当然作り分けされており、カトーと比べてもまったく引けを取らない。


トミックスE2系1000番台レビュー18

ヘッドライトは黄色LEDっすか・・・前述のとおり、灯火類のユニットは従来製品と互換性を保っているので、テールライトの位置も低いままであまり改善は見られない。ヘッドライトは見る角度によって光軸が異なり明るさに差が出る。


トミックスE2系1000番台レビュー19

ただ、0番台では前面窓がプリズム化して派手に光っていた点はかなり改善された。上の写真のように目線高さだとややプリズム化してしまうものの、それでもカトーと同等レベルである。


トミックスE2系1000番台レビュー31

0番台は大窓車をチョイス。モールド感は大きく変わらないが、例えば写真右側の新青森寄りのダクトに縦桟が追加されたりと地味に改善がみられる。0番台と1000番台のダクトの大きさ違いもきちんと再現しているし、ボディをすべて新規制作した効果だと思うが、各号車の床下パターンもパーフェクト。カトーは車体と床下カバーの接合ボルトを省略していることを考えると、床下についても(珍しく?)カトー以上といってよさそうだ。

トミックスE2系1000番台レビュー32

0番台大窓車との違いとして、1000番台には車体間ヨーダンパが表現されている。ドア点検ハッチのモールドも濃くなっていることがわかる。


トミックスE2系1000番台レビュー33

カトーは車体間ヨーダンパの切り欠きは表現しているものの、ダンパ自体は省略されている。

なお、トミックス今回製品は車端の窓はきちんと入っている。0番台の2010年リニューアルですでに追加されているから、当然っちゃ当然だけども。


トミックスE2系1000番台レビュー15

台車も0番台の2010年リニューアルで通電カプラー化されたものをそのまま使用。したがって、連結方式はフックリング式である。台車上部は通常見えないとはいえ、E7系の台車ように上部が省略されていないのは気分的に良い。

軸箱下の逸脱防止ガードは表現されていないが、J70編成以降は震災前の登場(2010年)であるため、わずかな期間とはいえガード無しの時期は存在している。


2023/07/02修正

逸脱防止ガイド(「ガード」ではないですね)が付いたのは新潟県中越地震(2004年)がきっかけなので、J70編成以降は最初からガイド付き。東日本大震災(2011年)がきっかけと勘違いしていました。訂正させていただきます。


トミックスE2系1000番台レビュー13

床下はE7系で採用された新型床下ではなく、従来通り300系の流用である(先頭車はE2系オリジナル)。色は変更されているものの、室内用パーツも全く同じでグリーン車のベンチシート(苦笑)もまったく変わっていない。今回製品は0番台からガワ(ボディ)が変わっただけといえそうだ。


トミックスE2系1000番台レビュー14

床下や室内パーツが変わらない以上、可動幌も従来と同じである。 


トミックスE2系1000番台レビュー20

なので、後退角が大きい可動幌が連結部をチープに見せてしまう。改めて見ても、屋根上とかよくできているだけに残念。連結間隔は非伸縮式としては一般的なレベルだし、ボディは薄いので0系や300系などよりはマシだが・・・


トミックスE2系1000番台レビュー16

10号車の格納式TNカプラーも従来製品と全く同じ。ようやくE3系2000番台の相方が出たわけだけど、旧塗装との連結が楽しめるのはカトーにはない利点。E3系は2000番台だけでなく1000番台「つばさ」、0番台「こまち」も(考証的に)連結可能である。


●総評

ぶっちゃけた話、今回製品は従来の0番台のガワ(ボディ)を変えただけの製品ではある。その結果、どうしても連結部は古い300系床下の影響を排除できなかったし、コクピットパーツ周辺に隙間ができてしまうのも従来製品の影響が皆無とは言えないと思う。ただし、車体外観に関していえばガワ自体は非常に良くできていると思った。パーティングラインが徹底的に隠され、前面窓とのフィッティングも良好な先頭部、ツライチに近く美しい側面の客用窓、おそらくカトーの1000番台を相当研究したのだろうか、屋根上や床下はカトーさえも上回る仕上がりで、地味ながらも丁寧な仕事ぶりがうかがえた。

ただし収納性、テメーはダメだ。

ブックケース2つでもいいのに、わざわざ従来製品と同じにして10両が収納できない点も大いに不満だけども、単にウレタン新規制作のコストを浮かせたかった程度の理由で従来製品のウレタンを流用されたらパンタの破損につながりかねない。それを避ける方法も全く言及がないし、そもそも、0番台と1000番台じゃ屋根上(特にパンタ)の仕様が大きく異なるのに、そのまま0番台のウレタンでいいと判断したのはどういう了見なんだろう。0系大窓もそうだったが、試してすらいないんだろうか。とても老舗の模型メーカーとは思えないお粗末さだ。

メーカーの怠慢のせいで個人的には少々印象が悪い製品になってしまっているが、模型自体は決して悪いものではないどころが、かなり良い出来であることはフォローしておく。E3系の相方として現在も主力のE2系1000番台、先頭部の連結器も従来製品同様に扱いやすいのでぜひとも併結運転で楽しみたい。特にE3系2000番台旧塗装との組み合わせは現状トミックスしかないので、それだけでも価値があると思う。

・・・そんで、CASCOの新幹線10両ケース再販まだですかねえ・・・


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