●実車の概要

東海道・山陽新幹線としては第4世代に相当する車両で、JR化後の東海道・山陽新幹線はJR東海とJR西日本で独自に車両を用意してきたが、700系は両社で共同開発された車両である。1997年9月にJR東海より量産先行試作車C0編成が登場し、各種試験結果を反映した量産車が1999年春から営業運転を開始した(C0編成はC1編成に改番し営業運転に加わる)。JR西日本も山陽新幹線内限定で運用する「ひかりレールスター」向けの8両編成版を製作し2000年3月から運用開始。東海道新幹線直通用の16両編成版も保有し、こちらは2001年8月から運用されている。

アルミダブルスキン構造の車体、セミアクティブサスペンション、車体間ヨーダンパなど現在の新幹線車両が備えるアイテムは一通り揃っているが、500系の全車電動車から4両が付随車となり、性能も東海道新幹線内270km/h、山陽新幹線内285km/hに抑えられている。一方で乗り心地や快適性にやや難のあった300系や500系と比べ、この点は相当に改善がされており、高速性能よりも快適性を重視し、なおかつコストを下げて大量増備を可能にした車両といえる。9編成で製造を終えた500系と比べても、圧倒的に編成数・車両数が多いことがそのことを物語っている。

九州新幹線800系、923形ドクターイエロー、台湾新幹線700T型といった700系をベースとした派生車も登場しており、応用の利きやすい汎用性も兼ね備えた車両と言えよう。

四角い車体断面に短いノーズでトンネル微気圧波対策を行うため、見た目はカモノハシを思わせる「ダブルカスプ」という独特な形状になっている。ある意味インパクトがあり、デビューが500系の営業運転開始から間がなかったこともあり、現在でもそうだが物議をかもした形状でもある。しかし、最後尾車両の空気の流れまで考慮された(自動車や航空機と異なり、新幹線は最後尾も同じ形状になるので難しい)、機能的には非常に優れた形状であるといえる。

「のぞみ」から「こだま」まで幅広く運用され、東海道・山陽新幹線を通して長らく主力車種として活躍してきたが、N700系の増備にともない「のぞみ」への充当は大幅に減り、300系が引退した後は「こだま」運用が大部分となった。JR東海からJR西日本に譲渡された編成もあるが、N700系1000番台(N700A)の増備に伴い初期車から順次廃車が進んでいる。また、JR西日本の「ひかりレールスター」も九州新幹線の開通後、N700系の「さくら」「みずほ」に置き換えが進み、大部分は山陽新幹線の「こだま」で活躍するようになった。車歴が新しい編成もまだまだ多いが、ここ数年の動きは注目すべきかもしれない。

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小田原駅を通過する700系(C3編成)。在籍数はN700系が上回った後でも、健在のカモノハシ顔。

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300系を追い越すC57編成。白と青という東海道新幹線の伝統カラーをまとう700系だが、太帯と細帯の位置関係が300系とは逆転している。後継のN700系は700系と同じカラーパターンが採用された。


700系_0103

逆光気味に撮るとヘッドライトのサイド部分で絞ってあることが分かる。運転室部分の膨らみに対して絞ることで、全体の断面積の変化が変わらないようにするためのもの。


700系_0104

下膨れの顔がユーモラスな印象であまり速そうに見えない(?)700系だが、横方向から見ると結構シャープな形状である。


700系_0105 height=

非常連結器のカバーを外した状態だが、まるで「ガハハ」と豪快に笑っているかのようだ(博多総合車両所のイベントで撮影)。

700系は見る角度や状況により、ものすごく表情が変わる車両だと思う。鉄道車両全体を通しても、ここまで表情に変化出る車両はなかなかない。


700系_0106

短いノーズで先端から四角い車体まで、複雑なラインを描く700系。どことなく海の生き物を思わせる形状だが、後継のN700系と比べるとエッジが立っていないので柔和な印象を受ける。


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ヘッドライトは切れ目の2つのケースに4灯収まるが、テールライトはLED化されたことでヘッドライトの外側に配置された。0系〜300系まではヘッドライトに赤いカバーをかぶせてテールライトとしていたので、その点は異なる。


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パンタグラフは東海道・山陽新幹線の車両としては初のシングルアームタイプを採用。大型のカバーがついているので、車両のやや中央寄りに設置されている。後継のN700系にも少し形を変えて継承され、300系にも改修されて波及した。


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JR東海車の行先表示機はオーソドックスな幕式。700系登場のころは在来線を含めてLED式がかなり普及していたことを考えるとすごく保守的。一方、JR西日本車は同社お得意のLED式。


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JR東海車の座席表示機は一見幕式に見えるが実は液晶式。写真は縮小しているのでわかりづらいが、うっすらと「指定」という文字のラインが見える。

表示内容は「指定席」「自由席」しかないのでドットマトリクス式ではない。また、バックライトもない。


svNana様より、C編成の座席表示機は液晶式であるとの情報をいただきました。情報提供、誠にありがとうございます。
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側面の何箇所かに掲げられるロゴステッカー。ここまでデザインされたロゴが貼り出されたのは東海道・山陽新幹線の車両では初めてである。


●編成バリーション

JR東海が1種類、JR西日本が2種類の編成を所有する。なお、JR西日本所有車は表の都合上B編成→E編成の順にしたが、時系列的にはE編成→B編成の順で登場している。

※C編成には一部JR西日本に移籍した編成が存在するが、ここでは移籍前の状態を記す。

編成 所有者 編成番号 両数 MT比 番台 特徴その他
C JR東海 1 16 12M4T 9000 量産先行試作車。運用は量産車と同じ
2〜60 0 東海道・山陽新幹線用。東京〜博多で運用
B JR西日本 1〜15 3000 東海道・山陽新幹線用。東京〜博多で運用
E 1〜16 8 6M2T 7000 山陽新幹線用。新大阪〜博多で運用

●C編成(700系0番台・9000番台)

JR東海が所有する編成で、16両編成、グリーン車3両、編成定員1323名という東海道新幹線(JR東海)準拠を満たしているため、300系やN700系と車内設備に互換性があり、車両故障時の車両交換が容易になっている。車内は極めてビジネスライクなもので従来車種にあった売店もなくなり、車販準備室と自販機のみという構成である。最盛期で60編成存在し、このC編成が700系の基本形といえる(前出の写真は一部を除きC編成)。

デビュー時は「のぞみ」中心で活躍していたが、N700系の増備に伴った300系の廃車が進むにつれて、押し出されるように「ひかり」「こだま」での活躍が増え、2012年3月以降、定期の「のぞみ」運用はなくなった。

また、JR西日本の300系F編成を置き換えるため、2011年度後半あたりからC11〜18編成がJR西日本に譲渡され、合わせてC4編成が廃車・解体となった(部品取りのためといわれている)。譲渡後はJRマークがブルーになり、一部塗装が変更された程度で、外観・内装ともにほとんど変化はない。ちなみに、過去には100系G編成に同じような譲渡例がある。

C1編成は量産先行試作車で、各種試験を行っていた当初はC0編成を名乗っていた。外観は先頭部に量産車との差がわずか見られるが、車内設備的には一部公衆電話の位置が違う程度なので、300系やN700系の量産先行試作車が試験に明け暮れているのに比べると対照的に、試験終了後は量産車と区別されることなく営業運転に用いられていた。

N700Aの増備に伴い初期車を中心に廃車が進んでいる。C1編成もすでに廃車済みだが、723-9001(博多寄り先頭車)がリニア・鉄道館に保存されている。

700系_0108

ぱっと見の印象は量産車と変わらないC1編成だが、先頭部分を中心に細かい違いが見られる。


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C1編成(上段)と量産車(下段、C44編成)で、C1編成はノーズの長さが70cmほど短く、見る角度によってはあれっ?と思うことも。

単に鼻先が長いだけではなくて、乗務員扉と運転室窓の距離にも差があることから、先頭部全体で長さに差があることがわかる。

日差しの強い日に撮影したので、架線柱の影がすごいことになっているが・・・


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量産車はノーズが伸びているとはいえ、車体長は変わっていない。また、居住空間も寸法は変わっていないので、当然ながら乗務員扉から後ろの居住空間が後方寄りにオフセットされている。

写真は1号車車端部で、上のC1編成に対し、量産車(B3編成)は客用扉の位置が後方に移動していることが分かる(黄色い線は台車中心)。ノーズを伸ばすために車端部のトイレ・洗面所のレイアウトを見直していることになる。


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反対側の先頭車もノーズが伸びているため、16号車だけでなく隣の15号車までその影響を受けている。写真は左がC1編成、右が量産車(B5編成)。

上段は16号車車端部で、1号車と異なり車端いっぱいにある客用扉の位置は変わらないものの、客室全体が後方に移動しているため、客用扉と隣の客用窓の間隔が狭くなっている。なお、C1編成ではここに公衆電話が設置されている。

中段の15号車の車端部(16号車寄り)は、量産車では車端から客用扉までの間隔が広くなっているが、C1編成では16号車にあった公衆電話を15号車に移動したことによる。下段の14号車寄り車端も、居住空間が移動していることが分かると思う。

このようにノーズが長くなった影響を受けているのは1・15・16号車のみで、2〜14号車についてはC1編成も量産車も変わらない。


700系_0141

ものすごく微妙な差だが、量産車では車体剛性アップのために客用窓間の柱が太い。シートピッチは同じだから柱を太くした=窓が狭くなったということであり、よく見比べてみるとC1編成に対し、量産車は若干窓幅が狭い。

なお、量産車の写真がB編成ばかりなのは、筆者の手持ちではC編成量産車の適当な写真がなかったからで、他意はない。

Wikipediaによれば、量産化改造される前のC1編成(C0編成)は11号車の扉の位置とか、乗務員扉の形とか、もっと違いがあったようだ。


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C1編成(上段)は先頭部の乗務員扉と客用扉上部にある雨どいの位置が高い。

下段の量産車(C57編成)とは客用扉窓の高さも異なるが、これはC1編成と量産車の差ではない(後述)。


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ホームからノーズ部分を見下ろして撮影した図だが、ノーズ下部サイドに小さな手すりがあるのもC1編成の特徴。量産車にはない。


700系_0137

形式番号(製造番号)は試作車を示す9000番台で、これが700系のトップナンバー。ちなみに、「723-1」は量産車第1編成のC2編成のもので、以降は連番。


700系_0001

2011年度後半以降、C編成の中にはJR西日本に譲渡された編成も存在する。写真は譲渡されたC13編成で、JRマークがJR西日本のブルーに変更されている。

ただし、後述のB編成のように先頭部側面にロゴが追加されたり、形式番号のフォントが変更されたりといったことはなく、内装も含めて大部分はJR東海時代のままで活躍している。


700系_0005

2012年度になってから、JR西日本に移籍したC編成はB編成のようにパンタカバーが白に変更された。写真はC12編成で、行先表示機が幕式でありB編成ではないことがわかる。同日にC11編成にも確認したが、それ以外の編成も全般検査を機に波及していくと思われる。


700系_0007

前述のパンタカバーが白に変更された編成は、床下カバーのグレーが明るくなっている(写真は露出の関係で同じに見えてしまうが)。

また、非常に細かいことだが、併せて床下カバーに書かれている文字も黒に変更されている(上)。いずれも後述のB編成に合わせた変更。JR東海所有車および、JR西日本のパンタカバー白色化前の編成は文字が白い(下)。

ちなみに、他形式(N700系等)は文字色に差異は見られない。


svNana様より、JR西日本C編成の床下塗装・文字色についての情報をいただきました。情報提供、誠にありがとうございます。

●E編成(700系7000番台)

JR西日本が所有する編成で、0系を2+2シートに改造するなどして快適性に定評があった、山陽新幹線内限定の「ウエストひかり」の後継列車、「ひかりレールスター」で主に運用されていた8両編成。

外部の塗装は500系に準じたJR西日本カラーでありC編成や後述のB編成とはイメージが異なる。車内設備もグリーン車がない代わりに、指定席車は「ウエストひかり」ゆずりの2+2シート(自由席車は2+3シート)だったり、4人用のセミコンパートメント(パーティションで区切られた簡易個室)が存在する。台車も500系タイプのものを装備するなど、かなり独自色の強い車両となっている。

2000年から運用されているが、0系「ウエストひかり」にあったビュッフェやグリーン車はなくなったものの、最高速度は285km/hと大幅にアップし所要時間は「のぞみ」と大差ないこと、「のぞみ」より安い料金で指定席ならグリーン車並みのシートに座れるということで、人気列車だった。多彩な設備に加え4号車を車内放送や車内検札を省略した「サイレンスカー」に設定したり(2011年3月ダイヤ改正で廃止)、車端のシートはコンセントとノートPCが置ける大型テーブルを装備した「オフィスシート」にするなど(これはC編成の後期編成やB編成にも波及している)、ユニークな試みも行われている。

このように東海道新幹線(JR東海)に準拠したC編成やB編成とは一線を画している車両だが、それゆえに東海道新幹線には乗り入れできない。また、九州新幹線も性能的問題で乗り入れできない。そのため、新大阪〜博多間限定の運用となっている。

2011年3月に山陽新幹線と九州新幹線で相互直通運転が開始されたが、「ひかりレールスター」はN700系を用いた「さくら」「みずほ」に発展的解消という形で徐々に減少、いずれ廃止されると考えられる(「ウエストひかり」も発展的解消だったので皮肉な感じ)。現在では100系の置き換えも兼ねて、山陽新幹線内「こだま」が主な活躍の場となっている。

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新山口駅を通過するE編成(E16編成)。8両編成と短いので、16両編成と比べるとこじんまりした感じが。編成が短いだけにあっという間に通過する。

塗装もJR東海のものとは大きく異なり、独特なイメージを醸し出している。

700系_0110

筆者のように関東地方に住んでいるとなじみのない光景だが、かつては新大阪駅や博多駅ではE編成同士の並びが当たり前のように見られた。


700系_0111

新大阪駅でC編成(JR東海所有車)との並び。どちらもカモノハシフェイスの700系だが、塗装だけでこんなに印象が変わる(と思う)。


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博多駅で並ぶE編成。前面窓周りのダークグレー塗装はサイドまで回り込んでいて、横から見ると500系のようなキャノピースタイルに見える。

そもそも塗装が500系譲り(窓下ラインの色が違うだけ)なので、意識しているとは思うが。


700系_0113

サイド数か所には専用の「ひかりレールスター」ロゴマークが掲げられる。

行先表示機や座席表示機はJR西日本お得意のLED式で、ここはC編成と異なる部分。また、写真で言うと台車カバー中心部からやや右(客用扉下部右)にある切り欠きもC編成にはないもので、これは博多総合車両所(JR西日本の車両基地)のジャッキアップポイント。300系のJR西日本車にもある特徴だ。


700系_0114

先頭部サイドにも「ひかりレールスター」ロゴマークがある。背景色の関係で、中間部のロゴとは白とダークグレーが逆転している。


700系_0115

独特かつ多彩な内装やサービスがウリの「ひかりレールスター」だが、一部デッキにはこのようなタッチパネル式の端末「旅指南」があった(2008年春にサービス終了)。デジタル時刻表と銘打っていて、主要駅での接続案内などが表示され印刷もできる(画面右下のスロットから出力)。

現在は携帯電話などで時刻情報などが簡単に検索できるので、今後この手の端末を搭載した車両はもう出ないかもしれないが、登場時はけっこう重宝していたのかも知れない。


●B編成(700系3000番台)

JR西日本が所有する編成で、こちらは東海道新幹線直通のための車両であり、16両編成、グリーン車3両、編成定員1323名という東海道新幹線(JR東海)準拠になっている。これにより同社所有の100系V編成「グランドひかり」の置き換えを完了した。

外部の塗装や車内設備はC編成と揃えられているが、E編成をベースにJR東海準拠の車両を作ったという感じなので、随所にJR西日本独自仕様が見られる。両社で所有しあう300系やN700系はぱっと見の差がほとんどないが(特にN700系は判別は困難)、700系はB編成であることが簡単に判別できるのが特徴である。

また、内装も明るくカジュアルな雰囲気のC編成に比べると重厚で落ち着いた感じであり、車内放送のチャイムもC編成は「AMBITIOUS JAPAN!」、B(Eも)編成は「いい日旅立ち」となっているため、車内にいてもC編成との判別は容易である。

C編成と同じような運用に用いられていて、こちらも定期「のぞみ」運用は終了、現在は「ひかり」「こだま」で活躍している。

700系_0002

16両編成に白地に青という塗装なので、ぱっと見の印象はJR東海のC編成と変わらない(写真はB14編成)。しかし、E編成にあった特徴をいくつか継承しているため、細かいながらC編成との差異が見られる。

700系_0120

もっともわかりやすいのが先頭部側面にある「JR700」のロゴの有無。帯色の青よりも明るいブルーである。


700系_0121

先頭部分を比較してみる。左がB編成(B12)、右がC編成(C54)。

  1. 「JR700」ロゴの有無。C編成にはない。
  2. 博多総合車両所のリフティングジャッキに対応した切り欠きの有無。C編成にはない。
  3. 編成番号のフォントが異なる。
700系_0122

中間部分(5号車)を比較してみる。左がB編成(B15)、右がC編成(C54)。

  1. B編成のパンタカバーは白(ボディ同色)、C編成はグレー。
  2. 行先表示機・座席表示機がB編成はLED式、C編成は幕式。
  3. 博多総合車両所のリフティングジャッキに対応した切り欠きの有無。C編成にはない。
700系_0123

台車も異なり、B編成(上段)は500系と同じ軸梁式の台車を装備する(E編成も同じ)。C編成は軸箱の両側にコイルばねを配置する300系と同じ方式である。走行機器類もC編成とは若干異なるため、写真は省くが床下のカバーのダクト配置も一部異なる(模型編で詳しく)。


700系_0138

ワイパーの形状も折れ曲がる位置が異なる(上段B編成、下段C編成)。なお、E編成もB編成と同じなので、上段はJR西日本タイプといえる。しかし、同社の923形ドクターイエロー(T5編成)は下段のJR東海タイプになっている。


700系_0124

B編成(上段)は3000番台であるほか、フォントも異なる。JRマークも両社のコーポレートカラーとなっている(JR東海=オレンジ、JR西日本=ブルー)。


700系_0006

上がB1編成、下がC59編成。少しわかりづらいが、床下カバーのグレーはB編成の方が若干明るい。また、さらに分かりづらくて申し訳ないが、床下カバーに書かれた文字色もB編成が黒、C編成が白という違いがある(客用扉下の文字で確認できる)。

なお、前述したがJR西日本に譲渡されたC編成は、床下カバーの塗装・文字色が順次B編成と同じものに変更されている。


●製造年次や改造などによるバリエーション

他の東海道・山陽新幹線の車両と比べ、車両数が多くどこか地味で「つまらない」印象がある(?)700系だが、東海道新幹線高速化の基礎となった初代「のぞみ」300系、東海道新幹線完成形のN700系に挟まれた過渡期の車両という性質が強いのか、製造期間内に仕様変更が幾度か行われて意外とバリエーションに富んでいる。調べてみると結構面白い。

●ノーズ開口部

700系_0125

ノーズ部分の非常連結器カバーの開口部は2種類あり、左の開口部小と右の開口部大がある(ヘタクソだが線を入れてみた)。

開口部大はノーズ上部にヒンジが2つあるのが特徴で、上に跳ね上げるように開ける。


700系_0126

ノーズの下部のサイドの比較で、上から開口部大(海側)、開口部小(海側)、開口部大(山側)、開口部小(山側)で、いずれも博多寄り先頭車。

開口部大には1で示した開口用のハッチが両サイドに付いているが、開口部小にはこのハッチがない。

2で示したのは「ブレーキシリンダーコック」と呼ばれるハッチで、これは開口部の大小にかかわらず装備されているが、博多寄り先頭車海側のみに存在する。東京寄り先頭車にはどちらのサイドにも存在しない。


分類 C編成 E編成 B編成 923形(参考)
開口部大 C1〜C18 E1〜E15 - 全車
開口部小 C19〜C60 E16 全車 -

時系列的には開口部大の方が古い。923形T5編成(JR西日本所有)はB編成登場後にも関わらず開口部大が採用されている。

●客用扉点検ハッチ

700系_0127

客用扉下部脇にある点検ハッチは、車体から出っ張っているタイプと車体とツライチのタイプが存在。

分類 C編成 E編成 B編成 923形(参考)
車体から出っ張り C1〜C32 E1〜E15 B1〜B3・B5・B6 T4
車体とツライチ C33〜C60 E16 B4・B7〜B15 T5

時系列的には出っ張りの方が古い。B編成はB4がツライチ、B5・B6が出っ張りと編成番号と新旧が逆転している。300系・500系が出っ張り、N700系はツライチなので、700系は過渡期の車両であることが分かる。

●客用扉窓の高さ

700系_0128

C24編成(左)とC48編成(右)だが、客用扉窓の高さが異なる。C24編成は乗務員扉の窓と高さが揃えられているのに対し、C48編成は窓の位置が高く車体の断面に合わせて曲面ガラスとなっている。300系・N700系の窓位置はどちらかといえば後者に近い。

前述した点検ハッチの形状の違いにも注目。

分類 C編成 E編成 B編成 923形(参考)
客用扉窓が低い C1〜C28 全車 全車 全車
客用扉窓が高い C29〜C60 - - -

この高い位置の窓はC編成後期のみに見られる特徴で、JR西日本車は一貫して低い窓になっている。

●先頭部雨どい形状

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先頭部の雨どい形状が乗務員扉と客用扉でつながっているか分割されているかの違い。

時系列的には分割の方が古いが、C編成は全車つながっているタイプに交換・統一されている。一方、JR西日本車は現在でも分割タイプが存在する。

C1編成はつながっているタイプだが雨どいが高い位置にあるのは前述したとおりだ。

分類 C編成 E編成 B編成 923形(参考)
つながっている 全車 E16 B4〜B15 全車
分割されている - E1〜E15 B1〜B3 -

●無線アンテナ

700系_0131

上段・下段とも博多寄り先頭車の屋根上を撮影したものだが、上段は屋根上に2つの箱状のものが存在するが、下段には存在しない。

この2つの箱は無線アンテナで、0系以来の装備だったが東海道・山陽新幹線のLCX化が完了・・・要するに無線アンテナが不要になったため、後期に増備された編成では省略されている。

後継のN700系は最初から装備しておらず、ここでも700系の過渡期性が見て取れる。

分類 C編成 E編成 B編成 923形(参考)
アンテナあり C1〜C54 E1〜E15 B1〜B12 全車
アンテナなし C55〜C60 E16 B13〜B15 -

●パンタカバー滑り止め

700系_0133

パンタカバーの傾斜部に施された滑り止めの面積が異なる。濃いグレーの部分が滑り止めで、写真上下で差があることが分かると思う。写真はいずれもJR東海車(C編成)。

時系列的には上の面積が広いタイプが古いが、C編成とE編成の初期車のみに見られる少数派で、大部分は下の狭いタイプである。300系も下のタイプだし、N700系も下のタイプと似ている。


700系_0134

実は望遠気味に撮った写真(正面がちに写る)でもこの差は結構わかったりする。写真はE編成だが左は面積が広く右は狭い。


分類 C編成 E編成 B編成 923形(参考)
面積広い C1〜C11 E1〜E12 - 全車
面積狭い C12〜C60 E13〜E16 全車 -

923形のパンタカバーは検測用パンタもあるので700系より長いが、T4・T5編成ともに面積の広いタイプを採用しているようだ。

●先頭部センサー

700系_0130

一部編成の乗務員扉の前には「謎のセンサー」がある(青帯の中の小さい黒窓)。博多寄り山側、東京寄り海側についているので、すれ違い時のデータを取るためのセンサーという噂があるが真偽不明。

筆者が確認した限りではC16、C17、C23、C24に装備、それ以外は未装備だった。E編成・B編成は全車装備していない。また、923形は両先頭車両サイドに装備されている。


●AMBITIOUS JAPAN!キャンペーン

700系_0132

2003年10月の品川駅開業に合わせて実施されたキャンペーンで、C編成全車の先頭車には写真のようなインパクトのある装飾が施され、サイド数か所には円形のステッカーも貼られた。JR東海のキャンペーンだったのでB編成などJR西日本の車両は対象外だった。

当初1年くらいで終了の予定だったが「愛・地球博」に合わせて2005年まで延長された。その後は順次元の姿に戻ったが、このとき採用された車内チャイム(TOKIOの「AMBITIOUS JAPAN!」)は現在も引き続き使われている。


●筆者の所見など

500系の次の車両ということもあり、何かとそのデザインが比較され物議をかもす700系。だいたい想像はつくと思うが、ほとんどが否定的な意見ばかりで少々かわいそうになってくることも・・・

登場時から「のぞみ」に就いていたものの、当時は人気の500系が2時間に1本程度運転されていたのでどうしても脇役感が否めなかった。500系がようやく引退したかと思えば次の花形はN700系。初代「のぞみ」で名を馳せた300系も含めて考えると、東海道・山陽新幹線でフラグシップ(花形)に立ったことがない車両でもあり、どうしても地味な印象を感じてしまうのである。

筆者的にも、やはりデザインについては「カッコイイ」とは言いにくいのが正直なところ。しかし、一時期大阪に出張が続いたときに500系とともによく乗った形式でもあり、思い入れがあったり気に入ってる形式でもある。

大阪に向かうときは500系を指名買いしていたのだが(700系で行くこともあったが)、帰りは新大阪始発の「のぞみ」を選択していたので700系に当たることが多かった。新大阪始発はある程度空席もあるので、700系の広々快適な車内はまさに「大阪帰りの友」だったのである。500系が鉄オタ(新幹線オタ)復帰のきっかけだったけど、同時期によく乗っていた700系も無関係ではないのだ。

また、このページで紹介したように700系は非常にバリエーションに富んでいる車両でもある。バリエーション厨の筆者としてはこれはポイントが高く、東京駅などで調査するたびに新たな発見があり、このページも書いてて楽しかった(ていうか何度リライトしたことか・・・)。

N700系の増備完了に合わせるように、700系初期車の一部がJR西日本に譲渡されたり、廃車・解体された編成も出るなどしている。さらに改良型であるN700A系の増備が進んでいる現在、いよいよ初期車を中心に廃車が進行中だ。後期車はまだまだ車歴が浅く、全車廃車になるのは当分先のことだと思うが、それでも記録撮影や乗車などは今のうちから始めた方がよさそう。今からこんなことを考えていても仕方がないのだが、この車両が引退するころにはカモノハシのようで否定的意見の多い顔も「愛嬌のある顔」とか言われて、再評価されるのではないだろうか。


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