実車について |
模型の概要&製品ラインナップ |
比較レビュー1 序・先頭形状・車体各部表現 |
比較レビュー2 屋根上・パンタ周辺 |
比較レビュー3 塗装・灯火類・室内 |
比較レビュー4 床下・連結部分・ギミック |
比較レビュー5 全形式比較 |
比較レビュー6 収納性・付属品 |
比較レビュー7 総評 |
トミックス E4系新塗装 レビュー |
屋根上の滑り止め(作業員が歩くための目印)は実車同様グレーで塗装。3号車東京寄り(上段写真)車端はL字型になっているか否かの違いがあるが、ここはカトーの方が正しい。しかし、その他の車両を見る限りは両者とも実車のパターンを忠実に再現している。
遠目に見る分には差を感じにくいが、トミックスは塗装だけではなくザラザラのモールドを施しているのに対し、カトーは塗装のみで仕上げている。これは一部を除き、他のモデルでも見られる両社の特徴である。
両者を並べてまず気付くのは、カトーは滑り止めのグレー以外にも連結部の注意喚起の黄色や、空調装置に銀色を施していて賑やかであること。一方、トミックスは色が入っているのは滑り止めのグレーのみと、かなりシンプルである。
屋根上が比較的きれいな状態ならば、実車の屋根も車端は黄色だったり、空調は銀色(ステンレス無塗装)だったりと賑やかである。
車端の黄色はカトーではつながっている個所があるが、筆者が撮影したものを見る限りは左の写真ように、黄色がつながっている個所はなかった。カトーがつなげた理由はわからないが、つながっていた時期があったのかもしれない。
汚れた屋根は全てがグレー1色となり、トミックスに近くなる?・・・トミックスは別に汚れている状態を再現しているわけではないので、ちと苦しいか。それならば左の写真のように、側面と屋根の色に差が出てないとおかしいし。
なんだかトミックスの方が不利に思えてきてしまうが、屋根上のボルトなど、モールドに関してはトミックスの方が細かく表現も強い。空調装置はカトーが別パーツ、トミックスはボディと一体成型である。
ところで、空調装置のファンの位置がカトーが車体中央寄り、トミックスが車端寄りと異なっている。
どうやらE4系は、新青森寄りにファンが寄せられているようだ(他の個所もそうだった)。模型では両者とも空調装置のプロトタイプが異なる上に、中央寄りと車端寄りを作り分けていないので差が出た模様。
もしかすると、模型のように中央寄り・車端寄りで統一された編成があるのかもしれないので、どちらも間違っているとは言い切れない。
先頭部後方にある小ダクトは、カトーはくっきりしているが、トミックスは周囲のボルトは強いもののダクトのモールドは薄い。しかし、トミックスは実車の階段状(3段)になっているパターンを再現しており、カトーは2段で済ませている。実車のダクトに差異がある可能性も否定できないが・・・
先頭車後方には検電アンテナがあるが、JR東日本の新幹線は屋根に埋め込まれていることがほとんどで、東海道新幹線系統の車両のように逆L字型のアンテナを見ることは通常はできない。カトーはアンテナや周囲のくぼみも含めてシャープだが、トミックスは少し緩めのモールドである。窪み自体も大きいし四隅もRが付いている。その他ボルトなどのモールドは、トミックスの方が強いのは前述したとおり。
実車を見ると・・・撮影角度の問題で一概には言えないが、窪みの四隅の感じはカトーの方が近く、サイズはトミックスの方が近いかもしれない。
E4系は3〜6号車山側の肩部分に高圧線が引き通されている。E2系などは屋根中央に高圧線が通っているが、E4系は空調装置が屋根上にあるため肩部に装備していると考えられ、どちらかといえば200系に近いレイアウトである。
トミックスはフォーカスが少し甘くなってしまったが、全体的な形状や長さは両者ほぼ同じ。高圧線の終端部はまっすぐになっているカトーに対し、トミックスは斜めにカットしているという違いがある。
案内表示機で見づらいが、実車は終端部を斜めにカットしていることが分かる。ここはトミックスの方が忠実なようだ。
4・5号車間、6・7号車間、片側はパンタになるが3・4号車間、5・6号車間はケーブルヘッドで高圧線を渡している。E1系もそうだが、2階建て車なのでガイシ(巻貝みたいな)を覆い隠すことができるため、E2系や700系のような傾斜型ケーブルヘッドではなく、オーソドックスな直立型となっている。
模型では両者の連結間隔が異なるが、全体的な印象は変わらないと思う。
実車もガイシ周辺を車体で囲まれているため、E2系等とは異なり、ホーム上からなど通常の目線ではケーブルヘッドは見づらい。
これだけ囲まれていれば走行風の影響はほとんどないだろうから、直立型でも問題ないことが分かる。
ガイシパーツはどちらも取り付け済み。ガイシの形状はトミックスの方がややスマートだが、目立つ場所でもないので実質同じといっていいかもしれない。
カトーは窪みの深さと車高が低さが相まって、ガイシの位置がトミックスより低くなっている。
他の製品でも見られる特徴だが、モールドはそれほどではないのに、注意喚起の黄色、空調装置の銀色で屋根上を引き締めて見せている分、ぱっと見の印象はカトーの方がリッチであり、実際見ていて楽しい。上から見ることが多いという鉄道模型の特性上、効果は絶大といえる。トミックスはモールドは細かいものの、その点で少し物足りなさを感じるかもしれない。
大真面目にモールドで表現するトミックスに対し、塗装の工夫のみでリッチな表現をするカトーはある意味「ズルい」と言えなくもないが、別に禁じ手というわけではないし、そもそもデフォルメではなく実車に存在するものであれば、表現しないよりはしたほうが良い。
トミックスの表現もNゲージとしてみれば標準的だけども、屋根上に黄色や銀色を施していたら、モールドが良いだけに素晴らしい出来になっていただろうと思うと非常に惜しい。初心者でもわかるほどの差が出てしまっていることを考えると、トミックスはカトーの「ズルさ」をもっと見習ってもいいのでは・・・と思った。
もっとも、トミックスもNゲージとしては水準以上の表現だと思うので、その点はフォローしておく。
「模型の概要」でも書いたとおり、トミックスには2つの製品仕様があり、それぞれパンタが異なっている。筆者の所有品は固定式パンタの「Bセット」となるが、比較のために別売りの可動式パンタを取り付けて「Aセット」相当のものも用意した。
E4系はオーソドックスな下枠交差型パンタを採用しているが、実車の時点でかなり小型なので、その再現には苦労がうかがえる。
カトーは折りたたみが可能な可動式パンタで、材質はプラと金属のハイブリッド(金属は上部のみ)。同社の0系や100系などで採用しているパーツと同じである。トミックスAセットは同じく可動式だが全プラ製。E4系で初めて採用され、現在は0系やE2系のリニューアルなどで採用が拡大している。トミックスBセットは固定式の金属(エッチング)製で折りたたみはできない。同社初の新幹線用パンタでもあり、非常に長い歴史を持つ。
カトーは複数素材の割には見た目に違和感を感じないし、材質が統一されているトミックスAセットも問題ない。トミックスBセットは上部の斜めのバーが省略されているし、パンタを支えるガイシも台座と同じ色になっているなど(カトーとAセットは別パーツでガイシを白で表現)、さすがに設計の古さは隠せないようだ。
E4系には編成中2個所にパンタがあるが、4号車(上)に対し6号車(下)には車端のケーブルヘッドを頂点として、パンタを支えるガイシ2本を結んだ謎の三角形の板が装備されている。なお、実車編で紹介したP81・82編成にはこの板は付いていない。
模型ではカトー・トミックスの両セットとも、この板は省略されている。
パンタの大きさとしてはカトー>トミックスB>トミックスAという感じである。リフトした時の高さはトミックスAセットが一番高い。
カトーとトミックスAセットは可動式だがパンタ自体がかなり小さいため、仕方がないが御世辞にも扱いやすいとは言えない。
これはシングルアームパンタを採用する他の模型でもそうだが、特にすり板を水平に保つのが難しく、走行時などは多少の傾きは気にならないが、写真に撮るとバランスが悪い。Bセットの固定式パンタの方がビシッとしている分、バランスが良いと言えなくもない。
E4系で「パンタカバー」という表現は適切じゃないかもしれないが、トミックスはパンタカバーが別パーツであることがわかる。カバー横の四角い穴はカトーの方が若干小さいが、どちらも実車と似ている(黒塗ってやるといいかも)。
模型ばっか見てると実車のパンタは「細っ」と思ってしまいますね。
パンタの台座やケーブルヘッドの周辺など、トミックスの方がカバー内の表現が細かいことが分かる。おそらく、カバーが別パーツだからではないだろうか。ちなみに、トミックスは先頭車以外の車端はすべて別パーツとなっている。カトーはカバーがトミックスより深いが、パンタが大きい分取り付け位置を下げてバランスをとっているのかもしれない。
カトーはケーブルヘッドからパンタに高圧線が伸びているのが特徴だが、白いままというのは興ざめである。自分で塗装するのも一興かもしれない(濃いめのグレーで塗るのが無難だろうか)。
材質や大きさに差があるのものの、カトー、トミックスAセットについては両者互角といっていいのではないだろうか。大きさが大きさだけに扱いやすさは今一つとはいえ、見た目にも不満が出ることはないと思う。
一方、トミックスBセットのパンタは、同社初の新幹線模型である200系から長きにわたり採用されていた、実に30年前に設計されたパーツである。それだけに現在の水準ではチープな印象は否めないが、ディテールはともかく見た目のバランスという点では意外と悪くないことに気づく。
「模型の概要」でも書いたが、パーツの細密化による価格の高騰や、扱いが難しくなっていることに対するアンチテーゼとしてBセットを用意したといわれているが、今回レビューをしてみて、個人的にはその目論見は上手くいっているような気がした。別にE4系の印象を大きく崩すものではないし、扱いがデリケートな可動式パンタに対し、誰がレールの上に載せてもビシッと形が決まる。作りも意外と頑強であり(決定的なダメージを与えたらもちろん壊れるが)、まさに初心者にはうってつけ。このへんはプラレールなどの玩具を手掛けてきたメーカーならではの配慮なのだろうか、30年前のパンタを流用=ショボイという固定観念では、Bセットの本質を見誤ると思う。
同じ固定式パンタを採用していた0系、E2系などは近年のリニューアルで可動式パンタ(Aセットと同じもの)に変更されており、E4系もいずれリニューアルされるとなれば、その流れに逆らえないかもしれない。その際にはBセットがどうなるのかわからないが、初心者向けという配慮は良いことだ思うので、なんとかこのコンセプトが継承されることを願ってやまない。
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