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カトー 200系東北・上越新幹線 レビュー |
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トミックス 200系東北・上越新幹線 F編成 レビュー |
トミックス 200系東北新幹線 H編成 レビュー |
2012年9月、カトーから200系東北・上越新幹線がリニューアルの上、発売された。製品構成は以下の通り。
品番 | 商品名 | 両数 | 商品形態 | 価格 |
10-1156 | 200系 東北・上越新幹線 6両基本セット | 6 | ブックケース | 13,600 |
10-1157 | 200系 東北・上越新幹線 6両増結セット | 6 | ブックケース | 10,000 |
カトーの200系は同社初の新幹線模型で、その発売は実に1982年という非常に古いものである。長い間仕様の変更もなくカタログオンしていたが、後年は再生産もなく2009年以降のカタログからは姿を消し、実質絶版状態となっていた。しかし、2012年は東北・上越新幹線開業30周年という節目の年であり、かつ200系の引退も近いとされることから、そろそろ同形式のテコ入れが必要と感じたのだろうか、リニューアルという形で再び日の目を見ることになった。
基本的には旧製品がベースであり、新規製作パーツを極力無しに現在の仕様を盛り込んだ製品であるため、必然的に旧製品が模型化された時代、つまり東北・上越新幹線が開業した頃がプロトタイプとなる。具体的には、12両編成でパンタ削減前、高圧線引き通しなし、パンタカバーなし、JRマークなしといった、国鉄時代のE編成が該当する。
今回の製品は形式番号の印刷が追加され、そこから判断するとE7編成をプロトタイプにしたようだ(ちなみに、マイクロエースの「やまびこ」開業一番列車はE21編成)。当製品は開業時〜1987年(JR化前)に相当するといえる。ちなみに、E7編成はJR化後の1989年にG41編成を中心にG編成化され消滅した。
旧製品をベースに、主に印刷表記類を施すことで現在の製品水準にリニューアルするというのは、以前0系のリニューアル(特別企画品と銘打ったもの)でも実践された製品手法である。しかしながら、こうして見ても30年前の製品とは思えないほど基本的なモデリングはしっかりしており、確かにこの手法で十分なのかもしれない。
基本・増結の2セット、それぞれ6両づつというシンプルな製品構成である。
旧製品にはセットはあったものの、単品が主体で揃えるのが面倒だったが今回はその点を解消。12両フル編成が2つのブックケースに収まり、収納性も良い(ただし、編成順に並び替えることはできない)。
左が旧製品、右が今回製品。ボディや床下など、大部分のパーツは旧製品と同じである。したがって造形もまったく同じ。
ぱっと見で異なるのがヘッドライトの周囲に銀色の縁が追加されたこと。0系のリニューアルでも同じ手法を採っていたが、あちらが実車よりヘッドライトが大きく見えてしまっているのに対し、200系では適正化された感じだ。
ただ、ライトの下にある楕円形のダクトの距離がギリギリになってしまったようだ。
実車のヘッドライトとダクトの位置関係(写真はK47編成)。模型は旧製品の段階でダクトの位置がけっこう前寄りで、その結果ライトに近くなってしまった感じ。
正面から見ても、ヘッドライトの大きさの違いが感じられる。
カトーの200系はヘッドライトの大きさが0系のものであり(詳細)、やはり旧製品は物足りない感じがする。
筆者の旧製品はノーズが少々黄ばんでしまっている。ヤフオク落札品だが単品でフル編成となっているので、かなり古い個体なのかもしれない。
ボンネット上にあるハッチは印刷で表現、今回の製品は前後方向にやや小さくなっている(前面窓との間隔でわかる)。
今回製品は編成が特定されているが、前面窓の編成番号は省略されている。E編成は前面窓下(ワイパーのあたり)に編成番号があるので、印刷が難しいと判断されたのかもしれない。他社製品では無理矢理印刷しているものもあるが・・・
鉄道博物館の222-35にて(よくこんな写真撮ってたな)。ハッチの位置は旧製品の方が近く、実際にはもうちょい前面窓に近い感じだ。
「K31」の編成番号は窓の上部に貼られているが、E編成のみ下部に貼られていた。
乗務員扉・客用扉下端のクツズリや、乗務員扉下のステップに銀色が追加されている。印刷だけで見た目がリッチになるのだからその効果は大きいといえる。ただ、前面窓と同様に乗務員扉窓や車体下部の編成番号はやはり省略されている。
緑色の塗装のラインも若干変更されていることがわかる。
0系もそうだが、カトーの前面窓は他社のものより窓枠が太めでゴツく感じるが、前面は太めながらも側面はこんなもんかな、という気がする。
旧製品のパンタグラフは軟質プラ製の固定式で(鉄コレみたい)、同時期に発売されたトミックスが固定式ながらエッチング製だったのに比べるとチープな印象だったが、今回は可動式となり面目躍如。ガイシも白くリッチな印象だ。
パンタ自体は0系リニューアル製品をはじめ、E2系やE4系でも採用されているパーツで、新規に用意されたものではない。
旧製品の緑は塗装の乗りがあまり良くなかったが(下地が透けて若干明るく見える)、今回製品はしっかり塗料が乗っており深みが増した感じだ。一方、アイボリーはほとんど変わらないように思う。光沢については旧製品とそれほど差がなく、標準的な半光沢といった感じである。
細かいことだが、旧製品では行先表示機にも塗り分けラインが通っているが、今回製品は表示機を避けるようなラインになっている。
1号車の客用扉周辺を拡大。旧製品ではグリーン車マークくらいしか印刷表記がなかったが、今回製品は形式番号、号車番号、禁煙車表示(まだピクトではない)と大幅に表記類が増えた。特に公式にアナウンスはなかったのだが、座席表示機も印刷済みとなっている。
座席表示機は1〜4号車が「自由席」、それ以外は「指定席」が印刷済み。禁煙車表示は1号車のみだがこれは実車に則したもので、なんと当時は禁煙車は1両しかなかったのだ。東北新幹線系統は全車禁煙車となった現在とは隔世の感がある。
仙台の新幹線総合車両センターに保存展示してある237形から。実車の禁煙車表示と比べてしまうと、模型はちょっと大雑把な印象を受ける。ただ、この文字サイズをNゲージサイズにすると相当細かくなるので、好意的に見れば肉眼でも読めるように配慮した結果なのかもしれない。
行先表示は印刷されていない代わりにステッカーが付属する。内容は「やまびこ」「あおば」「あさひ」「とき」で、それぞれの終点盛岡・新潟と、起点は暫定開業である大宮・上野が用意されているという懐かしいものだ。
東京駅まで開通したのはJR化後の1991年のことであり、国鉄時代を再現した当製品に「東京」が含まれないのは正解。
室内パーツは0系のリニューアル版と同じものに変更され、新型の「LED室内灯クリア」が取り付けできるようになった。ただし、237形(ビュッフェ車)は0系の37形が動力車だったので、従来の室内パーツを修正(後述のツメ受け追加)したものになっている。
同時に座席の色も見直され、旧製品では全車ワインレッドだったが、今回製品は普通車がオレンジ、グリーン車がワインレッドと色分けされるようになった。個人的にはオレンジが明るすぎる気がするが(実車はもうちょっとブラウンに近いような)、室内灯で目立つようにしたかったのだろう。
0系と同様、室内パーツは床下パーツに追加されたツメで固定できるようになり、分解や組み立てが楽になった。旧製品の室内パーツはただ「乗っている」だけなので、分解するとバラバラになってしまっていたから助かる。
ただ、このツメが追加されたことで座席のいくつかが歯抜け状態になってしまった。
初期の200系の3列シートは回転できず「集団離反型」という配列になっていて、200系より後に登場した0系2000番台もシートピッチともども共通の仕様である。そのため、0系のパーツを共用していても大きな問題はない。
座席の歯抜けが窓の外からも分かってしまう。同じパーツを使う0系ではそれほど気にならなかったが、座席の色が明るくなったので目立つようになってしまった。ここだけは旧製品の方が良かったかもしれない。
この角度から見ても歯抜けがわかってしまう。それはそれとして、旧製品も含めて窓ガラスのツライチ度は結構高く、30年前の製品がベースにしては意外に思う。
その後の製品(500系や700系など)は、何故奥まるようになったのかと。
旧製品の先頭部分で、客室部分とコクピットが一体化している。客室の前に、業務用室の仕切りも表現されている。
ヘッドライトとテールライトはこのように上下に実装。どちらも電球で、テールライトはプリズム側にクリアーレッドを塗って表現している。座席パーツが浮いているのは集電板の反発のため。
こちらは今回製品で、コクピットは別パーツとなった。光源はLEDではなく相変わらず電球(フィラメントがある)で、テールライトも赤いキャップをかぶせているというプリミティブなもの。ただ、旧製品よりテールライトの赤味が増したように思う。
コクピットは遮光パーツ側に表現された。この遮光パーツは業務用室の表現を意識しておらず、外から見てもパーツの存在が分かってしまうのが残念。
連結方式は旧製品と同様、オーソドックスな台車マウント式のアーノルドカプラーである。妻面は幌枠とステップ、ローリングダンパがモールドされたシンプルなもの(実車もこんなものだけど)。
古い製品ゆえに伸縮カプラーではなく、外幌を省略せざるを得ない。やはり近年の製品に見慣れると少々さびしい感じは否めない・・・かといって、有効な代替案があるわけでもないのだが。
脳内で外幌を補うほかないようだ(苦笑)。
連結間隔は標準的なところ。伸縮カプラーなのにこれより広い製品もあるくらいなので(蟻・・・)、旧製品の発売時期を考えたらむしろ良くやっている方かもしれない。
旧製品の台車はスナップオン(近年の製品のような上等なものではない)だったが、今回製品はビス止めに変更された。台車の表現自体は旧製品から変わっていない模様。
可能な限り新規製作パーツを抑えて旧製品をリニューアル、というのは過去に0系のリニューアル(特別企画品)でもやっているが、それでもカトーにしては珍しい手法だと思った。もっとも、カトーの200系は鉄道博物館展示車両の製品もあり(先頭車1両だけ。展示の222-35とは結構異なる)、その段階で印刷表記の充実やパンタの変更は行われていたから、今回の製品はそれをフル編成に適用しただけなのかもしれない。
とはいえ、旧製品の段階で基本が良くできていたからだと思うが、ちょっと手を加えるだけでも結構イケてるなと思った。もちろん連結部分など古臭さを隠せない個所もあるが、フル編成で揃えることが珍しい時代に225-400(5号車)を模型化していたなど先見の明(?)もあり、結果的に新規製作パーツなしでも実車に対して不足ない製品となったように思う。ここ最近の製品にしては、比較的安価であることも魅力だ(マイクロエースのE編成製品は定価37,000円以上)。
ただ、冒頭で述べたように「東北・上越新幹線30周年+200系引退近い」というきっかけにしては、旧製品を簡単なリニューアルで済ませてしまったのは物足りなさも感じた。国鉄時代の200系も必要なラインナップだと思うし、それは旧製品のリニューアルでも十分成立することは今回の製品が証明しているが、カトーが現在の技術で本気で作った200系も見たかった気がする。2013年2月にトミックスは200系K編成のリニューアル仕様を発売し、一部旧製品の流用もあり物足りなさを感じなくもないが、新規パーツも結構多くそこそこやっているのを見ると、なおさらそう思う。
(形式写真はアーカイブに移行しました)
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