●実車の概要

JR東日本が所有している、東北新幹線系統で運用されている車両。同系統には新在直通用車両(ミニ新幹線)の400系・E3系、近距離通勤用の2階建て車両(Max)のE1系・E4系といった用途に合わせた独特な車両が存在するが、E2系は汎用的な車両であり200系の後継と位置付けられている。

汎用車とはいえ、高速化、分割併合運転、当時開業が予定されていた北陸新幹線(長野新幹線)の路線事情に合わせた仕様が盛り込まれ、1995年に量産先行試作車が2本製作され各種試験を実施。1997年3月に東北新幹線、1997年10月に開業した長野新幹線で営業運転を開始した。

車体はアルミ合金製で、空調装置などの床下配置、700系やE4系ほどではないが少しアヒルやカモノハシを思わせるような、トンネル微気圧波対策を行った先頭形状など、近年の新幹線車両のフォーマットに沿った構成である。外見的にはヘッドライトは前面窓上部に配置されたため、「目がない」シンプルな顔立ちとなった。

性能的には最高速度が従来形式の240km/hから275km/hに引き上げられたほか(ただし、この速度を出せるのは東北新幹線の大宮〜盛岡間のみ)、長野新幹線は軽井沢を境に電源周波数(50Hz/60Hz)が切り替わることから、新幹線車両としては初めて複数周波数に対応。また、同じく長野新幹線にはいわゆる「碓氷峠」に相当する長い急勾配区間があるため、勾配抑速ブレーキも装備している。先頭部には自動分割併合装置を備えE3系「こまち」と併結運転するなど、シンプルな見た目に反して多芸な車両でもある。

車内設備はグリーン車1両に2+3列シートの普通車という構成で、ビジネスライクかつ標準的なものである。新在直通用車両や2階建て車両が「自由席に少しでも多く乗れるよう」、指定席と自由席を差別化しているのに対し、E2系は両者の設備を特に区別していない(これは200系も同じ)。

2002年の東北新幹線八戸延伸時、2010年の新青森延伸時にそれぞれ車両の増備が行われた。特に八戸延伸時に増備された1000番台というグループは変更点がかなり多く、外見は似ているがフルモデルチェンジに近い車両となっている。従来車もそれに合わせて改造が行われるなど、多彩なバリエーションを誇る(後述する)。1997年に運用開始というのは500系と同期であり、あちらが少数で製造を終えすでに第一線から退いていることを考えると、毎年製造ではなく路線延伸というきっかけがあっての増備とはいえ、2010年になっても製造されているというのは特筆に値する。この結果、E2系は本数・両数ともに東北新幹線系統では一大勢力となった。

八戸延伸時に初期車が改造された以外は大きな動きはなかったが、後継車両の増備が進むことにより、いろいろ動きが出てきている。東北新幹線では「なすの」「やまびこ」「はやて」で単独、またはE3系「こまち」「つばさ」を併結して幅広く運用されていたが、「はやて」は後継のE5系に譲りつつあり、定期列車による新青森への乗り入れはなくなった。E3系「こまち」との併結もE5系に譲ったが、一方でE3系「つばさ」との併結運転を行うようになった。東北新幹線は高速化を目指してE5系に統一されることがアナウンスされており、いずれは東北新幹線からは撤退することになる。

一方でE5系の増備、200系の引退により活躍の場を上越新幹線に移しつつある。上越新幹線(高崎以北)はかつて運用されていた時期があり、その後はしばらく運用がなかったが、「とき」「たにがわ」として再び運用に入っている。外観は「はやて仕様」のままで、1000番台も充当されている。

長野新幹線の「あさま」は長らくこの形式の独壇場となっていたが、こちらも後継車両(E7系)が登場し徐々に置き換えが進んでいる。北陸新幹線金沢開業後も全車が置き換えられることはなく臨時列車用として活躍しているものの、「あさま」用の編成は初期の車両であるためあまり先は長くないと思われる。

2010年増備車もあるので全車廃車は当面先のことであるが、初期車にはすでに廃車が進んでいることも確か。ここ数年はその動向が注目される。

E2系_0101

那須塩原を通過中のJ7編成。東北新幹線系統のスタンダード車両である。

E2系_0106

E2系は東北・上越・長野新幹線と活躍しているが、どの路線で運用されているかは帯の色で容易に区別がつく。

左のピンクの帯が東北新幹線と上越新幹線、右の赤い帯が長野新幹線向け。ただし、ピンク帯は2002年の八戸延伸後の登場であり、その前は全車赤い帯だった。


E2系_0102

逆光気味に撮影すると先頭部の形状がわかりやすい。最近流行りの「アヒル」「カモノハシ」っぽい形状だが、700系やE4系に比べると大人しい?

ヘッドライトが上部に集中しているので「目」がなく、シンプルな顔立ちだ。


E2系_0103

E2系もトンネル微気圧波対策は十分に考慮されていて、曲線のラインがシンプルながら美しい。

車体下部の盛り上がりのラインが「スカイラインGT-R(R32〜R34世代)」後部分の「ブリスターフェンダー」を思わせる。


E2系_0104

700系やN700系と比べたらかなりシンプルな形状。「ブリスターフェンダー」と称した車体下部の盛り上がりは、この角度からでも認識でる。


E2系_0105

ヘッドライト・テールライトは前面窓上部に集中配置された。ヘッドライトはシールドビーム、テールライトは赤色LEDと標準的な組み合わせである。

400系もそうだったし、E5系にも引き継がれたこの灯火類配置は、JR東日本新幹線の定番デザイン?


E2系_0107

東北新幹線向けの編成はE3系R編成「こまち」と併結運転を行っていたが、E5系の増備に伴いこの組み合わせは終了した。一方で、2012年3月からはE3系L編成「つばさ」とも併結運転を開始した。最高速度は共に275km/hである。

なお、長野新幹線向けの編成は分割併合装置を備えていないので単独運用である。


E2系_0108

側面の行先表示機はLED式で、E2系のデビュー時期を考えると標準的。

後述するが、現在ではフルカラー・大型化された編成も存在する。


E2系_0109

そよ風をモチーフとした側面ロゴ。このロゴは長野新幹線向け編成(N編成)のものだが、E2デビュー時は東北新幹線向けもこのロゴだった。

赤帯の塗装と組み合わされるロゴでもある。


E2系_0110

こちらは東北新幹線の八戸延伸時に登場したロゴで、青森県の「りんご」をモチーフにしている。東北新幹線向け編成(J編成)は、ピンクの帯に塗装変更されると同時にロゴも変更された。


●編成バリーション

全車JR東日本の所有で、大きくは長野新幹線向けの8両編成「N編成」と東北・上越新幹線向けの10両編成「J編成」に分けられる。また、前述の通り長期増備ということもあり、製造年次によるバリエーションも豊富な形式となっている。

編成 所有者 編成番号 両数 MT比 番台 特徴その他
N JR東日本 1,21 8 6M2T 0 量産先行試作車。運用は量産車と同じ
2〜13 長野新幹線用。東京〜長野で運用
J 2〜15 10 8M2T 東北・上越新幹線用。東京〜盛岡・新潟で運用
51 1000 量産先行試作車。運用は量産車と同じ
52〜75 東北・上越新幹線用。東京〜盛岡・新潟で運用

●N編成(E2系0番台)

長野新幹線で使用される8両編成。外観は赤い帯をまとい、側面に「そよ風」ロゴマークが掲げられている。すべて0番台の初期車であり、長野新幹線走行に必須の複数周波数対応、勾配抑速ブレーキを備える。一方、自動分割併合装置はN21編成を除き装備していない。

後述のJ編成が東北新幹線の延伸に伴い、改造や増備が行われて変化が大きいのに対し、N編成は登場以来ほとんど変化がなく、「E2系の原型」を現在にも伝えているともいえる。

N1・N21編成は量産先行試作車で、外観は量産車と大きな差がないが、先頭形状が鋭く連結器カバーの形状も異なっているなど細部に違いがある。

N1編成はN編成の先行試作車でS6編成を名乗っていたが、N21編成はJ編成の先行試作車でありS7編成→J1編成となった。しかし、八戸延伸時にJ編成の増備車が加わると、初期車もそれに合わせた「はやて化改造」が行われたが、J1編成のみ改造が見送られN編成に編入されたという経緯を持つ。したがって、N21編成はN編成では唯一自動分割併合装置を備えている(現在は使用していない)。

車内設備等は量産車と大差ないため、N1・N21編成ともに区別なく営業運転に用いられている。

長野新幹線「あさま」はN編成の独壇場となっていたが、後継車両E7系の登場により置き換えが進む。北陸新幹線金沢開業後も生き残っているが、E2系の中でも初期車ということもあり先が見えてきている。なお、北陸新幹線開業後も長野より先に乗り入れることはなく「あさま」限定で運用されている。

E2系_0111

熊谷駅を通過中のN3編成。赤帯・8両編成・大型のパンタグラフカバーと、E2系がデビューして以来の原型を保っている。

E2系_0117

左が量産車のN13編成、右が量産先行試作車のN1編成。後者はノーズや連結器カバーの形状が量産車と異なるため、顔つきが少し鋭い印象がある。


E2系_0112

N編成にはN1編成(上)・N21編成(下)の2本の量産先行試作車が存在し、どちらもほぼ同じ仕様だが後者はJ1編成がN編成に編入されたもので、長野寄り先頭車に自動分割併合装置が装備されている(現在は未使用)。一方、N1編成の連結器カバーは固定式で、N21編成と見た目に差がある。

E2系の新青森・長野寄りの先頭車で固定式カバーなのはN1編成のみ。


E2系_0118

量産車(手前)と量産先行試作車(奥)のカバー形状比較。前者は車体に対しカバー開口部のラインが垂直だが、後者は斜めになっている。

また、ノーズ先端までふくよかな感じの量産車に対し、量産先行試作車は直線的でノーズ鋭いことが分かる。ノーズ先端部分の赤帯の位置にも差がある。


E2系_0139

パンタカバーの形状は基本的には同じだが、車体との接合部に差がある。上がN1・21編成、下が量産車。

量産車の写真にあるカバー側面の四角いハッチ(?)はN1・21編成にもあるので念のため。このハッチは海側のみに存在するものだが、N1・21編成の写真は山側の写真なので・・・


E2系_0140

少し見づらいかも知れないが、床下カバーの止め方も異なる。N1・21編成(上)は車体に対しカバーが隙間なく取り付けられているが、量産車(下)は一段窪みが存在する。

これに関連してか、床下ダクトの外見もN1・21編成(左下)と量産車(右下)で異なっている。


●J編成(E2系0番台・1000番台)

東北・上越新幹線で使用される10両編成で、こちらは「つつじピンク」と呼ばれる帯に「りんご」ロゴマークが外観上の特徴。E3系と併結運転を行うため、新青森側の先頭車に自動分割併合装置が装備されている。J編成は東北新幹線の路線延伸タイミングの兼ね合いで長期増備車両となっており、3つのグループ(厳密には2つ)に大別される。

1つめはデビュー時からの初期車で、前述のN編成の同期の0番台のグループである。量産先行試作車含めたJ1〜15編成が該当するが、当初は外観も性能もN編成とまったく同じであった。すなわち8両編成であり、赤帯+そよかぜマークであり、長野新幹線装備(複数周波数対応、勾配抑速ブレーキ)も備えていた。唯一の違いは自動分割併合装置の有無のみで、もっぱら東北新幹線でE3系「こまち」と併結した最速達「やまびこ」で使用された。

しかし、2002年の八戸延伸時に「はやて化改造」が実施され、現在の姿(ピンク帯+りんごマークの10両編成)になった。この際にJ1編成は改造を見送られ、前述の通りN編成に編入された(現状「J1」は欠番)。なお、この改造と同時期に機器類を揃えるため、N5編成とJ7編成、N10編成とJ9編成、N12編成とJ10編成で中間車(2〜7号車)を互いに交換している。

2つめは2002年の八戸延伸時に増備された1000番台と呼ばれるグループで、J51〜69編成が該当する。基本的な外観は初期車と変わらないが、当初よりピンク帯+りんごマークの10両編成であるほか、側面窓の大型化、アクティブサスペンションや車体間ヨーダンパの装備、パンタカバーを廃したシングルアームパンタ、アルミダブルスキン構造の車体、走行機器、果ては内装の変更など、フルモデルチェンジに近い進化ぶり(それこそ300系→700系くらいの)となっている。

一方で東北新幹線限定の運用を想定しているため、いわゆる長野新幹線装備は省略されており、客用扉の構造や屋根上高圧線の処理などにコストダウンの跡がみられる。これら1000番台の仕様をいくつか初期車にフィードバックしたのが「はやて化改造」というわけである。

3つめは2010年の新青森延伸時に増備されたグループでJ70〜75編成が該当する。マイナーチェンジレベルの変更であるが、行先表示機のフルカラー化、客席コンセント、デッキの防犯カメラなど、近年の新幹線(N700系やE3系2000番台)でおなじみの装備が追加されている。一応1000番台に含まれるグループで、編成番号・製造番号ともに区分はされていない。「J70」番台という区切りのいい数字ではあるが、J69編成からの連番でたまたまそうなっただけである。

これらの詳細は「製造年次や改造などによるバリエーション」で後述したい。

J編成は東北新幹線の「なすの」「やまびこ」「はやて」、上越新幹線の「とき」「たにがわ」、E3系「つばさ」を併結したりと幅広く運用されているが、運用に際して前述の3つのグループは特に区別されていない(ただし、上越新幹線はJ15以前の編成が多い)。東北新幹線はE5系に統一される方針であり、すでに初期編成の一部が廃車になっているし、E3系「こまち」との併結運転も終了した。1000番台以降は車歴は新しいが北陸新幹線に乗り入れることができないため、全編成が上越新幹線に活躍の場を移すと考えられる。

●製造年次や改造などによるバリエーション

E2系は近年の新幹線には珍しく、仕様変更や改造が多くなされた車両である。N編成は登場時からほとんど変化がないものの、J編成は増備時期によりかなり差異が見られ、バリエーションが豊かな編成となっている。

●0番台と1000番台の違い

E2系_0114

E2系1000番台(J58編成)。全体的な印象は0番台と変わらないが、各部新形式に相当するくらい変更点は多い。

E2系_0114

外観上もっともわかりやすい差異が側面窓の大きさ。0番台(上・J15編成)は客席1列につき窓が1つとなる「小窓」だが、1000番台(下・J64編成)は一部を除き客席2列で1つの窓を共有する「大窓」である。

窓が大きくなる→部品点数が減る→コストダウンとのこと。かつて0系には大窓→小窓というモデルチェンジがあったが、E2系は逆のパターンとなった。

なお、後継のE5系は再び小窓に戻っている。


E2系_0115

9号車(グリーン車)は客席1列につき窓が1つというのは同じだが、1000番台(下)は窓の幅が若干狭くなったため、見た目の印象が少し異なっている。


E2系_0116

客用扉は0番台(左)が「プラグドア」という、車体とツライチになる構造(一度内側に入ってから開く)なのに対し、1000番台(右)は一般的な引き戸となりコストダウンが図られている。

300系も初期車はプラグドアだが、増備途中で引き戸に変更されており、プラグドアはコストの割に効果が低いのかもしれない。最初から最後までプラグドアで貫き通した(?)のは500系とE3系のみである。


E2系_0125

細かい点だが、客用扉横下部にある点検用ハッチの形状が、車体から出っ張っているタイプ(左・0番台)とツライチ(右・1000番台)という差異がある。

同一形式でこのような差異がみられるのはE2系、E4系、700系のみである。


E2系_0117

これも細かいが、乗務員扉のドアノブ形状にも差がある。左の0番台は300系、右の1000番台は700系と同じ形状であり、E2系では0番台→1000番台の移行がフルモデルチェンジ並みであることを裏付ける。


E2系_0118

ワイパーの本数も0番台(上)が1本、1000番台(下)が2本と異なっている。


E2系_0119

1000番台(下)の連結部には乗り心地向上に寄与する「車体間ヨーダンパ」が装備されていて、これも300系→700系レベルの差があるといえる。

ダンパには蛇腹のカバーが付けられているが、これは雪国を走るJR東日本ならではのもので、東海道新幹線系統の車両には見られない特徴。


E2系_0141

床下ダクトの数や配置は基本的には同じだが、形状やカバー内の位置に差異がみられる。

一例を挙げると、ダクトが0番台(上)は床下カバーパネルに対して等間隔に配置されているのに対し、1000番台(下)は2つのパネルの中央に寄せられている。

後述する0番台の「はやて化改造」で増備された7・8号車については、他の車両と合わせて0番台仕様(上)になっている。


E2系_0120

パンタグラフは0番台(上)はオーソドックスな下枠交差型パンタ、1000番台(下)は近年主流のシングルアームパンタとなっている。

シングルアームパンタは基底部が低騒音型となったため、独特の外観をしている。


E2系_0121

下枠交差型パンタを装備する0番台(左・下)は騒音防止用に2両にわたる巨大な防音カバーを装備しているが、1000番台(右)はパンタ自体が低騒音型になったため防音カバーを廃することに成功し、えらいシンプルな外観となった。

300系が下枠交差型パンタからシングルアームパンタに換装したことを考えると、270km/h級の新幹線車両にも関わらず、下枠交差型を装備し続けている0番台は今時珍しいといえるだろう。


E2系_0122

どちらも3号車の屋根上だが(手前側が2号車)、0番台(左)は高圧線が車体に埋め込まれてスッキリしているのに対し、1000番台(左)は500系や700系などのように高圧線が屋根上に露出し、車両間は「直ジョイント」で接続する方式に変更された。


E2系_0123

連結部の高圧線引き渡しも異なっていて、0番台は車体の内部を通っていることが分かるが、1000番台は屋根上を渡っている(左にジョイントも見える)。


E2系_0124

パンタ部の引き渡しもそれぞれ異なり、0番台(上)は防音カバーで見づらいが、ケーブルヘッドで屋根上で渡しているのに対し、1000番台(下)は屋根下にもぐってから渡している。パンタ部だけ他の個所と逆転しているのは面白い。


E2系0016

1000番台の4・5号車間は、J51〜53編成(上段、J52編成)は他の個所と同じジョイントになっているが、J54編成以降(下段、J69編成)は500系や700系でおなじみの(?)「傾斜型ケーブルヘッド」で高圧線を渡している。


E2系0001

E215形(グリーン車)の新青森・長野寄りにハッチ(?)の有無の違いがある。0番台(左)には黄○のハッチがあるが、1000番台(右)にはない。

屋根上の滑り止めのパターンにも差があるので後述。


その他、外観以外にも車体構造の違い、制御機器の違いなどがある。内装も見直され、1000番台はE4系と同様の座面スライドが追加されたリクライニングシートを装備する。

●0番台「はやて化改造」

前述の通り、0番台は当初はN編成と同一の外観を持つ8両編成だったが、八戸延伸に伴い1000番台は10両編成となったため、それに合わせた「はやて化改造(当サイトが勝手に名付けた)」が実施された。

改造点としては塗装変更(赤帯→ピンク帯)とロゴ(そよ風→りんご)の変更、乗り心地向上のため先頭車とグリーン車にフルアクティブサスペンション、その他の車両にセミアクティブサスペンションの取り付け、従来の7・8号車を9・10号車に変更の上、新たに7・8号車を組み込み10両編成とした。

注目すべきは増結された7・8号車で、1000番台の仕様で製作された点である。

E2系_0126

手前から6・7・8号車となるが、1000番台仕様の7・8号車は窓の大きさが異なることがわかる。このような小窓と大窓の混在は0系とE2系でしか見られない。

内装も1000番台に準じているので、シートも座面スライド可能なタイプである。7・8号車は指定席となるが、当たればラッキーかも?


E2系_0127

J15編成の6・7号車間を見てみる。左の6号車は元々の車両、右の7号車が増結車である。

  1. 6号車屋根上に高圧線とジョイントを追加し、7号車とは直ジョイントで接続されている。高圧線は8号車屋根上で終端処理されているため、9号車屋根上は無改造である。
  2. 6号車はプラグドア、7号車は引き戸。
  3. 側面窓の大きさが異なる。
  4. 見づらいが、ドア点検用ハッチの形状が異なる。
  5. 増結車が1000番台と異なる点として、車体間ヨーダンパがない。これは7・8号車、8・9号車間も同様。

基本的に1000番台仕様の7・8号車だが、走行機器類は前後の車両(0番台)と揃えられている。したがって、J2〜15編成は現在でも長野新幹線に乗り入れできるはずである。

●量産先行試作車・J51編成

E2系_0128

J51編成は「1000番台の」量産先行試作車である。N1・N21編成と異なり外観は量産車と大差ないが、細かく追っていくとコイツもなかなかの曲者編成。

ちなみに、この写真でJ51編成が従えているのはE3系R1編成で、量産先行試作車同士の併結という珍しい場面だったりする。


E2系_0129

ぱっと見では気づきにくい差異だが、J51編成(上)は量産車(下)と比べ、行先表示機が少し車両中央寄りにズレてる(すぐ右に客用扉がある)。しかし、7・8号車のみは量産車と同じでズレが見られない。

大した差ではないのだが、ここにJ51編成の波乱万丈(?)な経緯が凝縮されていたりする。


J51編成は2001年、0番台と同じく8両編成で登場している。そしてE4系のように、8両編成同士の重連による16両編成運転を想定していた。そんなわけで、J51編成は東京寄り先頭車にも自動分割併合装置を装備したのと、号車番号を変更できるようにLED式の表示機が備えられた。

しかし、八戸延伸後のE2系は10両編成での運用が決定したため、前述の0番台のはやて化改造と同じくJ51編成にも2両増結。これによりE2系の重連運転は計画ごと消滅、J51編成の東京寄り先頭車の自動分割併合装置と、LED式の号車表示機は無用の長物となってしまった。

E2系_0130

この写真は2002年12月、八戸開業から数日後に撮影したJ51編成の行先表示機である(偶然撮影)。

通常E2系の号車表示は客用扉のすぐ横にあるが、この写真ではなぜか行先表示機の横に貼ってある。下段の写真では座席表示機の横にもある(客用扉の横には禁煙マークしかないこともわかる)。しかも、周囲に対して妙に凹んでいる様子もわかる。


この凹みこそLED式の号車表示機で、J51編成は10両化された際に、その上からステッカーを直接貼って対応したというわけである。LEDのまま表示しちゃえば?と思ってしまうが、7・8号車を挿入した関係で9・10号車の表示が難しかったのではないだろうか。表示制御のソフトウェアを改修すればできたかもしれないが、それよりはステッカーを直接貼る方が安上がりなことも確かだ。

その後、正確な時期はわからないが、全般検査のタイミングなどで号車表示機を埋めて、他の編成と同様に客用扉横に号車表示を配置するようになった。その際に行先表示機は移設しなかったので、名残として先に挙げたようなズレが生じたのである(ちなみに、座席表示機はもともと量産車と同じ位置にある)。一方、7・8号車に行先表示機のズレがないのは、0番台と同じく量産車仕様の車両が増結されたことによる。

E2系_0131

J51編成は1000番台にも関わらず車体間ヨーダンパがない(量産車のJ52編成から装備)。写真は4号車だが、増結された7・8号車も同様。

7・8号車は0番台に増結されたものに近いといえるが、こちらは長野新幹線装備はない。


E2系_0132

客用扉横のドア点検ハッチも0番台のような「出っ張りタイプ」で、1000番では唯一の存在。しかし、7・8号車は0番台に増結された車両や、他の1000番台と同じくツライチタイプである。


J51編成は他の編成と区別なく営業運転に用いられている。N1・N21編成ほどおおっ?と思う差異はないが、なかなか味のある編成だと思う。

●J70〜75編成

新青森延伸に備えて2010年に増備されたマイナーチェンジ仕様。形式上は1000番台に分類されるが、J69編成登場からかなり時期が経っていることから、設備面でN700系やE3系2000番台のような仕様が盛り込まれた。

E2系_0133

J70〜75編成はデッキに防犯カメラの設置、グリーン車は全席、普通車は窓側にコンセントを設置、車内の案内表示機がフルカラーになるなど、車内設備面での改良が主であるが、外観では大きさがわずかに拡大された、行先表示機のフルカラー化が目立つ。

N700系やE3系2000番台のように次駅表示も可能で、わかりやすい上に美しい。新形式と勘違いしてしまいそうである。

ただし、座席表示機は従来と変わらない。


E2系_0134

あまり目立たないが、連結器カバーの周辺に分割線が追加されている。E5系にも似たような分割線があるが用途は不明。

ただし、J70〜75編成の全てに分割線があるわけではなく、筆者が確認した限りではJ71・75編成には分割線がなかった。


E2系_0138

J51〜J69編成(上)のパンタ横の車体肩部には謎の凹凸があるのだが、J70編成以降(下)は省略されてスッキリしている。この凹凸の正確な用途は筆者の知識ではわからないが、おそらくパンタカバーの準備工事だと推測する。

パンタカバーを廃すことができた1000番台だが、270km/h級車両のカバーなしは不安も残っていたのではないだろうか。新たな騒音規制対策や速度向上も想定し、「念のため」準備工事をしておいたと。

その後は問題ないことがわかったし、E5系が登場し、将来的には240km/hどまりの上越新幹線へ転用が決まっているような状況では、準備工事はもはや不要と判断されたのではないだろうか。


●客用扉点検ハッチおさらい

E2系_0125

基本的に0番台とJ51編成は左の「出っ張りタイプ」、0番台とJ51編成の増結車(7・8号車)とJ52編成以降は右の「ツライチタイプ」である。

E4系、700系でも見られる差異と書いたが、編成中に混在しているのはE2系のみである。


●ノーズ開口部

E2系_0135

ノーズ先端の連結器カバーは、中央から割れるように開く分割式カバー(上)、固定式カバー(下)がある。

自動分割併合装置を備えるJ編成の新青森寄りは当然分割式カバーだが、N編成(N1編成を除く)の長野寄りと、J7編成以降の東京寄りも準備工事として分割式である。

一方、N編成全車とJ2〜6編成の東京寄りは固定式カバーが採用されている。N1編成は長野寄りも固定式カバーである。

一応、自動分割併合装置がない側も非常用の連結器は装備されている。また、前述の通りJ51編成のみ、東京寄りにも自動分割併合装置が装備されている。


●検電アンテナ周辺

E2系0002

先頭車後方車端にある検電アンテナは、屋根に埋め込まれるようなスタイルになっているが、左のように先端だけ出ているものと、右のように周辺が露出しているものがある。

左のパターンはN21編成とJ2〜6編成が該当。N21編成は元J1編成だったので、J編成初期車の一部が該当していると考えられる。その他はN・J編成ひっくるめて右のパターンである。


●先頭車のアンテナ周辺滑り止めパターン

E2系0004

E223形(東京寄り先頭車)後方のアンテナ周辺の滑り止めパターンが異なる。上は0番台(J4編成)で、アンテナに対して大きな余白をもってラインが引かれていて、2号車に対して広めになっているが、下の1000番台(J60編成)では余白があまりなく、2号車の幅とあまり差がない。


上記は量産先行試作車(N1・21、J51編成)を含めて、0番台と1000番台の差異と考えてよい。ところが、E224形(新青森・長野寄り先頭車)はちょっと事情が異なるようで、さまざまなパターンが存在する。

E2系0008

E224形(新青森・長野寄り先頭車)は基本的にはこのタイプで、E223形の1000番台と同じパターン(狭い)である。

写真はJ60編成で1000番台は全車、0番台も一部を除きこのパターンとなる。


E2系0005

ところが、J15編成はE223形の0番台と同様、広いパターンとなっている。


E2系0007

そうかと思えば、J12編成は「狭い」「広い」の中間くらいだったりするし・・・


E2系0006

J2編成、N11編成は検電アンテナのあたりで絞り込んでいて、独特なパターンになっている。


E2系0009

最後にN1・N21編成で、先頭車は標準的なパターンだが、E215形(写真左、グリーン車)の車端は屋根上のハッチを避けるようにラインが引かれている。


1000番台はJ51編成やJ70〜75編成を含めて、全車同じパターンのようだ。一方、0番台(特にJ編成)はパターンがいろいろある。

現在、0番台ではJ3・5・8編成、N3・4・7編成が未確認だが、もしかすると編成固有のものというより、検査時期などによる差という可能性もある。今後も何か判明次第、追って報告する。

●その他滑り止めパターン

E2系0011

0番台中間車について、量産車(上)では黄色矢印の位置に滑り止めがないが、N1・N21編成では滑り止めが車体幅方向に引かれている(パンタ部除く)。

なお、量産車でもE215形(グリーン車。J編成は9号車、N編成は7号車)の東京寄りには唯一ラインが引かれている。

一方、N1編成は6号車のみラインがない(N21編成にはある)。


E2系0010

屋根上に高圧線とジョイントが露出している1000番台は、ジョイントの根元あたりにラインが引かれているのが基本。0番台の増結車(8・9号車)も同様だが、高圧線とジョイントが後付けであるためか、6号車にはラインがない。


●ポケモンラッピング

E2系_0136

JR東日本が夏季限定で毎年(2008年から2010年現在まで)ポケモンキャンペーンを行っていて、新幹線もいくつかの編成にポケモンのラッピングが施されて子供たちの注目を集めている。

E2系は2008年がN6・J68編成、2009年がJ59・J60編成、2010年がN8・9、J52・55編成にラッピングが施された。写真は上が2009年のJ59編成、下が2010年のN9編成。


E2系_0138

2011年は「スマイルエクスプレス」と称し、J4・52・53・55編成にラッピングが施された。写真はJ55編成。


●その他ラッピング

E2系_0137

2010年9月〜12月まで、「信州デスティネーションキャンペーン」のキャラクター「アルクマ」のラッピングが先頭部のほか、中間車(5号車など)に施された。

対象はN10・11編成で、写真はN10編成である。2010年9月は前述のポケモンラッピングも走っていたから、4本のN編成がラッピングされて走っていたことになる。


E2系0003

2012年春、「新幹線YEAR 2012」キャンペーンのプレ企画として、桜前線北上に合わせて「さくらラッピング」が施された。対象はJ59〜61・63編成(写真はJ63編成)。


E2系0015

2012年夏、「新幹線YEAR 2012」キャンペーンのうち、東北新幹線30周年を記念してSuicaペンギンのラッピングが施された。1〜10号車にかけて、関東〜東北各地の名物・名産品をモチーフにした凝った図柄となっている。対象はJ53・60・61・66編成(写真はJ60編成)。J60・61編成は前述の「さくらラッピング」から連続で抜擢された。


E2系0019

2012年秋には、長野新幹線15周年を記念してN編成にもSuicaペンギンのラッピングが登場。こちらは信州の名物・名産品がモチーフになっている。対象はN1・8・10・21編成で写真はN1編成となるが、試作車がこの手のラッピングに充当される(しかも2編成)のは珍しいのではないだろうか。


E2系0020

北陸新幹線が金沢まで開業し、後継車両E7/W7系も出そろった後も臨時列車用として残っているN編成(2016年5月時点でN5・13編成が残存)だが、2016年1月からN13編成に「E2 Asama」の専用ロゴが貼り付けされている。


E2系0021

ロゴは先頭部横と各客用扉横に貼り付けされている。デザインはもともとの「そよ風ロゴ」をモチーフにしているようだ。


●筆者の所見など

筆者は東北新幹線は仙台までならたまに乗ることがあり、E2系もそれなりには乗っている。ただし、J編成のみで長野新幹線用のN編成は未だに乗ったことがなかったりするが・・・仙台までだと比較的空いているE4系「やまびこ」を使うことも多々あり、E2系を「よく乗る車両として」はあまり思い入れがないのが正直なところだ(乗り心地はいいけど、車内設備は標準的な車両だしね)。

しかし、汎用型と位置付けられ、顔立ちもシンプルな癖して(飽きの来ないデザインだとは思うが)、多彩なバリエーションを誇っており、車両研究の対象としてこれほど楽しめる逸材はそうはない。

すでに述べたとおり、今日まで長期増備となったことがバリエーションを増やした原因であるが、常に製造され続けた長期増備ではなく、E2系開発の目的でもあった北陸(長野)新幹線、東北新幹線の路線延伸に合わせて、その時期の他の車両の仕様を盛り込みながら、 思い出したように増備されてきたという、E2系ならではの事情も無視できない。

その結果、細かな仕様変更のみならず、大窓・小窓の混在、編成間の車両入れ替え、車両の増結など、かつての0形を彷彿(規模はまったく違うが・・・)とさせる、近年の新幹線車両では珍しいバリエーション展開となった。当然、自称「バリエーション厨」の筆者がスルーできるはずもなく、この実車ページも(模型サイトだってのに!!)ついつい筆が進んでしまったというわけである。

(※以下はE7系発表前の旧サイトにおける筆者の妄想です。暇な方は読んで笑ってやってください。)

2014年の北陸新幹線の金沢延伸、後継のE5形の増備(2015年に東北新幹線はE5系で統一される予定)など、数年後にはE2系にターンニングポイントが訪れるが、北陸新幹線は整備新幹線ゆえの260km/h制限があり、その速度でも金沢まで2時間30分程度で結んでしまい、航空機との競争に問題がないため速度向上の計画もない。関西地方まで伸びれば話は別だろうが、金沢以西はルートすら決まってない。そこにE5系もしくはE5系ベースの新車というのは明らかにオーバースペックで、ぶっちゃけ、北陸新幹線はE2系の性能でも十分だといえる。

2014年頃は0番台(N編成、J2〜15編成)は廃車も視野に入ってくる時期だが、長野新幹線は距離が短く、特にN編成はそれほど走行距離がかさんでいない。また、E5系により東北新幹線を追われるJ編成は上越新幹線に転用するには本数が多く、特に1000番台は比較的新しいので(J70編成以降は10年にも満たない)、これらに抑速ブレーキ、複数周波数対応を含めたリニューアルを実施して、東京〜長野間限定とかになるかも知れないが、現在のE2系は案外しぶとく生き残る可能性もあるのではないだろうか。

とはいえ、そんな「まだ使える」車両も一気に廃車・置き換えできてしまう体力がJR東日本にはあるし、新たに開業する区間なので新車投入は当然あると思うが、北陸新幹線の性能要件を考えるとまたE2系を作る可能性もなくはない。1000番台はコストパフォーマンスが相当良いらしいので、J70編成以降の仕様で抑速ブレーキ、複数周波数対応を盛り込んだE2系2000番台、N50番台編成とか。なにをアホな、と思われるかもしれないが、山形新幹線も長期増備車であるE3系で置き換えたのだから。・・・しかしそうなると、ますますバリエーションは増え、E2系をE2系で置き換えるという、はたまた0系のような話になるわけだが。

北陸新幹線はJR西日本も車両を用意すると思われるが、E2系再増備ならJR西日本の車両もそれベースになるとか、東京〜大宮間は路線容量がひっ迫しているので、北陸新幹線と上越新幹線を高崎で分割併合とか・・・すんません、キリないし3年後くらいにはわかることなんで、そろそろやめときます。それだけ、E2系は妄想ネタにしやすい車両であると、無理矢理まとめてみる(w。

2015年春に北陸新幹線が金沢まで延伸され、同路線向けにE7/W7系が登場しN編成は置き換えが進み残りわずか。また、東北新幹線もE5系での統一がアナウンスされている以上、先が見えているといえる。E3系との併結も含めて、早めに記録したり乗ったりした方がよさそうだ。2016年春には北海道新幹線の新函館まで延伸されたがE5/H5系での運用であり、E2系が青函トンネルを超えることは今後もないだろう。一方、1000番台以降の編成であれば、上越新幹線で当面は走り続けることになるだろう。

【コラム】電源周波数

電気には直流(DC)と交流(AC)がある。身近なところでは前者は乾電池、後者は家庭用電源(コンセント)となるが、電化路線については鉄道も例外ではなく、直流電流の区間、交流電流の区間が存在する。それぞれメリット・デメリットがあるが、JRの北海道・東北・北陸・九州は交流で(一部例外あり)、その他は直流である。私鉄はほとんど直流で、「つくばエクスプレス」の一部区間に交流がある程度。当然、車両もそれぞれ専用となるが、交直両用の車両も存在する。なお、直流・交流間には「デッドセクション」という無通電の区間で区切られている。

さらに、家庭用電源も含め交流電流には「商用電源周波数」が存在し、簡単にいえば東日本は周波数が50Hz、西日本は60Hzに分かれている。近年の家電は「ヘルツフリー」のものが多く問題にならないが、以前はそれぞれの周波数に対応したものを使う必要があり、引っ越しの際には買い替えなければならない場合もある。鉄道の交流区間も同様に東西で周波数が異なっており、交流用車両も50Hz、60Hzそれぞれに対応した車両が必要だ。複数周波数対応の車両もあるが、在来線で周波数をまたぐ定期列車は日本海側に限られているので、それほど数は多くない。

新幹線は開業以来、交流25000Vが電源となっているが、東北・上越新幹線は50Hz、山陽・九州新幹線は60Hzとそれぞれの周波数エリアに収まっている。しかし、東西にまたがる東海道新幹線、北陸新幹線は異なる周波数の対策をしなければならない。

東海道新幹線の場合、静岡県の富士川を境に周波数が切り替わるが、東京〜富士川までは沿線の変電所で60Hzに変換している。つまり、東海道新幹線は全線60Hzということになる。初の新幹線だったので、車両や路線に複数周波数対応を盛り込むことには消極的だっただろうし、50Hzの区間は東京〜新大阪間の1/3にも満たない(山陽新幹線も含めれば本当にわずかな区間)。本数が多く全ての車両が東京まで来る状況で、この区間のためだけに車両を複数周波数対応にするのは確かに合理的ではない。なお、60Hzに変換されているのは走行用電源のみで、駅施設などは50Hzのままである。

一方、北陸新幹線(長野新幹線)は起点側が東北・上越新幹線の50Hzであり、現在はルートすら決まっていないが、最終的には新大阪まで到達する計画の路線であり、その場合は60Hzの東海道・山陽新幹線と接続することも考えられる(米原ルートなら間違いなく接続する)。その意味では、北陸新幹線が複数周波数になることは不可避だった。ということで、軽井沢駅の長野方5kmほどの地点に50/60Hzのデッドセクションが設けられた。E2系がこのために開発された車両というのは、本編で書いたとおりである。

長野県にある軽井沢駅は本来60Hzエリアであり、反対側の群馬県との県境(碓氷峠の前後あたり)にデッドセクションを設ける方が自然なはず。しかし、有名な観光地である軽井沢はそれなりに利用が見込まれたため、複数周波数に対応していない車両でも軽井沢までは来れるようにと、群馬県県境〜軽井沢駅までの走行用電源は変電所で50Hzに変換されている(東海道新幹線の変換区間と比べたらかなり短い)。

実際には碓氷峠の勾配対策(抑速ブレーキ)も必要なため、全ての車両が軽井沢まで乗り入れできるわけではないが、抑速ブレーキを備えたE4系P51・52編成は軽井沢まで乗り入れできる。現在のところ、軽井沢以北のデッドセクションを超えることができる(できた)車両は、E2系N編成全車とJ編成J2〜15編成、E4系P81・82編成、E7/W7系、200系F80編成、E926形電気軌道総合試験車「East i」、925形電気軌道総合試験車(0・10番台とも)、となっている。

余談だが、東京駅では東海道新幹線と東北新幹線が隣接しているが、路線的には分断されているため周波数問題は発生していない。国鉄時代は直通が想定されていたが、実現していた場合は東京駅付近にデッドセクションが設定されたはずである。


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