模型の概要&アーカイブ |
比較レビュー序 製品構成・価格 |
比較レビュー1 先頭形状・車体各部表現 |
比較レビュー2 屋根上・パンタ周辺 |
比較レビュー3 塗装・灯火類・室内 |
比較レビュー4 床下・連結部分・ギミック |
比較レビュー5 全形式比較・収納性・付属品 |
比較レビュー完 総評 |
トミックス300系初期製品について |
トミックス 「ありがとう。300系」レビュー |
ここもトミックス・マイクロエースのJ編成同士で比較しているが、F編成も全く同じである。
16号車海側東京寄りを比較。左の出っ張ったダクトはトミックスの方が細かく、中央から右にかけてのパネルはマイクロエースの方がはっきりしている。右にある小さなダクトの形状が異なるが、手持ちの実車写真ではF編成がトミックス、J編成がマイクロエースの形になっていた。トミックスはJ編成なのにF編成のダクト?と思ってしまうが、J編成の初期はこの形状だった可能性もあり、間違いとは言い切れない。
こちらは16号車海側博多寄り。パネルやダクトの形状・配置が若干異なっていて、全体的にはマイクロエースの方が実車に似ているような気がするが、なにしろ両者の設計差は約20年。これだけの期間が空くと実車が改造等を受け、晩年の姿と異なっている可能性はやはり否定できないと思う。
そうした実車との考証は置いといて、単純にモールドのみを見た場合はマイクロエースの方が全体的に表現が強いように思う。また、マイクロエースは表面にザラザラな加工を施してあるのが特徴。
実車の7号車海側(J22編成)。左にあるダクトはトミックスには表現がないが、前述したとおり初期にはなかった可能性がある。右側のリブが入ったパネルはマイクロエースの方がそれっぽい。一方のトミックスは形状は似ていないものの、ボルトの表現がある。
どちらも1号車の床下となるが、マイクロエースには横長のパネル状の「LCXアンテナ」を表現しているが、トミックスでは省略。
LCXアンテナを表現する=両先頭車の床下を作り分けることになるから、トミックスは1・16号車で床下を共用しているのだ。共用するならアンテナがない16号車用で、ということで同社の1号車の床下は、16号車のものを反転しているだけである。同社の0系、100系(X・G編成)もLCXアンテナの表現がないが、同じ手法を採っているからに他ならない。
実車の1号車(海側・山側両方にある)にあるLCXアンテナ。ご覧のように、実車でも結構目立つパーツながら、マイクロエース製品が出るまで表現がなかった不憫な(?)パーツである。こうしてみると、模型はちょっとモールドが強すぎる気もするが。
ちなみに、700系・N700系などもカバーで覆われているから見えないだけで、同じようにLCXアンテナを装備している。
マイクロエースは連結部にある床下機器(汚物タンクの排水口等なので、基本的にトイレ・洗面所がある連結部に表現)を表現しているが、これは同社のカプラーがボディマウント式であることが大きい。その点、実質台車マウントのトミックスは分が悪く、構造的に省略を余儀なくされている。
ただし、床下機器パーツをカプラーパーツに挟んで取り付けるという設計からか、場所によってはやや斜めっており精度感がイマイチなのは残念。
上が通常の車両、下が動力車となるが、トミックスはどちらもボディとの位置関係がほとんど変わらないのに対し、マイクロエースは動力車の床下の幅が広く、特に2つのダクトがボディとツライチに近いことがわかる。
マイクロエースは同社製品全般で動力車の床下の幅が広く、在来線模型ではボディからはみ出してしまっている製品も多い。車体幅が広い新幹線だからこの程度で済んでいるといえるが、このへんはカトー・トミックスといった老舗にはまだまだ及ばない点だ。マイクロエースもそれなりに場数を踏んでいると思うので、そろそろ改善されてもいいと思うが・・・
すべて海側のみで、山側については割愛。
パターン | 画像 |
A | |
B | |
C | |
D | |
E | |
F | |
G |
トミックスは4種類、マイクロエースは7種類のパターンを用意している・・・といいたいが、前述の通りトミックスの両先頭車は同じ床下の共用であり、パターンAはパターンGを反転させただけで、実質3種類の床下しかない。基本になっているのはパターンGで、その山側がパターンAとして扱われているに過ぎない。あとはパターンB(M車用)・パターンF(T車用)があるだけだ。
一方のマイクロエースは考証が進んだ近年の製品らしく、多数のパターンを作り分けしている。公式には「8種類の床下作り分け」とあるが、筆者には7種類しかないように見えた。パターンDは通常用と動力車用があるから、それを含めて8種類なのだろうか?だとしても種類が多いことに違いはないが。
このような格差があるうえ、前述の通り両者のパターン(ダクトの位置など)も差異があるので、近似のものを独断で同一パターンとさせていただいた。
床下パターンの配置は以下の通り。表中の(M)は動力車、(代)は代用を示す。J・F編成で共通。参考としてトミックス旧製品も掲載。
号車 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
トミックス | A(代) | B | F | B | B | B(代M) | B | B | F | B | B | B(代M) | B | B | F | G |
トミックス (旧製品) |
A(代) | B | B(代) | B | B | F | B | B | B(代) | B | B(M) | F | B(M) | B | B(代) | G |
マイクロ エース |
A | B | C | D | E | F | D(M) | B | C | D(M) | E | F | D | B | C | G |
300系はM-T-Mという3両1ユニットが基本で、その5ユニット+付随車(1号車)で16両編成を構成しているという、他形式では見られないユニット構成が特徴。0系・100系のように短編成化されなかったのは、この特殊なユニット構成が要因といわれている。
さて、模型を見てみるとマイクロエースの再現度はパーフェクトである。付随車となっている1号車を除き、以降のパターンがBCD、EFD、BCD、EFDとなっていることがわかり、勉強になるし面白い。
一方、トミックスは表中では代用が少ないように見えるが、マイクロエースと照らし合わせると正しいのは2・8・14・16号車だけで、その他はすべて代用というか実車と異なっていることになる。要するに、まともにやったら(代)だらけになってしまうので、あくまでも同社製品の基準で代用かどうかを判断しているだけである(T車用とM車用の配分しか見ていない)。心情的には、1号車に「代」と書くのも適切かどうか迷うところだ。
トミックスの現行製品は6・12号車が動力車になっているが、旧製品の動力車はM車用(パターンB)であり、それを流用した結果(代)になっている。パンタ車の6・12号車(300系ではT車となる)に関しては、旧製品の方が正しかったことになる。その他のT車である3・9・15号車はT車用(パターンF)が割り当てられたが、旧製品はそもそも車両自体が代用だったので「改善」というには微妙かも。
新幹線に限らないが、上から見る機会が多い模型において床下機器は目立たない存在であり、大まかに似ていれば実車の雰囲気を乱すものでもないし、気にしないユーザも多いのでなにかと流用・省略されやすい個所である。
トミックスは0系でも床下の作り分けはなかったし、比較的新しいN700系(16両編成)でも代用が多かったりと、床下に関しては伝統的に力を入れていないメーカーである。同社の300系は基本的には20年前・・・現在ほど考証が重視されず、そもそも車両自体が数多く代用されていた時代に設計されたので、床下パターンが少なくても無理はない。
同社の300系は2010年のリニューアルでボディや屋根上がいくつか新規製作され、旧製品に対してかなり改善されたのだけど、残念ながら床下はまったく手を加えられなかった。LCXアンテナくらいは追加しても(1号車用の床下を新規で作る)良かった気がするが、そこまで床下に力を入れるのはイヤなの?と勘繰ってしまいたいたくなる(そりゃまあ、コストの問題とかイロイロあるんだろうけどさ)。同社からは今後、引き戸車の発売が予定されているが、この様子では床下は旧製品のものが相変わらず流用され、改善されない可能性が高そうだ。
その点、マイクロエースはパーフェクトな結果となった。後発なので有利だし、考証が進んだ時代の製品ということもあるが、公式で作り分けのことを売りにしていたのはトミックスに対してのあてつけ・・・は考えすぎかもしれないが、ユーザの不満をすくい上げる意図もあったのではないだろうか。
前述したとおり、床下は模型では重視されない個所ではあるが、それにしてもトミックスは20年前の水準からまったく進歩していないし、いくらなんでも力を入れなさすぎ。一方、マイクロエースはほとんどの人が気にしないような個所(実際、いくつかは流用でも問題ないくらい)までキッチリ作り分けており、その仕事ぶりはきちんと評価されるべきだと思う。
床下に関しては正直なところ、マイクロエースの圧勝といわざるを得ないだろう。
どちらも同じ台車をモチーフにしているが、左の実車の台車と比べてもマイクロエースは全体的に上下に圧縮されているような印象で、トミックスは極めて良好なバランスである。
集電スプリングの長さがえらく違うが、トミックスは通電カプラー仕様なので短い。
ヨーダンパ(中央から横に伸びる棒状のもの)は上の蛇腹付きと、下の蛇腹なしがある。2005年以降の乗り心地改善工事を受けたかどうかの違いで、施工された編成は700系と同様の蛇腹なしに交換された。つまり、蛇腹ありが300系オリジナルである。
J編成の大部分が改善工事を受けたが初期のプラグドア車は施工対象外。また、F編成も受けていない。その意味では、トミックスはJ・F編成共に蛇腹付きなので正しい。マイクロエースは改善工事後の蛇腹なしをモチーフにしているが、その結果J編成は正しく(J61編成は施工対象車)、F編成は異なっていることになる。
トリミングの都合でマイクロエースの台車が大きく見えるが実際には同じ大きさである。
車体と台車のバランスを見ると、トミックスの方がバランスがいいように思う。ヨーダンパが若干右下がり気味なのもいい。前述の通りマイクロエースは上下に圧縮されたような形なので、上方寄りで腰高に見えてしまう。ヨーダンパも水平に近く、細くて貧弱な感じがする。
おまけでトミックス旧製品の台車。当初から車体とのバランスが良かったことがわかる。モールドはまずまずといったところで、ヨーダンパの蛇腹もアバウトな感じ。逆にいえば、リニューアル後の台車はかなり細かく、シャープになったといえるだろう。
300系には台車カバーがないので設計に余裕があり、トミックスのN700系のように両端の軸はねが省略されているようなことはない。筆者はトミックスの300系がリニューアルで通電カプラー化されると知った際、N700系の軸ばねが省略された台車の流用で済ますのではと心配していたが、ヨーダンパ形状を見ての通り、きちんと300系用の通電カプラー対応台車を新規製作していたので杞憂に終わった。
マイクロエースは何故かわからないが、上下に圧縮された台車を見るにつけ、やはり老舗(トミックス)の実力差を感じる。前述の床下機器はある意味「やる気の差」でしかないけど、こちらは技術力やモデリングの差が出たという感じ。動力車の床下やパンタグラフもそうだが、こうした部分をきちんと作れるようになれば、マイクロエースも一流になれるのにと思う。
トミックスは「通電カプラー」、マイクロエースは「伸縮式アーノルドカプラー」という連結方式を採用している。
それぞれの連結方式の特徴は、トミックス「通電カプラー」、マイクロエース「伸縮式アーノルドカプラー」、リンク先に解説があるのでそちらをご覧いただきたい。
トミックスは伸縮カプラーではないので、旧製品と比べれば狭くなったものの連結間隔は広めにならざるを得ない。可動幌の形状も旧製品より良くなっているのだけど、ボディなどが根本的に変わっていない以上は改善にも限界があるように思う。
一方のマイクロエースはアーノルドカプラーながら伸縮式になっているのだが、こうして見る限りは非伸縮のトミックスとほとんど同じ間隔である。外幌の表現はあるものの控えめで、新幹線模型の連結部としてはちょっと寂しい印象がある。
うーん、左の実車と比べるのは酷にしても、どちらも大味な印象を受ける。
トミックスは旧製品のボディを流用しているので肉厚であり、どうしても車体との段差が大きく後年の改良型可動幌の製品と比べると連続感は今ひとつ。一方のマイクロエースも外幌がないに等しいので妻面が丸見えであり、やはり連続感がない。
マイクロエースの妻面は凝っているので、それが見えることで精巧感を感じなくもないけど、新幹線の見た目としてはやはり微妙かな。
トミックスのR=317mmのカーブを通過中(アウト側)。急曲線を曲がるNゲージではやむを得ない光景だが、今回の300系は直線の時点でアレなので、改めて評する気が起こらないというのは酷だろうか。マイクロエースの凝った妻面を最大限に見られる瞬間!ではあるのだけど(苦笑)。
マイクロエースの伸縮式アーノルドカプラーはボディマウント式で、連結部の床下機器の表現を可能にしていることがわかる。同社の在来線製品(当サイトでは小田急「EXE」のレビューで扱った)で採用されている交換用カプラーとは異なるパーツだが、寸法などは全く同じで互換性がある。
ということは、同社のマイクロカプラーやトミックスのTNカプラーに交換できるということだが・・・号車無茶苦茶だけど、マイクロカプラーに交換したのが左の図。
換算しても実車より狭い連結間隔となり、カーブを全く曲がれないほどになってしまった。連結間隔がさらに狭くなるTNカプラーはいわずもがなで、少なくともポン付けによるカプラーの交換(連結間隔の改善)は不可能と考えていいだろう。公式も交換に対応しているとは言っていないし。
トミックスの旧製品は初期型フックリングカプラーだったので、それからボディなどが根本的に変わっていない以上、通電カプラー化しても見た目の改善には限界があるようだ(0系・100系にも同じことが言える)。通電カプラーによる走行や室内灯の安定化は確かなものがあるので、それでよしとするべきなのかもしれない。
マイクロエースはまさかのアーノルドカプラー採用でびっくりしたが、伸縮式なのに連結間隔の短縮にほとんど寄与していないのが残念。ただ、トミックスの可動幌をはじめ構造的に妻面を作り込めないものが多い中、アーノルドカプラーの恩恵を最大限に活かし、ダクトや高圧線の有無などを作り分け新幹線模型の中でも随一の凝った妻面を実現。外幌がある新幹線は妻面を見る機会があまりないが、見えない部分もきちんとやっているという点では評価できるかもしれない。
トミックス・マイクロエース共に、特に「ギミック」と呼ばれるような機構は搭載していない。
走行性能については、メンテナンス状態、レールレイアウト、個体差などの要素があるので、あくまでも筆者の主観が強いことをお伝えしておく。また、簡単に済ませたい。
動力車はトミックス・マイクロースともに16両編成中2両あるので、勾配が多いレイアウトでも心強いと思う。トミックスはリニューアル時にフライホイール動力に変更され、しかも通電カプラーなのでスムーズで安定した走りを楽しめるが、この点はマイクロエースも決して引けを取らず、どちらも音が静かでレベルが高い動力だと思った。
カーブ通過半径はメーカー公称値でトミックス・マイクロエースともにR=280mmとなっている。
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