●3日目は雨上がりとともに

いよいよ3日目。復路も新幹線であり、最終日といえども新幹線三昧な1日となる。

夜中に雨音が激しく窓を叩いたので、どうやらゲリラ雷雨(雷は聞こえなかったが)でもあったようだ。朝には止んでいたし、天気予報を見る限りはこれ以上降ることはなさそうだ。

前ページに書いたとおり、6時台の撮影は諦めており、7、8時台は800系がないため、本日も朝はゆっくりできたと思う。ここのホテルも朝食込で5000円ポッキリで、新山口には及ばないが安い。今回の遠征、コストの大半は交通費(新幹線代)であり、宿泊費と食費は意外と安くあがっているのだ。

本日最初に乗る列車は、800系が充当される9:53発「さくら408号」。U001〜006編成の「旧800系」か、U007〜009編成の「新800系」か、どちらが来るかは分からないが、9:32に入線するらしいので9:00くらいから駅に入り、とりあえず停車中のN700系を撮影しておくことに。

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鹿児島中央駅は新幹線では最南端の駅であり、本当の意味での「終点」を見る。向こうにビルが建設中だし、これ以上は延伸しようがないので、車止めから先は路線が伸びることは永遠にない。

2004年時点では桜島が見えたのだが、あのビルが完成すると見えなくなると思う。


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安全柵がまだ雨で濡れる中、しばらくはN700系の独壇場。手前がR7編成で、奥は量産先行試作車のS1編成だった。

外側停車なのが残念だが、速攻でS1編成のホームに移動し、各種チェックおよび撮影したのは言うまでもない。


●たとえ火の中水の中草の中、800系の中

乗車予定の800系「さくら408号」の入線を迎え撃つためホームの先端に移動。しばらくすると、ターゲットが現れたが・・・

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構図を検討する間もないぶっつけ本番だったので、とんだ失敗写真になってしまったが・・・予定通りの800系だが、カメラのEVF越しに異様なものを感じた。なんだあのデザインは!?


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U009編成なので、お初にお目にかかる新800系である。その上、ポケモンラッピング仕様ときた。

新幹線×ポケモンといえばJR東日本のやつを思い浮かべるが、実は九州新幹線でもやっていたりする。前回は2009年にU004編成がラッピングされていて、2010年はお休み、そして今年(2011年)はU009編成が充当されている。

前述のとおり、800系があまり来ない鹿児島中央で、しかも自分が乗る列車が貴重なポケモン編成とは来た甲斐があるというものだ。


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折り返しのため停車時間は長く、しかも中央2線に停車。隣にいたN700系もどいてくれたから、向かい側のホームからじっくり撮影できてラッキーだった。6両編成と短いから撮影も楽だ。


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ラッピング内容に作品タイトルというのは、JR東日本の車両では見たことがないのでちょっと新鮮。


●水戸岡節全開!!

今回乗車の800系「さくら408号」は、九州新幹線のほぼ中間にあたる熊本まで乗ることになる。外観の撮影後は速やかにホームに移動し、自由席の3号車に乗車した。予想通り、車内はそれほど混んでいない。席を確保してすぐ、発車前の段階から車内徘徊を開始した。

ところで、800系を語るにはデザイナーの水戸岡鋭治氏とドーンデザイン研究所(以降水戸岡氏)をスルーするわけには行かないだろう。水戸岡氏は以前からJR九州の車両や駅のデザインを手がけていて、最近では一部私鉄車両のデザインも行っている。レタリングの多様、(特に観光向けの車両は)凝った内装など、従来の鉄道車両離れした奇抜なデザインが特徴だ。

800系はJR東海・西日本の700系がベースとなっていて、随所にその面影を見ることができるが、JR九州が独自色の強い車両にしたかったという要望もあり、水戸岡氏のデザインテイストが可能な限り採り入れられている。特に内装は木材の多用、西陣織のシート生地、簾(すだれ)のブラインド、洗面所の暖簾(のれん)など、従来の新幹線の内装イメージを覆す「和」のテイストが特徴であり、2004年に乗った時には新鮮な驚きがあったのを覚えている。

当初6編成だった800系は、全線開業に備えて2009年以降に3編成(U007〜U009編成)が増備された。この増備編成は「新800系」と呼ばれ、外観・内装共にマイナーチェンジを受けているが、とりわけ内装は従来の内容を踏襲しつつ、より凝った内容となった。ちょうどU009編成に乗ることができたので、極一部だが写真で紹介してみたい。

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800系は全車2+2列配置で、グリーン車なしのモノクラス編成。基本的には旧800系も同じようなイメージで、木製のシートバックが並ぶ内装は新鮮。

シートの背が高いので、天井中央部にも案内表示があるのが特徴。


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旧800系のシートは全車生地が西陣織で、2両づつ色が異なるくらいだったが、新800系は生地の材質が新たに増え、色や柄も合わせると6両すべて違うパターンになっている。

写真は4号車の「アイビー柄・コブラン織」のシート。


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こちらは2号車で本革のシート。

シート生地の材質は西陣織、コブラン織、本革、ツイードの4種類があり、シート生地の見本市と化している。


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800系にはシート背面テーブルがないため、アームレスト格納式のテーブルとなる。

これも木製であり、支えの金属部分には「800」のロゴが入っていて芸が細かい。


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旧800系にもあるが、窓のブラインドはなんと「簾」。目線部分が薄くなっていて、ブラインドを下げても少しだけ外が見えるように配慮されている。


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床敷物には小さい燕のマークが入っている。旧800系では色合いは同じだが、単なるドット柄。


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デッキ周りも古風とモダンが融合したようなイメージで新鮮。額縁+絵まで飾ってあるし・・・

ゴミ箱なんて籠ですよ籠!新幹線のデッキのゴミ箱は埋め込み式が相場だが、「和」テイストのためにあえて古風な装備にしているということだろうか。


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新800系は客室とデッキを区切る壁面も何パターンかあるが(ハードメープルなど)、一部はこのように全面金箔貼りというものすごいものもある。


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この飾りは「川辺仏壇」というらしいが・・・正直なところ、個人的にはやりすぎ感があるような。この壁を前にする座席はなんか落ち着かなさそう。

他の号車の壁面は通常どおり広告が入っている個所もある。


ド派手な車内(6両編成でも見どころ満載)を一通り徘徊し終えたら、次は本革シートの2号車に移動した。鉄道車両の本革シートに座るの初めてだが、なかなか悪くないかも。

「さくら408号」は熊本までは各駅に停まるため、前日に乗った「さくら」よりも時間がかかるがそれでも1時間程度で熊本に到着。在来線時代と比べたら、相当な時間短縮に違いない。

●熊本で様子見モード

次の目的地は筑後船小屋だが、熊本で降りる。「さくら408号」は筑後船小屋に止まらないので各駅停車の「つばめ」に乗り換える必要があるのと、ここまで乗ってきたのは新800系だが、やはり旧800系にも乗りたいので、ちょうど中間地点の熊本で乗り換えることにしたのだ。

11:00ちょっと前に着いたが、この時間帯の筑後船小屋停車は本日のスケジュールを考えると11:04発か、12:04発しかチャンスがない。前者は時間が急すぎるのでスルーしてしまったが、後者が旧800系かどうかは完全に賭け。とりあえず、12:04発まで駅撮りすることにした。

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熊本駅は上屋があるものの意外と明るく、形式写真なら問題なく撮れる。

当駅折り返しの列車が多数設定されているが、折り返しには中央2線を使うことが多いようだ。U005編成が長時間停車していたおかげで、旧800系の形式写真・ディテール写真もゲット。


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前述の通り、折り返しの列車が多い上に運転本数も多いので、気軽な新幹線ウォッチやスナップにも手ごろな撮影地だと思う。


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駅の外にカメラを向けても撮影ポイントは多い(写真は博多方面)。全列車停車駅なので、速度が遅くて撮りやすいし。


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こっちは鹿児島中央方面。800系は編成が短いので、イン側から広角で狙った方がよさそう?


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上のポジションからU006編成を狙ったが、500mm以上ないと苦しいかも(写真はトリミングしてます)。

写真の出来はともかく(汗)、高倍率ズーム機はレンズ交換なしで手軽にこういう写真が撮れるのがよい。


前ページでは未知数などと書いてしまったが、意外と撮影しやすい駅だと思った(ただし、改札内にはキヨスク程度の売店しかないので食料調達は難あり)。特に800系をじっくり撮るにはここしかないかもしれない。結果的にここまで新旧800系の形式写真・ディテール写真を押さえることができているのだから、なかなか順調といえた。

しかし、乗る予定の12:04発「つばめ342号」は・・・U007編成、またもや新800系になってしまった。隣には旧800系(U001編成)「さくら」がいたが、そっちは筑後船小屋には止まらないから、諦めるしかない。

筑後船小屋へは3駅しかないので、乗車時間は20分ちょい。あっという間に着いた感じだった。

●筑後船小屋駅で撮影

筑後船小屋駅では2時間ほど撮影予定である。雑誌などを見る限りは中間駅で通過線はないものの、駅がカーブしているため通過列車がカッコよく撮れるかもと思った。新玉名駅よさそうだったが、今回はこちらをチョイス。

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近くにあった在来線の船小屋駅を移転、筑後船小屋に改称したのだとか。


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駅構内は緩やかにカーブしている。

コストの関係で2面3線構造、通過線がないので安全柵とホームドアが設置されている。向こう側のホーム奥には退避線があるが、現在のところ使っていない。

典型的な「九州新幹線の中間駅」である。


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博多方面は直線から曲線に変わるので、小田原駅や新山口駅のような構図が期待できそう。

写真の奥の方、かなりのアップダウンがあることがわかる。


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ちょっと白飛び気味だが、標準的な構図はこんな感じかね?7号車ホームドア付近から300mm程度で狙ってみた。

写真のU007編成は先ほど乗った編成だが、博多から折り返してきたようだ。


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少し広角寄りにして引き付けてみたが、通過線がないので屋根の影が簡単に入ってしまう。


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鹿児島中央方面はそのままカーブが続く。


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ホーム中央付近からU004編成を撮ってみたが、こちらは500mm以上は欲しいところ。例によってトリミング済み。


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駅の2階(ホームと改札の中間フロア)から。

奥にあるのが在来線の駅となるが、その間が公園になっているのは面白い。


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新幹線駅にしてはこじんまりとした印象だが、このような観光案内コーナーがある。

筑後船小屋だけでなく他の駅もこんな感じで、九州新幹線は車両だけでなく、駅も凝っているのだ。


日中は1本/1h程度しか停車しないが、通過列車も含めるとN700系・800系ともに結構来るという感じで退屈しない(まあ、2車種しか来ないので見慣れてくると別かも)。

そして、ホームに人が全然いない。列車が来る時だけ数人いる程度なので、ベンチに荷物置きっぱなしで撮影できてしまう(貴重品は持つように)。通過線がないので通過列車も案内放送が入るし、かなり早めのタイミングなので冷房が効いた待合室でのんびりしていても余裕。不満点はやはり売店程度しかないくらいで、九州新幹線の駅撮り撮影地としてはかなり良いと思った。

あっという間に2時間過ぎたが、結構撮ることができた。もうちょっと撮影していたかったが、スケジュールがあるので今回は終了。そのまま14:28発の「つばめ346号」を待っていたら・・・

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U001編成キター!旧800系、しかもトップナンバー編成!


次の目的地、新鳥栖へはわずか2駅という短さだが、ようやく旧800系に乗ることができそうだ。