●この旅随一の最新鋭

新山口駅で一通り撮影した後は、今年の3月から運転を始めたばかりの「さくら」に乗車し、終点の鹿児島中央に向かう。一気に終点というのは大胆な気もするが、せっかくの初「さくら」とN700系S・R編成だし、チョイ乗りでは寂しい。また、鹿児島中央からの復路は800系にも乗りたいので、なるべく長く乗れる区間を確保したいというわけだ。また、全線開業したばかりの九州新幹線を完全乗車しておきたいというのもある。

新山口に停車する「さくら」が何本が存在し、筆者が乗るのは17:01発「さくら565号」。コインロッカーから荷物を取り、撮影モードから乗車モードにチェンジすると(?)、N700系が入線。JR西日本のS6編成が充当されていた。

筆者が指定された座席のある6号車は新幹線では珍しい合造車で、グリーン車(というか室?)と普通車が半々というユニークな車両。この手の合造車かつて200系の「とき」編成に存在していたが、あちらが改造の結果なのに対し、N700系では最初から合造車という違いがある。

6号車の乗車位置で待っていたらグリーン車側の扉が来てしまったので、グリーン室を通り抜けて普通車側の自席に向かう。今回は指定が通路側になってしまったのだが、新山口の時点では窓側に乗ってないではないか。というか、自由席も含めて結構空席がある感じである。この後、どこかの駅で窓側の主が乗ってきたら移動するということで、とりあえず窓側に座っておいた。

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「ひかりレールスター」同様、指定席車は2+2列配置。大柄なシートは見るからに座り心地がよさそう。寸法は700系E編成と変わらないそうだが、座り心地は確実に上回っている。

リクライニング時は座面も動くが、JR東日本のと違って1ボタンで連動するタイプ。


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両脇アームレストにはカップホルダーがある。「ひかりレールスター」から継承された装備だ。


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カップホルダーはこのようにポップアップさせて使う。


新山口を出発し、本線に合流すると巡航速度までタレることなく、一気に加速していく。N700系の加速が良いことは知っているが想像以上。そして、「さくら」の山陽新幹線内での最高速度は300km/hとのことだが、そんな速度で走っているとは信じられないほど揺れない。ダイヤによっては300km/h出てない列車もあるらしいが、それにしても270km/h以上出ているだろうし、筆者の席が条件の良い車体中央付近だったとはいえ、巡航時の乗り心地は驚異的だと思う

ここまで乗ってきた車両が300系、500系、100系というロートル車ばかりだったので、最新鋭との差が際立ってしまったのかもしれないが、改めて新幹線の技術向上のすごさを感じた。

新関門トンネルを抜けて九州入りし、小倉では少し乗ってきた程度だったが、博多から(降りも多かったが)どっと乗ってきた。窓側席の主も乗って来たので通路側席に移動。博多出発時点でほぼ満席となった。終点に向けて減っていく思っていたのでちょっと意外な展開に。

ところで、博多から博多総合車両所に隣接する博多南駅までは、従来は「博多南線」という在来線扱いだったので、新幹線規格の路盤にも関わらず列車の速度が遅かったのだが、九州新幹線が全通した現在はどうなのかというと相変わらず遅いままだった(東京〜大宮間のような感じ)。博多南駅に出入りする列車は現在でも在来線扱いなので、(営業的に)スピードアップは難しいのだろう。しかし、博多総合車両所の分岐を過ぎると、再びN700系の変態加速が始まる。ここからは急な上り坂が続くので、航空機で上昇しているような雰囲気である。

●新車の香り(?)を味わいながら

「さくら565号」は博多を出ると、久留米・熊本・川内という停車パターンとなる。久留米ではほとんど動きがなかったものの、熊本で一気に降りて乗車率50%くらいに。熊本は九州新幹線の中間駅では最大の都市なので動きがあるとは思ったが、ここまでとは思わなかった。

隣の窓側席の主は降りなかったが、ここで他の空いている窓側席に移動(以降、乗ってくる可能性は低いので)。ようやく外が見えるようになったものの、ここから先はトンネルが多いという罠にorz。それでも、隣に誰も乗っていない窓側席は落ち着く。駅を通過するシーンを何度か見ることができたが、九州新幹線は8両分しかホーム長がないので、東海道・山陽新幹線と比べるとあっという間に通過するのが新鮮だった。

乗車率が下がったところで、熊本を出てからすぐに恒例の車内徘徊に移る。

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1〜3号車は自由席で、指定席とは異なり一般的な2+3列のシートとなる。3列シートが青、2列シートが赤の市松模様というユニークなもの。

写真は熊本出発後のものだが、指定席と比べるとこちらの方が乗車率が高いようだ。


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前述の通り、グリーン車は1両の半分だけなので定員は少ない。指定席が2+2列でコストパフォーマンスが高いせいか、利用率はよくないかも。実際、筆者が見たときは1人しか乗ってなかったし。

それでもやはりグリーン車、絨毯敷きだったり、オットマン(足のせ)、読書灯があるなど、指定席よりもグレードはずっと上だ。


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7号車の多目的室・身障者対応トイレがあるエリアは曲面で構成されていて、独特な雰囲気を醸し出す。

同じようなエリアは16両編成のZ・N編成にもあるが、あちらがシルバーグレーで未来的なイメージを出しているのに対し、こちらは木目調で暖かみのあるデザインとなっている。


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車内広告には自分自身の宣伝も・・・


見どころが多い車内だが、8両編成と短いため比較的早く回れた。あとは席に戻り終点まで乗り心地を堪能。座っているのは本来の指定された個所ではないが、直後がグリーン室と隔てる壁なので心置きなくリクライニングできるし、車体中央部なので乗り心地も良い。「さくら」「みずほ」で鹿児島中央方面に向かう列車で指定席を取るなら、6号車の9A、9Dが当たり席かもしれない。

車内レベルは相当高いN700系S・R編成「さくら」だが、欠点もある。

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16両編成のZ・N編成もそうだが、N700系は飛びぬけて窓が小さい。航空機よりはまだ大きいが、通路側からの視界は結構厳しい。

高速化と引き換えの結果なのでやむを得ないし、窓側に座って慣れれば問題ないが、これで100系の大きさの窓だったら神レベルなんだけどね・・・


新山口から鹿児島中央まで2時間ちょいなのでかなり早い。熊本からでも1駅のみ停車なので1時間もかからない。車内徘徊していたこともあるが、あっという間に終点という感じだった。

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一瞬「はやて」か「やまびこ」にでも乗ったかと惑わされる瞬間(w。鹿児島中央の1つ手前の駅です。


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オチ。

次は古川・・・ではなく、終点の鹿児島中央。


●7年ぶりの鹿児島中央と800系

冒頭にも書いたとおり、前回九州新幹線への遠征に来たのは2004年。今回は実に7年ぶりのことで、当時とは博多まで全線開業したこと、N700系(S・R編成)が加わったこと、そして九州新幹線専用車の800系にも増備車が登場したことが異なる。

今回の遠征では、引退目前の100系だけでなく、800系を押さえることも重要な目的の一つだった。800系は最低でも博多まで行かなければならず、筆者にとっては最も遠い存在の新幹線車両といっていい。そのくせ本数・両数ともに小所帯ながらバリエーションが多く、滅多にない機会だけに可能な限り撮影(資料集め)しておきたいのだった。

スナップや編成写真のみならず、形式写真やディテール写真といった駅撮りとして考えた場合、鹿児島中央駅は上等な撮影地だったといえた。(少なくとも2004年当時は)2面4線のうち中央2線しか使用しておらず、しかも筆者が見た限りでは2本の列車が並ぶことはなかった(カブりなし)。全列車折り返しなので停車時間も長く、向かい側のホームから1線開けての資料写真が撮り放題。しかも駅に大きな上屋などがないので明るいというメリットもあった。

なので今回も鹿児島中央駅での撮影を検討したのだが、九州新幹線が全線開業した現在、800系の撮影に限っては、残念ながら2004年当時よりも不利な条件が増えていた。

まず、中央2線だけではなく外側の2線も使うようになったこと。外側の線では向かい側のホームから撮るといった芸当が使えないし、鹿児島中央駅には安全柵とホームドアがあるから、列車が止まっているホーム上からも撮影は困難。列車が中央2線に来てくれればよいが、そうでなければほとんど撮影できない状況になってしまう。

熊本〜鹿児島中央間は基本的に1時間に片道2本の列車が走っていて、それは2004年当時から変わってないのだが、当時と違うのは2本/1hのうち1本は新大阪への直通列車・・・N700系になったため、鹿児島中央駅に800系は1時間に1本どころか、来ない時間帯すらできてしまった。例えば朝は始発を含めて6時台に2本の800系充当列車が存在するが、その後は9:53発まで来ない。

その一方で、博多〜熊本間は区間内折り返しの列車が加わって4本/1hの列車が走っているが、折り返し列車の大半は800系が充当されている。要するに同形式の大半は熊本以北で運用されているわけで、その意味では鹿児島中央駅と800系は疎遠になってしまったといえよう。

それじゃあ他の駅で・・・となるが、九州新幹線の中間駅は山陽新幹線のような通過線を持つ駅はなく、基本的に追い越し・退避という概念がない(退避線がある駅も存在するが未使用)。そのため駅への長時間停車はなく、新山口駅のような撮影は不可能。折り返し駅である博多駅はホーム上屋があって暗く、障害物も多いので撮影には全く適さないし、熊本駅もホーム上屋がある上に鹿児島中央駅と同様に中央2線でないと撮れないので、撮影地としては未知数だ。

長々と書いてしまったが(汗・・・いつものことか)、いずれにせよ800系の撮影には相当不安があった事は確かだった。

翌日は800系への乗りと同時に、撮影もそれなりにスケジュールに仕込んでいる。ただ、山陽新幹線以上のアウェー、想定通りにいかないことがあるかもしれない。そこで、100系の時と同様に保険として夜の撮影を試みた。ただし、100系と異なり800系は夜でも少なく、撮影できそうなのは19:48、21:42着の2本しかないという厳しい条件だ。

●灼熱の鹿児島ナイト

19:09、筆者が乗った「さくら565号」は終点、鹿児島中央駅に到着した。この後の800系は19:48着とそれなりに時間が空いているから、新山口の時と同様に先にホテルにチェックインすることに。今回もやはり駅に近い「ホテルアービック」をチョイスした。

ホテルに荷物を預けて再び駅へ。鹿児島中央駅の入場券は170円と他よりも高いことを初めて知った(新山口駅は140円)。それはともかく、800系が来る前に中央に1線開けてN700系がいたので、練習がてらとりあえず撮影。

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夜とはいえ、駅なのでそれなりに明るく形式・ディテール写真なら十分撮れる。安全柵があるし、1線しか空きがなので窮屈な構図になってしまうのはやむを得ないか。

ただし、8両編成のN700系はホームいっぱいに止まるので、両先頭車のノーズ部分は光量不足気味。


それにしても、さすが南国鹿児島、夜だというのにすごい蒸し暑さだ。そんな中しばらくすると、お目当ての800系が入線してきた。しかも、お初にお目にかかる新800系(U007編成)!だったが・・・

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うわあぁぁ、外側かっ!orz


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見ての通り、外側(14番線)に止まると反対側は壁なので形式写真などは撮れない。こんなスナップでお茶を濁すのが精一杯だ。


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一応、新800系独特の「出目金ライト」くらいは撮れたが・・・


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それじゃロゴ類などディテール撮るかね、と思っても、見ての通り安全柵とホームドアがあるのでお手上げ。

それでもパンタグラフとか行先表示機とか、意地でも撮ったが。


なんていうか、夜だとか暗いとかそういう問題じゃない。外側に止まってしまった段階で「詰み」だ。次に800系が来るのは21:42で、相当時間があるが・・・このまま駅にいてもN700系しか撮れないし、ホテルに帰ってまた来るのも効率悪いし・・・そして何より、中央2線に止まってくれるという保証はなく、また外側に止まったらどうしようもない。本日もかなり動きまわって疲れていたので、翌日に賭けることにして撤収した。

ホテルに戻る前に、食事の調達ついでに少し駅前をぶらつく。

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まあ7年もたてば当たり前だが、駅前はずいぶん発展し垢ぬけた感じに。

駅のコンコースも土産物屋と飲食店が立ち並び、新幹線の駅らしくなっていた。


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筆者が泊まった「ホテルアービック」の部屋から。右が駅だが、その下は「ビックカメラ」まで入っている(ホテルから駅に通じる通路にある)。

東京都内・神奈川県内といった地元で有名な家電量販店だが、ここで見るとは思わなかった。


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ホテルの通路にある窓からは上の写真とは反対側の景色を見ることができる。左が駅で、その先はすぐにトンネルで奥の山にもぐる。

ちなみに、このホテルではトレインビュー部屋として、写真のような景色が見える部屋を用意している。筆者は泊まるだけだし、翌日はホテルを出たらどうせ新幹線三昧なので、普通のプランにした。


夕食は前日に続きコンビニメシである。しかも今回はファミマでどん兵衛と普通のコンビニ弁当という組み合わせ。関東地方でも普通に食える内容であり、旅情もなにもない。そして、明日はそのまま新幹線で復路という、ストイックな行程だ。こいつは旅行じゃない、取材なんだと自ら納得してるんだけど、2004年のときもとんぼ帰りだったし(空路だった)、たまにはゆっくり旅行で来てみたいと思うことも。

前述したが、始発とその次の列車は800系が充当されているので撮影する予定だったが、そうすると5時台の出撃となりちょっとキツイ。中央2線に止まってくれる保証もないし、やはり疲れていたのでスルーすることに。だんだんgdgdになっている気がするが、大丈夫だろうか?

【コラム】「どん兵衛」の東西仕様

ひょっとしたら有名かもしれないが(公式にもある)、日清のカップめん「どん兵衛」は東日本仕様と西日本仕様がある。

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原材料表示の下に「(W)」の表記があれば西日本仕様。「(E)」ならば東日本仕様である。境目は関ヶ原だそうで、愛知や岐阜は後者。鹿児島で売っているのは当然前者だ。

もっとも異なるのがつゆの味で、(E)仕様はカツオだしで色が濃くシャープな味付け、(W)仕様はこんぶだしで色が薄くまろやかな味付けとなる。

そば・うどんは味もメニューも東西で異なることが多いから、たかがカップめんといえどもきちんとローカライズしているということだろう。


東西仕様を食べ比べると、味はかなり異なる。筆者は生粋の関東人なので、やはり東日本仕様の濃い目でシャープな味の方が好きかな。大船軒(神奈川県に数軒ある駅そば屋)の真っ黒なつゆ、大好きだもんな。

今回食べた中では、一番旅情を感じさせるものかもしれない・・・といっても、横浜ららぽーとにあるアンテナショップで容易に手に入ってしまうが(汗)。

筆者が上記の事実を知ったのは2002年あたりの頻繁に大阪出張していた頃。その大阪出張が新幹線趣味に走らせたきっかけなので、この話題は新幹線とは無関係ではない・・・というのは、ちょっと強引すぎるか。