マイクロエース 小田急30000形「EXE」・序 |
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マイクロエース 小田急30000形「EXE」・遊び編 |
(当記事はブログに掲載した記事に修正を加えたものです)
2011年5月10日、マイクロエースから待望の30000形ロマンスカー「EXE(エクセ)」が発売された。同車好きを公言する筆者は当然のように購入。
模型のレビューの前に「序」として、EXEの模型が発売されるまでの経緯を振り返ってみたい(製品評価とは直接関係ないので、興味のない人は読み飛ばして構わない)。
小田急は関東地方の私鉄だが、「ロマンスカー」と呼ばれる特急型車両などで、全国的にも知名度が高い大手私鉄であるため、客観的に見て模型化率が高い鉄道といってよいだろう。
ロマンスカーと呼ばれる車両は何世代かあるが(それ以前にもロマンスカーと呼ばれる車両はあるが、ここでは3000形「SE」以降を扱う)、入手しやすい大手メーカー製品としてはトミックスの7000形「LSE」が最初である。第一次Nゲージブームといえる状況の中で、当時最新鋭で話題の同車が模型化された。1981年の発売と相当古く、筆者が小学生の頃である(歳がバレるね)。その後、1988年には10000形「HiSE」がカトーとトミックスから発売された。
実車の世界ではその後、20000形「RSE」、そして30000形「EXE」と登場しているが、1990年代に入るとNゲージブームも下火になり(実際、筆者も鉄離れしてた)、ロマンスカーのNゲージ新製品が発売されることはなかった。また、LSEより前の世代の3000形「SE」、3100形「NSE」も中小メーカーのキット製品はあったものの、大手メーカーの完成品は存在しなかった。
2000年代に入り、マイクロエースの怒涛の製品化ラッシュや、筆者のような出戻り鉄の登場(?)により、第二次Nゲージブームが訪れる。そんな中、2005年に話題の新型である50000形「VSE」(トミックス)、引退済みだが人気の高い3100形「NSE」(マイクロエース)が相次いで発売。翌年には20000形「RSE」(モデモ)、3000形「SE」「SSE」(マイクロエース)も発売され、ロマンスカーのラインナップが急速に充実。一般車(通勤車の3000形、2400形)や小田急に乗り入れてくるJR371系なども発売されたほか、トミーテックの「鉄道コレクション」でも旧型の車両が製品化されるなど、2005〜2007年あたりはまさに小田急模型化ラッシュと言える状況だった。
しかし、そんな状況下でもEXEの模型は発売されることはなかった。
ロマンスカーはもともと箱根観光輸送がメインだったが、通勤輸送や沿線利用の旅客も多くなっていた。EXEは明確に後者にシフトした車両だったため、例えば前面展望席のような従来のロマンスカーの特徴を継承していない。鉄道は公共交通なわけだから利用実態に対して形を変えるのは当然だし、実際に同車には小田急の狙い通り乗客が乗っていて大活躍している。しかし、利用実態よりも各々の思い入れという趣味的な目で見れば、(肯定的なファンも少なくはないが)一部のファンからEXEに対する否定的な意見があることも事実だった。
EXEの賛否は本題ではないからこのへんにしておくが、「賛否両論のロマンスカー」ということが、長らく模型化されなかった理由のひとつとして否定できないだろう。実車の人気が売り上げに直結する以上、メーカーが不人気車なのでは?と考えたら、模型化を躊躇するのは道理だからだ。
小田急は模型化率が高いと書いたが、大手だけでなく中小のガレージメーカーまで含めると、中には入手困難だったり、キットであるため組み立てを要したり、出来が微妙な製品もあったりするが、小田急の開業時からほぼすべての車両にNゲージの製品化実績がある。前述の小田急模型ラッシュがひと段落した2008年頃の時点で模型化されていないのはEXEのほか、最新型の60000形「MSE」、4000形と、かつて小田急が所有していた電気機関車や貨車、特殊な事業用車くらいだった。
その中でも、10年以上も沿線に定着し、最も本数が多く見る機会も多い現役の特急用車両であるにも関わらず製品化されなかったEXEは、ダントツの不遇っぷりといってよかった。
とはいえ、模型化を望む声が少なかったわけでもない。なんだかんだいってよく見る車両だし、雑誌等の模型化希望アンケートでも上位に来ることが多かった。特に小田急模型化ラッシュ以降は「ここまできたらやはりEXEも・・・」となるわけで、模型化希望の声は日増しに大きくなってゆく。
話が前後してしまうが、実はEXEの模型化予定はなかったわけではない。知ってる人は知ってると思うが、「東京堂モデルカンパニー」というメーカーから発売予定があったのだ。同社は金属ブラス製、レジン製のキットがメインだったが、EXEは一般的なプラ完成品で2001〜2002年発売予定とされた。実車の最終増備が1999年と考えると、不遇どころか比較的早い製品化予定と言えるだろう。
しかし、このメーカーは商行為上いろいろ問題を起こしており、ユーザの批判が多かった(同社をググると悪評ばかりだったりする)。小田急の模型もいくつか手掛けてはいるが、一部を除き微妙な出来の製品も多く、実力的にも技術的にもEXEがきちんとした製品になるかどうか・・・「そんなメーカーで大丈夫か?」と問われて、「大丈夫だ、問題ない」とはとても答えられない、心配や疑問があったことも確かだった。
そして案の定、発売予定はズルズルと延び、いつの間にかWebサイトごと削除され発売予定自体がなかったことに。それでいて発売中止を宣言したわけではないから、バッティングを恐れる他のメーカーも手が出せない(誤解のないように書くと、東京堂に独占権があったわけではない。販売上の競合を避けるという意味で)。
2009年、同社は倒産したといわれている。「いわれている」というのは、法的手続きがあったわけではないらしいから。夜逃げに近かったという噂もある。それらが本当なのかどうか、筆者にはわからないが、確実に言えるのはEXEの模型化計画は無責任なメーカーによって、長らく塩漬けにされてしまっていたということだけだ。
EXEの「不遇」の裏には、メーカーに恵まれなかったという「不運」もあったのだった。
東京堂の倒産(面倒なのでこの表現でいいね)により、EXEの模型化は宙に浮いてしまった。しかし一方で、EXEが解放されたことも確かだった。
EXEの立体物というと「トレーン」と呼ばれるシリーズの玩具とチョロQくらいしかなかったが、2009年にはEXEの「Bトレインショーティ」が発売され、楽天のBトレ売上ランキングで1位を獲得。海老名で実施された同年の「ファミリー鉄道展」ではEXEが初めてメイン車種として登場し分割併合シーンを披露。東京堂の倒産を含めると、EXEにとって何か流れがかわった年だったのかもしれない。
そして2010年7月、ついにマイクロエースから正式に製品化のアナウンスがなされた。同社が「一番いいメーカー」かどうかはともかく、小田急はいくつも製品化実績があるし、とりわけ近年は小田急の公式グッズショップ「TRAINS」とのコラボ(監修)により製品の出来が飛躍的に向上しており、東京堂とは比較にならないほどマシであることは明確だった。
従来の製品同様、EXEの開発状況はTRAINSのブログで試作品を交えながら紹介。発売予定日は当初の2011年1月から4月に延期され、震災のせいかさらに延期されたが、ようやく5月10日に発売となった。
実車の登場から約15年。東京堂のアナウンスから約10年。ようやくEXEの模型が世に送り出された。
2種類のセットが用意されている。
左が4両セット、右が6両セット。
実車は10両編成で運転されるほか、分割して6両・4両で独立して運転されることもあるため、基本セット・増結セットという扱いではなく、それぞれ独立したセットになっている。2つのセットで10両フル編成にするのも、どちらか一方のセットで楽しむのも、ユーザの選択(懐具合?)次第である。
動力車がそれぞれのセットに用意されているため、10両フル編成では動力車2両となり勾配の多いレイアウトなどでは頼もしいが、その分割高感がある。
プロトタイプは第3編成(30053F+30253F)で、商品名の通り小田急のブランドマークが側面に貼られ、窓枠が車体と同色に塗装された現在走っている姿である。
EXEは当初窓枠が黒だったが(末期には上の写真のように塗装がはげてしまっていたが・・・)、2008年ごろから車体と同色に塗装されるようになり、現在に至る。
マイクロエースの私鉄モノというと、登場時と現行の両方を同時発売するなどバリエーション展開することが多いが、今回のEXEは現行仕様のみの製品化で、同社にしては珍しいパターンとなっている。
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