3100形「NSE」
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カトー・マイクロエース 3100形ロマンスカー「NSE」比較レビュー
カトー・マイクロエース 3100形ロマンスカー「NSE」比較レビュー

●概要

2014年12月、カトーから小田急ロマンスカー3100形「NSE」が発売された。

  • 10-1181 小田急ロマンスカー3100形NSE 11両セット<レジェンドコレクション> \24,800

なお、小田急電鉄(TRAINS)名義の限定版も用意された。

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マイクロエース(写真奥)の発売より約9年。カトーよりレジェンドコレクション第7弾として「NSE」が発売された。また、同社としては1988年発売の10000形「HiSE」以来、久しぶりの小田急模型製品となる。

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レジェンドコレクションならではの特製外箱入りで発売。ブックケースはお馴染みのものながら、レジェンドコレクションということで(?)ロゴがゴールドになっている(他のレジェンド持ってないんで・・・)。


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11両で1セットを構成。配列は号車順(1→11号車)だが、横向きで縦6段というこれまでにないタイトなもの。全高が低い「NSE」初期型だからできた配列だと思われる。


3100形「NSE」は1963年に登場したロマンスカーで、連接構造・低重心・高速志向という前作3000形「SE」のコンセプトを継承しつつ、当時の世相を反映して2階運転席、前面展望室という観光重視をさらに推し進め、その後の小田急ロマンスカーのイメージを作り上げた。1977〜1978年に屋根上に冷房装置の追加工事、1984〜1988年に愛称表示の自動化や内装のリニューアル工事などで外観は少々変化しているものの、基本的には塗装ともども1960年代オリジナルの姿を残しながら1999年の引退まで長きにわたり活躍していた。特に後継の7000形「LSE」登場までの間隔が長く、フラグシップとしての活躍は17年間と歴代の小田急ロマンスカーでもダントツ。なお、末期には「ゆめ70」という内外装を改装した車両も存在していたが、こちらは2000年に引退。現在は一部の車両が喜多見の車両基地と開成駅前に保存されている。

さて、小田急ロマンスカーのNゲージで一般的なプラ完成品として初めて発売されたのは1981年、当時の最新鋭7000形「LSE」である。その後は10000形「HiSE」も発売されたが、長らく小田急の顔だった「NSE」はガレージ製品くらいしかなく、プラ完成品として発売されるには実に2005年のマイクロエース製品まで待たなければならなかった。

それから約9年後の2014年。カトーからレジェンドコレクションシリーズとして発売されたのが今回紹介する「NSE」である。カトーは他社と比べ小田急には手を出さないイメージがあったので、同社からの発売は個人的にはかなり意外に思ったが、最近は(関東モノばかりだが・・・)私鉄特急や地下鉄にも力を入れているため、小田急の新たなラインナップも視野に入れていたのかもしれない。なお、同社は1988年に「HiSE」を発売しているためロマンスカー製品としては2作目となる。

「NSE」の模型が複数社から発売されたことになるが、先行しているマイクロエースが愛称表示機の自動化改造等を受けた晩年期をプロトタイプにしているのに対し、カトーの今回製品は公式に1977年頃、屋根上に冷房装置が増設される前の比較的初期をプロトタイプにしているため、直接的には競合していないといえる。ロマンスカーの模型はすでにかなりの種類が発売されている状況で、唯一穴が開いていた「NSE」初期を上手く埋める結果となった(というか、競合を避けるならここくらいしかなかったのも確かだけど)。

今回のカトー製品は3201F(第6編成)をプロトタイプとしているが、小田急電鉄(TRAINS)名義の製品は3101F(第1編成)。マイクロエースは製品が3種類あり、小田急電鉄名義のノーマル仕様が3181F(第5編成)、「ゆめ70」が3161F(第4編成)、ラストラン仕様が3221F(第7編成)となっている。「NSE」全7編成のうち、第2・3編成以外はすべて模型化されたことになる。

今回は新発売であるカトー製品のレビューを中心にする予定だったが、やはり先行発売のマイクロエースをスルーするわけにはいかないと思い、当サイトの小田急模型レビューとしては初の比較レビューとさせていただいた。

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比較に用いたのは小田急電鉄名義の限定品。マイクロエース名義は「ゆめ70」「ラストラン」だったのに対し、一番スタンダードな仕様が自社ブランドではないという、ちょっと変わったラインナップだった。

ちなみに、今回のカトーも小田急電鉄名義の限定品が用意されており、約9年も隔てて同様の事例があるのは興味深い。


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マイクロエースは3両(最下段は2両)づつ連結済みで収納されており、こちらは11→1号車の順で並ぶ。先行していたトミックスの「LSE」「HiSE」も連結済みだったが、号車順には並んでいなかった(その後の「VSE」では改善された)。


●先頭形状

小田原寄り先頭車をサンプルとした。

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この角度からはどちらも「NSE」としての印象は良好で、特徴である展望室から2階運転席のモデリングも秀逸。展望室前面窓とおでこのあたりの段差もきちんと出しており、模型でも1960年代の車両という雰囲気を漂わせている。


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真横からも印象は大きく変わらず、各扉や窓の位置関係もおおむね正確といえる。カトーは展望室窓の窓枠が少し太いのと、前から2番目のピラーの角度が異なる点で、角度に関してはカトーの方が近いかもしれない。ただ、気になるほどの差はないと思う。

ひとつだけ大きな差を上げるなら展望室内の座席の位置。マイクロエースはちょっと前に出すぎかも。

台車は両者ともスカートに干渉する部分を切り取っている。これは他のロマンスカー模型でも見られる手法だ。


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上の写真でもわかると思うけど、マイクロエースは車高がやや高い。中間部は低い個所もある(同社にしてはかなり頑張っているほう)のだけど、先頭部がやや高くてウィリー気味というか。トミックスの「LSE」ほどひどくはないが。


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正面上方から。先端部の位置はまったく同じながら、前述の車高の問題でマイクロエースは後退しているように見えてしまう。


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続いて正面顔。カトーは出目金(ライトケース)の大きさや位置が絶妙で、「NSE」ならではの顔のパーツが集まってる感がよく出ており、裾の絞り込みが大きく卵形の車体断面形状も含めて、「ほぼ完璧」といっていいかもしれない。

一方のマイクロエースは出目金・ヘッドライト等含めてかなり大きいことがわかる。車体裾の絞り込みも不足気味で、どちらかというと名鉄のアレっぽい感じが。ヘッドライト自体もカトーはプリズムの先端を球状にして光の反射があるのに対し、死んだ魚の目のようにまっ黒。真正面からだと結構差がついてしまうようだ。ただ、連結器の格納ハッチにボルトを表現している点はカトーよりも細かい。


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真上から見ても、カトーの出目金周りは小ぶりかつ絞り込まれていることがわかる。


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前面ドアップ。出目金はカトーが別パーツ、マイクロエースはボディ一体型という違いがある。前者は写真だと分割線が見えてしまうがパーツの精度は非常に高く、肉眼で見る分にはほとんど気にならないレベル。とはいえ、マイクロエースの一体型にはやはり好感が持てる。エッジもビシッと出ているしね。出目金周囲のリムはサイドまで回り込んでいるが、カトーはちょっと表現オーバーな気がする。また、ヘッドライトとテールライトの間にある飾りはどちらも実車より本数が少ないが、これは細かすぎるので仕方がないだろう。


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もう一つ大きな違いは愛称表示機で、マイクロエースは自動化されて四角い晩年の姿なのに対し、カトーは初期の5角形の姿(左)となっている。マイクロエースで残念なのは実車はツライチに近いのに対し、けっこう出っ張った透明なパーツで大味に表現されていること。その点、カトーはいい出っ張り具合といえる。なお、「はこね」の愛称がデフォルトで取り付け済みである。

おそらく、マイクロエースは5角形仕様も想定しており(よく見るとパーツ内部が5角形っぽく見える)、ボディを共用するならあのような出っ張りにせざるを得なかったのだろう。カトーが初期仕様を出してしまったことにより、マイクロエースから発売される可能性はかなり低くなった気がするがはたして。


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2階運転席は大まかなシルエットには大差ないが、カトーの前面窓は上下寸法が小さいことがわかる。おでこのスペースはカトーの方がそれっぽいが、下端はマイクロエースの方が近いか。カトーは通過表示灯が点灯する関係で(点灯状態は後述)窓の下端を下げられなかったのかもしれない。ワイパーの向きも異なっているが、どちらかといえばカトーのように中央寄りになっているのが自然なような。また、アームも2本で表現している。

地味なところでは、運転室横の雨どい終端形状がストレートなマイクロエースに対し、カトーは実車っぽい形状にしている。


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運転席後方の比較。マイクロエースは冷房装置を増設した後の姿、カトーはその前の姿なので見た目が結構異なる。屋根の塗り分けの違いも注目で、マイクロエースは運転室斜め後方まで塗装が回っているのに対し、カトーは運転室後方でまっすぐ塗り分けられている。実車を確認するすべがないので断定はできないが、どちらも実車に沿った仕様なのではないだろうか。運転室屋根上の信号炎管はマイクロエースは別バーツ、カトーは一体型となるが、無線アンテナはどちらも別パーツとなっている。

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後方のルーバーもチェックしようと思ったら、開成駅前のは塞がれてたorz


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2007年の海老名イベントから。運転室後方のルーバーは中心部でフィンの向きが異なるが、カトーはそこも再現している。マイクロエースはそこまでこだわっていないようだ。


●各部表現

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先頭車の展望室直後はどちらも実車に忠実ながら微妙な差があり、客用扉(ここのは非常用)がマイクロエースが溝だけモールドしてツライチなのに対しカトーは1段へこませてある。これは後者が正しいが、窓枠は前者の方がすっきりしていたりと一長一短な印象。また、マイクロエースはドアノブに銀色が入っている。

マイクロエースには客用扉の近くに車側灯のモールドがあるがカトーにはない。「NSE」の古い写真を見ると分かるが当初は装備していなかったためだ。号車番号の枠はモールドの濃さに違いがあるが、どちらも独特な形状を再現している。

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カトーは号車番号が印刷済みなのに対しマイクロエースにはない。しかし、禁煙車マークは印刷されていて、すぐ上の海老名イベントの写真と比べてみても忠実であることがわかる。なお、カトーは時代的に禁煙車の設定がない。

あとは屋根上から側面に降りてくる塗り分けのラインとその下にある白いストライプ。ここもカトーの方が一枚上手かな・・・


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先頭車後位の車掌室周り。扉と窓の大きさなどはどちらも同じ感じで、ドアがツライチか凹かも前述の客用扉に準じているが、ドアノブの位置が異なっている。

自己調査がないので何ともいえないが(開成のはこの部分が見えない)、書籍などで写真を見る限りは向かって扉左にノブがあるのが正解のようで、その意味ではマイクロエースは正しい(写真は海側だが、山側は車端側にノブがある)。しかし、海側でも車端側(右側)にノブがあるように見える写真もあり、編成による違いや後年の改造による違いの可能性もあり、カトーが間違っているとも断言できない。


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3・9号車の喫茶カウンター部(写真は3号車)。マイクロエースとカトーでは扉の位置や窓割りが違うが、これは後年の改造で喫茶カウンター部を拡大しており、マイクロエースはその改造後の姿ということになる。客用扉の左にある屋根へのステップはマイクロエースの方がはっきりしている。さらに左の赤と白の塗り分けあたりに小さなハッチがあるが、カトーにはない。ただ、これもカトーの時代にはなかった可能性がある。

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4・8号車のトイレ部分(写真は4号車)。ここはどちらも同じような感じだが、実車(当時)がそうだったのかどうかわからないが、カトーは車体のグレーと窓の色が合っていない。

客用扉は先頭車ではツライチか凹かの差があったが、中間車に関してはマイクロエースも凹で表現している。余談だが、この客用扉は3000形「SE(SSE)」と同様、手動でアテンダントが駅で開閉していた。それ以外の歴代ロマンスカーは(「SE」よりも古い車両も)すべて自動ドアなので、「SE(SSE)」「NSE」が君臨していた時代はかなり特殊だったといえた。しかし、そのことが乗る側にとっては独特のテンション↑になっていたことも確かだった。

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窓のツライチ具合はいい勝負でビシッとはめ込まれている。窓の大きさはカトーの方がやや大きい(とっても0.2〜0.3mm程度)。ガラスパーツはどちらも薄いブルーがかかっている。


●屋根上・パンタ

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前述したように、実車は1977〜1978年に屋根上に冷房装置を追加しており、マイクロエースはその後、カトーはその前を再現している。マイクロエースは屋根がニュートラルなグレー、冷房装置がやや緑が買ったグレーとなっていて、カトーはやや青みががあるグレーとなっている。色については解釈の違いだと思うので、どれも正解といえる。

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カトーは車端のベンチレータや屋根上の機器類を一部を除き屋根板と一体成型にしている。仮にカトーが後期型を出すなら、屋根板ごと制作するということだろう。一方マイクロエースの屋根はボディと一体型で、冷房装置をはじめとする機器類は基本的に別パーツとなっている。そのため、写真のトイレ上部のキノコ(ベンチレータ)の形状はマイクロエースの方がそれっぽい。


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全高が低いゆえのパンタかさ上げはどちらも再現できている。パンタ周辺の配管類もよく再現できているが、別パーツのヒューズ箱は表現に差があるようだ。パンタ横にある避雷器は大きさにずいぶん差があるが、どちらもそれぞれの時代に即しているのかもしれない(少なくとも、マイクロエースは特に問題ないように思える)。

パンタグラフのベース部分はカトーの方が実車に近い気がするが、枠の部分はマイクロエースに軍配が上がる。カトーの時代だと横桟はないのが正解。

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マイクロエースのパンタ下にはベンチレータがしっかりある。カトーと異なり別パーツとなるが位置は車端寄り。パンタかさ上げのゲタの間隔も少々異なる。パンタベース下部はマイクロエースの方がすっきりしている。

新幹線のパンタグラフだとダメダメなマイクロエースも、在来線用のひし形パンタは他社と比べてもそん色ないようだ。


●塗装・印刷

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カトーはバーミリオンオレンジがやや明るいが、当時の実車がそうだったらしい。ちなみに、トミックスの「LSE(2006年ロット)」はマイクロエースの色調に近い。光沢はどちらも同じくらいで、新幹線模型のような強い光沢処理はされていない。


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連接車は片側に台車がないので並べるのが大変だ・・・グレーはカトーの方がやや暗く白は同じくらい。下部の白3本ストライプはどちらもきれいに表現できているが、カトーの方が細い。


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車番については、大きさはマイクロエースの方が適切みたいだ。メタリック感はカトーが強く光の当たり具合に強く反応する。


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カトーには前面の愛称表示(ヘッドマーク)パーツが付属している。マニュアルを見ればわかるが分解しなくても交換可能。デフォルト装備の「はこね」を含めて主要な愛称は揃っていると思うが、小田急電鉄名義の限定品にはさらにマニアックな内容のステッカーが付属する。


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実車の愛称表示板(海老名のポポンデッタで撮影)。3000形「SSE」と共通で使用されていたもので、フォントや色からしてカトーのヘッドマークはよく再現できていると思う。


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マイクロエースはオーソドックスなステッカー式で、「ゆめ70」や「ラストラン」と共通のもの。こちらも基本的な内容は押さえているが、時期的に運用があった「スーパーはこね」や「サポート」は含まれない。


●灯火類・室内

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ヘッドライト・テールライトともにカトーの方が明るく、色味もいいと思う。マイクロエースの光源はおそらく電球(未調査なので確証なし)だが、黄色が結構強いように思う。実物の光量は写真ほど暗くはないがカトーには及ばない。

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少しシャッター速度を落として・・・カトーの特徴は展望席上部の「通過表示灯」が点灯すること。内部のプリズムの立ち上げも上手く、車内も見通せるようになっている。マイクロエースの通過表示灯はモールド表現であり点灯には対応していない。

通過表示灯は基本的に優等列車が点灯させるもので、現在でも使用している私鉄は存在するものの、小田急ではヘッドライトの昼間点灯により1998年頃に使用停止となった。この時期に製造された2000形と30000形「EXE」の増備車からは通過表示灯が省略され、その後登場した形式には装備されたことはない。また、8000形のように改造で撤去した例もある。


マイクロエースはプロトタイプが晩年期と考えれば、引退時期ギリギリなら通過表示灯を使用しなかった時期があったといえそうだ。モールド表現なので点灯しようがないが、その意味では点灯しないこと自体は特に問題ないかもしれない。

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カトーは闇雲に光量が多いのではなく、ヘッドライトは多く、テールライトと通過表示灯はそれなりという具合にメリハリをつけているのが特徴。特に愛称表示の点灯具合は秀逸だと思う。その点、マイクロエースは均一的で光量は標準的なレベル。見る角度で少し変わるかも。

面白いのがどちらもテールライトだと愛称表示が少し明るく点灯すること。愛称表示専用の光源を持っていないからだろう。


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マイクロエースのボディを外すと先頭部が機銃のよう(?)になっている。光源は上手く隠されているため光漏れはほとんどない。運転席は黒いボックスみたいのでかさ上げしているので、展望室から車内が見通せない。見た感じ、通過表示灯を点灯させるための準備工事でもなさそうだ。


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カトーは先頭車には標準でプリズムが仕込んである(中間車は別途装着)。ヘッド・テール用のプリズムも計算されているようなハイテク感があり、正直分解することに抵抗を感じるほど(実際、無暗に分解しない方がよい)。光源はチップLEDで、黄色い座席パーツの先端部に見えている。


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マイクロエースも2階運転室はある程度表現しているが、カトーはさらに作り込んでいる印象。


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案外運転席の窓は大きく、「NSE」ならではのゴテゴテ感が外部から見えるのは効いている。


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カトーはシートが3色に分けられていた時代を再現。1〜3号車が黄、4〜8号車が青、9〜11号車が赤となる。座席の向きは6・7号車を境にそれぞれ先頭車向きになっている。


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見えない個所なので特に問題はないが、喫茶カウンター部などの作り込みはない。マイクロエースも「EXE」「MSE」とは異なり、「NSE」に関してはやはり作り込みはない。

カトーはこの部分がややスロープ状になっているのが面白い。実車は通路部分がスロープなので意識したわけではないと思うが、低重心構造の「NSE(SEも)」は床下が一般車より1段低く、座席に座ってホームを見るとかなり低さを感じたものだった。


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マイクロエースは時代的に全号車ワインレッドで、同社ならではの枕カバー表現がある。「NSE」の内装リニューアル後はオレンジが基本で、1987年以降に改造を受けた3101F、3161Fのみワインレッドだったと思うが・・・でも開成の3181Fの展望室に残っているのはワインレッドだし。まあ、個人的には「NSE」はワインレッドのイメージが強いので特に問題なし。

シートの向きは各号車でバラバラで統一感がない。


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カトーの数少ない欠点として、シートが床下なども含めて一体成型のため、展望室内部の色違いが丸見えなこと。これはちょっと興ざめだ。

トミックスの「VSE」並みに別パーツ再現だったら神レベルだったのに・・・


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前部の台は自分で茶色に塗るしかなさそうだ。ちなみに、マイクロエースは一応塗ってある。


●床下・連結部

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上が2号車海側、下が5号車山側。機器の内容が異なっている個所があるが、時代的なものだろうか。筆者の知識ではどちらが正しいのかはちょっと断定できない。一応、どちらも各号車で作り分けされているように思う。

モールドに関しては両者でそれぞれ細かい部分、省略している部分があるので、一長一短の互角というところだろう。マイクロエースはややザラザラした質感が特徴。

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どちらも板状に表現している機器があるのが面白い(実車も機器が薄い?)。カトーは床下中央におそらくウエイトが入っている出っ張りがあるが、真横から見てもそれほど気にならない。

動力車はマイクロエースのメタボ動力は相変わらず。カトーもややメタボっぽいが、マイクロエースほどではない。


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台車はモールドの細かさ・シャープさでカトーに軍配が上がる。発売時期に差があるからといえばそれまでだが・・・


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開成の保存車で台車をまともに撮るのは難しい・・・ただ、ボルスタアンカや空気ばねの下にあるスイングハンガーの張り出し具合はマイクロエースの方がボリューム感がある。


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マイクロエースの連結はトミックスのロマンスカー製品でもおなじみのフックを片方の車両にスナップする方式。通電機能も備わっており、後に発売された「SE(SSE)」にも引き継がれた。


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カトーは他社とも同社の「HiSE」とも異なる、連接車で伸縮カプラーという珍しい方式を採用。同社の海外向け車両製品の応用とのこと。伸縮カプラーは写真左の台車の上にある小さなクリップ状のもので、相手側の床下と接合する。

走行上は特に問題はないが、連結力はあまり強くない。他社製品だと連結させたまま南京玉すだれ(?)のごとく持ち上げることができるが、カトーでそれやると簡単に外れるので注意。他社と異なりケース内で連結されていないのはこのためだと思われる。また、通電機能はない。


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連結部はマイクロエースも3.5mmとそれなりに狭いが、カトーは3mmという狭さ。前述の伸縮カプラーのおかげで急曲線も曲がることができる。ちなみに、トミックスの「LSE」「HiSE」は4mm。実車の連結間隔が400mm、1/150で約2.6mmなので、いかに今回のカトーが実車に近づけたかがわかる。相手側の幌の車内はみ出しは少々多いようだが・・・

さらに余談。トミックスの「VSE」は外幌を除いて5mmとさらに広いが、こちらは実車の段階で間隔が800mmと広いからである(台車をハイマウントしているため)。1/150なら約5.3mmだから全く問題ない数値といえる。

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トミックス新幹線の可動幌でも見た目が大きく変わるポイントなのだけど、カトーはボディが薄く狭い連結間隔と合わせて連続感が非常に良い。対するマイクロエースはボディが厚めで残念ながら段差が大きい。

カトーの時代は外幌がダブダブで車体からはみ出ていたのだが(実車の写真は他サイト様や書籍にて)、さすがにNゲージでの再現は難しい。それでも、外幌のパーツにはシワのような模様がモールドしてあり、効果はともかく少しでも雰囲気を再現しようとしているのは好感が持てる。マイクロエースの時代は「LSE」のようなウレタン芯の外幌に変更されたため、すっきりした外観となっていた。

最後に車高(レール面からボディ下端まで)について触れたい。当サイトで車高が低くてプロポーションがよいと評したマイクロエースの「EXE」が6.3mm程度。Nゲージでは6.5mmを切っていれば車高が低いと考えてよいと思うが、低重心が売りの「NSE」はどうかというと、カトーは車輪径も小さくするという徹底ぶりで約5.8mm程度と相当な低さ。しかも編成全体で揃っている。車高が低くて揃っていると全体がカッコよく見えるので超重要なポイントだと思う。一方のマイクロエースは車輪径は通常と同じながらカトーと同レベルではあるが、場所によって少々ばらつきがある。前述したように、特に先頭部は6.5mmとやや高くなってしまっている。

●総評

先般発売のマイクロエース60000形「MSE」に続き、今回のカトー「NSE」とロマンスカー豊作だった2014年末。特に「NSE」は筆者も世代的にドストライクなので気になっていたが、マイクロエースと比較してみた結果いろいろ見えてきたことが多く、レビューしていて楽しかった。

今でこそ模型としての品質が上がったマイクロエースだが、同社の「NSE」が発売された2005年ごろはまだまだ微妙なメーカーという立場ではあった。その中において「NSE」は比較的よくできていた方で(当時の時点でも小田急の監修があったと思われる)、今日における品質向上の足掛かりになった製品だったのかもしれない。実際問題、大まかに見れば「NSE」として問題ないし、筆者もそれほど大きな不満も違和感もなかったように思う。しかし、今回カトー製品と比較してみたところ、単体で見ていた時は気にならなかった問題点が浮かび上がっていく。マイクロエース製品も決して悪くない。設計時期が9年も開いていることもあるだろう。それにしても、今回は相手が悪すぎた気がする。

カトーから「NSE」、しかもレジェンドコレクションと聞いて寝耳に水だったのだけど、実際出てきたものはその名に恥じない仕上がりだったといえるだろう。ディテールもさることながら、低い車高、狭い連結間隔、しかもそれらが揃っていて更新前「NSE」のすらりとした美しいプロポーションを見事に再現していると思う。真正面顔のバランスも見事だし、通過表示灯が点灯するギミックがあるだけではなくヘッドライトと光量を変えるなど、この手のこだわりは枚挙に暇がない。もちろん、展望室の色違いが見えてしまうなど不満がないわけではないが、それにしても全体のスケール感とバランスの良さは抜きんでている気がする。もともと定評のあるカトー製品に小田急の監修が入るとこうなる、ということだろうか。

筆者は一部でカトー信者疑惑があるようだけど(苦笑)、闇雲に褒めているのではく「良い」と思う根拠はここまでにきちんと出してきたつもりだ。そのうえで、今回の「NSE」はレベル高いです。相当本気出してますと。小田急ファンなら買って後悔することはないと思うし、お勧めできる逸品だと思う。ていうか、0系も再生産でお茶を濁さずこのくらいやって欲しかったよ。ホントにもう。

TRAINSによれば、小田急電鉄名義の限定品ははや完売だそうで。売上ペースも相当なものだったようで、それだけ「NSE」は広い世代から支持されているのかもしれない。「限定品」のはずなのに再生産検討というのもどうかと思うが、良い製品なので安定して入手できる体制になるのは歓迎したい。

カトー「NSE」でロマンスカーのNゲージはほぼ出尽くしたのではないだろうか(1700形と2300形は鉄コレ待ちで)。ただ、設計時期にはかなり差が出てきていることもあり、今回のカトー「NSE」のクオリティに対抗できるのは私見ではトミックス「VSE」、マイクロエース「EXE」「MSE」くらいかもしれない。マイクロエースの「NSE」「SE(SSE)」、モデモ「RSE」は悪くはないが、ランクとしては一つ落ちる感じ。いまだに30年以上前の設計を使いまわすトミックスの「LSE」はもはや論外だろう。

もはや新品での入手は難しいが、マイクロエースの「NSE」も晩年期仕様として引き続き価値はあると思うので、両方持つのも面白いと思う。ただ、今回のカトーレベルの晩年期仕様も見てみたい気がする。カトーをもう1本買って、マイクロエースのパーツを移植するか・・・3・9号車がお手軽にはいかないか。これまでロマンスカー(小田急)には消極的だと思っていたカトーだったが、今回の出来を見ると他の形式も期待してしまう。「HiSE」のリニューアルはもとより「LSE」もぜひ・・・


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